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行方不明の兄を探して
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【問題】
今回の問題は、SNSが発達する前の時代(1990年代後半ぐらい)を舞台としています。
キョウ子さんは二歳年上のお兄さんのことが昔から大好きでした。
ですが、お兄さんは高校の卒業式の日に行方不明になってしまいました。
行方不明というか、それは自発的な家出だと思われる状況でした。
なぜなら「遠くで暮らします。俺のことは絶対に探さないでください」と自筆の書き置きが家に残されていたのですから。
それを見たキョウ子さんは半狂乱になったのですが、両親は息子がいなくなったにしては落ち着き払い、捜索願を出すこともありませんでした。
時折、「あの子は今、どこで何をしているのかしらね?」「元気で自由に生きてさえいてくれれば、それだけでいいだろ」と悲しそうな顔で話してはいましたが、キョウ子さんがどんなに頼んでも積極的に息子を探そうとはしなかったのです。
「こうなったら、私がお兄ちゃんを連れ戻してみせるわ!」
そう決意したキョウ子さんは、車の免許が取れる年齢になるまで我慢し続けました。
免許を取ってから即効、キョウ子さんは両親が必死で止めるのも振り切り、とある県のとある村へと車を走らせました。
その村は、昔、お兄さんとキョウ子さんが一緒にTVを見ていた時に「いい光景だな。将来、こんなに自然が豊かな村で暮らせたら幸せだろうなあ」と言っていた所です。
さて、キョウ子さんはお兄さんを見つけ出すために何をしたのでしょうか?
【質問と解答】
キクちゃん : 今回の問題文ですが、一回読んだだけでもキョウ子さんのお兄さんに対する異常な執着というか、サイコっぽい何かが伝わってくるような……ご両親の態度との差といい……確かに大好きな家族が突然にいなくなってしまったことは、悲しいや寂しいなんて言葉では表せないほどの苦しみだとは思いますが……。
チエコ先生 : 一回読んだだけで感じ取れたなんて、さすがよ、キクちゃん。さて、キョウ子さんはお兄さんを見つけ出すため、村で何をしたのだと思う?
キクちゃん : 今回はSNSが発達する前の時代の舞台なんですよね? となると、地道に聞き込みをしていったのでしょうか? そもそも、SNSが発達している現代においても、聞き込みの力は侮れないと思いますし。
チエコ先生 : YES。”まずは”お兄さんの写真を手に聞き込みをしていったのよ。過疎化しつつある小さな村だったから、聞き込み相手の大半は中高年から高齢者だったわ。
キクちゃん : その聞き込みで、お兄さんの居場所が分かったのでしょうか?
チエコ先生 : NO。お兄さんのことは知らないし見たこともない、と皆が答えたのよ。
キクちゃん : ……村の人たちの答えは真実でしたか?
チエコ先生 : YES。お兄さんはその村に来てすらいなかった。村の人たちは誰一人として嘘をついていなかったのよ。
キクちゃん : …………キョウ子さんは、村の人たちの答えを信じましたか?
チエコ先生 : NO。信じなかった。「そんなはずはない! こいつらは絶対に嘘をついているわ! 口裏を合わせて、私がお兄ちゃんを取り戻す邪魔をするつもりなのね!」と怒りに震えていたの。
キクちゃん : ……………その怒りは、ただでさえサイコ要素を持つキョウ子さんを何らかの非人道的な行為に走らせましたか?
チエコ先生 : YES。キョウ子さんは思ったのよ。「この閉じられたような村では、何かが起こったとしても全て”なかったこと”にされてしまうのかもしれない。お兄ちゃんはこの村で何らかの事故に遭って既に命を落とし……ううん、誰かに殺されてしまったのよ、きっと……。でも、卑劣なこいつらは自分たちを守るために、お兄ちゃんのことは知らないと……そんなのは許せない。私からお兄ちゃんを奪っておきながら、こいつらは今ものうのうと生き続けているなんて……!」とね。
キクちゃん : ………………もう、大量殺戮という地獄絵図しか描けないです。キョウ子さんは村で大量殺戮を行ったのでしょうか?
チエコ先生 : NO。大量殺戮ではないわ。身勝手にも程がある殺人事件の被害者の方を単なる数字で数えるのは違うとは思うけど、キョウ子さんが殺害したのは一人だった。キョウ子さんに言わせると、「皆殺しにしたかったのに、お兄ちゃんの仇を取りたかったのに、あんたたちの命なんて私のお兄ちゃんの命の百万分の一の価値もないのに、私はたった一人しか殺ることができなかったのね……」ということなのよ。キョウ子さんが起こした殺人事件を説明するわね。その村の人たちは皆顔見知りのため、家に鍵をかける人なんていなかった。よって、たまたま目についた無施錠の民家に忍び込んだキョウ子さんは、たまたまそこで寝たきりのお婆さんを見つけた。「最初はまずこいつから……」と思ったキョウ子さんは、動けないお婆さんに馬乗りとなり首を絞め続けたわ。お婆さんがついに落命し、キョウ子さんが「さて次は誰を殺ろうか……」と考えていた時、ちょうどお婆さんの息子が帰宅したの。息子さんは家の中で何かが起こったことを……家族でない者の気配が在ることを敏感に察知し、猟銃を手に母親が寝ているはずの部屋へと乗り込んできた。そこでこれ以上の地獄はないと言える光景を目にすることになった息子さんは、叫びとともに殺人者(キョウ子さん)を撃ったのよ。
キクちゃん : キョウ子さんはそうして死んだのですか。
チエコ先生 : ……いいえ、死ななかった。悪運が強いのか何なのかは知らないけど、一命は取り留めたのよ。でも、キョウ子さんが起こした殺人事件は数日のうちにニュースにもなったわ。全国ネットでのね。なお、全く違う土地で自由を取り戻していたキョウ子さんのお兄さんは一日の労働を終えた後、同僚たちと立ち寄った定食屋のTVから流れてきたニュースにて、妹が起こした殺人事件を知ることとなったわ。キョウ子さんは未成年だったため、名前や顔写真こそ公開されていなかったけど、お兄さんには分かったみたいよ。もしかしたら、これは自分の狂った妹が起こした事件かもしれないってね。
(完)
今回の問題は、SNSが発達する前の時代(1990年代後半ぐらい)を舞台としています。
キョウ子さんは二歳年上のお兄さんのことが昔から大好きでした。
ですが、お兄さんは高校の卒業式の日に行方不明になってしまいました。
行方不明というか、それは自発的な家出だと思われる状況でした。
なぜなら「遠くで暮らします。俺のことは絶対に探さないでください」と自筆の書き置きが家に残されていたのですから。
それを見たキョウ子さんは半狂乱になったのですが、両親は息子がいなくなったにしては落ち着き払い、捜索願を出すこともありませんでした。
時折、「あの子は今、どこで何をしているのかしらね?」「元気で自由に生きてさえいてくれれば、それだけでいいだろ」と悲しそうな顔で話してはいましたが、キョウ子さんがどんなに頼んでも積極的に息子を探そうとはしなかったのです。
「こうなったら、私がお兄ちゃんを連れ戻してみせるわ!」
そう決意したキョウ子さんは、車の免許が取れる年齢になるまで我慢し続けました。
免許を取ってから即効、キョウ子さんは両親が必死で止めるのも振り切り、とある県のとある村へと車を走らせました。
その村は、昔、お兄さんとキョウ子さんが一緒にTVを見ていた時に「いい光景だな。将来、こんなに自然が豊かな村で暮らせたら幸せだろうなあ」と言っていた所です。
さて、キョウ子さんはお兄さんを見つけ出すために何をしたのでしょうか?
【質問と解答】
キクちゃん : 今回の問題文ですが、一回読んだだけでもキョウ子さんのお兄さんに対する異常な執着というか、サイコっぽい何かが伝わってくるような……ご両親の態度との差といい……確かに大好きな家族が突然にいなくなってしまったことは、悲しいや寂しいなんて言葉では表せないほどの苦しみだとは思いますが……。
チエコ先生 : 一回読んだだけで感じ取れたなんて、さすがよ、キクちゃん。さて、キョウ子さんはお兄さんを見つけ出すため、村で何をしたのだと思う?
キクちゃん : 今回はSNSが発達する前の時代の舞台なんですよね? となると、地道に聞き込みをしていったのでしょうか? そもそも、SNSが発達している現代においても、聞き込みの力は侮れないと思いますし。
チエコ先生 : YES。”まずは”お兄さんの写真を手に聞き込みをしていったのよ。過疎化しつつある小さな村だったから、聞き込み相手の大半は中高年から高齢者だったわ。
キクちゃん : その聞き込みで、お兄さんの居場所が分かったのでしょうか?
チエコ先生 : NO。お兄さんのことは知らないし見たこともない、と皆が答えたのよ。
キクちゃん : ……村の人たちの答えは真実でしたか?
チエコ先生 : YES。お兄さんはその村に来てすらいなかった。村の人たちは誰一人として嘘をついていなかったのよ。
キクちゃん : …………キョウ子さんは、村の人たちの答えを信じましたか?
チエコ先生 : NO。信じなかった。「そんなはずはない! こいつらは絶対に嘘をついているわ! 口裏を合わせて、私がお兄ちゃんを取り戻す邪魔をするつもりなのね!」と怒りに震えていたの。
キクちゃん : ……………その怒りは、ただでさえサイコ要素を持つキョウ子さんを何らかの非人道的な行為に走らせましたか?
チエコ先生 : YES。キョウ子さんは思ったのよ。「この閉じられたような村では、何かが起こったとしても全て”なかったこと”にされてしまうのかもしれない。お兄ちゃんはこの村で何らかの事故に遭って既に命を落とし……ううん、誰かに殺されてしまったのよ、きっと……。でも、卑劣なこいつらは自分たちを守るために、お兄ちゃんのことは知らないと……そんなのは許せない。私からお兄ちゃんを奪っておきながら、こいつらは今ものうのうと生き続けているなんて……!」とね。
キクちゃん : ………………もう、大量殺戮という地獄絵図しか描けないです。キョウ子さんは村で大量殺戮を行ったのでしょうか?
チエコ先生 : NO。大量殺戮ではないわ。身勝手にも程がある殺人事件の被害者の方を単なる数字で数えるのは違うとは思うけど、キョウ子さんが殺害したのは一人だった。キョウ子さんに言わせると、「皆殺しにしたかったのに、お兄ちゃんの仇を取りたかったのに、あんたたちの命なんて私のお兄ちゃんの命の百万分の一の価値もないのに、私はたった一人しか殺ることができなかったのね……」ということなのよ。キョウ子さんが起こした殺人事件を説明するわね。その村の人たちは皆顔見知りのため、家に鍵をかける人なんていなかった。よって、たまたま目についた無施錠の民家に忍び込んだキョウ子さんは、たまたまそこで寝たきりのお婆さんを見つけた。「最初はまずこいつから……」と思ったキョウ子さんは、動けないお婆さんに馬乗りとなり首を絞め続けたわ。お婆さんがついに落命し、キョウ子さんが「さて次は誰を殺ろうか……」と考えていた時、ちょうどお婆さんの息子が帰宅したの。息子さんは家の中で何かが起こったことを……家族でない者の気配が在ることを敏感に察知し、猟銃を手に母親が寝ているはずの部屋へと乗り込んできた。そこでこれ以上の地獄はないと言える光景を目にすることになった息子さんは、叫びとともに殺人者(キョウ子さん)を撃ったのよ。
キクちゃん : キョウ子さんはそうして死んだのですか。
チエコ先生 : ……いいえ、死ななかった。悪運が強いのか何なのかは知らないけど、一命は取り留めたのよ。でも、キョウ子さんが起こした殺人事件は数日のうちにニュースにもなったわ。全国ネットでのね。なお、全く違う土地で自由を取り戻していたキョウ子さんのお兄さんは一日の労働を終えた後、同僚たちと立ち寄った定食屋のTVから流れてきたニュースにて、妹が起こした殺人事件を知ることとなったわ。キョウ子さんは未成年だったため、名前や顔写真こそ公開されていなかったけど、お兄さんには分かったみたいよ。もしかしたら、これは自分の狂った妹が起こした事件かもしれないってね。
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