1 / 1
思い通りにはいかない
しおりを挟む
風花(フウカ)は、若くて美しかった。
彼女は「若さ」と「美しさ」という二大武器を持っているばかりか、今の生活には不満も陰りも染みもなく、まさに”この世の春を謳歌している”と形容できるほど、何もかも順風満帆で満たされていた。
そんな彼女が一週間後に自らこの世を去るつもりであったなんて、誰が思ったであろうか?
もうすぐ私は若く美しいまま世を去る。
皆の記憶に、この若く美しいままの姿で永遠に留められる。
お葬式でお棺の中の私の顔を見た人たちは口を揃えて言うのよ。
「なんて綺麗で安らかな死に顔なんだろう? まるで眠っているみたい」って。
当然、どうして自殺なんか……って声もあがるだろうけど、私は自分の最期を私自身の意志と、私自身が選んだ時機で決めたいだけのこと。
病気や事故、それに殺人とか、私自身が決めたわけじゃない最期を迎えるなんて私の主義に反するわ。
風花の意志は固かった。
だが、思い通りにはいかない。
そして、これに限ってはやり直すこともできない。
風花がその人生最後の大奮発をして、純白のロングワンピースを購入した帰り道のことだ。
このワンピースは私の最期を飾るにふさわしい衣装だわ。
それと最期の日までお肌のお手入れは念入りにしなきゃ。
お葬式で、私の安らかで綺麗な死に顔を、皆に見てもらいたいもの。
ついにあと二日後ね……二日後に私は睡眠薬を口に含んでガスの元栓を……
計画通りの最期を遂げた自分の傷一つない遺体を想像すると、風花は自然と笑顔になってしまう。
そんな風花が渡った横断歩道の信号は、確かに青だった。
彼女に過失は一切なかった。
しかし、その青信号をガン無視して突っ込んできたトラックに、風花は撥ね飛ばされた。
風花の体も、風花のバッグも、風花が一度も着ることはなかったワンピースの入ったショッパーも宙を舞う。
風花は、”その顔面から”アスファルトへと叩き付けられた。
(完)
【後書き】
本作ですが、自殺を推奨ならび讃美する意図はございません。
また、病死した方や事故死した方、殺人の被害に遭って亡くなった方を貶める意図もございません。
不快に思われる箇所も多々あるかと思いますが、表現の一環として、何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。
彼女は「若さ」と「美しさ」という二大武器を持っているばかりか、今の生活には不満も陰りも染みもなく、まさに”この世の春を謳歌している”と形容できるほど、何もかも順風満帆で満たされていた。
そんな彼女が一週間後に自らこの世を去るつもりであったなんて、誰が思ったであろうか?
もうすぐ私は若く美しいまま世を去る。
皆の記憶に、この若く美しいままの姿で永遠に留められる。
お葬式でお棺の中の私の顔を見た人たちは口を揃えて言うのよ。
「なんて綺麗で安らかな死に顔なんだろう? まるで眠っているみたい」って。
当然、どうして自殺なんか……って声もあがるだろうけど、私は自分の最期を私自身の意志と、私自身が選んだ時機で決めたいだけのこと。
病気や事故、それに殺人とか、私自身が決めたわけじゃない最期を迎えるなんて私の主義に反するわ。
風花の意志は固かった。
だが、思い通りにはいかない。
そして、これに限ってはやり直すこともできない。
風花がその人生最後の大奮発をして、純白のロングワンピースを購入した帰り道のことだ。
このワンピースは私の最期を飾るにふさわしい衣装だわ。
それと最期の日までお肌のお手入れは念入りにしなきゃ。
お葬式で、私の安らかで綺麗な死に顔を、皆に見てもらいたいもの。
ついにあと二日後ね……二日後に私は睡眠薬を口に含んでガスの元栓を……
計画通りの最期を遂げた自分の傷一つない遺体を想像すると、風花は自然と笑顔になってしまう。
そんな風花が渡った横断歩道の信号は、確かに青だった。
彼女に過失は一切なかった。
しかし、その青信号をガン無視して突っ込んできたトラックに、風花は撥ね飛ばされた。
風花の体も、風花のバッグも、風花が一度も着ることはなかったワンピースの入ったショッパーも宙を舞う。
風花は、”その顔面から”アスファルトへと叩き付けられた。
(完)
【後書き】
本作ですが、自殺を推奨ならび讃美する意図はございません。
また、病死した方や事故死した方、殺人の被害に遭って亡くなった方を貶める意図もございません。
不快に思われる箇所も多々あるかと思いますが、表現の一環として、何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
優秀な婚約者が去った後の世界
月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。
パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。
このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。
【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。
ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。
彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。
婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。
そして迎えた学園卒業パーティー。
ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。
ガッツポーズを決めるリリアンヌ。
そのままアレックスに飛び込むかと思いきや――
彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。
何故、わたくしだけが貴方の事を特別視していると思われるのですか?
ラララキヲ
ファンタジー
王家主催の夜会で婚約者以外の令嬢をエスコートした侯爵令息は、突然自分の婚約者である伯爵令嬢に婚約破棄を宣言した。
それを受けて婚約者の伯爵令嬢は自分の婚約者に聞き返す。
「返事……ですか?わたくしは何を言えばいいのでしょうか?」
侯爵令息の胸に抱かれる子爵令嬢も一緒になって婚約破棄を告げられた令嬢を責め立てる。しかし伯爵令嬢は首を傾げて問返す。
「何故わたくしが嫉妬すると思われるのですか?」
※この世界の貴族は『完全なピラミッド型』だと思って下さい……
◇テンプレ婚約破棄モノ。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
〔2026/02・大幅加筆修正〕
『お前を愛する事はない』なんて言ってないでしょうね?
あんど もあ
ファンタジー
政略結婚で妻を娶った息子に、母親は穏やかに、だが厳しく訊ねる。
「『お前を愛する事は無い』なんて言ってないでしょうね?」
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
道化たちの末路
希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と愛人母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる