正夢が見れるなら高次元世界でも無双できる?

エポレジ

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第2章 劣等生

28話 天才

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 ジトーーーっ……

「……なんでしょうか、フィアスさん」

「昨日は大変だった」

「……すみません」

 月曜日の朝。
 青月館に迎えにきたのだが、フィアス軍曹ぐんそうはお怒りのようです。

「私は雪夜の介抱を手伝ってって言ったの。酔っ払いの大群を引き連れてこいなんて言ってないんだよ!」

「反省してます……」

「まったく。もういいよ。学校いくよ」

「お、引きこもりのフィアスさんが珍しく登校する気満々じゃないですか。もしかして昨日の歓迎会で青月館フレンズできた?」

「できないよ。体調もよくなってきたし、学校はただの退屈しのぎ」

「そっか」

 とか言っている極度な人見知りのフィアスさんだが、学校ではクールビューティーだとか、無口の実力者とか言われて崇められているらしい。


 ◇◇◇


「中間テスト?」

「そうだ。今はまだ4月だが、1学期の中間テストが5月中旬に行われる。中間テストはA、B、Cクラスが全て同じ試験で行われ、総合の順位が張り出される。上のクラスをギャフンと言わせたい奴には朗報だが、ピンチの奴らには悲報だな。ああ、それと、赤点を取った奴には厳しい補習と課題がわんさかあるから覚悟しとけ。ま、せいぜい勉強するように。今日はここまで、解散ッ!」

 ざわ……ざわ……

「やば……俺、ピンチ側だ……」

「元気だして、九重くん。大丈夫、ボクもピンチ側だから!」

「おいらは余裕でやんす! 学年一位を狙ってるでやんす!!」

「ほう、威勢の良い底辺だな」

「お、お前は……Aクラスの羽バッジ、成瀬信長でやんす!!」

 扉に立てかかりながら、腕を組んでかっこつけている成瀬がいた。

「きゃー! 信長様だー!!」ガヤガヤ

「かっこいいーー!!」ガヤガヤ

 成瀬が俺の方に向かって歩み寄ってくる。

「おい九重! 貴様、中間テストでクソみたいな点数を取ってみろ! この俺がお前をぶっ飛ばしてやる!!」

「なんで点数が悪いとお前にぶっ飛ばされなきゃならんのだ」

「お前は腐っても風紀委員だ! 風紀委員の看板を背負っている以上、泥を塗るような真似は許さないからな!!」

 ガラガラ、ピシャン!!

 成瀬は嵐のように去っていった。

「どうして信長様がドクロなんかを気にかけるのかしら……」ガヤガヤ

「くうう、ドクロのくせに信長様と~~!!」ガヤガヤ

「そんなこと言われたって、俺は勉強が死ぬほど苦手だしな……」

「ウフフ! 中間テストですって!」

「い、苺……!」

 ニヤニヤしながら近づいてきたのは、上品に手を口元に添えている苺。

「ドクロのアンタには、お勉強はちょーーっと難しいかもしれないわね」

 煽ってくる苺。

「くうっ……!」

 しかし、何も言い返せない。
 俺は小学校を中退し、中学にも行っておらず、勉強は死ぬほど苦手なのだ。
 そもそも勉強とはどうやってするものなのかも分からない。

 その一方で、苺は学校が始まる前からコツコツと勉強してきた。
 毎日毎日、ずっと机に向かって努力しているのを知っている。
 だから、その成果が出せる場が近づいてきて、少しワクワクしているのかもしれない。

「それでもボコボコにされるのはなんか悔しい! 俺には奥の手があるんだ!」



「なるほど、それで私のところへ来てくださったのですね」

「頼む! なんとか最下位だけは回避したいんだ! 主席の雪夜の力を貸してくれないかな」

「もちろんいいですわよ。私も糸が舐められている現状は気分が良くありませんし。希望の曜日とかあります?」

「そうだな、火曜、木曜はサークルで、金曜は風紀委員会だから、月曜と水曜かな」

「分かりましたわ。どちらも19時からでもいいでしょうか。場所はここ、私の部屋でいかがでしょう」

「うん! ありがとう雪夜。そういえば、雪夜は結局何の部活に入ったの?」

「えーっと……、それは、まあ……」

 雪夜が目を逸らした。
 まあでも答えにくいのなら、深追いはしないでおこう。


 ◇◇◇


 翌日、教室にて。

「ねえ、Aクラスの松蔭さん、すごいんだって! 超次元サッカー部ではもうスタメンで考えられてるらしいよ!」

「あれ、松蔭さんは立体将棋部で、次の大会の団体戦の副将を任されることになったって聞いたけど」

「私、時空間華道部だけど、雪夜様この前すごい作品を作って、コンクールに出ようって話になってるよ!」

「やば、なんでもできるじゃん。勉強でも主席だし、ほんとかっこいいよね~。黄金世代の先輩方もだけど、やっぱり超能力者って別格って感じ」

 クラスの人たちがコソコソ話しているのが聞こえた。
 雪夜って、そんなに部活を掛けもってるのか……?

「ねえ、尻口くん。新歓とか色々行ってたけど、結局部活はどうしたの?」

「おいらパワフル野球部に入ったでやんすよ。練習もちゃんと行ってるでやんすが、バキバキの補欠でやんす。まあ、素人にもかかわらず早くもエースで4番に定着しつつある松蔭雪夜ちゃんの才能を見ちゃうと仕方ないって感じでやんすよ。でも、雪夜ちゃんは練習もサボらずに誰よりも頑張ってるし、素直に先輩の言うこと聞くし、尊敬が強すぎて嫉妬とかは全然ないでやんす」

「エースって、まだ俺達1年生は体験入部期間じゃなかったっけ……?」

「もはやそんな次元じゃないでやんすよ。体験も何も、実力は現役生の一枚も二枚も上手。レギュラーに考えられるのも無理ないでやんす」

「雪夜のやつ、俺なんかの勉強なんて見てる暇無いんじゃ……」


 ◇◇◇


 ピンポーン

「はい、開けますわね」

 ガチャ

「いらっしゃい、お待ちしておりましたわ。どうぞ中にお入りくださいまし」

「うん……」

 相変わらず綺麗に片付いた部屋。

「さ、今日は糸の苦手な数学をしましょう」

「……」

「……あの、糸? どうしたんですの、教科書を開いてくださいまし」

「雪夜……もしかして俺、すごく迷惑なことさせてないか……?」

「迷惑? それはどういうことですの?」

「クラスの人に聞いたんだ。雪夜は部活をたくさん掛け持っていて、頑張ってるって。きっとそれだけでも大変だろうに、俺なんかの為に時間を割いてもらうのはやっぱり……」

「……ごめんなさい、別に隠すつもりはなかったんですの。でも、糸は勘違いしておりますわ。私は糸との時間を迷惑だなんて微塵も思っていません。むしろ逆ですわ」

「逆……?」

「私は勧誘に負け、断り切れずたくさんの部活に入ってしまいました。本当はもっと自由な……例えば、貴方とゆっくり勉強する時間が欲しいですわ。ですが、もうすでにレギュラーやコンクールが見据えられていて、とても辞めるなどとは言い出せず、悩んでおりました」

 雪夜は表には出さないが、少し疲れているようだった。
 完璧に出来てしまう人には、その人なりの悩みがあるものなのだろう。

「話を整理すると、雪夜は部活を辞めたいの?」

「はい。ですが、団体競技もありますし、迷惑をかけるわけには……」

「でも、まだ4月いっぱいは体験入部のはずだろ? 今辞めても誰も文句は言う資格ないよ」

「ですが……私に退部を申告する勇気は……あ! そうですわ。糸、一緒に来てくださいまし!」

「えっ、なんで!?」

「それならハッキリと言える気がしますわ。そうと決まれば、まずは明日、高次元サッカー部に行きましょう!」

 雪夜と退部ツアーに行くことになった。
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