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【第一話】
紫煙に巻かれる俺たちは.II
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「ど、童貞って……」
信じられない。仲間の発言も、どうして自分がここまで仲間に対して無防備でいられるのかも。
どうしてだ? 高校までに付き合っていた彼女たちに対しても、俺はしっかり愛情を注いでいたはずなのに。
いざエッチな雰囲気になると、及び腰になり、いつもキスどまりで終わっていた。
そのせいで「剛って本当はわたしのこと好きじゃないんでしょ」と言われて振られたことも一度や二度ではない。
それなのに、数えるほどしか話したことの無い男相手に、なぜここまで欲情しているのか。
キスだけで腰が抜けてしまった俺は、ソファから立ち上がることもままならなかった。
「あー。立てなくなっちゃった? はい。手、貸して? 本当は僕が彼方くんをお姫様抱っこして運べたら良いんだけど、なんてね」
このまま手を取ればどうなるか。それが分からない程、俺は子供ではない。
けれど差し伸べられた手を振り払うことも出来なかった。
「……仲間、もしかして俺の事バカにしてる?」
俺は強がって見せるけど、仲間は目を細めるだけで、否定も肯定もしなかった。
「そう見える?」
「あぁ。余裕綽々って感じ」
「あはは。そんなことは無いんだけどね」
仲間の手を取ると、まるで幼子を移動させるかのような手つきで丁寧にベッドへ連れていかれた後、そのまま俺を縁へと座らせた。
ぶらんぶらんと足を下に垂らしていると、あろうことか仲間はそんな俺の股の内側に入り、パンツのベルトを緩めて見せた。
「はっ!? お前、何してるんだ!?」
気付いた時にはベルトは外され、前を寛がされていた。
あまりの手早さに、俺は一周回って感心してしまったくらいだ。
って、そうじゃないだろ!
仲間を股の間から追い出そうとすべく太ももを閉じようとするが、彼の手ががっちり俺の足を抑えてるためびくともしない。
こいつ、慣れてる。力が強いわけではないのに、確実に足を固定する方法を熟知している。
「おい、仲間、マジでやめろって!」
流石にここまでやられると黙っていられない。軽く熱を持つことを揶揄われるくらいならまだ良かった。
でもこの先は、絶対にダメだろ。仲間が許しても、俺の矜持が許さない。
「でもこれ、どうするの? 治まるの待つより、抜いちゃった方が早くない?」
そう言うと仲間は、じわじわと勃ち上がる俺自身を下着越しにつついた。
正直に言って辛い。でもここで仲間に押し負けてしまったら、俺の今まで守り抜いて来た誓いの意味がなくなる。
今ならまだ理性が保てるギリギリの範囲だ。
「ちょっ! 本当に触んなって……! 俺、トイレ、行ってくる」
「良いよ、強がらなくて。そうだ、最初は口だけのほうが良いかな。それなら性差ないでしょ?」
仲間はわざと俺を煽る様に、人差し指を親指で輪を作り、その中へ舌を伸ばして見せた。
男同士でエロ本を見てるとき、その仕草がエロい! なんて盛り上がってたけど、俺はいまいちピンと来ていなかった。
けれど今ならわかる。スッゲー、エロい。
「く、口だけって!」
「あー。でもそれじゃあ実践授業にはならないか。途中で中折れしちゃったら大変だもんね? 勃起力を高めるトレーニングもしていかないと」
仲間はいたって真面目に俺の股間を見つめるが、話している内容は全く分からない。
でも本能が告げている。このままでは仲間とエッチなことをしてしまうと。
最後の警鐘が鳴る。流されるな、俺。大丈夫だ、性行為は怖いものだと、ずっと思ってきたはずだ。
「本当にごめん、マジで無理だから、離れてくれ」
「そうだね。……確かに揶揄いすぎたかも。ごめんね」
絞るような声で仲間に懇願すれば、流石に彼も一歩引くようだった。
助かった。これで俺は貞操を守れる。そう思っていたのだが。
「でもさ、彼方くん。そんな表情で言われても説得力全くないよ?」
「そんな顔、って……?」
「顔を真っ赤に染めて、瞳も熱っぽく潤ませてさ。口元だってだらしなく開いてる。気が付いてないかもしれないけど、もうとっくに君の負けだよ」
「負けって……ちょっ! ストップ! 仲間!」
仲間を傷つけてでも、この場を納めるべきだ。そう思って突き放すようなことを言ったのに、俺の負けって。一体どんな顔をしてたんだ?
「僕、本当に嫌がっている人にはこういう事したくないんだけどさ。彼方くんはこの先を知りたがってるように見えるな。絶対に無理だと思うなら、僕の事を突き飛ばすなり蹴るなり抵抗して欲しい。……君に、そんなことできる?」
「でき……」
るわけないだろ。と真っ先に出てきて、俺はかぶりを振る。
嫌だと思うのに、拒むことはできない。
もう嫌だ。何も考えたくない。俺の固定観念とか、常識とか。そういうものがガラガラと音を立てて崩れ去る。
「うん。彼方くんはそんな事できないって、信じてたよ。……さ、茶番が長くなったね。実践授業、始めよっか」
涙で視界がじわりと滲む。それなのに俺は、これ以上仲間の事を突き放すことは出来なかった。
信じられない。仲間の発言も、どうして自分がここまで仲間に対して無防備でいられるのかも。
どうしてだ? 高校までに付き合っていた彼女たちに対しても、俺はしっかり愛情を注いでいたはずなのに。
いざエッチな雰囲気になると、及び腰になり、いつもキスどまりで終わっていた。
そのせいで「剛って本当はわたしのこと好きじゃないんでしょ」と言われて振られたことも一度や二度ではない。
それなのに、数えるほどしか話したことの無い男相手に、なぜここまで欲情しているのか。
キスだけで腰が抜けてしまった俺は、ソファから立ち上がることもままならなかった。
「あー。立てなくなっちゃった? はい。手、貸して? 本当は僕が彼方くんをお姫様抱っこして運べたら良いんだけど、なんてね」
このまま手を取ればどうなるか。それが分からない程、俺は子供ではない。
けれど差し伸べられた手を振り払うことも出来なかった。
「……仲間、もしかして俺の事バカにしてる?」
俺は強がって見せるけど、仲間は目を細めるだけで、否定も肯定もしなかった。
「そう見える?」
「あぁ。余裕綽々って感じ」
「あはは。そんなことは無いんだけどね」
仲間の手を取ると、まるで幼子を移動させるかのような手つきで丁寧にベッドへ連れていかれた後、そのまま俺を縁へと座らせた。
ぶらんぶらんと足を下に垂らしていると、あろうことか仲間はそんな俺の股の内側に入り、パンツのベルトを緩めて見せた。
「はっ!? お前、何してるんだ!?」
気付いた時にはベルトは外され、前を寛がされていた。
あまりの手早さに、俺は一周回って感心してしまったくらいだ。
って、そうじゃないだろ!
仲間を股の間から追い出そうとすべく太ももを閉じようとするが、彼の手ががっちり俺の足を抑えてるためびくともしない。
こいつ、慣れてる。力が強いわけではないのに、確実に足を固定する方法を熟知している。
「おい、仲間、マジでやめろって!」
流石にここまでやられると黙っていられない。軽く熱を持つことを揶揄われるくらいならまだ良かった。
でもこの先は、絶対にダメだろ。仲間が許しても、俺の矜持が許さない。
「でもこれ、どうするの? 治まるの待つより、抜いちゃった方が早くない?」
そう言うと仲間は、じわじわと勃ち上がる俺自身を下着越しにつついた。
正直に言って辛い。でもここで仲間に押し負けてしまったら、俺の今まで守り抜いて来た誓いの意味がなくなる。
今ならまだ理性が保てるギリギリの範囲だ。
「ちょっ! 本当に触んなって……! 俺、トイレ、行ってくる」
「良いよ、強がらなくて。そうだ、最初は口だけのほうが良いかな。それなら性差ないでしょ?」
仲間はわざと俺を煽る様に、人差し指を親指で輪を作り、その中へ舌を伸ばして見せた。
男同士でエロ本を見てるとき、その仕草がエロい! なんて盛り上がってたけど、俺はいまいちピンと来ていなかった。
けれど今ならわかる。スッゲー、エロい。
「く、口だけって!」
「あー。でもそれじゃあ実践授業にはならないか。途中で中折れしちゃったら大変だもんね? 勃起力を高めるトレーニングもしていかないと」
仲間はいたって真面目に俺の股間を見つめるが、話している内容は全く分からない。
でも本能が告げている。このままでは仲間とエッチなことをしてしまうと。
最後の警鐘が鳴る。流されるな、俺。大丈夫だ、性行為は怖いものだと、ずっと思ってきたはずだ。
「本当にごめん、マジで無理だから、離れてくれ」
「そうだね。……確かに揶揄いすぎたかも。ごめんね」
絞るような声で仲間に懇願すれば、流石に彼も一歩引くようだった。
助かった。これで俺は貞操を守れる。そう思っていたのだが。
「でもさ、彼方くん。そんな表情で言われても説得力全くないよ?」
「そんな顔、って……?」
「顔を真っ赤に染めて、瞳も熱っぽく潤ませてさ。口元だってだらしなく開いてる。気が付いてないかもしれないけど、もうとっくに君の負けだよ」
「負けって……ちょっ! ストップ! 仲間!」
仲間を傷つけてでも、この場を納めるべきだ。そう思って突き放すようなことを言ったのに、俺の負けって。一体どんな顔をしてたんだ?
「僕、本当に嫌がっている人にはこういう事したくないんだけどさ。彼方くんはこの先を知りたがってるように見えるな。絶対に無理だと思うなら、僕の事を突き飛ばすなり蹴るなり抵抗して欲しい。……君に、そんなことできる?」
「でき……」
るわけないだろ。と真っ先に出てきて、俺はかぶりを振る。
嫌だと思うのに、拒むことはできない。
もう嫌だ。何も考えたくない。俺の固定観念とか、常識とか。そういうものがガラガラと音を立てて崩れ去る。
「うん。彼方くんはそんな事できないって、信じてたよ。……さ、茶番が長くなったね。実践授業、始めよっか」
涙で視界がじわりと滲む。それなのに俺は、これ以上仲間の事を突き放すことは出来なかった。
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