正夢が見れるなら高次元世界でも無双できる?

エポレジ

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第2章 劣等生

32話 アイドル

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 翌日金曜日、1年Bクラスの教室にて。

「ねえ、聞いたよ彩葉! 昨日、食堂で弥生先輩と話したんだって!?」

「そうなんです! マナもとっても綺麗でしたし、凄い人でした……」

「でもCクラスのドクロが弥生先輩の知り合いってのが気にいらないわね。噂ではその人、Aクラスの松蔭さんに勉強を教えて貰ってるらしいし、身の程をわきまえろって感じ」

「糸さんは悪い人じゃありません!」

「な、なによ彩葉まで。あんなのただのドクロじゃない。底辺のうんちじゃない」

 パシッ!!
 女子生徒の顔の真横の壁に手裏剣が刺さる

「お主、九重のことをよく知りもしないでピーピー騒ぐな」

 手裏剣を放った人物は風紀委員の沖田桜だ。

 また別に、それを聞いていた、眼鏡とマスクをした女子生徒がぴくっと反応する。

(九重糸……? えっ、もしかして……!!)


 ◇◇◇


 前期1年Cクラス、とある休憩時間。

「ちょっと尻口くん! なにこれぇ、わかんないよぉ!」

「それは小松菜でやんす」

「もう!! もっと分かり易いやつにしてよぉ、絵しりとり続かないじゃん! ただでさえ絵下手なくせにぃ!」

「あ! 言ったでやんすね! それを言うなら幸坂くんも骸骨がいこつとかとか生々しい絵ばっかり書くじゃないでやんすか!」

「いいじゃん! ボクは尻口くんよりも絵上手いもん!」

「くーーーーっでやんす!!!」

「まあまあ、二人とも落ち着いて……」

 ガラガラ

「あ……やっぱり……!!」

「ん? 入口から眼鏡とマスクをした少女がおいらのことを見てるでやんす」

「尻口くんじゃないと思うよぉ、絵下手だし」

「キーーーーっでやんす!!」

「……九重くん……だよね……?」

 黒のベースに黄色い制服。
 Bクラスの女子生徒のようだ。
 だが、ぐるぐる眼鏡に深々とマスクをしていて、顔が良く見えない。

「はい、そうですが……あなたは?」

「……き……奇跡だ……」

「え?」

「あ……ごめんなさい……今日は失礼します……!!」

 タッタッ
 彼女は走って去っていった。

「一体何だったんだ?」

「次、糸くんだよぉ」

「ああ、ごめんごめん。……幸坂くん、この絵ってもしかして……」

「うん! 内臓だよ! 上手でしょ!」

「ひいい……」

 上手いのが逆に生々しさを引き立てる。


 ◇◇◇


 放課後、今日は一週間に一度の風紀委員会の日。

「えーー、この一週間で何か問題はありましたでしょうか」ソワソワ

「はい。この間の大盛マグロソースカツ丼の販売中、列に割り込むという問題が発生しましたので、注意をし、きちんと並ばせました」

「そうか。他は特にありませんか? ありませんよね?」ソワソワ

「おい、なんか今日の風紀委員長、やけにソワソワしてないか?」

 成瀬が俺に耳打ちしてくる。

「俺も思った。トイレかな?」

「何も無いようでしたら本日はこれで終了します! はい、解散!」

 委員長はとっとと荷物を片付け、すたこらさっさとその場を去った。

「ん? 委員長のやつ、何か落としていったぞ。……CRAPES♡と書かれたうちわじゃ。まだ4月というのに、暑がりじゃのう」

「どうしよう、もう委員長行っちゃったよ」

「来週まで誰かが持っといて、来週に返せばいいだろ」

「そうじゃな。ほれ、九重頼んだぞ」

「え、俺!? まったく、しょうがないな」

 CRAPES♡と書かれたうちわを来週まで俺が持つことになった。



 帰宅しようと思った時、ふと教室に忘れ物を思い出したので、教室に戻ることにした。

 ガラガラ

「「ゲッ!!!」」

「えっ!?!?」

 教室では、尻口くんと幸坂くんが何やらスマホの画面を見て興奮していた。
 先生に見つかったかのようにビクッと反応したが、俺だったので安心していた。

「……あれ!! その手に持っているうちわはCRAPESのうちわじゃないでやんすか!」

「そっかぁ! 九重くんもCRAPESのライブを見に来たんだねぇ!」

「えっ!? は!?」

 聞けば、CRAPESとは高次元世界の最近結成したアイドルグループらしい。今日が初ライブらしく、生中継を見ていたそうだ。

「で、どうして学校で見る必要があるのさ」

「赤砂寮はWi-Fiがクソザコだから動画が途中で止まるでやんす。その点、学校はWi-Fiがガンガン飛んでるから、快適に見れるでやんす!」

「高次元世界は人口が少ないのもあって、アイドルグループは数えるほどしかないからねぇ。新しい目は見守ってあげないとぉ」

 なるほど、風紀委員長はこのライブを見たくてソワソワしていたのか。

「お! 出てきたでやんすよ!」

『みんなーっ! 今日は来てくれてありがとー!!』

 ワーーッ!!

「「いえええええええい!!」」

 尻口くんと幸坂くんは立ち上がって興奮している。

 三人組のグループのようだ。
 真ん中のツインテールの子と左のロングヘアの子の紹介が終わり、右の子ショートカットの子が自己紹介する。

『私はつぐみん!! よろしくね~!!』

 ワーーッ!!

「「可愛いいいいいいいい!!」」

「……あれ? この子、どこかで……」

 ライブは無事に終了した。
 歌も踊りも、初ライブとは思えないほどうまかった。
 盛り上がりもすごかったし、これからどんどん人気になりそうだ。



「つぐみちゃん、お疲れ様! とっても良かったわ!」

「マネージャーさん、ありがとうございます!」

「どう、初ライブ、緊張した?」

「はい。ですが、それ以上に楽しかったです!」

「素晴らしい感想だわ。さ、着替えて車に乗ってね」

「はい!」

(……九重くん、私もっとすごいアイドルになるから、待っててね)


 ◇◇◇


「あの子、誰だっけ。どっかで見覚えがあるんだよな」

 その晩、赤砂寮のベッドでゴロゴロしながら、俺は何かを思い出そうとしていた。

「ま、似たような子なんて一人や二人いるか」

 思い出すのは諦め、電気を消した。


 …………


「では次、【氷上ひかみ つぐみ】ちゃん。将来の夢を教えてくれるかな?」

「はい。わたしは、しょうらいあいどるになりたいです!」

「「わははははは!!!」」

 小学校の頃の授業参観の風景のようだ。
 しかし、とんでもない地獄絵図だ。

 将来の夢を作文に書いて発表する場で、夢を笑う先生や生徒、そして親。
 その反応に涙ぐむ少女。

「はい、次。九重くん」

「はーい。おれは、しょうらいきんにくムキムキのスーパーマッチョマンになりたいです!!」

「「ぎゃはははははははは!!!」」

 俺は何ヘンテコなことを言ってるんだァ!!
 教室が大喜利会場のように爆笑の海に包まれる。

「あの子大丈夫かしら……」コソコソ

「変わった子ね……」コソコソ

 大爆笑やらドン引きやらカオスな空気がクラス中に充満する。
 恥ずかしすぎる。俺にはこんな黒歴史があったのか……。

 しかし、窓際で凹んでいた一人の少女だけは救われたように微笑んだ。
 そして……


 …………


 チュンチュン

「ふぁ~。なんだ今日のクソ夢は。封印していた黒歴史を思い出しちゃったじゃないか。それより、俺の夢は未来だけじゃなくて過去も見れるのか?」

 スマホの待ち受けは、土曜日の6:20と表示されている。

「……ダメだ、恥ずかしすぎる。今の夢はもう一回寝て上書きしよう」

 俺はもう一度横になり、すやすやと寝息を立て始めた。
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