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第1章 入学前
3話 高次元世界
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ゴトンゴトン
電車の窓に映るのは暗闇だけ。
俺たちは今、どうやら高次元世界というところに向かっているらしい。
あたりを見回すと、車両内には同じ年くらいの人がいる。
おそらく俺達と同じように、チューベローズの入学試験を受ける人達だろう。
入学試験……? あ、そうだ! 今日は試験だった、勉強しないと。
高次元世界について考えるのをやめ、俺は再びノートを見返しはじめた。
◇◇◇
「はあ……」
電車を乗って1時間ほど経ったとき、急にフィアスの元気がなくなった。
「フィアス、大丈夫?」
「ごめん……。ちょっと体調が悪くて……」
「フィアス、辛ければ横になってもいいですわよ」
「ありがとう……」
フィアスは一番端の席に座り、しんどそうに壁にもたれかかっている。乗り物酔いだろうか、さっきまでは普通だったのに。
それから間もなくして、雪夜の様子も変わり始めた。
「これは一体……。目がおかしくなったのでしょうか」
「どうしたの雪夜まで、乗り物酔い? ……って、どうしたのその髪!?」
「え……?」
雪夜の髪は深い青色に染まっていた。
なんと瞳まで青くなっている、まるでサファイアのように。
「はあ……。この感覚は、乗り物酔いとかではありませんわ。こう、見えてはいけないようなものが見えているような…。そしてそれを見ていると気分が悪くなるというか……」
よく分からないが、嘘を言っているようには見えない。
高次元世界に近づくことで、環境のようなものが変わりつつあるのだろうか。いや、もしかするとすでに高次元世界に入っているのかもしれない。
二人の様子を見ていると、だんだん高次元世界に恐怖を抱き始めた。
電車はものすごい速さで走っているように感じるが、景色はずっと暗闇のまま。ところどころ駅に止まっているようだけど、一体どこを走っているのだ。
『まもなく、水仙道。水仙道。お忘れ物の無いようお降りください』
プシューーーーーッ
1時間半の電車旅を終え、ようやく目的地の水仙道駅に到着した。乗っていた学生らしき人が次々と降りて行く。
「フィアス、着いたけど降りられる?」
「うん、ありがとう……」
フィアスは俺の肩に捕まり、ふらふらと立ち上がった。
フィアスは明らかな体調不良だったが、雪夜はそういうわけではないらしい。ずっと不気味な感覚に苛まれているのだと。
電車を降りると、そこは乗った時と同じような地下鉄のホームだった。
人の流れに身を任せ、ランタンで灯された暗い道を歩く。
そこにはやはり、エレベーターの扉があった。
「一人ずつお入りください」
警備員さんが誘導している。
一人、また一人と扉の中へ入って行く。
「はい、次」
ようやく俺の番だ。
恐る恐る、再び真っ暗で狭いエレベーターに入る。
ガーーーーーーーー
エレベーターだと分かってしまえば、すごい速さで上昇しているのを明らかに感じた。一体どれだけ地下深くに潜っていたのだろう。
ガタン!!
エレベーターを出た先は、行きと同じような役所の中。
そこに雪夜とフィアスが待っていた。
そして、三人で役所の外へ出る。
外の風が吹き抜ける。
目の前には都会が広がっているが、街並みがまるで異なっている。近未来的でありながら、西洋風の骨董とした建物も並んでいた。
「おおっ、すごっ! 綺麗!!」
初めて外国に来た観光客のように、テンション上げ上げで雪夜とフィアスに笑いかける。
しかし、二人は立ち止まって呆然としていた。
「黒い……。なんですの……この感覚は……」
「……情報が多すぎる……目と頭が疲れる……」
「え?」
やはり二人とも乗り物酔いではなかったようだ。
そういえば、雪夜が『感覚の鋭い人には不思議な世界に見える』って言ってたけど、もしかすると雪夜とフィアスは常人より感覚が鋭くて、高次元世界の何かを感じ取っているのかもしれない。
俺は全く何も感じないけども。
「受験票の地図にはここから西って書いてある。この近くにチューベローズ行きのバスが出ているみたいだからそれに乗ろう。雪夜も荷物持つよ」
「糸、ありがとうございます。私もこの変な感覚になれるまで、貴方に頼らせて頂きますわ」
俺は雪夜とフィアスの荷物を持ち、バス停に向かってゆっくりと歩き始めた。
フィアスはふらふらしながら俺の服の袖を掴んでいる。
少し歩くと、地図に書かれた通りバス停のあるロータリーへ到着した。しかし、試験当日ということもあってか、学生で混んでいる。
プシューーーーー
バスには乗れたものの、満席だ。
仕方ないので立っていると、フィアスが不思議そうに言った。
「糸、どうして立ってるの?」
「どうしてって、満席じゃないか」
「なに言ってるの、あそこいっぱい空いてるじゃん」
「え、どこ」
フィアスは俺の服の袖を引いてトコトコ後部へ歩いていく。
するとなんと、後部の窓をすり抜け、たくさんの空席がある空間に出た。
「一体どうなってるんだ」
外から見たバスの形からは考えられない広さだ。
間違いなく道路にはみ出してるぞ。
「ふぇっふぇっふぇ。教えてやろうかの?」
「あ、あなたは?」
「ただのじじいじゃよ」
突然、席に座り杖をついたおじいさんに話しかけられた。
電車の窓に映るのは暗闇だけ。
俺たちは今、どうやら高次元世界というところに向かっているらしい。
あたりを見回すと、車両内には同じ年くらいの人がいる。
おそらく俺達と同じように、チューベローズの入学試験を受ける人達だろう。
入学試験……? あ、そうだ! 今日は試験だった、勉強しないと。
高次元世界について考えるのをやめ、俺は再びノートを見返しはじめた。
◇◇◇
「はあ……」
電車を乗って1時間ほど経ったとき、急にフィアスの元気がなくなった。
「フィアス、大丈夫?」
「ごめん……。ちょっと体調が悪くて……」
「フィアス、辛ければ横になってもいいですわよ」
「ありがとう……」
フィアスは一番端の席に座り、しんどそうに壁にもたれかかっている。乗り物酔いだろうか、さっきまでは普通だったのに。
それから間もなくして、雪夜の様子も変わり始めた。
「これは一体……。目がおかしくなったのでしょうか」
「どうしたの雪夜まで、乗り物酔い? ……って、どうしたのその髪!?」
「え……?」
雪夜の髪は深い青色に染まっていた。
なんと瞳まで青くなっている、まるでサファイアのように。
「はあ……。この感覚は、乗り物酔いとかではありませんわ。こう、見えてはいけないようなものが見えているような…。そしてそれを見ていると気分が悪くなるというか……」
よく分からないが、嘘を言っているようには見えない。
高次元世界に近づくことで、環境のようなものが変わりつつあるのだろうか。いや、もしかするとすでに高次元世界に入っているのかもしれない。
二人の様子を見ていると、だんだん高次元世界に恐怖を抱き始めた。
電車はものすごい速さで走っているように感じるが、景色はずっと暗闇のまま。ところどころ駅に止まっているようだけど、一体どこを走っているのだ。
『まもなく、水仙道。水仙道。お忘れ物の無いようお降りください』
プシューーーーーッ
1時間半の電車旅を終え、ようやく目的地の水仙道駅に到着した。乗っていた学生らしき人が次々と降りて行く。
「フィアス、着いたけど降りられる?」
「うん、ありがとう……」
フィアスは俺の肩に捕まり、ふらふらと立ち上がった。
フィアスは明らかな体調不良だったが、雪夜はそういうわけではないらしい。ずっと不気味な感覚に苛まれているのだと。
電車を降りると、そこは乗った時と同じような地下鉄のホームだった。
人の流れに身を任せ、ランタンで灯された暗い道を歩く。
そこにはやはり、エレベーターの扉があった。
「一人ずつお入りください」
警備員さんが誘導している。
一人、また一人と扉の中へ入って行く。
「はい、次」
ようやく俺の番だ。
恐る恐る、再び真っ暗で狭いエレベーターに入る。
ガーーーーーーーー
エレベーターだと分かってしまえば、すごい速さで上昇しているのを明らかに感じた。一体どれだけ地下深くに潜っていたのだろう。
ガタン!!
エレベーターを出た先は、行きと同じような役所の中。
そこに雪夜とフィアスが待っていた。
そして、三人で役所の外へ出る。
外の風が吹き抜ける。
目の前には都会が広がっているが、街並みがまるで異なっている。近未来的でありながら、西洋風の骨董とした建物も並んでいた。
「おおっ、すごっ! 綺麗!!」
初めて外国に来た観光客のように、テンション上げ上げで雪夜とフィアスに笑いかける。
しかし、二人は立ち止まって呆然としていた。
「黒い……。なんですの……この感覚は……」
「……情報が多すぎる……目と頭が疲れる……」
「え?」
やはり二人とも乗り物酔いではなかったようだ。
そういえば、雪夜が『感覚の鋭い人には不思議な世界に見える』って言ってたけど、もしかすると雪夜とフィアスは常人より感覚が鋭くて、高次元世界の何かを感じ取っているのかもしれない。
俺は全く何も感じないけども。
「受験票の地図にはここから西って書いてある。この近くにチューベローズ行きのバスが出ているみたいだからそれに乗ろう。雪夜も荷物持つよ」
「糸、ありがとうございます。私もこの変な感覚になれるまで、貴方に頼らせて頂きますわ」
俺は雪夜とフィアスの荷物を持ち、バス停に向かってゆっくりと歩き始めた。
フィアスはふらふらしながら俺の服の袖を掴んでいる。
少し歩くと、地図に書かれた通りバス停のあるロータリーへ到着した。しかし、試験当日ということもあってか、学生で混んでいる。
プシューーーーー
バスには乗れたものの、満席だ。
仕方ないので立っていると、フィアスが不思議そうに言った。
「糸、どうして立ってるの?」
「どうしてって、満席じゃないか」
「なに言ってるの、あそこいっぱい空いてるじゃん」
「え、どこ」
フィアスは俺の服の袖を引いてトコトコ後部へ歩いていく。
するとなんと、後部の窓をすり抜け、たくさんの空席がある空間に出た。
「一体どうなってるんだ」
外から見たバスの形からは考えられない広さだ。
間違いなく道路にはみ出してるぞ。
「ふぇっふぇっふぇ。教えてやろうかの?」
「あ、あなたは?」
「ただのじじいじゃよ」
突然、席に座り杖をついたおじいさんに話しかけられた。
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