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どんな姿になっても君を愛す PART3
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【問題】
インドア派で物静か、几帳面な性格の冬彦さんには、彼とは全く正反対の性格の恋人がいました。
ある日のこと、冬彦さんは自分が不治の病を患っていることを知りました。
自分に、いいえ、自分たち恋人に残された時間はあとわずかです。
苦悩する冬彦さんを見つけた人外の存在が、彼に取引を持ち掛けてきました。
「お前の姿を変えてやろう。お前はもう病に苦しむことはないし、病に苦しんだ末の死へと至ることもない。ただ、お前の運命はお前が愛する女に委ねられることになるがな」
冬彦さんは、取引を行いました。
僕は”どんな姿になっても君を愛す”。愛し続けるから、と。
そして、冬彦さんは人間ではなくなりました。
水には弱く、火にはもっと弱い姿とはなってしまいましたが、これでずっと彼女の側にいることができます。
たとえ彼女が他の誰かと愛し合い、家庭を持ったとしても。
そして彼女が天寿を全うした後であっても、冬彦さんは運と状態が良ければこの世にしばらくの間は残ることができるかもしれません。
けれども、冬彦さんは彼女にあっさりと捨てられてしまいました。
さて、冬彦さんはいったい何に変わったのでしょうか?
【質問と解答】
キクちゃん : 今回の問題は、前の2問とは違って、男性側の姿が変わってしまったんですね。それも、自ら姿を変えることを選んだと……でも、冬彦さんはいったい何に変わってしまったんでしょうか? 「冬彦さんは彼女にあっさりと捨てられてしまいました。」とありますから、彼女が生理的に受け付けない何かに変わった可能性が高いですよね。えーと、例えば何かの妖怪の姿になったんでしょうか?
チエコ先生 : NO。でも、”生理的に受け付けない”というは良い線言っているわ。
キクちゃん : ”生理的に受け付けない”、つまりは彼女が絶対に無理って思う何かになったということですよね。うーん……問題文を、前回みたいに人外の存在の言葉を、もう一度、特によく読んでみます。「お前の姿を変えてやろう。お前はもう病に苦しむことはないし、病に苦しんだ末の死へと至ることもない。ただ、お前の運命はお前が愛する女に委ねられることになるがな」とありますね。姿が変わった後の冬彦さんの運命は彼女に委ねられてしまう……彼女が冬彦さんとの関係の主導権を握ることになるんですよね。これがなんだかひっかかるなぁ……主導権というよりも何だか所有権みたいな気がしてきています。冬彦さんは生物ではなく、何かの物に変わったんでしょうか?
チエコ先生 : YES。冴えてるじゃない。そうよ、その調子よ。
キクちゃん : わあ! ありがとうございます! 「水には弱く、火にはもっと弱い姿とはなってしまいましたが、彼女の近くにずっといることができます。」ってありますよね。もしかして、冬彦さんはロボットになったんじゃないでしょうか? ロボットって水の方に弱そうですけど。そのロボットは冬彦さんの心を持っているとはいえ、彼女はそれを生理的に受け入れられず、スクラップにしてしまったと……
チエコ先生 : NO。キクちゃん、冒頭の冬彦さんについての紹介文を考察してみて。
キクちゃん : 「インドア派で物静か、几帳面な性格の冬彦さんには、彼とは全く正反対の性格の恋人がいました。」ですね。ということは、彼女は”アウトドア派で賑やか、大雑把な性格”なんですよね。でも、この一文からはよく分からないなぁ、うーん、うーん……
チエコ先生 : 悩んでいるキクちゃんに特大ヒントをあげるわね。インドア派の人の趣味と言えば、何が思い浮かぶ?
キクちゃん : そうですね。凝った料理を作るとかゲームを極めるとか、映画鑑賞、それにやっぱり定番は読書ですよね。他にはDIYとか楽器演奏とかでしょうか?
チエコ先生 : 今、キクちゃんが言った中に正解があったわよ。
キクちゃん : え? 本当ですか? ということは、私が言った中で「水には弱く、火にはもっと弱い」ものと言えば…………やっと分かりました。本ですね? 冬彦さんは、本になったんですね
チエコ先生 : YES。正解よ。「僕はずっと君の側にいたい。だから僕は本になる。君が僕を手に取り、その頁をめくってさえくれれば、君はいつでも僕に会える。そして僕は物語を紡いでいこう。僕が愛する君への物語を」と、実は密かにポエマーで読書が趣味だった冬彦さんは自ら望んで本の姿になったの。多少の経年劣化は仕方ないとしても、これで彼女の側にずっといられると思ってね。でも、彼女の反応は違っていたわ。「え? 本? だってェ、アタシィ、本とか最後まで読んだこと一度もないしィ。そもそも、アタシって文字見ているだけで、頭痛くなってきちゃう人だしィ。なんか生理的に受け付けないっていうかァ、無理無理ィ。そもそも本になったとか超ワケ分かんないィ。分別とかリサイクルとかァ、アタシ、超めんどくさい人だしィ」とゴミ箱にポイッと捨てられてしまったの。
キクちゃん : ……冬彦さんは燃えるゴミとして、生ゴミとかと一緒くたにして捨てられる最期を迎えたわけですね。本に対する態度が全く正反対なばかりか、知的レベルにも大きな差がありそうな冬彦さんと彼女が恋人として付き合っていた……付き合えていたことも不思議です。
チエコ先生 : そうね。冬彦さんは本が好きで大切にするタイプだったんでしょうけど、冬彦さんも愛する彼女の人となりを知っていたなら、物は物でも別の物に姿を変えてもらっていたなら、こんなはずじゃなかったというこの悲劇は回避できたはずよ。例えば、いかにも値打ちものっぽくて、そう簡単に捨てられることのない時計や宝石なんかにね。
(完)
インドア派で物静か、几帳面な性格の冬彦さんには、彼とは全く正反対の性格の恋人がいました。
ある日のこと、冬彦さんは自分が不治の病を患っていることを知りました。
自分に、いいえ、自分たち恋人に残された時間はあとわずかです。
苦悩する冬彦さんを見つけた人外の存在が、彼に取引を持ち掛けてきました。
「お前の姿を変えてやろう。お前はもう病に苦しむことはないし、病に苦しんだ末の死へと至ることもない。ただ、お前の運命はお前が愛する女に委ねられることになるがな」
冬彦さんは、取引を行いました。
僕は”どんな姿になっても君を愛す”。愛し続けるから、と。
そして、冬彦さんは人間ではなくなりました。
水には弱く、火にはもっと弱い姿とはなってしまいましたが、これでずっと彼女の側にいることができます。
たとえ彼女が他の誰かと愛し合い、家庭を持ったとしても。
そして彼女が天寿を全うした後であっても、冬彦さんは運と状態が良ければこの世にしばらくの間は残ることができるかもしれません。
けれども、冬彦さんは彼女にあっさりと捨てられてしまいました。
さて、冬彦さんはいったい何に変わったのでしょうか?
【質問と解答】
キクちゃん : 今回の問題は、前の2問とは違って、男性側の姿が変わってしまったんですね。それも、自ら姿を変えることを選んだと……でも、冬彦さんはいったい何に変わってしまったんでしょうか? 「冬彦さんは彼女にあっさりと捨てられてしまいました。」とありますから、彼女が生理的に受け付けない何かに変わった可能性が高いですよね。えーと、例えば何かの妖怪の姿になったんでしょうか?
チエコ先生 : NO。でも、”生理的に受け付けない”というは良い線言っているわ。
キクちゃん : ”生理的に受け付けない”、つまりは彼女が絶対に無理って思う何かになったということですよね。うーん……問題文を、前回みたいに人外の存在の言葉を、もう一度、特によく読んでみます。「お前の姿を変えてやろう。お前はもう病に苦しむことはないし、病に苦しんだ末の死へと至ることもない。ただ、お前の運命はお前が愛する女に委ねられることになるがな」とありますね。姿が変わった後の冬彦さんの運命は彼女に委ねられてしまう……彼女が冬彦さんとの関係の主導権を握ることになるんですよね。これがなんだかひっかかるなぁ……主導権というよりも何だか所有権みたいな気がしてきています。冬彦さんは生物ではなく、何かの物に変わったんでしょうか?
チエコ先生 : YES。冴えてるじゃない。そうよ、その調子よ。
キクちゃん : わあ! ありがとうございます! 「水には弱く、火にはもっと弱い姿とはなってしまいましたが、彼女の近くにずっといることができます。」ってありますよね。もしかして、冬彦さんはロボットになったんじゃないでしょうか? ロボットって水の方に弱そうですけど。そのロボットは冬彦さんの心を持っているとはいえ、彼女はそれを生理的に受け入れられず、スクラップにしてしまったと……
チエコ先生 : NO。キクちゃん、冒頭の冬彦さんについての紹介文を考察してみて。
キクちゃん : 「インドア派で物静か、几帳面な性格の冬彦さんには、彼とは全く正反対の性格の恋人がいました。」ですね。ということは、彼女は”アウトドア派で賑やか、大雑把な性格”なんですよね。でも、この一文からはよく分からないなぁ、うーん、うーん……
チエコ先生 : 悩んでいるキクちゃんに特大ヒントをあげるわね。インドア派の人の趣味と言えば、何が思い浮かぶ?
キクちゃん : そうですね。凝った料理を作るとかゲームを極めるとか、映画鑑賞、それにやっぱり定番は読書ですよね。他にはDIYとか楽器演奏とかでしょうか?
チエコ先生 : 今、キクちゃんが言った中に正解があったわよ。
キクちゃん : え? 本当ですか? ということは、私が言った中で「水には弱く、火にはもっと弱い」ものと言えば…………やっと分かりました。本ですね? 冬彦さんは、本になったんですね
チエコ先生 : YES。正解よ。「僕はずっと君の側にいたい。だから僕は本になる。君が僕を手に取り、その頁をめくってさえくれれば、君はいつでも僕に会える。そして僕は物語を紡いでいこう。僕が愛する君への物語を」と、実は密かにポエマーで読書が趣味だった冬彦さんは自ら望んで本の姿になったの。多少の経年劣化は仕方ないとしても、これで彼女の側にずっといられると思ってね。でも、彼女の反応は違っていたわ。「え? 本? だってェ、アタシィ、本とか最後まで読んだこと一度もないしィ。そもそも、アタシって文字見ているだけで、頭痛くなってきちゃう人だしィ。なんか生理的に受け付けないっていうかァ、無理無理ィ。そもそも本になったとか超ワケ分かんないィ。分別とかリサイクルとかァ、アタシ、超めんどくさい人だしィ」とゴミ箱にポイッと捨てられてしまったの。
キクちゃん : ……冬彦さんは燃えるゴミとして、生ゴミとかと一緒くたにして捨てられる最期を迎えたわけですね。本に対する態度が全く正反対なばかりか、知的レベルにも大きな差がありそうな冬彦さんと彼女が恋人として付き合っていた……付き合えていたことも不思議です。
チエコ先生 : そうね。冬彦さんは本が好きで大切にするタイプだったんでしょうけど、冬彦さんも愛する彼女の人となりを知っていたなら、物は物でも別の物に姿を変えてもらっていたなら、こんなはずじゃなかったというこの悲劇は回避できたはずよ。例えば、いかにも値打ちものっぽくて、そう簡単に捨てられることのない時計や宝石なんかにね。
(完)
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