チエコ先生とキクちゃんの水平思考クイズ【31】若奥様のお部屋【なずみのホラー便 第119弾】

なずみ智子

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若奥様のお部屋

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【問題】

 昭和初期。
 とある田舎町に、それはそれは美しい若奥様がいました。
 ですが、若奥様は嫁ぎ先の姑、つまりは大奥様との折り合いが悪いらしく、大きなお屋敷であるというのに一人だけポツンと離れた土蔵造りの離れで暮らしておりました。
 舅の大旦那様はすでに鬼籍に入っており、夫の若旦那様も自分の母親には逆らうことができないようでした。
 そのうえ、なんと大奥様は若旦那様と若奥様の間に子供を作ることも許さず、若旦那様の愛人の子どもを跡取りとしてお屋敷内に迎え入れていたのです。
 そんな若奥様の悲惨過ぎる境遇に目を付けたのは、手の付けられない不良青年三人組です。
 不良青年たちは、若奥様が一人で暮らす離れに忍び込む計画を立てました。
 奴らの目的はもちろん言うまでもありません。
 盛りのついた阿呆どもの考えることと言ったら、一つだけです。
 万が一、自分たちの仕業だと露見しても、あの嫁いびりの鬼婆(大奥様)が家の外聞を気にしてなかったことにするに違いないとも見込んでいました。
 深夜、離れの若奥様のお部屋に忍び込んだ阿呆どもでしたが、そこで”見てはならぬ光景”を見てしまいました。
 その後、奴らは三人とも生きてお屋敷を出ることはなかったわけですが、奴らが見てしまった”見てはならぬ光景”とは何だったのでしょうか?


【質問と解答】

キクちゃん : この回答は、サイコ説かオカルト説かのどちらかですね? まずはサイコ説の方から潰していきたく思います。美しい若奥様は、嗜虐的で血を好む性質を持っていて……いつか人すら殺めかねんと、それがゆえに離れに隔離されていた。そんな若奥様のお部屋に、三人の獲物がやってきた。奴らが見てしまったのは、若奥様が嗜虐的な行為にふけっている光景だったのでしょうか? 例えば、動物を虐待していたとか……

チエコ先生 : NO。若奥様に嗜虐的な趣味はなかったわ。それにね、女一人で男三人を殺害するのは猟銃でも持っていない限り無理ね。

キクちゃん : うーん、そうなるとオカルト説の方ですね。若奥様の正体は”人ならざる何か”であったんでしょうか?

チエコ先生 : NO。若奥様は人間よ。

キクちゃん : ……あ! 分かりました。お屋敷というか、離れそのものに何か曰くがあったんでしょうか? 祟りによって、奴ら三人とも命を落とすことになってしまったと。

チエコ先生 : NO。お屋敷は曰く付きではなかった。それに若奥様も含め、お屋敷内には人間しかいなかったわ。

キクちゃん : サイコ説も、オカルト説もハズレでしたか?

チエコ先生 : ……サイコ説は、完全に大外れとは言えないかもよ。三人の不良青年は刑務所に収監されるべき最低な奴らであるのは事実だけど、”人を殺せ”という命令を即座に下した者も、その命令に即座に従って遂行した者たちも、倫理的にはどうかと思うわね。

キクちゃん : チエコ先生、今の言葉に大ヒントを含ませてくれていますね! ありがとうございます! 「その命令に即座に従い遂行した者たち」ということは、三人はお屋敷内の使用人たちによって殺されたいうことですね。

チエコ先生 : YES。

キクちゃん : ということは……三人が若奥様に襲い掛かろうとしたけど、若奥様の悲鳴を聞いた使用人たちが駆け付け……辱められそうになった若奥様が「そいつらを殺して!」と叫んで……あれ? でも、そうなると若奥様のお部屋における”見てはならぬ光景”には繋がらないなぁ?

チエコ先生 : キクちゃん、いい線はいっているけど、お屋敷内における力関係をもう一度、見直してみて。使用人たちだって若奥様の命令は聞くかもしれない。でも、例えば若奥様が「右に進め」と言っても、お屋敷内でもっと強い力を持つ人間が「左に進め」と言ったなら、使用人たちは左に進むでしょうね。

キクちゃん : となると、お屋敷内での最高権力者……つまりは大奥様が殺害を命じたんですね?

チエコ先生 : YES。正解よ。

キクちゃん : でも、おかしいですね。大奥様は若奥様のことをあまり好いていないというか、田舎町に広まってしまうほどの嫁いびりをしていたんですよね。いくら未遂に終わってしまったとはいえ、嫁が襲われかけたなんてことは外に知れれば、家の恥になると考えて……

チエコ先生 : NO。

キクちゃん : となると、いくら虫が好かなくて憎い嫁であっても、同じ女として受けそうになった恐怖や屈辱が許せなかったということでしょうか?

チエコ先生 : NO。それも理由の一つにはなるかもしれないけど、”見てはならぬ光景”には繋がらないわ。

キクちゃん : ……今回は降参します。答えを教えてください。

チエコ先生 : 分かったわ。事件当夜、離れの若奥様のお部屋には、若奥様と大奥様の二人がいたの。白い肌身にうっすらと汗を滲ませた若奥様とその傍らで白髪頭を振り乱した大奥様がね。

キクちゃん : !!! ……ま、まさか、二人は恋人関係というか、愛人関係にあったんですね。”見てはならぬ光景”とは、その禁断の関係であったと。

チエコ先生 : YES。正解よ。そう、性別も年代も超えて、彼女たちはお互いに愛し合っていた。若旦那様もお屋敷内の使用人たちも、”秘密の愛”を知っていたけれども、皆、外にはそれを漏らすことはなかった。当時は現代とは違って、世間の目も厳しかったでしょうし、絶対に知られてはならないことだったのよ。だからこそ、”鬼姑による嫁いびり”という真実とは逆の噂をあえて意図的に流していたのかもしれないわ。

※ この問題はフィクションです。


(完)
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