正夢が見れるなら高次元世界でも無双できる?

エポレジ

文字の大きさ
22 / 67
第2章 劣等生

22話 サークル

しおりを挟む
 課外活動施設408号室。

 ガラガラ

「失礼します……」

「あ、糸くん! 来てくれたんだ!」

「愛、この子が例の一年生?」

「そうそう! これで廃部が回避できるよ!」

「こんにちは、糸くん。私は2年Aクラス【二宮にのみや 菊音きくね】。歓迎するわ」

 薄茶色の髪をした綺麗な人が本を閉じて挨拶してくれた。

「よろしくお願いします」

「はっはっは、ようこそ! 私は異探サークルの顧問をしとる茶木ちゃきだ。基本は学外の企業におるが、ごくごくたまに学校の教師として顔を出す。よろしくな」

 白髪で白衣を着たおじいさんと握手する。
 異探とは異世界探索の略。
 茶木先生は滅多に来ないらしいが、今日は新人の顔を見るためにわざわざ来てくれたらしい。

「さて! フルメンバーも揃ったことだし、活動しよう!」

「フルメンバー? 顧問を入れて四人だけなんですか?」

「うん! 去年は二人でも大丈夫だったんだけど、今年から三人いないとサークルとして認めてもらえなくなったんだよ」

「でもこんな名前のサークルでも公認してくれるのだから寛容よね」

「二宮、異世界はオカルトでも何でもなく、実在する世界だぞ。逆時間の次元回路から得られたマスター方程式を解くと必ず虚数解が存在する。その虚数解が意味するところは……

「糸くん、ああやって語り始めた茶木先生の言葉は無理して聞かなくてもいいわよ」

 こそっと二宮さんが教えてくれる。
 聞こうにも、何を言っているのか分からない。
 一方で、愛さんは目を輝かせながらそれを聞いている。

 ……という結論に至るわけだ」

「なるほど、じゃあ茶木先生、実際に異世界へ行くにはどうすればいいの?」

「それには、まず大前提としてこの世界の時空を自在に移動できなければならない。時間の移動は、我々時間学者の最も悩まされている問題……だが、もしも【時谷ときたに 未来みらい】が力を貸してくれたのならばあるいは……あ、いかん! 16時半から西地区の会議室で会議があるんだった! ということで私は先に失礼する」

 バタン

 茶木先生は教室を出た。

「あの、話で出てきた時谷未来さんって……?」

「時谷先輩は、6年Aクラスの【時間の次元】と【逆時間の次元】の超能力者よ。時間を自由に駆けられるらしいのだけれど、あまり研究には協力的では無いみたい」

「時間学者の茶木先生いつも言ってるよね、時谷未来が協力してくれればタイムマシンも作れるのにって」

「タ、タイムマシン!?」

「糸くん、4つの基本的な力って知ってる?」

「4つの力ですか……? 腕力とか持久力とか……ごめんなさい、勉強は苦手で」

「あはは。重力、電磁力、強い力、そして弱い力だよ。この世界はね、この4つの力が生み出す場の中で、11次元の『ひも』が織り成す世界なんだ」

「強い……弱い……? ひも?」

「うん、そうだよ。でもね、私はきっと、これ以外の力や次元がまだあるんじゃないかって思ってるんだ。実際に私達は、今の科学じゃ説明できないような不思議な現象を目の当たりにしてきた。だから糸くん、私達と一緒に不思議を探して、世界の秘密を明らかにしよう!」

 賢さ小学生レベルの俺が、今の話を何割理解できただろうか。
 でも、不思議と言うと、俺の正夢も……。

 人は大人になるにつれて現実をよく知るようになる。
 だから、夢とか不思議とか、非現実的なものを子供のように追い求めることを諦める。
 でも、現実を知り尽くすと、一周回って不思議を探究するようになるのかもしれない。

 俺はこのサークルが持つ奇妙で独特な雰囲気のどこかに惹かれはじめていた。


 ◇◇◇


 この日の夜。
 とあるお店にて新歓コンパが行われていた。

「ねえ、松蔭さんってもしかしてあの松蔭財閥の!?」

「ええ、まあ……」

「すごーい! お嬢様で超能力者とかかっこよすぎるよ!!」

「あ、ずるいぞ! 俺も松蔭さんの横で話聞きてえ!」

「私もー!」

「ムフフ、おいらの隣はいっぱい開いてるでやんすよ!」

「おまちどうさま、レシスぺ人数分だよ」

 店員さんがレシスぺと呼ばれる謎のドリンクを配る。
 それを配り終え、幹事が立ち上がる。

「料理と飲み物がいきわたりましたね。本日は新入生の皆さん、本サークルの新歓コンパにお越しくださりありがとうございます。先輩とたくさんお話して、是非入部を検討してください!それでは我々パワフル野球部に!」

「「かんぱーい!!!」」

 ざわざわ……

「あの、この飲み物ってなんでやんすか?レシなんとかって言ってったやんすけど」

「レシプロカルスペースドリンク、略してレシスぺ。しばらくの間、逆空間の3次元のうち1次元だけを認識できるようになる飲み物さ。飲んでごらん」

「へえ、面白そうでやんすね! ではでは」

 尻口くんはごくごくと飲みだした。

「ひっく!! なんかポカポカしてきて…気持ちよくなってきたでやんす!!」

「3次元ある逆空間を1次元だけ認識するから、お酒みたいに酔っちゃうらしいんだ。でも体に悪い成分は入ってないし、お酒と違って15歳以上から認められているから、チューベローズの学生には大人気なんだぜ」

「うひょー!! おかわりでやんすー!!」

 そんな尻口くんたちの陰でフィアスはもぐもぐと箸を進めていた。

(……糸が作ってくれたご飯のほうが美味しいな)

「あなたも松蔭さんと同じで羽のバッジの新入生でしょ!?もしかして能力者!?」

「え……私は別に……」

「えー!! いいじゃん教えてよ~!!」

(か……帰りたい……!)

 フィアスは重度のコミュ障である。

「パワフル野球部は色んな球場で試合するんだけど、その中の一つに闇の次元のギミックがある球場もあるんだ。だから松蔭さんが入ってくれれば即レギュラーなんだけどな!」

「ですが私、野球経験はありませんわ」ゴクゴク

 ドドドッ!

「おいらは野球経験豊富でやんすよ!! 松蔭さんにいっぱい教えてあげるでやんす!」

「こらっ、尻口くん、暴れない!」

「ごめんでやんす……」


 ◇◇◇


 その頃、赤砂寮にて。
 今日は苺が俺の部屋に来てご飯を食べていた。

「それにしても苺はCクラスで大人気だな」

「何も良いことないわよ。みんなお兄ちゃんが目当てなだけで、千陽朝日の妹としてしか見てくれない」

「俺がドクロトリオの一人としか見てくれないのと一緒か」

「アンタたちと一緒にしないで!」

「でも最初はそんなもんなのかもしれないぞ。まだ会って二日の人なんて、どこどこ出身の人とかでしか認識してないから。これからの学校生活で苺らしくしていくと、きっとみんな苺として見てくれるようになってくれるんじゃないか?」

「……そうね。ごちそうさま、美味しかったわ」

「おそまつさま。そういえば以外だったよ、苺もたくさんの部活に誘われてたのに、新歓コンパには行かなかったんだな」

「当然よ。私はAクラスに上がるために勉強と特訓をしないといけないもの。課外活動に割く時間はないわ」

「なるほど。俺もドクロから脱出するために勉強しなきゃね」

「あれ、アンタの携帯鳴ってない?」

「ほんとだ、フィアスからみたい。……もしもし、フィアス?」

『糸! 急いで食事街に来て!』

 一体なにがあったんだろう。
 急いで食事街へ向かった。


 ◇◇◇


 夜の食事街。

「フィアス! どうしたの!」

「糸! 雪夜が……!!」

「糸~~~もう飲めまへんわぁ~~わたくひを介抱ひてくださいまひ~~」

 雪夜が抱き着いてくる。
 顔は真っ赤でとても発熱している。

「ちょっ、まさかお酒飲んだの!?俺達まだ15歳だろ!?」

「それがお酒モドキで、酔うけど合法な飲み物なんだって」

「フィアスは酔ってないみたいだけど、飲んでないの?」

「なんか酔う理由が、次元を一時的に認識できるようになるかららしいんだけど、私はもともと全部の次元を認識できるからね~」

「そりゃいいや。で、一緒に飲んでた方々は?」

「ばらばらで二次会に行く流れだったけど、皆だいぶ酔っぱらっててごちゃごちゃになったから、その隙に雪夜を担いで逃げてきたのだ」

「おお、シラフは頼もしいな。とにかく雪夜を青月館に運ぼう」

「もう歩けまへん~。だっこしてくださいまひ!」

「やれやれ、甘えん坊さんめ」

 にゅっ

 雪夜を抱っこすると、なぜかフィアスにほっぺをつままれた。

 雪夜を抱えながら青月館へ向かう。
 青月館に着くと、フィアスがカードキーで玄関を開ける。
 あいかわらず高級ホテルのような、立派でムーディーなロビーだ。
 エレベーターを使って雪夜の部屋に行く。

「ほら、雪夜、鍵を出して」

 雪夜の鍵で部屋に入る。

「よいしょっと。じゃあ俺は帰るから今日は早く寝るんだぞ」

「まだかえっちゃダメですわ! 私たちだけで二次会やりますわ!」

「俺達だけで二次会しても何の意味もないだろう」

「アイス冷えておりますわよ!」

「知らないよ!」

「そんな……私とお話してくれませんの……?」

 上目遣い。めっちゃウルウルしてこっちを見てくる。
 いつもの清楚で真面目な雪夜とのギャップで、変に魅力に取りつかれてしまいそうだ。

「糸! それは人肌が触れ合ったことによる一種の錯乱状態だよ。騙されないで!」

 またフィアスにほっぺをつままれた。

「あいたたたた!」

「あ、フィアスは体調が優れなければ、もう帰ってもよろしいですわよ」

「こんな状態で二人っきりにさせられる訳ないでしょ!」

「朝ご飯を作ってもらうことを言い訳に、毎日部屋に糸を呼んで!やり方がこすいですわ!」

「そ、そんな理由じゃないもん! 普通にご飯が食べたかっただけ!」

「わー! とにかくアイスを食べて頭を冷やそう!」

 翌日、雪夜は恥ずかしそうに謝ってきた。
 そしてこの一件以来、雪夜は外出時のレシスぺを警戒するようになった。
 しかし、少し癖になってしまったらしく、たまにこっそりと家で飲んでいるとか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

水神飛鳥の異世界茶会記 ~戦闘力ゼロの茶道家が、神業の【陶芸】と至高の【和菓子】で、野蛮な異世界を「癒やし」で侵略するようです~

月神世一
ファンタジー
「剣を下ろし、靴を脱いでください。……茶が入りましたよ」 ​ 猫を助けて死んだ茶道家・水神飛鳥(23歳)。 彼が転生したのは、魔法と闘気が支配する弱肉強食のファンタジー世界だった。 ​チート能力? 攻撃魔法? いいえ、彼が手にしたのは「茶道具一式」と「陶芸セット」が出せるスキルだけ。 ​「私がすべき事は、戦うことではありません。一服の茶を出し、心を整えることです」 ​ゴブリン相手に正座で茶を勧め、 戦場のど真ん中に「結界(茶室)」を展開して空気を変え、 牢屋にぶち込まれれば、そこを「隠れ家カフェ」にリフォームして看守を餌付けする。 ​そんな彼の振る舞う、異世界には存在しない「極上の甘味(カステラ・羊羹)」と、魔法よりも美しい「茶器」に、武闘派の獣人女王も、強欲な大商人も、次第に心を(胃袋を)掴まれていき……? ​「野暮な振る舞いは許しません」 ​これは、ブレない茶道家が、殺伐とした異世界を「おもてなし」で平和に変えていく、一期一会の物語。

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

処理中です...