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hana4

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case2:白金恵太様

2-12

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 私服に着替え、纏めていた髪をおろすと、今日の「セラピスト・橘あかり」はもうおしまい。と思ったその時……

「あかりさーん。何で助けてくれなかったんですか?」

 彼は戻って来るなりそう言うと、バタンとソファーに倒れこんだ。
 そこは今まさに掃除を終えて、消毒も済ませた後なのだけど。

「ちょっと……」

 図々しい上に、タイミングまで最悪。一応さっきまではお客様だったけど、これはさすがに怒ってもいいよね?
 そう思って近寄ったものの、彼は想像以上にヨレヨレで、すでに息も絶え絶え……

 この様子じゃオーナーにこっぴどくやられたな?それにしても、締め上げられた感がハンパ無い。ああ、こんな様子じゃ、責めるに責めれないじゃん……

「あの、お会計の件なのですが……」
「ああ、そっか。どうなりました?」
「実はですね……僕、その、以前から叔母にはかなり助けて頂いてまして……その俺…あっ、僕、いま無職なもんで……」

 あーあ。何だろう?負の連鎖確定?

「なので今日はまぁ、いつもにも増して……それはそれは恐ろしい……」

 彼はその惨劇を語り始め、想像を絶するその様子に私まで恐れおののいていた。

 すると、メデューサかと見紛う程の影が、彼の後ろに……

 美魔女が静かに怒ることほど、恐いことはないんだなと確信した。

 私はこの先何があろうと、オーナーだけは敵に回すまいと心に決めたし、さっきまでは面倒でしかなかった彼を、思わず匿ってあげたくなってしまった。

「う・し・ろ……」
 
 口パクでそう彼に知らせたけど、時すでに遅し。
 その気配を察知した彼が、スローモーションで振り返る……

 もしこれが漫画だったら、間違えなく卒倒する場面。いやむしろ卒倒できたら、彼はどんなに楽だっただろう……

「これ以上ウチのあかりちゃんを困らせるつもり?」

 その形相からは想像のつかない優しい囁きが、より恐さを増している。彼は全身を震わせ、全長十センチ位に縮んでしまった。

「……はい。ホント、スイマセン」

 接客の参考にしたいほどの小声で彼が呟く。

「ごめんなさいね、あかりちゃん。コレには思い知らせておいたから。ふふふっ……」

 はい。勿論それは承知しております。

「あっ……私はもう、大丈夫なんで……そこら辺で、ホントに大丈夫です」

 彼だけでなく、私までバンビの再来とばかりに震え出したのを見て、オーナーは嬉しそうに笑っていた。けど、その笑顔が、逆に、恐すぎる。

「あら、そう?でもねえ、お給料に関わっちゃう事だし……私が立て替えてもいいんだけど。そうするとコレの為にもならないデショ?すぐに定職に就けるとも思えないし……」

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