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無人島で一緒にいたい人
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【問題文】
太郎さんと花子さんが一緒に街を歩いていた時、突撃インタビューを受けました。
「もし、無人島で……とは言ってもガチのサバイバルが必須な無人島ではなく、ライフラインが充分に整った極めて都合の良い無人島で一ヶ月間暮らすとしたら、誰と一緒にいたいですか? この回答に制限はありませんよ。芸能人でも、歴史上の人物でも、アニメキャラでも……そう、誰の名前をあげていただいても構いません!」と、テンションアゲアゲなインタビュアーのお姉さんは言います。
太郎さんは「隣にいる妻の花子です。僕たちは新婚三ヶ月なんです。実は猛アタックの末、やっと妻の心を射止めることができたんですよ。もう花子以外の回答なんて考えられません」と満面の笑みで即答しました。
花子さんも「私も夫と同じです」と静かに微笑みながら答えたので、太郎さんは大変に喜びました。
さらに言うなら、明らかに恋人か夫婦だと思われる彼ら二人に声をかけてきたインタビュアーのお姉さんも、そしてスタッフたちも、こうあって欲しいという回答を引き出せたので満足のようです。
しかし、花子さんの本心は違っていました。
さて、花子さんが無人島で一緒にいたいと思っていたのは誰だったのでしょうか?
【質問と解答】
キクちゃん : これはずばり、花子さんには太郎さん以外に好きな男性がいたってことですよね。いや、”いた”という過去形ではなく、この場合は”いる”という現在進行形が正しいのかもしれない……。花子さんには他に好きな男性がいますか?
チエコ先生 : NO。
キクちゃん : 一番シンプルに直線的に考えた質問でしたが、案の定、NOでしたか。まあ……この水平思考シリーズって、今までのパターンからしますと、問題文内にヒントを散りばめていることが多々ありましたよね? というわけで、問題文内にある候補から潰していきます! 花子さんが無人島で一緒にいたいと思ったのは芸能人の誰かですか?
チエコ先生 : NO。
キクちゃん : 歴史上の人物ですか?
チエコ先生 : NO。
キクちゃん : アニメキャラですか?
チエコ先生 : NO。
キクちゃん : 問題文内に散りばめられている回答へのヒントらしきものは全滅ですね……。
チエコ先生 ; あら、全滅とは限らないわよ。インタビュアーのお姉さんの言葉だけじゃなく、太郎さんの言葉に注目してみて。
キクちゃん : うーん……太郎さんが花子さんに猛アタックした末の結婚ということですよね。私は結婚したことがないので、実際のところは分かりませんが、新婚三ヶ月と言えばすっごくラブラブなイメージがあります。さらに言うなら、そのラブラブな熱は太郎さんの方が高くて、その熱にかなり浮かされまくっているような……でも、いくらラブラブな二人とはいえ、今まで違う環境で育ってきた他人と暮らし始めたわけですから…………花子さんは太郎さんとのちょっとした生活のこだわりや考え方のズレとかを徐々に感じるようになってきたのでは? そうなると気心の知れた友人と一緒にいた方が楽と思ったのもかもしれませんね。花子さんが無人島で一緒にいたいと思ったのは、友人でしたか?
チエコ先生 : NO。でも「気心の知れた」というのはいい線いっているわ。
キクちゃん : ということは……! 結婚するまでの花子さんが実家ぐらしだったのか一人暮らしだったのか分かりませんし、家族構成も不明ですが、花子さんは実家にいた頃に一緒に暮らしていた家族の誰かと無人島で一緒にいたいと思ったんでしょうか?
チエコ先生 : NO。
キクちゃん : 友人でもなければ家族でもない……そうなると恩師でしょうか? いや、でも恩師に対しては気心が知れたといったよりも、尊敬の念を持つような…………もう、ここまで「NO」が続くと花子さんと気心の知れた人というのは、最終的には花子さん自身にしか絞れなくなってしまうような気がします。
チエコ先生 : YES。正解よ、キクちゃん。
キクちゃん : え?! 何気なく言ったことが正解だったとは……! 花子さんは自分自身と無人島で一緒にいたいと思ったんですか?
チエコ先生 : そうよ。インタビュアーのお姉さんは「この回答に制限はありませんよ」と言っていたでしょう。だから、それを聞いた花子さんは「一人の時間が欲しい……やはり私には一人でいること方が向いているのかもしれない。だから、無人島に行ったとしても一人でいたいの。どうしても誰か一人を”制限なしで”選ばなければならないとしたなら、私は自分自身を選ぶわ。私は昔から自分がもう一人いればいいなと思っていたし、今まで実際に自分との対話をずっと続けてきた……。もう一人の私なら、当たり前だけど私の気持ちや状況を何も言わずに理解してくれるから……でも、この場で夫に恥をかかすわけにもいかないし、ここは空気を読んで『私も夫と同じです』答えるべきよね」と。
キクちゃん : ……花子さんはどちらかというと内向的な人なのですね。一人の時間を大切にしたいタイプだと。ですが、反対に太郎さんはどちらかというと外向的な人のような気が……。突撃インタビューにも臆することなく満面の笑みで回答していますし、結婚までに至った経緯にしても太郎さんからの猛アタックの末、花子さんの心を射止めることができたと言っていますし。
チエコ先生 : そう、この夫婦は正反対のタイプなのよ。そのことは個人個人の性質や考え方の違いだし、どちらが良いとか悪いとか判断することでもないけれど。逆に、正反対だからこそ上手くやっていける場合もあると思うわ。だけど……花子さんは太郎さんとの生活に疲れを感じているのは明らかよね。太郎さんにとっては結婚して”まだ三ヶ月”であっても、花子さんにとっては”もう三ヶ月”なのでしょうね。
キクちゃん : …………結婚って、やっぱり難しそうですね。
(完)
太郎さんと花子さんが一緒に街を歩いていた時、突撃インタビューを受けました。
「もし、無人島で……とは言ってもガチのサバイバルが必須な無人島ではなく、ライフラインが充分に整った極めて都合の良い無人島で一ヶ月間暮らすとしたら、誰と一緒にいたいですか? この回答に制限はありませんよ。芸能人でも、歴史上の人物でも、アニメキャラでも……そう、誰の名前をあげていただいても構いません!」と、テンションアゲアゲなインタビュアーのお姉さんは言います。
太郎さんは「隣にいる妻の花子です。僕たちは新婚三ヶ月なんです。実は猛アタックの末、やっと妻の心を射止めることができたんですよ。もう花子以外の回答なんて考えられません」と満面の笑みで即答しました。
花子さんも「私も夫と同じです」と静かに微笑みながら答えたので、太郎さんは大変に喜びました。
さらに言うなら、明らかに恋人か夫婦だと思われる彼ら二人に声をかけてきたインタビュアーのお姉さんも、そしてスタッフたちも、こうあって欲しいという回答を引き出せたので満足のようです。
しかし、花子さんの本心は違っていました。
さて、花子さんが無人島で一緒にいたいと思っていたのは誰だったのでしょうか?
【質問と解答】
キクちゃん : これはずばり、花子さんには太郎さん以外に好きな男性がいたってことですよね。いや、”いた”という過去形ではなく、この場合は”いる”という現在進行形が正しいのかもしれない……。花子さんには他に好きな男性がいますか?
チエコ先生 : NO。
キクちゃん : 一番シンプルに直線的に考えた質問でしたが、案の定、NOでしたか。まあ……この水平思考シリーズって、今までのパターンからしますと、問題文内にヒントを散りばめていることが多々ありましたよね? というわけで、問題文内にある候補から潰していきます! 花子さんが無人島で一緒にいたいと思ったのは芸能人の誰かですか?
チエコ先生 : NO。
キクちゃん : 歴史上の人物ですか?
チエコ先生 : NO。
キクちゃん : アニメキャラですか?
チエコ先生 : NO。
キクちゃん : 問題文内に散りばめられている回答へのヒントらしきものは全滅ですね……。
チエコ先生 ; あら、全滅とは限らないわよ。インタビュアーのお姉さんの言葉だけじゃなく、太郎さんの言葉に注目してみて。
キクちゃん : うーん……太郎さんが花子さんに猛アタックした末の結婚ということですよね。私は結婚したことがないので、実際のところは分かりませんが、新婚三ヶ月と言えばすっごくラブラブなイメージがあります。さらに言うなら、そのラブラブな熱は太郎さんの方が高くて、その熱にかなり浮かされまくっているような……でも、いくらラブラブな二人とはいえ、今まで違う環境で育ってきた他人と暮らし始めたわけですから…………花子さんは太郎さんとのちょっとした生活のこだわりや考え方のズレとかを徐々に感じるようになってきたのでは? そうなると気心の知れた友人と一緒にいた方が楽と思ったのもかもしれませんね。花子さんが無人島で一緒にいたいと思ったのは、友人でしたか?
チエコ先生 : NO。でも「気心の知れた」というのはいい線いっているわ。
キクちゃん : ということは……! 結婚するまでの花子さんが実家ぐらしだったのか一人暮らしだったのか分かりませんし、家族構成も不明ですが、花子さんは実家にいた頃に一緒に暮らしていた家族の誰かと無人島で一緒にいたいと思ったんでしょうか?
チエコ先生 : NO。
キクちゃん : 友人でもなければ家族でもない……そうなると恩師でしょうか? いや、でも恩師に対しては気心が知れたといったよりも、尊敬の念を持つような…………もう、ここまで「NO」が続くと花子さんと気心の知れた人というのは、最終的には花子さん自身にしか絞れなくなってしまうような気がします。
チエコ先生 : YES。正解よ、キクちゃん。
キクちゃん : え?! 何気なく言ったことが正解だったとは……! 花子さんは自分自身と無人島で一緒にいたいと思ったんですか?
チエコ先生 : そうよ。インタビュアーのお姉さんは「この回答に制限はありませんよ」と言っていたでしょう。だから、それを聞いた花子さんは「一人の時間が欲しい……やはり私には一人でいること方が向いているのかもしれない。だから、無人島に行ったとしても一人でいたいの。どうしても誰か一人を”制限なしで”選ばなければならないとしたなら、私は自分自身を選ぶわ。私は昔から自分がもう一人いればいいなと思っていたし、今まで実際に自分との対話をずっと続けてきた……。もう一人の私なら、当たり前だけど私の気持ちや状況を何も言わずに理解してくれるから……でも、この場で夫に恥をかかすわけにもいかないし、ここは空気を読んで『私も夫と同じです』答えるべきよね」と。
キクちゃん : ……花子さんはどちらかというと内向的な人なのですね。一人の時間を大切にしたいタイプだと。ですが、反対に太郎さんはどちらかというと外向的な人のような気が……。突撃インタビューにも臆することなく満面の笑みで回答していますし、結婚までに至った経緯にしても太郎さんからの猛アタックの末、花子さんの心を射止めることができたと言っていますし。
チエコ先生 : そう、この夫婦は正反対のタイプなのよ。そのことは個人個人の性質や考え方の違いだし、どちらが良いとか悪いとか判断することでもないけれど。逆に、正反対だからこそ上手くやっていける場合もあると思うわ。だけど……花子さんは太郎さんとの生活に疲れを感じているのは明らかよね。太郎さんにとっては結婚して”まだ三ヶ月”であっても、花子さんにとっては”もう三ヶ月”なのでしょうね。
キクちゃん : …………結婚って、やっぱり難しそうですね。
(完)
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