55 / 56
10【:tail fin】
10-5
しおりを挟む「そ……っか。うん。約束した……な。もう、やめるよ。」
そんな独り言を「哀れだな」と茶化す声はもう聞こえない。
「今さら、もう一回夢を追いかけてみる……なんて言ったら笑うか?」
この質問を誰に投げかければいいのかを、俺はやっと気付くことが出来た。
ソラと交わした約束が俺のもとから逃げて行かないように、影のように伸びるその尾ヒレをしっかりと踏みつける。
「何もできないままの自分をやめて、一人でも多く助けるんだ。こんな歳になってから始めるなんて、笑う奴もいるかもしれない。また手が届かなかったことに後悔するかもしれない。それでも戦う……
──そんな、俺の物語を始めてみるよ……」
見上げた青空は雲に塗れ、不揃いな形に切り取られていた。心に秘めていたそんな想いを、独り言で宣言するなんて馬鹿みたいなのに、何処か晴れてゆくような心に不思議と笑みが零れていた。目に映る光景は、探していたあの時とはあまりに違う青空だけど、変に希望に満ちている。
この俺にできる事は限られていて、手の届く範囲も僅かだ。その中から俺にでも出来そうな所で選んだ。そんな風に折り合いをつけてみつけた夢だったけれど、それは、俺が、俺さえ努力すれば掴み取れる夢で、今、その一歩をやっと踏み出す。
踏みつけていた約束の尾ヒレを今度は引きずりながら、ソラに届けられないまま終わった想いを決して忘れないと誓う。
「できたらさ、もう一度会って話がしたい……な。」
もう一度ソラに会えたら、あの日の答え合わせがしたい。間違い続けてしまった日々の中で、本当は何を想っていたのかを確かめ合いたい。いや、それだけじゃないな……
また希望を抱けたことを、今度は必死で追いかける夢の話を、そんな未来をソラと語り合いたいんだ。今なら、これからならば、あの時よりも上手く言葉にできる気がするから……
少しずつ短くなってゆく煙草に視線を落とし、その先に揺れる煙の規則性を探す。苦みのある香りが、鼻先をかすめながら消えた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる