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チエコ先生とキクちゃんの水平思考クイズ【20】『ノンフィクション』

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【問題】

  卓越した画力と本格的なSFストーリーによって、知名度ならび人気急上昇中の男性漫画家さんがいました。
 そんなある日のこと、彼の自宅を訪ねてきた担当編集者さんが、見るも無残な彼の遺体を発見しました。
 現場の床一面は、彼自身の血によって漫画のベタのごとく赤く塗りつぶされ、まさに酸鼻を極める状態の遺体からは内臓までもが持ち去られており、彼が何者かによって殺害されたのは明らかです。
 しかし、物取りの犯行に結びつく痕跡は残されておらず、殺害推定時刻の直前に何人かの言い争う声を聞いたとの近隣住民の証言もありました。
 さて、漫画家さんはいったい誰に殺害されたのでしょうか?


【質問と解答】

キクちゃん : 今回は人気漫画家さんの惨殺事件ですか……怖いです。漫画家さんは知名度と人気急上昇中とありますが、やっぱりいいことばかりじゃありませんね。成功している有名人で、なおかつお金を持っていると知られたら、変な人たちに目を付けられてしまう可能性だって急上昇してしまいますし……でも、今回の事件は金銭目的ではないとありますね。まず、犯人は漫画の読者でしたか?

チエコ先生 : YES。

キクちゃん : 読者は読者でも、どういった種類の読者であるのかが問題です。殺意を抱いたうえ、実際に実行してしまったことからして、犯人は漫画家さんを相当に憎んでいたとしか……犯人は漫画家さんのアンチですか?

チエコ先生 : NO。

キクちゃん : ……ということは、アンチの逆ですね。犯人は漫画家さんのファンですか?

チエコ先生 : NO。

キクちゃん : 熱狂的ファンの身勝手で行き過ぎた思いが犯行に繋がったのではないかと思ったんですが、違いましたか…………そうなると、漫画家さんは私生活において、何らかのトラブルを抱えてましたか?

チエコ先生 : NO。漫画家さんが殺害されたのは、やはり彼の作品が原因よ。

キクちゃん : 作品が原因なんですね。でも、犯人は漫画の読者ではあるけれども、アンチでもなければファンでもない。どういうことだろう? うーん、うーん……

チエコ先生 : 悩んでいるキクちゃんにヒントをあげるわね。今回の問題のタイトル、漫画のジャンル、そして……”遺体の状況”をよく推察してみて。

キクちゃん : タイトルは『ノンフィクション』で、漫画のジャンルは『本格的SFストーリー』ですよね。ん? この2点には矛盾がありますよ。SFって空想的なもののはずですし……さらに、遺体の状況は『まさに酸鼻を極める状態の遺体からは内臓までもが持ち去られており……』とあって……あ! まさか、これって”キャトルミューティレーション”ですか?!

チエコ先生 : YES。そうよ、その調子よ。

キクちゃん : ということは、漫画家さんは宇宙人に殺害されたんですね?!

チエコ先生 : YES。正解よ。ちなみに、漫画家さんが描いていた『本格的SFストーリー』だけど、それに登場する”悪役”は、とある宇宙人たちをそのままモデルにしたものだった。しかも、作中において相当に残酷な所業を行わせており、まさに名誉棄損ものの描き方をしていたの。だから、漫画を読んだ宇宙人たちが漫画家さんのところに直談判に来たというわけなのよ。

『ワレワレモアナタノマンガガフィクションダトイウコトハリカイシテイル。ダガアクヤクノモデルトナッテイルワレワレノエガキカタガアマリニモヒドイ。アンチデモファンデモナクコウヘインメデハンダンシテモソウオモワザルヲエナイホドニ。アイテノイヤガルコトヲシテハイケナイ。アイテノメイヨヲキズツケテハイケナイ。ソレハチキュウジンモウチュウジンモオナジ。ヨッテアナタハイマスグレンサイヲチュウシスベキダ。』
【訳】
 我々もあなたの漫画がフィクションだということは理解している。だが悪役のモデルとなっている我々の描き方があまりにも酷い。アンチでもファンでもなく公平な目で判断してもそう思わざるを得ないほどに。相手の嫌がることをしてはいけない。相手の名誉を傷つけてはいけない。それは地球人も宇宙人も同じ。よってあなたはいますぐ連載を中止すべきだ。

 という抗議を受けたけれど、漫画家さんは全く取り合わず、「あーはいはい(笑)」といった具合に、宇宙人たちを追い返そうとしたの。だから、怒りを買って殺されてしまった。

キクちゃん : 宇宙人たちに詰め寄られても全く取り合わないとか、どれだけ肝が太い人だったんですか? でも、本格的で”残酷”なSFストーリーは現実のものとなってしまったんですね。

チエコ先生 : そう、『ノンフィクション』となってしまったのよ。


(完👽)
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