正夢が見れるなら高次元世界でも無双できる?

エポレジ

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第3章 王座争奪戦

49話 二人きりの夜

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 温泉を出た俺達は夕食を終え、クタクタのみんなはすぐに就寝。川の字に寝る。



 ドスッ

 夜中、すやすやと寝ていたころ、隣で寝ていたジョニー先輩の歪みねぇ足が俺の腹を直撃し、目が覚めた。時計を見ると、夜中の1時。

「……明日も特訓だし、寝ないとな」

 ジョニー先輩の足を戻し、再び寝ようとする。

 ザッザッ……

 目を閉じていると微かに音がした。

 ザッザッ……

 気のせいではない。窓の外かな?

 俺は一番窓側の布団で寝ていたから、少しだけカーテンを開けて外を覗いてみた。
 すると、なんとそこには練習している小雲先輩の姿があった。

 俺は驚き、靴を履き替えて外に出た。
 すると、俺に気づいた小雲先輩も驚いて声を掛けてきた。

「え、糸くん!? どしたと?」

「ちょっと目が覚めてしまって。小雲先輩こそ、こんな時間まで特訓されてたんですか?」

「ううん、なかなか寝れんかったけんちょっと体を動かしてただけばい。ふふ、ちょっとあそこのベンチ行こか」

 松が生えたベンチで、旅館の寝巻姿で並んで座った。
 月が丸くてとても綺麗だ。

「糸くん、今日私と戦ってみて、どう思った?」

「強いなって思いました。一度も勝てませんでしたし」

「実は私な、【時間の次元】を認識することで相手の動きの未来が見えるんや。2秒くらい先の。やから、相手の未来の動きに合わせて動くだけで勝てるんよ」

「それ、無敵すぎませんか!?」

「せやろ。やから、学園も【時間の次元】関係の能力者はランキング高めに設定してるんよ。でも、完璧ではなくって、相手の未来を見て行動を変えると、相手も行動が変わりうるんや」

「どういうことですか?」

「ジャンケンしよか」

「え!? は、はい!」

「『最初はパー』、はい、私の勝ち」

「ん!?」

「私が最初にグーを出した未来では、そのまま『ジャンケンポン』まで進んでたんやけど、私がパーを出したことで、その先の未来が変わったんや」

「ということは、小雲先輩が相手の未来に合わせて行動を変えると、相手も動きが変わってしまうってことですか?」

「そうそう。でも2秒後の未来がちょっと変わったところで直前までしようとしていた行動はほとんど変わらんし、普通の相手なら問題なく勝てる。私が負けるのは、未来が分かってても止められへんような攻撃が来た時か、私以上の【時間の次元】の能力を使われた時ばい」

「時谷未来は、未来を見る以上のことができるってことですか……?」

「それが分からんのや。ビデオ見てても、実際戦っても、通常時は私と同じように未来を見て戦ってると思う。……でも去年、私と戦ってた最後の一瞬、まるで瞬間移動したように時谷が消えた気がしたんや。ビデオには綺麗に映ってなかったけど、あれは間違いなく何か使ってきた。それも、とびっきりやばい何かを……」

 小雲先輩は少しの悔しさと少しの恐怖が混じった表情を見せた。

「ま、糸くんは何も心配せんでええよ。時谷や千陽が相手でも、私が全部倒して護ったるけん」

 小雲さんは立ち上がり、本心を隠すように笑顔を見せた。

「あ~あ、なんかもっと寝れんなって来たわ。こりゃ、ちょっと運動せんとあかんな」

「今からですか!?」

「ふふ、ちょっと付き合ってや! 糸くん!」

 小雲先輩は俺の手を引いて走り出した。
 森奥の滝へ行ったり、温泉についていた卓球やビリヤード、小さいゲームセンターで遊んで盛り上がった。

 そして、再び温泉に入ろうという話になったのだが……

「ここ、混浴ないんか」

「へぇ!?」

「3時か。誰もおらんし、私男湯入ってええかな?」

「ダメですよ! なな何言ってるんですか!!」

 頭がパニックになる。

「ふふ、冗談ばい。出たら自販機前で待ち合わせな」

 くう……っ! あそばれてしまった……っ!

 夜中で誰もいない露天風呂からは、隣の女風呂からの音だけが聞こえた。


 ◇◇◇


 合宿5日目。
 旅館のチェックアウトを済ませ、今日も昨日に引き続き試合別の特訓が行われた。

 カツッ! カツッ! カツッ!!

「糸くん! もっと攻め込まんと、隙だらけばい!」

「はいっ!!」

 シュッ! カツッ! カツッ!!

 やはり小雲先輩は強い。
 俺も杖で精一杯【生命の次元】を感じ取り、小雲先輩の存在と精神状態を読み切って戦おうとするが、全然勝てない。本当に、小雲先輩が1人で対戦相手を全て倒してしまうんじゃないかと思えるほどに。



 そして、夕暮れ。
 山の中では、アイマスクをつけた菊音さんとジョニー先輩の『しっぽとりモドキ』はまだ続いていた。

 菊音さんは最初つまずいたり転んだりしていたが、だんだんとアイマスクをつけたままでも普通に行動できるようになり、最後には……

「と……とれた……!!」

 ついに、菊音さんがジョニー先輩のタオルを取った。

「おお! 二宮サン、やりますねぇ!」

「ジョニー先輩……! ありがとうございました!!」



 海では、五条先輩と三橋さんが水中や浜辺を活用したトレーニングで体を鍛え、二人は共に行動しているうちに息が合うようになっていた。



 そして、俺は未来が見える小雲先輩とマンツーマンで手合わせをしてもらうことで、ワンディングがすくすく上達していた。

 シュッ! カツカツカツカツッ!!

 杖と杖が交わる音のテンポが最初よりも格段に上がっている。動きが速くなっている証拠だ。

「……今だ!!」

「あっ……!!」

 トン!!!!!!

 2日目にして、始めて俺の杖が小雲先輩の胸に届いた。

「よくやったね、糸くん」

 小雲先輩は頭を優しくなでてくれた。

「あ……ありがとうございます!!」

 しばらくして、一ノ瀬先輩が車で迎えにきた。

 全員車に乗り、駅へ向かう。
 一ノ瀬先輩がレンタカーを返却し、夜行バスが来るまでの間に駅前の小さな銭湯で体を流した。そして、夜行バスに乗り込むと、みんな疲れていたので瞬く間に眠ってしまった。

 こうして、俺達の長い合宿は幕を閉じた。
 大会は、もうすぐ始まる。
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