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case2:白金恵太様
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しおりを挟む「ここに座ってればいいんですかっ?」
彼は待ちきれないといった様子でソワソワしている。ダボダボの服だし楽そうだから、お着替えの案内はしなかった。
「こちらへどうぞ……」
次の方のために用意しておいたカルテを手に、彼をリクライニングソファーへ座るように促すと、いつも通りカウンセリングを始めようとした。
「この間のお客さん、帰る時は別人みたくなってましたよね?」
突然そう言われて、一瞬息と心臓が止まった気がする。
「俺の叔母さん……あっ、ここのオーナーね?よくお取り寄せスイーツみたいの持ってるじゃないですか?俺、あの日近くまで来てたんで、何か恵んでもらえるかな?って思って寄ったら……この部屋、ちょっと開いてて……」
あの日か……。一人勤務だったから難を逃れたと思ってすっかり安心してたのに。難どころか、災難。一番見られてはいけないタイプの奴に見つかってしまった様な気がする。
「ちょっと覗かせてもらったら、オネーサン。あっ、あかりさんでしたっけ?が、すごいエロい……じゃない。そうっ!ピアノを弾いてるみたいで綺麗で……だから俺、悪いとは思ったんですけど、そのまま見てたくなっちゃったんですヨ」
綺麗だなんて、久しく……というか、面と向かって言われた事なんかなかったから、うっかり喜んでしまいそうになる。
「んで、結局最後まで見ちゃって、お客さんが立ち上がったら……あーあれ、来る前に道案内したサラリーマンだわって気付いたんっすよね。でも、なんか体型もめっちゃガッチリになって、しかも時計が、めっちゃ高いやつに変わってたんすよ?俺、時計も好きだから、必ず腕時計をチェックしちゃうんですけど……付け替えたとしても、値段差ありすぎだろっ!って。……そのうちに、道を教えた時は全然知らない人だと思ったはずなのに、急に知ってる人な気がして来て……」
あ、やばい。これは絶対やばい展開っぽい。
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