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泥棒と裏切者にチョコレートで天罰を(下)
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「あ~、そうだね。これは確実にバレちゃってるねえ。でも、いい機会じゃない。決着つけなよ。修羅場っておいでよ」
他人事であるからか無責任にそう言い放ったフウちゃんは、半分に割ったゴキブリ型チョコレートの欠片を自身の口へと近づける。
「フ、フウちゃん、まさか食べるの!? それ!?」
「うん、食べるけど? 悪趣味であってもチョコレートに罪はないんだから(笑)」
目をつぶっても食べたくないというか、食欲を世界一減退させることは間違いないフォルムのチョコレートを、フウちゃんは口の中へとポンと放り込んだ。
「やめなよ! 食べない方がいいよ! 見た目自体気持ち悪いし、変なモノとか混ぜ込まれていたら、どうするのよ?!」
「ヘーキヘーキ。変な匂いとか味もしないしさ」
それでいいのか?!
確かにカイリだけでなくナギコ自身もあまり頭は良くないのは事実であるだろうが、フウちゃんは危機管理能力があまりにも低過ぎる。食べ物を前にすると特に。
ヒヤヒヤしているナギコの目の前で、フウちゃんは「あー美味しい♪」と悪趣味なゴキブリ型チョコレート6個全てを、瞬く間に食べつくしてしまった。
※※※
翌日。
バレンタインデーまであと1日となった2月13日。
大学構内のカフェテラスの一席にて、カイリと待ち合わせ中であるナギコは昨日のチョコレートについて考えていた。
幸いにして、あれを全て完食したフウちゃんの体調が悪くなったりもしていない。
しかし、フウちゃんにチョコレートを食べつくされる(証拠隠滅される)前に、写真の1枚でも撮っておけば良かった。
何一つ証拠はないも、昨日のチョコレートは嫌がらせでしかないフォルムであったことは、カイリにきちんと伝えるべきであろう。間違いなくレンカの宣戦布告なのだから。
ついに修羅場へと突入するのだ。
しかし、ナギコはカイリにきちんと告白されたわけでもない。だから、カイリとの間に肉体関係などもない。彼とはキスすらしたことない。
――でも、でも、でもっ……私ならカイリのことをもっと考えられる。カイリを困らせたりなんて絶対にしない。カイリのことをレンカよりも大切にできる自信だってあるもの。カイリに一番ふさわしいのは私なのよ。私、今まで人の彼氏に手を出すような女なんてサイテーだって思っていた……でも、カイリに出会ってからは違った。カイリのことだけは譲れない……
近づいてくる足音に、ナギコは顔をあげた。
「だいぶ、待ったろ? ごめん」と、カイリがナギコの向かいの席へとストンと腰を下ろした。
「ごめん……まだ、”あいつ”との別れ話がこじれてんだ」
「……分かってるよ。レンカって、本当にしつこそうだモンね」
「まあ、しつこいってのもあるんだけど……最近、あいつ、言動がますますエキセントリックになってきてさ……」
カイリは相当に疲れていた。疲れ果てていた。
エキセントリックな性質な娘(こ)は創作物の中の人物なら魅力的な娘(こ)として読者に映るんでしょうね。でも、やっぱり現実においては、”私みたいに”灰汁が強くない良識的な娘(こ)が好まれるのよね、とナギコの口元に勝利を確信する笑みが浮かんだその時であった。
「――泥棒ォォォ!!! 裏切者ォォォ!!!」
ガラスを長い爪で引っ掻いたような金切声に間髪入れず、”黒い影”が弾丸のごとく、ナギコへと突撃してきた。
レンカだ!
そのレンカという名の弾丸が、ナギコのオフホワイトのタートルネックセーターの胸元で飛び散らせたのは血ではなかった。
”チョコレート”だった!!
「熱……っ!!!」
ナギコの胸元はひりつくような痛みに瞬時に覆い尽くされた!
胸から強烈に立ち昇る濃厚なココアの香り。
オフホワイトのタートルネックセーターには、いびつな茶色の地図が描かれ、その繊維まで一瞬にしてチョコレートに蹂躙されてしまった!
「レンカ!!!」
カイリがレンカを取り押さえた。レンカの手にあった”コーヒー用の紙コップ”が床へと転がった。
「何よ! カイリはレンカの王子様のくせに! 裏切者!! やっぱり、この泥棒に、レンカの愛がたっぷりのチョコレートを渡していたんでしょ!!!」
カイリに後ろから押さえ込まれながらももがくレンカは、ナギコに蹴りまでも食らわせたいのか、下着が見えそうなほどに両足をばたつかせる。
「許さないんだから! 明日は、最悪のバレンタインデーにしてやるんだから!! チョコレート王国のプリンセスのレンカが、泥棒と裏切者にチョコレートで天罰をくらわせてやるんだからあああ!!!」
キイキイ喚きながらレンカは暴れ続けた。
修羅場。
大学のカフェテラスという公共の場での壮絶な修羅場だ。
数人の学生が――カイリともナギコとも話したことはなかった数人の学生が、慌てて駆け寄ってきて、カイリとともに暴れるレンカを押さえる or 「大丈夫?」とナギコの介抱にあたってくれた。
しかし、大多数の学生はこの修羅場を遠巻きにしているようであった。
遠巻きにしながらも、皆、ドン引き or 興味津々でこちらを見ていた。その中にはスマホを向けている者も数人いた。
「やっべぇw マヂ基地じゃんw」
「かわいそーwww」
「てか、そんな近場で”乗り換え済ます”なよなwww」
彼らの呟いた嘲笑交じりの言葉は、ナギコにも聞こえてきた。
※※※
ナギコの鼻腔に染みつかざるを得なかった濃厚なカカオの匂いが、シャワーヘッドから噴出されるお湯の匂いによって洗い清められていった。
ナギコは自分のマンションの浴室ではなく、”カイリのマンションの浴室”にてシャワーを浴びていた。
ホットチョコレート攻撃を受けたナギコの両の乳房は全体的に少し赤くなってはいるようであった。しかし、重篤な火傷と言える怪我を負わされたわけではなかったことに、言葉通り胸を撫で下ろした。廃棄するしかなくなったセーターの下に防寒のため厚めの生地の肌着とブラジャーを身に付けていたことが幸いしたのだろう。
あの壮絶な修羅場の後、大学近くのマンションに住んでいるカイリが「俺んちでシャワー浴びろよ。服も貸すから。そのままじゃ帰れないだろ」と言ってくれた。
結果として、あの修羅場がナギコのカイリへの距離をグッと縮めてくれることになったのだ。
いや、ナギコからカイリへの距離だけじゃない。カイリからナギコへの距離もだ。
シャワーを終えたナギコは、言葉を交わすよりも先にカイリの唇で自身の唇をふさがれた。そして、どちらともなく舌を絡ませ合った。
その後、ナギコの両脚の間にカイリが”腰を沈める”ことになったのは自然の流れであったと言えよう。
ナギコとカイリは、日付が変わったことにも――2月13日から2月14日になったことにも気づかず、それぞれの瞳に互いの姿だけを映し続けたのだ。
ベッドの中でカイリの体温と匂いを感じながらまどろむナギコは、自分のお腹から鳴る音で目を覚ました。
そういや、昨夜は食事すらとらずにカイリとまぐわい続けていたのだ。
寝返りをうったカイリも空腹によって目を覚ましたらしかった。
ナギコはカイリの服とコートを借りて、カイリとともに近くの24時間営業のスーパーへと行った。
今日はバレンタインデーなだけあって、スーパーの陳列棚にはたくさんのチョコレートが並んでいた。しかし、ナギコもカイリもその陳列棚の前で足を止めることなかった。
お刺身コーナーへと向かうナギコとカイリ。
今日がバレンタインデーだからといって、チョコレートを食べなければならない決まりなんてない。
嫌いな食べ物を押し付けたりなんてしない。好きな人が好きな食べ物を一緒に食べるのだ。
※※※
美味しいお刺身を食べた後も数回まぐわい、激しくも穏やかな幸せに包まれていた2人。
ナギコがカイリに送られながら、自宅マンションへと向かう頃にはすでに日は傾き始めていた。自称・チョコレートの国のプリンセス(笑)であるレンカからの報復を用心して、カイリが自宅までついてきてくれたのだ。
玄関を開けると、今日もポテトチップスの袋を左腕に抱えたフウちゃんが出迎えてくれた。
「おかえり。ついに”やった”ってわけね」
確かに昨日から今日にかけて、(修羅場のくぐりぬけなど)いろんな意味で”やった”わけではあるが、フウちゃんは超ストレートであった。
「カイリくんも中に入ったら? コーヒー淹れたげるよ」
なぜか、フウちゃんまでもがナギコたちと同じく上機嫌だ。一緒に暮らすほどの仲である友人の恋(ほぼ略奪愛とはいえ)がついに成就したことは彼女にとっても、うれしいのだろう。
女2人、男1人で他愛もないことを話している間は、ナギコもカイリも、レンカからの報復の可能性などすっかり忘れていた。
仮にそのことについて考えていたとしても、あのレンカの報復なんて――一昨日のゴキブリ型チョコレートのように悪趣味なフォルムのチョコレートをグイグイと押し付けてくる or 郵便ポストの中にねじ込んでくるぐらいであるだろうとも。
不意にテーブルの上のフウちゃんのスマホが震えた。明るいデブキャラなフウちゃんは、なかなかに顔が広い。
大勢の友達のうちの誰かからのL〇NEかと思って画面を確認したらしいフウちゃんの顔が瞬時に「!!!」と凍りついた。
「! ちょっ……ヤバいっことになっているよ。あのレンカって娘(こ)……今、海で”ライブ配信”始めたって……!!」
ナギコも、カイリも自分のスマホを――凍りついた顔のままのフウちゃんが急いで自分たちに送ってくれたアドレスをクリックした。
アドレスは、とある動画投稿サイトにつながった。
今まさにライブ配信されている動画にて、冬ならではの寂しい色合いの海を背景にしている女は、紛れもないレンカであった。
両耳に真珠のピアス、甘いピンク色のセーターにカカオ色のコートを羽織ったレンカの瞼が腫れていることが、鮮明とはいえない画質の中でも分かった。
まさか……当てつけで、公開自殺でもする気なのか?!!
※※※
動画の中のレンカがゆっくりと、唇を開いた。
真冬の海辺にいるという寒さのためか、それともたった今より自ら入水し死出の旅へと赴く決意を決めているかもしれないからであろうか、彼女のその唇だけでなく、頬までも白く血の気がなかった。
「レンカは本当に異次元のチョコレート王国のプリンセスなの。王子様を探しにこの世界にやって来て、大学受験して、その大学でカッコいい王子様を見つけたんだけどね。大切な王子様を泥棒に盗られちゃったの……」
ポロポロと涙を流すレンカ。
涙を流しながらも、自分がチョコレート王国のプリンセスだなんて、”自身がキ○○イであることの自己紹介”を全世界へとライブ配信している。
「実はね、チョコレート王国のプリンセスには、代々受け継がれている力があるの。それはね……レンカが『チョコレートになあれ♡』と念じるとね……本当にその者や人がチョコレートになっちゃうのよ。ほら、これ見て」
レンカは左耳の真珠のピアスを外して、手の平へと乗せた。
そして『チョコレートになあれ♡』とレンカが言うやいなや、白い輝きを放る真珠のピアスは、一瞬にしてチョコボ〇ルのごときものへと変わった?!
「見た? レンカの力、スゴイでしょ? だからね、レンカはこの間もレンカのキッチンに出没したキモいゴキブリ6匹をチョコレートに変えて、”泥棒の手に渡るようにしたんだけど”、あの泥棒、ちゃんとゴキブリたちを食べたかなぁwww」
―――!!!!!!!!!!
一昨日の……あのゴキブリのフォルムをしたチョコレートは本当に……本当に、元ゴキブリだったということか!?!
「ぐっ……おぅええええええ!!!!!」
6匹の元ゴキブリたちを美味しくいただいてしまったフウちゃんが、消化途中のポテトチップス混じりの胃液をブシャーッと吐き出し始めた。まるでマーラ〇オンのように。
「フウちゃん!!」
ナギコは慌ててフウちゃんの背中をさする。
「わ、わたし……も、もう、チョコレート食べられないよぉ……」
真っ赤な顔でゼェゼェと息を吐き続けるフウちゃん。
”あれは手品だよ、手品に違いないって!”という言葉と、”だから、あの時、食べない方がいいって言ったじゃん!”という言葉が、吐き気をこらえるナギコの口元まで出かかっていた。
カイリは、ふくよかなマーラ〇オンとなってしまったフウちゃんの心配をする余裕すらなくなっているのか、真っ青な顔のままスマホ画面から――デンパ(電波)なわけではなくガチで”チョコレート王国のプリンセス”であったレンカから目が離せなくなっているようであった。
「レンカの王子様の名前はね、カイリって言うの。カイリはお刺身とか、海鮮料理とかが大好きで、レンカのチョコレートをあまり食べてくれなかったの。でも、いつかはチョコレートを好きになってくれるんだって信じて、レンカは王子様にチョコレートを渡し続けたの。けれども、そんな時に泥棒が……ナギコって名前の泥棒が擦り寄ってきてね、レンカの王子様……盗られちゃった。しかも、王子様は泥棒に、レンカの手作りチョコレートを渡してた……レンカの愛がたっぷりのチョコレートも、レンカの思いも全て、泥棒と裏切者の王子様に踏みにじられちゃった……」
レンカの瞳からは、再び涙が盛り上がり始めた。
「だから、レンカは決意したの。絶対に許さないって。最悪のバレンタインデーにしてやるって。レンカが、泥棒と裏切者にチョコレートで天罰をくだしてやるって……」
フフッと笑ったレンカが、背後に映っていた海へと向かって足を向け始めた。
そう、海へと――
「チョコレートになあれ♡」
レンカは言った。確かに彼女は”海へと向かって”そう言った。
―――!!!!!!!!!
彼女の言葉に間髪入れず、穏やかに打ち寄せていた波は――ドロッドロのチョコレートへと変わってしまっていた!!!
海が――海水がすべてチョコレートに!!!!
動画の中に映っている海だけじゃない。海は世界中に繋がっているのだ。世界中の海がチョコレートになってしまったということだ!!!
地球は青い地球ではなく、茶色い地球となってしまったのだ!!!
「レンカの愛と憎しみがたっぷりのチョコレートを”み~んな”召し上がれ♪」
茶色い海を背景としたレンカが振り返り、ニッタアと笑顔を見せた。
「カイリとナギコも本当に残念だね。お魚サンだって、チョコレートの海では生きられるわけないし、もうお刺身とか海鮮料理とか二度と食べることできないね。ううん、それだけじゃない。この世界の人たちだっていずれは皆、死んじゃうよね。わずかな水を巡って猛烈な争いだって起こるだろうしw レンカの愛を踏みにじって、こんなことになっちゃう原因となったカイリとナギコはどうなるのかなあ? 暴徒と化した民衆の人たちにつかまって、殴り殺されちゃったりなんかしたりしてw でも、レンカは知ーらないw レンカは今から、パパとママが待っている異次元のチョコレート王国に帰るんだモン」
※※※
茶色い地球においては、新鮮な魚などを捕ることはもうできなくなってしまった。
もちろん、動画終了後、きれいさっぱりこの世界から姿を消した――チョコレート王国に帰ってしまったらしいレンカの耳たぶで光っていた真珠なども捕れなくなってしまった。
マーラ〇オンが吐き出すのも、水ではなくドロドロのチョコレートに変わってしまっていた。
何より、チョコレートによる人類滅亡へのカウントダウンは着々と迫っていた。
チョコレートにアレルギー反応を示す体質の人だけでなく、チョコレートが元々好きな人であっても水代わりにチョコレートを日常的に飲み続けることなどできるわけなどない。
新鮮な水が足りない。
調理をしようにもそのための水が無い。
よって、食料だって足りなくなっている。
エチケットとして身を清めることだって、困難になっている。
さらに言うなら、それだけではなかった。
レンカが世界中の海をチョコレートに変えてしまった時、当然のことながら、海にてサーフィンやダイビングを楽しんでいる人々がいたのだ。
気の毒に、チョコレートによって窒息死、もしくはパニックを起こして溺れ死んだ人々のチョコレートまみれの無惨な遺体が何百体も発見されていた。
カカオの香り立つドロドロの海の中における捜索活動は困難を極め、その遺体すら発見できないであろう”推定死者”も相当な数となっていた。
世界中で5000名を優に越すことになった死者。そして、さらにその数倍の数はいるであろう遺族たちの悲しみと怒り。
刻々と迫りくる滅亡への恐怖、今までのごく普通の生活と、大切な人々をチョコレートによって奪われてしまった世界中の者たちの怒りは、当然のごとながら、この異常事態の原因を作ったナギコとカイリへと一直線へと向けられた。
若者たちのよくある恋愛のいざこざが、人類滅亡間近の事態を引き起こしたのだから。
本来だったら、実行犯であるレンカを捕らえ公開処刑すべきであろうが、異次元へと戻ってしまった女を捕らえることなどはできない。
あの動画をリアルタイムで見ていた者たち&保存していた者たちの手によって、人類史上最悪の恋愛トラブルによって、地球と地球に住む全ての人々に大損害と絶望を与えたナギコとカイリの本名ならび大学名、住所、顔写真等は、すでに世界中にばらまかれてしまっていた。
まさに世界の終りのごとく荒れ果ててしまったうえ、海辺に近いわけでもないのに、どこにいっても甘いチョコレートの匂いが充満している町中にて、ナギコとカイリは手を取り合い、今日も逃げ続けていた。
「――あそこにいたぞ! つかまえろ!」
とうとう、見つかってしまった!
手を繋いだまま振り返ったナギコとカイリの目に、自分たちへとドドドドドドドドドと駆けてくる100人はゆうに超えているであろう者たちの姿が映った!!!
揃いも揃って削がれたようにこけた頬と血走った瞳の暴徒たちの手には、鉄パイプやら金属バッドやらゴルフクラブやらフライパンやらが、”ただ一つの目的のために”しっかりと握られていた。
―――fin―――
他人事であるからか無責任にそう言い放ったフウちゃんは、半分に割ったゴキブリ型チョコレートの欠片を自身の口へと近づける。
「フ、フウちゃん、まさか食べるの!? それ!?」
「うん、食べるけど? 悪趣味であってもチョコレートに罪はないんだから(笑)」
目をつぶっても食べたくないというか、食欲を世界一減退させることは間違いないフォルムのチョコレートを、フウちゃんは口の中へとポンと放り込んだ。
「やめなよ! 食べない方がいいよ! 見た目自体気持ち悪いし、変なモノとか混ぜ込まれていたら、どうするのよ?!」
「ヘーキヘーキ。変な匂いとか味もしないしさ」
それでいいのか?!
確かにカイリだけでなくナギコ自身もあまり頭は良くないのは事実であるだろうが、フウちゃんは危機管理能力があまりにも低過ぎる。食べ物を前にすると特に。
ヒヤヒヤしているナギコの目の前で、フウちゃんは「あー美味しい♪」と悪趣味なゴキブリ型チョコレート6個全てを、瞬く間に食べつくしてしまった。
※※※
翌日。
バレンタインデーまであと1日となった2月13日。
大学構内のカフェテラスの一席にて、カイリと待ち合わせ中であるナギコは昨日のチョコレートについて考えていた。
幸いにして、あれを全て完食したフウちゃんの体調が悪くなったりもしていない。
しかし、フウちゃんにチョコレートを食べつくされる(証拠隠滅される)前に、写真の1枚でも撮っておけば良かった。
何一つ証拠はないも、昨日のチョコレートは嫌がらせでしかないフォルムであったことは、カイリにきちんと伝えるべきであろう。間違いなくレンカの宣戦布告なのだから。
ついに修羅場へと突入するのだ。
しかし、ナギコはカイリにきちんと告白されたわけでもない。だから、カイリとの間に肉体関係などもない。彼とはキスすらしたことない。
――でも、でも、でもっ……私ならカイリのことをもっと考えられる。カイリを困らせたりなんて絶対にしない。カイリのことをレンカよりも大切にできる自信だってあるもの。カイリに一番ふさわしいのは私なのよ。私、今まで人の彼氏に手を出すような女なんてサイテーだって思っていた……でも、カイリに出会ってからは違った。カイリのことだけは譲れない……
近づいてくる足音に、ナギコは顔をあげた。
「だいぶ、待ったろ? ごめん」と、カイリがナギコの向かいの席へとストンと腰を下ろした。
「ごめん……まだ、”あいつ”との別れ話がこじれてんだ」
「……分かってるよ。レンカって、本当にしつこそうだモンね」
「まあ、しつこいってのもあるんだけど……最近、あいつ、言動がますますエキセントリックになってきてさ……」
カイリは相当に疲れていた。疲れ果てていた。
エキセントリックな性質な娘(こ)は創作物の中の人物なら魅力的な娘(こ)として読者に映るんでしょうね。でも、やっぱり現実においては、”私みたいに”灰汁が強くない良識的な娘(こ)が好まれるのよね、とナギコの口元に勝利を確信する笑みが浮かんだその時であった。
「――泥棒ォォォ!!! 裏切者ォォォ!!!」
ガラスを長い爪で引っ掻いたような金切声に間髪入れず、”黒い影”が弾丸のごとく、ナギコへと突撃してきた。
レンカだ!
そのレンカという名の弾丸が、ナギコのオフホワイトのタートルネックセーターの胸元で飛び散らせたのは血ではなかった。
”チョコレート”だった!!
「熱……っ!!!」
ナギコの胸元はひりつくような痛みに瞬時に覆い尽くされた!
胸から強烈に立ち昇る濃厚なココアの香り。
オフホワイトのタートルネックセーターには、いびつな茶色の地図が描かれ、その繊維まで一瞬にしてチョコレートに蹂躙されてしまった!
「レンカ!!!」
カイリがレンカを取り押さえた。レンカの手にあった”コーヒー用の紙コップ”が床へと転がった。
「何よ! カイリはレンカの王子様のくせに! 裏切者!! やっぱり、この泥棒に、レンカの愛がたっぷりのチョコレートを渡していたんでしょ!!!」
カイリに後ろから押さえ込まれながらももがくレンカは、ナギコに蹴りまでも食らわせたいのか、下着が見えそうなほどに両足をばたつかせる。
「許さないんだから! 明日は、最悪のバレンタインデーにしてやるんだから!! チョコレート王国のプリンセスのレンカが、泥棒と裏切者にチョコレートで天罰をくらわせてやるんだからあああ!!!」
キイキイ喚きながらレンカは暴れ続けた。
修羅場。
大学のカフェテラスという公共の場での壮絶な修羅場だ。
数人の学生が――カイリともナギコとも話したことはなかった数人の学生が、慌てて駆け寄ってきて、カイリとともに暴れるレンカを押さえる or 「大丈夫?」とナギコの介抱にあたってくれた。
しかし、大多数の学生はこの修羅場を遠巻きにしているようであった。
遠巻きにしながらも、皆、ドン引き or 興味津々でこちらを見ていた。その中にはスマホを向けている者も数人いた。
「やっべぇw マヂ基地じゃんw」
「かわいそーwww」
「てか、そんな近場で”乗り換え済ます”なよなwww」
彼らの呟いた嘲笑交じりの言葉は、ナギコにも聞こえてきた。
※※※
ナギコの鼻腔に染みつかざるを得なかった濃厚なカカオの匂いが、シャワーヘッドから噴出されるお湯の匂いによって洗い清められていった。
ナギコは自分のマンションの浴室ではなく、”カイリのマンションの浴室”にてシャワーを浴びていた。
ホットチョコレート攻撃を受けたナギコの両の乳房は全体的に少し赤くなってはいるようであった。しかし、重篤な火傷と言える怪我を負わされたわけではなかったことに、言葉通り胸を撫で下ろした。廃棄するしかなくなったセーターの下に防寒のため厚めの生地の肌着とブラジャーを身に付けていたことが幸いしたのだろう。
あの壮絶な修羅場の後、大学近くのマンションに住んでいるカイリが「俺んちでシャワー浴びろよ。服も貸すから。そのままじゃ帰れないだろ」と言ってくれた。
結果として、あの修羅場がナギコのカイリへの距離をグッと縮めてくれることになったのだ。
いや、ナギコからカイリへの距離だけじゃない。カイリからナギコへの距離もだ。
シャワーを終えたナギコは、言葉を交わすよりも先にカイリの唇で自身の唇をふさがれた。そして、どちらともなく舌を絡ませ合った。
その後、ナギコの両脚の間にカイリが”腰を沈める”ことになったのは自然の流れであったと言えよう。
ナギコとカイリは、日付が変わったことにも――2月13日から2月14日になったことにも気づかず、それぞれの瞳に互いの姿だけを映し続けたのだ。
ベッドの中でカイリの体温と匂いを感じながらまどろむナギコは、自分のお腹から鳴る音で目を覚ました。
そういや、昨夜は食事すらとらずにカイリとまぐわい続けていたのだ。
寝返りをうったカイリも空腹によって目を覚ましたらしかった。
ナギコはカイリの服とコートを借りて、カイリとともに近くの24時間営業のスーパーへと行った。
今日はバレンタインデーなだけあって、スーパーの陳列棚にはたくさんのチョコレートが並んでいた。しかし、ナギコもカイリもその陳列棚の前で足を止めることなかった。
お刺身コーナーへと向かうナギコとカイリ。
今日がバレンタインデーだからといって、チョコレートを食べなければならない決まりなんてない。
嫌いな食べ物を押し付けたりなんてしない。好きな人が好きな食べ物を一緒に食べるのだ。
※※※
美味しいお刺身を食べた後も数回まぐわい、激しくも穏やかな幸せに包まれていた2人。
ナギコがカイリに送られながら、自宅マンションへと向かう頃にはすでに日は傾き始めていた。自称・チョコレートの国のプリンセス(笑)であるレンカからの報復を用心して、カイリが自宅までついてきてくれたのだ。
玄関を開けると、今日もポテトチップスの袋を左腕に抱えたフウちゃんが出迎えてくれた。
「おかえり。ついに”やった”ってわけね」
確かに昨日から今日にかけて、(修羅場のくぐりぬけなど)いろんな意味で”やった”わけではあるが、フウちゃんは超ストレートであった。
「カイリくんも中に入ったら? コーヒー淹れたげるよ」
なぜか、フウちゃんまでもがナギコたちと同じく上機嫌だ。一緒に暮らすほどの仲である友人の恋(ほぼ略奪愛とはいえ)がついに成就したことは彼女にとっても、うれしいのだろう。
女2人、男1人で他愛もないことを話している間は、ナギコもカイリも、レンカからの報復の可能性などすっかり忘れていた。
仮にそのことについて考えていたとしても、あのレンカの報復なんて――一昨日のゴキブリ型チョコレートのように悪趣味なフォルムのチョコレートをグイグイと押し付けてくる or 郵便ポストの中にねじ込んでくるぐらいであるだろうとも。
不意にテーブルの上のフウちゃんのスマホが震えた。明るいデブキャラなフウちゃんは、なかなかに顔が広い。
大勢の友達のうちの誰かからのL〇NEかと思って画面を確認したらしいフウちゃんの顔が瞬時に「!!!」と凍りついた。
「! ちょっ……ヤバいっことになっているよ。あのレンカって娘(こ)……今、海で”ライブ配信”始めたって……!!」
ナギコも、カイリも自分のスマホを――凍りついた顔のままのフウちゃんが急いで自分たちに送ってくれたアドレスをクリックした。
アドレスは、とある動画投稿サイトにつながった。
今まさにライブ配信されている動画にて、冬ならではの寂しい色合いの海を背景にしている女は、紛れもないレンカであった。
両耳に真珠のピアス、甘いピンク色のセーターにカカオ色のコートを羽織ったレンカの瞼が腫れていることが、鮮明とはいえない画質の中でも分かった。
まさか……当てつけで、公開自殺でもする気なのか?!!
※※※
動画の中のレンカがゆっくりと、唇を開いた。
真冬の海辺にいるという寒さのためか、それともたった今より自ら入水し死出の旅へと赴く決意を決めているかもしれないからであろうか、彼女のその唇だけでなく、頬までも白く血の気がなかった。
「レンカは本当に異次元のチョコレート王国のプリンセスなの。王子様を探しにこの世界にやって来て、大学受験して、その大学でカッコいい王子様を見つけたんだけどね。大切な王子様を泥棒に盗られちゃったの……」
ポロポロと涙を流すレンカ。
涙を流しながらも、自分がチョコレート王国のプリンセスだなんて、”自身がキ○○イであることの自己紹介”を全世界へとライブ配信している。
「実はね、チョコレート王国のプリンセスには、代々受け継がれている力があるの。それはね……レンカが『チョコレートになあれ♡』と念じるとね……本当にその者や人がチョコレートになっちゃうのよ。ほら、これ見て」
レンカは左耳の真珠のピアスを外して、手の平へと乗せた。
そして『チョコレートになあれ♡』とレンカが言うやいなや、白い輝きを放る真珠のピアスは、一瞬にしてチョコボ〇ルのごときものへと変わった?!
「見た? レンカの力、スゴイでしょ? だからね、レンカはこの間もレンカのキッチンに出没したキモいゴキブリ6匹をチョコレートに変えて、”泥棒の手に渡るようにしたんだけど”、あの泥棒、ちゃんとゴキブリたちを食べたかなぁwww」
―――!!!!!!!!!!
一昨日の……あのゴキブリのフォルムをしたチョコレートは本当に……本当に、元ゴキブリだったということか!?!
「ぐっ……おぅええええええ!!!!!」
6匹の元ゴキブリたちを美味しくいただいてしまったフウちゃんが、消化途中のポテトチップス混じりの胃液をブシャーッと吐き出し始めた。まるでマーラ〇オンのように。
「フウちゃん!!」
ナギコは慌ててフウちゃんの背中をさする。
「わ、わたし……も、もう、チョコレート食べられないよぉ……」
真っ赤な顔でゼェゼェと息を吐き続けるフウちゃん。
”あれは手品だよ、手品に違いないって!”という言葉と、”だから、あの時、食べない方がいいって言ったじゃん!”という言葉が、吐き気をこらえるナギコの口元まで出かかっていた。
カイリは、ふくよかなマーラ〇オンとなってしまったフウちゃんの心配をする余裕すらなくなっているのか、真っ青な顔のままスマホ画面から――デンパ(電波)なわけではなくガチで”チョコレート王国のプリンセス”であったレンカから目が離せなくなっているようであった。
「レンカの王子様の名前はね、カイリって言うの。カイリはお刺身とか、海鮮料理とかが大好きで、レンカのチョコレートをあまり食べてくれなかったの。でも、いつかはチョコレートを好きになってくれるんだって信じて、レンカは王子様にチョコレートを渡し続けたの。けれども、そんな時に泥棒が……ナギコって名前の泥棒が擦り寄ってきてね、レンカの王子様……盗られちゃった。しかも、王子様は泥棒に、レンカの手作りチョコレートを渡してた……レンカの愛がたっぷりのチョコレートも、レンカの思いも全て、泥棒と裏切者の王子様に踏みにじられちゃった……」
レンカの瞳からは、再び涙が盛り上がり始めた。
「だから、レンカは決意したの。絶対に許さないって。最悪のバレンタインデーにしてやるって。レンカが、泥棒と裏切者にチョコレートで天罰をくだしてやるって……」
フフッと笑ったレンカが、背後に映っていた海へと向かって足を向け始めた。
そう、海へと――
「チョコレートになあれ♡」
レンカは言った。確かに彼女は”海へと向かって”そう言った。
―――!!!!!!!!!
彼女の言葉に間髪入れず、穏やかに打ち寄せていた波は――ドロッドロのチョコレートへと変わってしまっていた!!!
海が――海水がすべてチョコレートに!!!!
動画の中に映っている海だけじゃない。海は世界中に繋がっているのだ。世界中の海がチョコレートになってしまったということだ!!!
地球は青い地球ではなく、茶色い地球となってしまったのだ!!!
「レンカの愛と憎しみがたっぷりのチョコレートを”み~んな”召し上がれ♪」
茶色い海を背景としたレンカが振り返り、ニッタアと笑顔を見せた。
「カイリとナギコも本当に残念だね。お魚サンだって、チョコレートの海では生きられるわけないし、もうお刺身とか海鮮料理とか二度と食べることできないね。ううん、それだけじゃない。この世界の人たちだっていずれは皆、死んじゃうよね。わずかな水を巡って猛烈な争いだって起こるだろうしw レンカの愛を踏みにじって、こんなことになっちゃう原因となったカイリとナギコはどうなるのかなあ? 暴徒と化した民衆の人たちにつかまって、殴り殺されちゃったりなんかしたりしてw でも、レンカは知ーらないw レンカは今から、パパとママが待っている異次元のチョコレート王国に帰るんだモン」
※※※
茶色い地球においては、新鮮な魚などを捕ることはもうできなくなってしまった。
もちろん、動画終了後、きれいさっぱりこの世界から姿を消した――チョコレート王国に帰ってしまったらしいレンカの耳たぶで光っていた真珠なども捕れなくなってしまった。
マーラ〇オンが吐き出すのも、水ではなくドロドロのチョコレートに変わってしまっていた。
何より、チョコレートによる人類滅亡へのカウントダウンは着々と迫っていた。
チョコレートにアレルギー反応を示す体質の人だけでなく、チョコレートが元々好きな人であっても水代わりにチョコレートを日常的に飲み続けることなどできるわけなどない。
新鮮な水が足りない。
調理をしようにもそのための水が無い。
よって、食料だって足りなくなっている。
エチケットとして身を清めることだって、困難になっている。
さらに言うなら、それだけではなかった。
レンカが世界中の海をチョコレートに変えてしまった時、当然のことながら、海にてサーフィンやダイビングを楽しんでいる人々がいたのだ。
気の毒に、チョコレートによって窒息死、もしくはパニックを起こして溺れ死んだ人々のチョコレートまみれの無惨な遺体が何百体も発見されていた。
カカオの香り立つドロドロの海の中における捜索活動は困難を極め、その遺体すら発見できないであろう”推定死者”も相当な数となっていた。
世界中で5000名を優に越すことになった死者。そして、さらにその数倍の数はいるであろう遺族たちの悲しみと怒り。
刻々と迫りくる滅亡への恐怖、今までのごく普通の生活と、大切な人々をチョコレートによって奪われてしまった世界中の者たちの怒りは、当然のごとながら、この異常事態の原因を作ったナギコとカイリへと一直線へと向けられた。
若者たちのよくある恋愛のいざこざが、人類滅亡間近の事態を引き起こしたのだから。
本来だったら、実行犯であるレンカを捕らえ公開処刑すべきであろうが、異次元へと戻ってしまった女を捕らえることなどはできない。
あの動画をリアルタイムで見ていた者たち&保存していた者たちの手によって、人類史上最悪の恋愛トラブルによって、地球と地球に住む全ての人々に大損害と絶望を与えたナギコとカイリの本名ならび大学名、住所、顔写真等は、すでに世界中にばらまかれてしまっていた。
まさに世界の終りのごとく荒れ果ててしまったうえ、海辺に近いわけでもないのに、どこにいっても甘いチョコレートの匂いが充満している町中にて、ナギコとカイリは手を取り合い、今日も逃げ続けていた。
「――あそこにいたぞ! つかまえろ!」
とうとう、見つかってしまった!
手を繋いだまま振り返ったナギコとカイリの目に、自分たちへとドドドドドドドドドと駆けてくる100人はゆうに超えているであろう者たちの姿が映った!!!
揃いも揃って削がれたようにこけた頬と血走った瞳の暴徒たちの手には、鉄パイプやら金属バッドやらゴルフクラブやらフライパンやらが、”ただ一つの目的のために”しっかりと握られていた。
―――fin―――
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