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盗み聞きにはご用心!
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ここは、とあるお洒落なカフェのオープンテラス。
香り立つ珈琲のビターさには、ちょっとばかし、こだわりを持っている新米魔女・サマコは、このお気に入りのカフェにてホッとする1人時間を過ごしていた。
しかし、サマコのそのホッとする1人時間は、隣の席へとドカッと腰を下ろした若い女によって破られてしまった。
まるで、こだわり抜いて選んだ部屋の壁紙を、バリバリと無惨にはがされていくがごとく破られてしまったのだ。
オープンテラスとはいえ、カフェで電話をするなんて賛否両論多々ある行動である。
しかし、女はごく普通にスマホを取り出し、どこかに電話をかけ始めたのだ。
女をチラリと見たサマコであったが、直接の注意はしなかった。
それよりも、自分の1人時間に乱入してきたこの女が――いわゆる派手な化粧のギャルというわけでもなければ、壮絶に垢抜けない芋くさい女というわけでもなく、そこそこ”可愛い風の顔”のよくいる量産型と表現するのが一番しっくりとくる女が、誰とどういった会話をするのか聞いてやろうと思った。
先にお伝えした通り、サマコは魔女である。
サマコは、女の淡いピンクのグロスでぬめっている唇から発された言葉だけを聞くわけではない。
表側の言葉と同時に、その裏側の言葉――つまりは胸の内の言葉までをも、魔女・サマコは聞き取ることができるのだから。
「あ、ミキヤ。私だけど、今夜の合コンのことでちょっといい?」
(まったく、早く電話に出ろっての。粗〇ンのくせに。私だって暇じゃないっつうの)
「前の合コンでは、メンズたちのテンションをダダ下がりさせちゃってごめんねぇ。今夜の合コンは、超ばっちり可愛い子揃えたからさあ」
(なーんつって、なーんつってwww 今回の合コンも私以外は、前と似たり寄ったりのチョイブスばっか、揃えているけどwww)
「え? 女の言う可愛いってのは、マジで当てにならないって? やだ、そんなことないわよ。私はマジで自分が可愛いって思う子だけを連れてきてるんだモン」
(ヤバい、ミキヤの奴、これは疑い始めてるかも? まさか、今夜の合コンが中止になったりしないわよね。私もそろそろ、新しい彼氏を作りたいし、それに今夜のメンズの中には、いわゆる”目玉商品の男”がいるかもしれないのに……それは困るわよ……)
焦り始めた女。
自らを落ち着かせるためか、女はカフェラテに一口だけ口をつけた。
そして、上唇にカフェラテのクリームをうっすらとつけたまま、女は通話中の相手・ミキヤなる男へと甘い声を出した。
「マジだって、今夜の女子たちはマジで皆、超可愛いから! 1人目は永〇芽郁ちゃん風、2人目は橋〇環奈ちゃん風、3人目は浜〇美波ちゃん風、4人目は福〇遥ちゃん風で……絶対にハズレなしだよ。私も今夜ほどクオリティの高い女子を揃えるのは、正直苦労したんだから」
(やっぱ、言ってるだけで笑えてきたわ。今夜、女子4人とも芸能人本人たちには及びもつかないわよwww でも、私は”○○ちゃんにソックリ”じゃなくて”○○ちゃん風”って言ってるわけだし。よーく見たら、雰囲気が少しばかり似てるかなって言えないワケでもない女子たちだし。私は、嘘は言ってないモンwww)
「は? え? 何? 『お前、もしかして、俺のことがまだ好きだから、わざと毎回、ブス寄りの女ばっかりを連れてきてるんだろ?』って? もう、何言ってんのよ。あんたとはもうキッパリ別れたでしょ」
(ちょwww マジで笑えんですけど、ちょっと付き合ったぐらいで、ホント自惚れ強いにも、程があるでしょ。エッチへったくそなうえ、粗〇ンのくせにwww)
「それよか、あんたが前に言ってた医大生は、今夜の合コンにちゃんと連れてきてくれるんでしょうね? まさか、有耶無耶にする気じゃないでしょうね?」
(そう、今夜の合コンの”目玉商品の男”は医大生! 多少、外見が私の好みでなくても、”絶対に抱かれたくないってレベル”でさえでなかったら、ガンガンアプローチしちゃうわよ。むしろ量産型のよくいるイケメンではなくて、あんまりモテてこなかったような男の方が落としやすいだろうし)
「良かった。ちゃんと来てくれるのね。私も”ちゃああんと”可愛い女子4人を連れていくからね」
(可愛い女子4人って言ってるけど、ホントに可愛いのは私だけwww 4人とも私の引き立て役になってもらうために、選び抜いたんだからwww 合コンなんて、いわば”孤軍奮闘”する戦場なのよ。私の敵と成り得る、ホントに可愛い子や美人に声なんてかけるわけないじゃん)
「じゃあね、ミキヤ。また夜に、お店の前についたら連絡するから」
(ふー♡ 今日の夜がとっても楽しみィ♡ 医大生を中心としたメンズたちが、抜きん出た私の可愛さに驚いて、他の女子たちのブスさに肩をガックシと落とす光景を想像するだけでワクワクしちゃう♡)
女の電話は終わった。
サマコに、その胸の内の言葉までをも、盗み聞きされていたなんて夢にも思わない女は、上機嫌のままカフェラテをまるで水のようにグビグビと飲み干し、会計へと向かった。
おそらく今から自宅へと戻り、一人勝ちが決定している今夜の合コンに向けての準備を念入りに行うのだろう。
自分だけがより魅力的に見える、ファッション、ヘアアレンジ、メイクで武装し、男性陣における大将(医大生)を掴みとるために。
お気に入りの珈琲のビターさを嗜むのもそこそこに、サマコも席を立ち、会計へと向かった。
そして、サマコは女の跡をつけた。
女を見失わないように注意しながら、カバンから自身のスマホを取り出したサマコ。
現代に生きる魔女は、カフェでお茶もするし、スマホだって所持しているのだ。
歩行中のスマホ通話もまた、賛否両論多々あるというか……注意力散漫となり、事故にもつながってしまう極めて危険な行為である。
けれども、サマコは電話をかけずにはいられなかった。
サマコが電話をかけた相手は、自身の母だ。
母もまた、魔女であった。
「あら、サマコ。どうしたの?」
陽気な声で、母が問う。
まだまだ修行中である娘・サマコの”盗み聞きの力”を存分に知り抜いている彼女は、母としての威厳を保つために、娘には自分の心を読まれまいと自身の魔力を持ってして、”それ”をブロックしていた。
サマコは、母へと話した。
かくかくしかじか、と。
カフェで隣の席に座った若い女の言葉を。あの女のその胸の内の言葉までをも。
「んまあ、それは嫌な女ねえ。ママ、そういう女が一番嫌いよ」
母の心の内の言葉は、サマコには聞こえてこない。しかし、母の言葉と”胸の内の言葉”は間違いなく一致しているだろう。
絶対に母は協力してくれるはずだ。
サマコは、母へと伝えた。
あの女をギャフンと言わせてやりたい、と。
でも、まだまだ魔女として修業中の自分は、箒にのって地面から1メートル弱ほど浮かび上がったり、先ほどみたいに”胸の内の言葉”を聞くことと(人間の中でも自分と同様の力――人間たちは”テレパシー”と呼んでいる力を持つ者はわずかながらいる)ぐらいしかできない。
だから、今回はママの力を貸して欲しい、と。
「分かったわ。ここはママに任せて。これでもママは、サマコの50倍の時間を生きてるから、いろんなことができるのよ」
頼もしい母の言葉。
「そうね……その女って、今夜の合コンに連れくる女の子たちを自分の引き立て役にしようと考えているんでしょ。だから、今夜はその女自身に、引き立て役になってしまう壮絶な惨めさを味わわせてやろうかと思うのよ。ママが今、考えた”悪戯”を聞いてくれる?」
とてつもなく楽しそうな母の声に、サマコの心もウキウキと弾んでくる。
「合コン開始直後に、女が”引き立て役”として連れてきた他の4人の女の子の容姿を、ママが魔法で変化させる。女の言葉通り、1人目は永〇芽郁ちゃん風、2人目は橋〇環奈ちゃん風、3人目は浜〇美波ちゃん風、4人目は福〇遥ちゃん風にね。あ、”○○ちゃん風”じゃなくて、”○○ちゃんにソックリ”にした方がいいわよね。もはや、メディアの中の芸能人本人たちと見分けがつかないぐらいにソックリにね」
それは本当にいい”悪戯”だ。
あの女は、自分など及びもつかないほどに、可愛いor美人な子との顔面格差によって、逃げ出したくなるほどに惨めな思いをするだけでない。
女自身の言葉通り『”ちゃああんと”可愛い女子4人を連れて』きたことになるため、女の元カレらしき男・ミキヤに対しても、嘘などついていない正直者として、女は良い評価されるであろう。
それに、今夜の”引き立て役”に抜擢された4人の女子についても、何の努力もなしに、”生まれつき美を授かって生まれた者たちと瓜二つの顔面”を一瞬で手に入れるのだ。彼女たちの人生は、相当に変わってしまうだろう。美人の人生には得もあれば、損もあるため、魔女の悪戯によってプレゼントされた美を、どう生かすかは彼女たち次第であるが……
サマコは母に礼を言い、また合コン開始直前になったら連絡する、と言って電話を切った。
そして、十数メートル先を歩いている、女の跡を着実に辿っていった。
サマコの足取りは、まるで箒に乗って宙へと浮かび上がった時のように、ふわりと軽くなっていた。自分が参加するわけでもないというのに、今夜の合コンが”楽しみで楽しみで”仕方がなくなってきたサマコであった。
―――fin―――
香り立つ珈琲のビターさには、ちょっとばかし、こだわりを持っている新米魔女・サマコは、このお気に入りのカフェにてホッとする1人時間を過ごしていた。
しかし、サマコのそのホッとする1人時間は、隣の席へとドカッと腰を下ろした若い女によって破られてしまった。
まるで、こだわり抜いて選んだ部屋の壁紙を、バリバリと無惨にはがされていくがごとく破られてしまったのだ。
オープンテラスとはいえ、カフェで電話をするなんて賛否両論多々ある行動である。
しかし、女はごく普通にスマホを取り出し、どこかに電話をかけ始めたのだ。
女をチラリと見たサマコであったが、直接の注意はしなかった。
それよりも、自分の1人時間に乱入してきたこの女が――いわゆる派手な化粧のギャルというわけでもなければ、壮絶に垢抜けない芋くさい女というわけでもなく、そこそこ”可愛い風の顔”のよくいる量産型と表現するのが一番しっくりとくる女が、誰とどういった会話をするのか聞いてやろうと思った。
先にお伝えした通り、サマコは魔女である。
サマコは、女の淡いピンクのグロスでぬめっている唇から発された言葉だけを聞くわけではない。
表側の言葉と同時に、その裏側の言葉――つまりは胸の内の言葉までをも、魔女・サマコは聞き取ることができるのだから。
「あ、ミキヤ。私だけど、今夜の合コンのことでちょっといい?」
(まったく、早く電話に出ろっての。粗〇ンのくせに。私だって暇じゃないっつうの)
「前の合コンでは、メンズたちのテンションをダダ下がりさせちゃってごめんねぇ。今夜の合コンは、超ばっちり可愛い子揃えたからさあ」
(なーんつって、なーんつってwww 今回の合コンも私以外は、前と似たり寄ったりのチョイブスばっか、揃えているけどwww)
「え? 女の言う可愛いってのは、マジで当てにならないって? やだ、そんなことないわよ。私はマジで自分が可愛いって思う子だけを連れてきてるんだモン」
(ヤバい、ミキヤの奴、これは疑い始めてるかも? まさか、今夜の合コンが中止になったりしないわよね。私もそろそろ、新しい彼氏を作りたいし、それに今夜のメンズの中には、いわゆる”目玉商品の男”がいるかもしれないのに……それは困るわよ……)
焦り始めた女。
自らを落ち着かせるためか、女はカフェラテに一口だけ口をつけた。
そして、上唇にカフェラテのクリームをうっすらとつけたまま、女は通話中の相手・ミキヤなる男へと甘い声を出した。
「マジだって、今夜の女子たちはマジで皆、超可愛いから! 1人目は永〇芽郁ちゃん風、2人目は橋〇環奈ちゃん風、3人目は浜〇美波ちゃん風、4人目は福〇遥ちゃん風で……絶対にハズレなしだよ。私も今夜ほどクオリティの高い女子を揃えるのは、正直苦労したんだから」
(やっぱ、言ってるだけで笑えてきたわ。今夜、女子4人とも芸能人本人たちには及びもつかないわよwww でも、私は”○○ちゃんにソックリ”じゃなくて”○○ちゃん風”って言ってるわけだし。よーく見たら、雰囲気が少しばかり似てるかなって言えないワケでもない女子たちだし。私は、嘘は言ってないモンwww)
「は? え? 何? 『お前、もしかして、俺のことがまだ好きだから、わざと毎回、ブス寄りの女ばっかりを連れてきてるんだろ?』って? もう、何言ってんのよ。あんたとはもうキッパリ別れたでしょ」
(ちょwww マジで笑えんですけど、ちょっと付き合ったぐらいで、ホント自惚れ強いにも、程があるでしょ。エッチへったくそなうえ、粗〇ンのくせにwww)
「それよか、あんたが前に言ってた医大生は、今夜の合コンにちゃんと連れてきてくれるんでしょうね? まさか、有耶無耶にする気じゃないでしょうね?」
(そう、今夜の合コンの”目玉商品の男”は医大生! 多少、外見が私の好みでなくても、”絶対に抱かれたくないってレベル”でさえでなかったら、ガンガンアプローチしちゃうわよ。むしろ量産型のよくいるイケメンではなくて、あんまりモテてこなかったような男の方が落としやすいだろうし)
「良かった。ちゃんと来てくれるのね。私も”ちゃああんと”可愛い女子4人を連れていくからね」
(可愛い女子4人って言ってるけど、ホントに可愛いのは私だけwww 4人とも私の引き立て役になってもらうために、選び抜いたんだからwww 合コンなんて、いわば”孤軍奮闘”する戦場なのよ。私の敵と成り得る、ホントに可愛い子や美人に声なんてかけるわけないじゃん)
「じゃあね、ミキヤ。また夜に、お店の前についたら連絡するから」
(ふー♡ 今日の夜がとっても楽しみィ♡ 医大生を中心としたメンズたちが、抜きん出た私の可愛さに驚いて、他の女子たちのブスさに肩をガックシと落とす光景を想像するだけでワクワクしちゃう♡)
女の電話は終わった。
サマコに、その胸の内の言葉までをも、盗み聞きされていたなんて夢にも思わない女は、上機嫌のままカフェラテをまるで水のようにグビグビと飲み干し、会計へと向かった。
おそらく今から自宅へと戻り、一人勝ちが決定している今夜の合コンに向けての準備を念入りに行うのだろう。
自分だけがより魅力的に見える、ファッション、ヘアアレンジ、メイクで武装し、男性陣における大将(医大生)を掴みとるために。
お気に入りの珈琲のビターさを嗜むのもそこそこに、サマコも席を立ち、会計へと向かった。
そして、サマコは女の跡をつけた。
女を見失わないように注意しながら、カバンから自身のスマホを取り出したサマコ。
現代に生きる魔女は、カフェでお茶もするし、スマホだって所持しているのだ。
歩行中のスマホ通話もまた、賛否両論多々あるというか……注意力散漫となり、事故にもつながってしまう極めて危険な行為である。
けれども、サマコは電話をかけずにはいられなかった。
サマコが電話をかけた相手は、自身の母だ。
母もまた、魔女であった。
「あら、サマコ。どうしたの?」
陽気な声で、母が問う。
まだまだ修行中である娘・サマコの”盗み聞きの力”を存分に知り抜いている彼女は、母としての威厳を保つために、娘には自分の心を読まれまいと自身の魔力を持ってして、”それ”をブロックしていた。
サマコは、母へと話した。
かくかくしかじか、と。
カフェで隣の席に座った若い女の言葉を。あの女のその胸の内の言葉までをも。
「んまあ、それは嫌な女ねえ。ママ、そういう女が一番嫌いよ」
母の心の内の言葉は、サマコには聞こえてこない。しかし、母の言葉と”胸の内の言葉”は間違いなく一致しているだろう。
絶対に母は協力してくれるはずだ。
サマコは、母へと伝えた。
あの女をギャフンと言わせてやりたい、と。
でも、まだまだ魔女として修業中の自分は、箒にのって地面から1メートル弱ほど浮かび上がったり、先ほどみたいに”胸の内の言葉”を聞くことと(人間の中でも自分と同様の力――人間たちは”テレパシー”と呼んでいる力を持つ者はわずかながらいる)ぐらいしかできない。
だから、今回はママの力を貸して欲しい、と。
「分かったわ。ここはママに任せて。これでもママは、サマコの50倍の時間を生きてるから、いろんなことができるのよ」
頼もしい母の言葉。
「そうね……その女って、今夜の合コンに連れくる女の子たちを自分の引き立て役にしようと考えているんでしょ。だから、今夜はその女自身に、引き立て役になってしまう壮絶な惨めさを味わわせてやろうかと思うのよ。ママが今、考えた”悪戯”を聞いてくれる?」
とてつもなく楽しそうな母の声に、サマコの心もウキウキと弾んでくる。
「合コン開始直後に、女が”引き立て役”として連れてきた他の4人の女の子の容姿を、ママが魔法で変化させる。女の言葉通り、1人目は永〇芽郁ちゃん風、2人目は橋〇環奈ちゃん風、3人目は浜〇美波ちゃん風、4人目は福〇遥ちゃん風にね。あ、”○○ちゃん風”じゃなくて、”○○ちゃんにソックリ”にした方がいいわよね。もはや、メディアの中の芸能人本人たちと見分けがつかないぐらいにソックリにね」
それは本当にいい”悪戯”だ。
あの女は、自分など及びもつかないほどに、可愛いor美人な子との顔面格差によって、逃げ出したくなるほどに惨めな思いをするだけでない。
女自身の言葉通り『”ちゃああんと”可愛い女子4人を連れて』きたことになるため、女の元カレらしき男・ミキヤに対しても、嘘などついていない正直者として、女は良い評価されるであろう。
それに、今夜の”引き立て役”に抜擢された4人の女子についても、何の努力もなしに、”生まれつき美を授かって生まれた者たちと瓜二つの顔面”を一瞬で手に入れるのだ。彼女たちの人生は、相当に変わってしまうだろう。美人の人生には得もあれば、損もあるため、魔女の悪戯によってプレゼントされた美を、どう生かすかは彼女たち次第であるが……
サマコは母に礼を言い、また合コン開始直前になったら連絡する、と言って電話を切った。
そして、十数メートル先を歩いている、女の跡を着実に辿っていった。
サマコの足取りは、まるで箒に乗って宙へと浮かび上がった時のように、ふわりと軽くなっていた。自分が参加するわけでもないというのに、今夜の合コンが”楽しみで楽しみで”仕方がなくなってきたサマコであった。
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