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第十三章 「レンズが見つめる真実」
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楓とまことのアパートに招かれた由美を、三人が笑顔で出迎えた。
その空気はどこまでも和やかだったが、リビングの中央に鎮座する一台のビデオカメラが、これから始まる非日常を静かに告げていた。
「いらっしゃい、由美さん。緊張してる?」
楓の優しい問いかけに、由美はこくりと頷く。
その仕草は、初めての経験に戸惑ううぶな少女そのものだった。
まことが部屋の隅で照明の角度を調整し、雛が彼の隣でカメラの向きを確認している。
これから自分に何が起きるのかを正確に理解しながらも、由美はあくまで初々しい子羊のように、不安と期待が入り混じった表情を浮かべていた。
楓に促されるまま、由美はソファに深く腰を下ろした。
彼女の白い喉が、ごくりと小さく鳴る。正面に据えられたカメラの黒いレンズが、まるで無機質な瞳のように自分を捉えていた。その視線だけで肌が粟立ち、背筋をぞくりと震わせる。
自分の恥ずかしい姿が、あのレンズを通して全て記録されていくという想像は、甘美な痺れとなって由美の下腹部に直接響いた。
身体の芯から湧き上がる疼きに、思わず膝を閉じ、太腿が微かに震える。まずい、このままでは理性を保てない。由美は、必死で平静を装いながら顔を上げた。
「……あの、ごめんなさい。その前に、少しだけ……レストルームをお借りしてもよろしいでしょうか?」
緊張しているせいか、少し上ずった声だった。
楓は「もちろんよ」と優しく微笑み、廊下の突き当りを指さす。
由美は「ありがとうございます」と小さく頭を下げ、少しだけ覚束(おぼつか)ない足取りでソファーから立ち上がった。その嫋やかな背中を、三人の視線が突き刺すのを感じながら。
パタン、とレストルームのドアが閉まり、鍵のかかる音が小さく響いた。
個室の鍵をかけ、由美は大きく息を吐いた。
(しっかりしなさい、私…まさか、これほどとは…)
頬は上気し、瞳は熱っぽく潤んでいる。呼吸も少し荒い。
三人に迎えられ、あの無機質なレンズに見つめられただけで、身体は正直に反応してしまっていた。期待と興奮で、立っているのもやっとなほどだ。
(あのカメラに、私が堕ちていく様が永遠に残る…そう考えただけで、もう…)
案の定、シルクのショーツは熱い蜜でじっとりと湿り、肌にべっとりと張り付いていた。だが、この事態すら彼女にとっては想定内だ。
由美は少しも慌てず、寸分の無駄もない所作でハンドバッグから小さなシルクのポーチを取り出す。中には、今日身につけているものと同じデザインの、真新しいショーツが畳まれて入っていた。
濡れたそれを脱ぎ捨て、ティッシュで丁寧に肌を拭う。そして、新しいショーツに足を通した瞬間、さらりとした極上の感触が肌を包み、彼女の心に完璧なまでの平静が戻ってきた。汚れた方はビニール袋に入れてポーチにしまい、何事もなかったかのようにハンドバッグに戻す。
数回深呼吸をして、完全に冷静さを取り戻す。
鏡の中にはもう、先ほどまでの熱に浮かされた女の姿はない。穏やかで、少しだけ緊張を滲ませた、完璧に無垢な微笑みを浮かべる顔があるだけだった。
由美はゆっくりとドアノブに手をかけ、再びあの背徳の舞台へと、その身を投じる。完璧な淑女の仮面をつけ直して。
リビングに戻ると、楓がソファを指し示して言った。
「さ、座って」
促されるままにソファに腰を下ろすと、正面には、先ほどよりもさらに存在感を増したカメラのレンズが、黙って彼女を待ち構えていた。
一度その視線から逃れたことで、かえってその無機質な瞳が持つ支配的な意味を、由美は骨身に染みて感じていた。
「これから少し、インタビューを撮るわね」
楓がそう言ってカメラのスイッチを入れると、小さな赤いランプが灯った。その光が、由美の羞恥心と興奮を同時に焼き付けていく。
(あのレンズが、私の恥ずかしい姿を全部記録するのね…)
「まず、由美さんのことから教えて。身体のどこを触られるのが一番好き?」
いきなりの直接的な質問に、由美の頬がカッと熱くなる。
「え、えっと…耳と、首筋…です」か細い声で答えるのが精一杯だった。
(本当はもっと敏感なところがある…でも、そんなこと言えるわけない)
「ふぅん」楓は面白そうに頷くと、隣に座る雛に目配せした。
「雛も何か聞いてあげて」
「はい!」雛は嬉しそうに身を乗り出した。
「由美さんは、どういうことをされるのが好きですか?優しいのがいい?それとも、ちょっと意地悪される方が好き?」
「そ、それは…」由美は言葉に詰まり、視線を彷徨わせる。
(意地悪される方が好き、なんて言えるわけないじゃない…でも、本当は…)
「…優しく、される方が…好き、です」
嘘をついた罪悪感と、本心を隠していることへの後ろめたさ。その二つが入り混じった甘い疼きが、由美の下腹部をきゅうっと締め付けた。
楓は、そんな由美の内心を見透かすように、さらに艶めかしい質問を重ねていく。
「好きな体位は?」「声は出しちゃう方?」「イくときは、どんな感じになるの?」—。
一つ一つの質問が、由美の羞恥心の鎧を少しずつ剥ぎ取っていく。
(こんな質問に答えてる私…カメラに撮られながら、こんなやらしいことを話してる)
一通りの質問が終わったところで、楓はふと表情を変えた。
「じゃあ、別荘でのこと、聞かせてくれる?何が一番良かったか、どう感じたのか」
その問いに、由美の脳裏にあの夜の記憶が鮮明に蘇った。楓の冷たい命令、雛の優しい愛撫、まことの熱い楔…。
(あの夜のこと…思い出すだけで、また身体が熱くなってくる)
「…全部、です」
由美の声が、熱っぽく震える。
「全部、初めてのことで…すごく、気持ちよくて…。特に、三人で何度も責められた時…もう、どうにかなってしまいそうでした」
思い出すだけで、身体の奥が疼き、秘裂からじわりと蜜が滲み出すのを感じる。その生々しい反応を、目の前のカメラが克明に記録しているのだ。
(記録されてる…私のこんな表情も、全部カメラに映ってるんだわ)
インタビューが一息つくと、楓は満足げに微笑んだ。そして、悪魔のような提案を口にする。
「ねえ、由美さん。私、別荘で見たあなたの土下座が、忘れられないの。もう一度、ここで見せてくれないかしら。このカメラの前で」
「え…?」
「あなたの土下座よ」楓は冷ややかに、しかし楽しそうに言った。
「あの時の、必死な姿…。とても美しかったわ。もう一度、このカメラの前でやってみて」
由美は息を呑んだ。
「そ、それは…」と、計算通りの躊躇を見せる。しかし内心は、歓喜に打ち震えていた。
(どうして楓さんはわかるの…? 私が一番してほしいことを…!)
「お願い…」楓が囁く。
「私たちの関係を続けるための、最初の『作品』作りに協力して」
由美はしばらく俯いていたが、やがて顔を上げ、決意を固めたように頷いた。彼女はソファから降り、カメラの正面の床に、ゆっくりと膝をついた。そして、あの日のように、深々と頭を下げた。
「…みなさん…。どうか、私を…好きなように、してください…」
その姿を、カメラのレンズが冷徹に捉えている。楓は立ち上がり、由美の前に来ると、その姿を品定めするように見下ろした。
「だめね。全然なってないわ」
楓は吐き捨てるように言った。
「もっと絶望感が足りない。やり直し」
由美は言われるままに、もう一度頭を下げる。
「だから、額が床についてないって言ってるでしょう?」
楓は履いていたストッキングのつま先で、由美の頭を優しく、しかし有無を言わせぬ力で床に押し付けた。
「ひっ…!」(気持ちいい…もっと…!)
「そうよ。それから、お尻をもっと上げて。あなたのその恥ずかしいところが、カメラに良く見えるように」
由美が言われるままに腰を浮かせると、スカートがめくれ、ピンクのレースの下着に包まれた臀部が露わになる。レンズが、その一点にズームしていくのが分かった。
「よくそんなことカメラの前でできるね」雛が感心したような、呆れたような声で呟いた。その声が、由美の興奮をさらに煽る。
「あ、スマホで写真も撮るね」
雛は由美に向かってスマートフォンを構えて、シャッターを押す。
カシャ、カシャ、と無機質な電子音が響く。
「由美さん、もっとこっちにお尻突き出して」雛がポージングを要求し、由美の後ろに回り込んで、さらに数枚写真を撮った。
屈辱。露出。支配。その全てが、由美にとっては極上の責めだった。脳が痺れ、思考が溶けていく。下腹部の疼きは限界に達し、もう何も考えられない。溢れ出した蜜で、下着はぐっしょりと濡れきっていた。
その時だった。由美の身体の芯で、何かが静かにはじけた。
「―――ッ!」
声にならない絶叫が、喉の奥で詰まる。ビクンッ、と背中が弓なりに反り、見えない糸で吊り上げられたかのように腰が激しく跳ねた。
カーペットを掴む指が白くなるほどに力を込め、足の指は固く、固く縮こまる。
行き場のない快感を逃がすように、膣肉がきゅう、きゅう、と空中で虚しく、しかし激しく収縮を繰り返す。 何も挿れられていない空洞が、恥辱だけで満たされ、痙攣していた。
視界が真っ白に点滅し、全身を貫く痙攣の波に、ただ身を任せることしかできない。
それは一度きりの大きな波ではなく、ビクッ、ビクンッ、と、内側から何度も何度も突き上げるような、絶え間ない痙攣の連鎖だった。
閉じた目尻から、一筋の涙がこめかみを伝い、唾液の糸が、微かに開いた唇の端で、銀色にきらめいた。
(雛: すごい…本当に、イってる…)
雛はカメラを構えながら、ごくりと息を呑んだ。ファインダー越しに見た、常に完璧な由美が、完全に崩れ落ち、汗ばんだ肌を上気させ、ただただ快感に喘ぐ姿。
その背徳的な美しさに、雛自身も股の奥がじわりと疼くのを感じた。
(楓: この子、本当に…凄いドMだわ)
楓は由美の反応を見て、自分の読みが正しかったことを確信する。そして、その反応を引き出せたことに、背筋が粟立つほどの喜びを感じていた。
(楓:ああ、なんて美しい顔をするのかしら、この子は。私の言葉一つで、羞恥に震え、瞳を潤ませて…。この気高いプライドが砕け散る瞬間を見るのが、たまらない。もっと、もっと追い詰めて、あなたの知らない、淫らな顔を引きずり出してあげる)
恍惚の波が引いた後、由美の口から漏れたのは、魂からの懇願だった。
「…おねが、いします…。なんでも…しますから…。すきな、ように…してください…」
(楓さん…私がドMなのを見抜いてくれて、本当にありがとう…!)
「よくできたわ」楓の声が、天からの啓示のように聞こえた。
「ご褒美に、何が欲しい?」
由美は涙で濡れた顔を上げ、震える声で答えた。
「…楓さんと、雛ちゃんの…キスが、欲しいです…」
楓と雛は顔を見合わせて微笑むと、床に膝をつき、由美の両側から顔を寄せた。
楓の唇が、雛の唇が、同時に由美の唇に触れる。楓の舌が上唇を、雛の舌が下唇をなぞり、ゆっくりと口内に侵入してくる。二人の舌が由美の舌に絡みつき、唾液が混じり合う。その常軌を逸した甘美なキスを、カメラが克明に記録していく。
由美は、これが新たな契約の儀式なのだと理解した。自分はもう、後戻りできない場所に来てしまった。そして、その事実に、心の底から歓喜している自分に気づいていた。
その空気はどこまでも和やかだったが、リビングの中央に鎮座する一台のビデオカメラが、これから始まる非日常を静かに告げていた。
「いらっしゃい、由美さん。緊張してる?」
楓の優しい問いかけに、由美はこくりと頷く。
その仕草は、初めての経験に戸惑ううぶな少女そのものだった。
まことが部屋の隅で照明の角度を調整し、雛が彼の隣でカメラの向きを確認している。
これから自分に何が起きるのかを正確に理解しながらも、由美はあくまで初々しい子羊のように、不安と期待が入り混じった表情を浮かべていた。
楓に促されるまま、由美はソファに深く腰を下ろした。
彼女の白い喉が、ごくりと小さく鳴る。正面に据えられたカメラの黒いレンズが、まるで無機質な瞳のように自分を捉えていた。その視線だけで肌が粟立ち、背筋をぞくりと震わせる。
自分の恥ずかしい姿が、あのレンズを通して全て記録されていくという想像は、甘美な痺れとなって由美の下腹部に直接響いた。
身体の芯から湧き上がる疼きに、思わず膝を閉じ、太腿が微かに震える。まずい、このままでは理性を保てない。由美は、必死で平静を装いながら顔を上げた。
「……あの、ごめんなさい。その前に、少しだけ……レストルームをお借りしてもよろしいでしょうか?」
緊張しているせいか、少し上ずった声だった。
楓は「もちろんよ」と優しく微笑み、廊下の突き当りを指さす。
由美は「ありがとうございます」と小さく頭を下げ、少しだけ覚束(おぼつか)ない足取りでソファーから立ち上がった。その嫋やかな背中を、三人の視線が突き刺すのを感じながら。
パタン、とレストルームのドアが閉まり、鍵のかかる音が小さく響いた。
個室の鍵をかけ、由美は大きく息を吐いた。
(しっかりしなさい、私…まさか、これほどとは…)
頬は上気し、瞳は熱っぽく潤んでいる。呼吸も少し荒い。
三人に迎えられ、あの無機質なレンズに見つめられただけで、身体は正直に反応してしまっていた。期待と興奮で、立っているのもやっとなほどだ。
(あのカメラに、私が堕ちていく様が永遠に残る…そう考えただけで、もう…)
案の定、シルクのショーツは熱い蜜でじっとりと湿り、肌にべっとりと張り付いていた。だが、この事態すら彼女にとっては想定内だ。
由美は少しも慌てず、寸分の無駄もない所作でハンドバッグから小さなシルクのポーチを取り出す。中には、今日身につけているものと同じデザインの、真新しいショーツが畳まれて入っていた。
濡れたそれを脱ぎ捨て、ティッシュで丁寧に肌を拭う。そして、新しいショーツに足を通した瞬間、さらりとした極上の感触が肌を包み、彼女の心に完璧なまでの平静が戻ってきた。汚れた方はビニール袋に入れてポーチにしまい、何事もなかったかのようにハンドバッグに戻す。
数回深呼吸をして、完全に冷静さを取り戻す。
鏡の中にはもう、先ほどまでの熱に浮かされた女の姿はない。穏やかで、少しだけ緊張を滲ませた、完璧に無垢な微笑みを浮かべる顔があるだけだった。
由美はゆっくりとドアノブに手をかけ、再びあの背徳の舞台へと、その身を投じる。完璧な淑女の仮面をつけ直して。
リビングに戻ると、楓がソファを指し示して言った。
「さ、座って」
促されるままにソファに腰を下ろすと、正面には、先ほどよりもさらに存在感を増したカメラのレンズが、黙って彼女を待ち構えていた。
一度その視線から逃れたことで、かえってその無機質な瞳が持つ支配的な意味を、由美は骨身に染みて感じていた。
「これから少し、インタビューを撮るわね」
楓がそう言ってカメラのスイッチを入れると、小さな赤いランプが灯った。その光が、由美の羞恥心と興奮を同時に焼き付けていく。
(あのレンズが、私の恥ずかしい姿を全部記録するのね…)
「まず、由美さんのことから教えて。身体のどこを触られるのが一番好き?」
いきなりの直接的な質問に、由美の頬がカッと熱くなる。
「え、えっと…耳と、首筋…です」か細い声で答えるのが精一杯だった。
(本当はもっと敏感なところがある…でも、そんなこと言えるわけない)
「ふぅん」楓は面白そうに頷くと、隣に座る雛に目配せした。
「雛も何か聞いてあげて」
「はい!」雛は嬉しそうに身を乗り出した。
「由美さんは、どういうことをされるのが好きですか?優しいのがいい?それとも、ちょっと意地悪される方が好き?」
「そ、それは…」由美は言葉に詰まり、視線を彷徨わせる。
(意地悪される方が好き、なんて言えるわけないじゃない…でも、本当は…)
「…優しく、される方が…好き、です」
嘘をついた罪悪感と、本心を隠していることへの後ろめたさ。その二つが入り混じった甘い疼きが、由美の下腹部をきゅうっと締め付けた。
楓は、そんな由美の内心を見透かすように、さらに艶めかしい質問を重ねていく。
「好きな体位は?」「声は出しちゃう方?」「イくときは、どんな感じになるの?」—。
一つ一つの質問が、由美の羞恥心の鎧を少しずつ剥ぎ取っていく。
(こんな質問に答えてる私…カメラに撮られながら、こんなやらしいことを話してる)
一通りの質問が終わったところで、楓はふと表情を変えた。
「じゃあ、別荘でのこと、聞かせてくれる?何が一番良かったか、どう感じたのか」
その問いに、由美の脳裏にあの夜の記憶が鮮明に蘇った。楓の冷たい命令、雛の優しい愛撫、まことの熱い楔…。
(あの夜のこと…思い出すだけで、また身体が熱くなってくる)
「…全部、です」
由美の声が、熱っぽく震える。
「全部、初めてのことで…すごく、気持ちよくて…。特に、三人で何度も責められた時…もう、どうにかなってしまいそうでした」
思い出すだけで、身体の奥が疼き、秘裂からじわりと蜜が滲み出すのを感じる。その生々しい反応を、目の前のカメラが克明に記録しているのだ。
(記録されてる…私のこんな表情も、全部カメラに映ってるんだわ)
インタビューが一息つくと、楓は満足げに微笑んだ。そして、悪魔のような提案を口にする。
「ねえ、由美さん。私、別荘で見たあなたの土下座が、忘れられないの。もう一度、ここで見せてくれないかしら。このカメラの前で」
「え…?」
「あなたの土下座よ」楓は冷ややかに、しかし楽しそうに言った。
「あの時の、必死な姿…。とても美しかったわ。もう一度、このカメラの前でやってみて」
由美は息を呑んだ。
「そ、それは…」と、計算通りの躊躇を見せる。しかし内心は、歓喜に打ち震えていた。
(どうして楓さんはわかるの…? 私が一番してほしいことを…!)
「お願い…」楓が囁く。
「私たちの関係を続けるための、最初の『作品』作りに協力して」
由美はしばらく俯いていたが、やがて顔を上げ、決意を固めたように頷いた。彼女はソファから降り、カメラの正面の床に、ゆっくりと膝をついた。そして、あの日のように、深々と頭を下げた。
「…みなさん…。どうか、私を…好きなように、してください…」
その姿を、カメラのレンズが冷徹に捉えている。楓は立ち上がり、由美の前に来ると、その姿を品定めするように見下ろした。
「だめね。全然なってないわ」
楓は吐き捨てるように言った。
「もっと絶望感が足りない。やり直し」
由美は言われるままに、もう一度頭を下げる。
「だから、額が床についてないって言ってるでしょう?」
楓は履いていたストッキングのつま先で、由美の頭を優しく、しかし有無を言わせぬ力で床に押し付けた。
「ひっ…!」(気持ちいい…もっと…!)
「そうよ。それから、お尻をもっと上げて。あなたのその恥ずかしいところが、カメラに良く見えるように」
由美が言われるままに腰を浮かせると、スカートがめくれ、ピンクのレースの下着に包まれた臀部が露わになる。レンズが、その一点にズームしていくのが分かった。
「よくそんなことカメラの前でできるね」雛が感心したような、呆れたような声で呟いた。その声が、由美の興奮をさらに煽る。
「あ、スマホで写真も撮るね」
雛は由美に向かってスマートフォンを構えて、シャッターを押す。
カシャ、カシャ、と無機質な電子音が響く。
「由美さん、もっとこっちにお尻突き出して」雛がポージングを要求し、由美の後ろに回り込んで、さらに数枚写真を撮った。
屈辱。露出。支配。その全てが、由美にとっては極上の責めだった。脳が痺れ、思考が溶けていく。下腹部の疼きは限界に達し、もう何も考えられない。溢れ出した蜜で、下着はぐっしょりと濡れきっていた。
その時だった。由美の身体の芯で、何かが静かにはじけた。
「―――ッ!」
声にならない絶叫が、喉の奥で詰まる。ビクンッ、と背中が弓なりに反り、見えない糸で吊り上げられたかのように腰が激しく跳ねた。
カーペットを掴む指が白くなるほどに力を込め、足の指は固く、固く縮こまる。
行き場のない快感を逃がすように、膣肉がきゅう、きゅう、と空中で虚しく、しかし激しく収縮を繰り返す。 何も挿れられていない空洞が、恥辱だけで満たされ、痙攣していた。
視界が真っ白に点滅し、全身を貫く痙攣の波に、ただ身を任せることしかできない。
それは一度きりの大きな波ではなく、ビクッ、ビクンッ、と、内側から何度も何度も突き上げるような、絶え間ない痙攣の連鎖だった。
閉じた目尻から、一筋の涙がこめかみを伝い、唾液の糸が、微かに開いた唇の端で、銀色にきらめいた。
(雛: すごい…本当に、イってる…)
雛はカメラを構えながら、ごくりと息を呑んだ。ファインダー越しに見た、常に完璧な由美が、完全に崩れ落ち、汗ばんだ肌を上気させ、ただただ快感に喘ぐ姿。
その背徳的な美しさに、雛自身も股の奥がじわりと疼くのを感じた。
(楓: この子、本当に…凄いドMだわ)
楓は由美の反応を見て、自分の読みが正しかったことを確信する。そして、その反応を引き出せたことに、背筋が粟立つほどの喜びを感じていた。
(楓:ああ、なんて美しい顔をするのかしら、この子は。私の言葉一つで、羞恥に震え、瞳を潤ませて…。この気高いプライドが砕け散る瞬間を見るのが、たまらない。もっと、もっと追い詰めて、あなたの知らない、淫らな顔を引きずり出してあげる)
恍惚の波が引いた後、由美の口から漏れたのは、魂からの懇願だった。
「…おねが、いします…。なんでも…しますから…。すきな、ように…してください…」
(楓さん…私がドMなのを見抜いてくれて、本当にありがとう…!)
「よくできたわ」楓の声が、天からの啓示のように聞こえた。
「ご褒美に、何が欲しい?」
由美は涙で濡れた顔を上げ、震える声で答えた。
「…楓さんと、雛ちゃんの…キスが、欲しいです…」
楓と雛は顔を見合わせて微笑むと、床に膝をつき、由美の両側から顔を寄せた。
楓の唇が、雛の唇が、同時に由美の唇に触れる。楓の舌が上唇を、雛の舌が下唇をなぞり、ゆっくりと口内に侵入してくる。二人の舌が由美の舌に絡みつき、唾液が混じり合う。その常軌を逸した甘美なキスを、カメラが克明に記録していく。
由美は、これが新たな契約の儀式なのだと理解した。自分はもう、後戻りできない場所に来てしまった。そして、その事実に、心の底から歓喜している自分に気づいていた。
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