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それはプルンと揺れて

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 リビングで算数の勉強をしていた若菜ちゃんの前に、女神様が現れました。
 お綺麗なうえにお優しそうな女神様は「まあ、一人でお留守番中なのに自主的にお勉強をしているの? 偉いわねえ」と若菜ちゃんを褒めてくれました。

 そして、女神様は若菜ちゃんの前におっきなプリンを出してくれました。
 頂きにチョコンとホイップクリームが乗せられた”それ”は、いかにも美味しそうにプルンと揺れています。

「このプリンはね。大人になったあなたのおっぱいの大きさよ」

「え? 私のおっぱい、こんなに大きくなるの?」

 おっぱいの大きい女の人に密かに憧れていた若菜ちゃん。
 今はまだペタンコだけど、私だって大人になったら、きっとあんな風に……と若菜ちゃんは、将来への希望を胸いっぱいに膨らませていたのです。

「このプリン、食べていいわよ」

「え……えっと、でも、今ここで食べちゃったら、未来の私のおっぱいが全部なくなっちゃったりしないよね?」

「そんなことにはならないわよ。だから、安心してお食べなさい」


※※※


 若菜ちゃんが女神様からいただいたプリンを食べてから、二十年ほどの月日が経ちました。
 今や若菜”ちゃん”ではなく、若菜”さん”と呼ぶべき年齢です。
 思い返すと、あの出来事は全て夢だったのかもしれません。
 でも、若菜さんは女神様の美しさも、ほっぺたがとろけて落ちるかと思われるほどのあのプリンの美味しさも、今もなお、しっかりと覚えていました。
 さらには、現在の若菜さん自身のおっぱいも、プリンの予言通りと言える大きさに成長していたのです。
 
 そんなある日、若菜さんは偶然に小中学校の同級生であり、幼馴染でもある女性に再会しました。
 懐かしさに話も弾み、若菜さんは彼女の家にお邪魔することになりました。

 ちなみにこの幼馴染の女性は、若菜さんよりおっきなおっぱいをしていました。
 さらに付け加えるなら、彼女はおっぱいだけでなく全体的に……すなわち縦にも横にも大きい人でした。

 若菜さんのために自家製のプリンを作ってくれた幼馴染は、慣れた手付きでそれを切り分けて始めました。

 不思議な記憶を呼び覚ますプリンというスイーツに、若菜さんはつい、小学生の時に女神様にプリンをいただいたことを話してしまいました。
「たぶん、夢を見ていただけだと思うけど。夢って本当に奇想天外よね」と、変な人だと思われないように保険の言葉も付け加えたうえでです。
 
 しかし、話を聞いた幼馴染は顔色を変えました。
 若菜さんが気づいた時、幼馴染の手に握られていたナイフはプリンではなく、若菜さんの左のおっぱいに刺さっていました。

 幼馴染は喚きながら、若菜さんのおっぱいを左も右も構わずにブスブスと……グチャグチャに崩さんとするかのごとく、なおも突き刺してきます。

「あんたもあの女神様にプリンをもらっていたのね! でも、なんであんただけが幸運を独り占めしてんのよ! あんたは昔から美人だったけど、崩れもせずに美人のまま大人になったばかりか……一流大学に現役合格して、一流企業に入社して……そのうえ、もうすぐ結婚ですって……! 女神様に会ったのは私も同じなのに、女神様にプリンをもらったのは私も同じなのに…………なんで、私は大学受験に失敗し、碌な職場に巡り会えないうえに彼氏の一人もできないのよ! なんで、あんただけが何もかもうまくいっているのよ?! ズルいわよ!! ズルすぎるわよ!!!」

 あの女神様は、若菜さんにプリンを食べると幸運になる、これから何もかもうまくいくなんてこと、一言も言っていませんでした。
 幼馴染の女性にだけ、そう伝えたのでしょうか。
 いや、そんなことはないでしょう。
 女神様は、彼女たち二人にプリンをくれただけではないかと思うのですが。

 次々に襲いかかる激痛に潰されゆく若菜さんの視界で、幼馴染はなおも激しく体を……特におっぱいを激しく上下させてていました。
 若菜さんがこの世で最期に見たのは、それがプルンと揺れる光景でした。 


(🍮完🍮)
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