俺、女の子になれますか?

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君は本当に女になりたい?

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 私の名は姫。本名ではなくコードネームみたいなもの。福島県のとある湖の湖畔に立つ日本政府のとある秘密機関の女医にすぎません 。
 ここは、元はとあるホテルを改築したもの。政府主導の元、ある計画に基づき、小さな、しかし日本の行く末をも左右する極秘の任務に就いています。私の様な仕事をしてるのは性転換師は多分日本で百人位、
 一時期日本の少子化問題は深刻な状態にまで陥りました。その折、とある計画が提唱されて実行され、今日に至ります。
 そのプロジェクトとは、毎年夏休み時期に国から容姿性格等で候補に上げられたティーンエイジの男の子の中で、希望する子を女の子に改造する事。その子達には結婚と出産を条件に今後教育と医療においてかなりの優遇制度があります。
 そして私の使命は女の子への変身を志願してきた男の子達が本当に女の子になる意思があるのか、そして女の子になって本当に幸せになれるのかを見極めた上で、肉体的そして精神的に女の子にして無事二日後に世の中に送り出す事。
 医療技術の進歩は目覚しく、今では二日で少年を少女の体に変える事が出来るけど、心と日常動作を女にするのはやはりその後別所にて約半年から一年のトレーニングは必要。但しそれは私の担当外の事。
 これは日常の私の、有る意味自然の摂理を捻じ曲げる様な仕事のごく一部を記述したものです。
 
「聡美ちゃん、お花替えといて。あと何か音楽かけといて」
「はーい」
 ここのアシスタント用の白とピンクのツートンのミニのワンピースの制服を着た女の子の元気な返事。背中にうっすらと透けるブラの右の肩紐が落ちそう。彼女も実は二年前、この部屋で私が女の子にしてあげた元男の子。女性化養成所でトレーニング受けた後女子高校生になり、二年目の夏休み。優遇措置を受ける条件の一環として今日はここでお手伝い。
 壁のデジタル時計の表示は丁度十二時になり、ポーンと柔らかな電子音が鳴った。
(篠原一輝クン、十七歳か…ぎりぎりの年齢だよね)
「篠原一輝クン。お入りなさい」
 十数枚程の彼の資料を手にインカムのマイクに向かって喋ると、程なく部屋の戸が空く音。
「どうぞー」
 と声をかけるけど、なかなか本人の姿が見えない。
(ああ、また恥ずかしがりやさんが来たみたい)
 ふと笑ってもう一度
「一輝君、どうしたの?恥ずかしがらないで入って来なさい」
 私の声に花を生けた一輪挿しを私のテーブルの上に置いた聡美ちゃんが、てってってーとドアの方へ駆け寄っていく。そして彼女に連れられたジーンズに半そでの綿シャツ姿の篠原一輝君が、恥ずかしいのかずっとうつむいたまま彼女に手を引かれながら私の前に現れた。
「はい、こんにちは。どうしたの?恥ずかしい?いいのよ。そんな風に恥ずかしがる子は一杯いるからさ。でもうつむいたままじゃお顔が見れないわ。顔上げてお顔良く見せて」
 私が優しく言うとやっと顔を上げる一輝君。うん、ほっそりしてるけど顔立ちはいいわ。候補で選ばれた事だけはある。
「はーい、改めてこんにちわ。電話とメールではお話したけどお顔あわせるのは始めてだよね。あたしが担当の姫です。コードネームだけどね。そして私の横にいるのがアシスタントの聡美ちゃん」
「聡美です。よろしく」
「あ、あの、篠原一輝です」
 あいかわらずうつむき加減でぼそっと挨拶する彼。
「あ、そこの聡美ちゃんも実は二年前はあなたと同じ男の子だったからね」
「え!」
 驚いた様子で顔を上げ聡美ちゃんの顔を見る一輝君。えと、時間も限られてるから早速本題に。
「えーっと、一輝クン。心は決まったんだよね」
「う、うん」
「女で生活する事のリスクは十分判ってもらえたかな」
「あ、はい、そのつもりで…」
 私はスキンシップの意味も含めて、彼の二の腕をそっと掴み、その手で彼の太股を指で押す。ほっそりしてるけど筋肉質。これなら余計な脂肪は付きにくいかも。
「バスケやってたんだっけ」
「あ、はい。遊び程度ですけど…」
「ふーん…」
 私はもう一度彼の二の腕を指でつんと突く。
「わかってるわよね。これなくなっちゃうからね。それに女になると重いもの持てなくなるし、早く走れなくなるけど、いいのね。バスケも今まで通りのやり方出来なくなるからね」
「あ、はい…」
 そう言って彼はふと部屋の中を見渡す。
「なんかその、普通の綺麗な事務所みたいですよね」
「え、どんなの想像してた?」
「なんか、機械とかなんやかやで実験室みたいな所を」
「そんなんじゃ一輝クンみたいな人が怖がっちゃうじゃん」
 笑顔で答えて私は続ける。
「今日と明日は一輝クンにとって一生で一度の日。あなたみたいな男の子に落ち着いて女の子になってもらおうと思ってさ、こういう部屋にしたの」
 木の葉の模様の絨毯に木目調の机とか椅子とか。別室は施術室とかだからちょっとこことは違うけどね。
「じゃ、いいわね」
「あ、あの、僕、どんな女の子に…」
「さあ、はっきりとは今の段階じゃわかんない。もしあなたが女の子で生まれてきたらって感じに、少し修正かける位かな」
「そうですか…」
 私は彼の右手を両手で軽く握る。
「大丈夫。今まで結果に不満を言った子はいないし、ある程度の整形もやったげるから」
「そ、そうなんですか」
「一輝クン、お姉ちゃんいるよね?二つ違いの」
「あ、はい」
「お姉ちゃん、何か言ってた?一輝クンが女の子になる事についてさ」
「あ、あの…」
 ちょっと恥ずかしそうにした後彼は続ける。
「お、俺が女になったら、選んでやるから一緒に服と下着買いに行こうって。そして二人で温泉行こうって…」
「へえー、いいお姉さんじゃん」
 そう言いながら私は目を通していた彼に関する書類を手早くまとめた。
「じゃ聡美ちゃん、施術室に案内してあげて」

 暫くして私が施術用の部屋に入ると、手術台というか、ベッドが入っている透明なカプセルの中に両手足と腰をベルトで固定されトランクス一枚で寝かされている一輝クン。そのカプセルの横に空いた長細い隙間に手を入れて一輝クンの二の腕とかを興味深そうに触ってる聡美ちゃんがいた。
「何やってんの、聡美ちゃん?」
「う、うん、この硬い筋肉とかの感触懐かしいなってさ」
「…そっか、聡美ちゃんもスポーツやってたのよね」
「うん、バスケもやったけど、クラブはサッカーだった」
 カプセル内に寝かされてなんだか落ち着かない様子の一輝クンに、
「ねえねえ一輝クン」
 と声をかけ、何を思ったのかパンツが見える位にワンピースの裾をまくり、ふっくら真っ白な太股を見せる聡美ちゃん。
「信じらんないでしょ?サッカーで鍛えてさ、筋肉の塊だった太股が、今はもうこんなだよ」
 目のやり場に困り、ふとそれから目をそらす彼。
「何恥ずかしがってんのさ、女になるんでしょ一輝クン」
 もういい加減悪ふざけやめさせよう。
「聡美ちゃんそれまで!時間おしてるから」
「はーい」
 私の言葉に聡美ちゃんはそそくさとワンピの裾を直して、その手でつるんと自分のヒップを軽く撫でてカプセル横の操作台の一つのスイッチを入れると、カブセルの上部の一部が開き、天井に吊るされたシルバーの丸っこい装置が降りてきて、一輝クンの股間のすぐ横で停まる。
「じゃ一輝クン。今から精巣機能停止させるから」
「え!もう…」
 私の言葉に驚いた様に言う彼。
「麻痺させて四十八時間停止させるだけよ。途中でやっぱり女になるのやめるって子がときたまいるからさ。じゃいくよー」
 ブーンという音がして、トランクス越しに熱線みたいなのが彼の股間に当てられる。一輝クンからみれば弱いドライヤーを当てられた感じだけど、それはゆっくりと彼の精巣機能を停止させていく。
「聡美ちゃん、血液交換を」
「はーい…」
 私の言葉に返事をして手早く下に駒の付いた大きな装置を転がしてくる聡美ちゃん。私はその装置からチューブ付のリングを二つ取り出し、カプセルの隙間から彼の左手にはめて固定させる。
「これ、なんすか…」
「一輝クンの血を薬品の入った女の子の血液と交換するの」
「う、うそ…」
 そう言って驚いた彼を気にも留めない私。その男言葉、いつまで続けられるかなってふと口元に笑みさえ浮かぶ。
「聡美ちゃん、お願い」
「はーい」
 彼女が操作バネルを触ると、うっと顔をしかめる一輝クン。彼の左腕の静脈に二本の針が打ち込まれ、彼の血が抜かれると同時に、薬品の入った女の血液が送り込まれていく。
「どう、気分は悪くない?」
「あ、あの、すごくだるいっす」
 彼の男言葉に再度ふっと笑みを浮かべる私。
「交換までにかなり時間かかるからじっとしててね。その間もう一つやるから。聡美ちゃん、あれ外していいよ」
「うん、わかった」
 先程設置した精巣機能停止装置がするするとカプセルから抜けていく。その様子を見た一輝クンが目を見張る。
「あの、先生、まさかもう…」
「うん、そうだよ。一輝クン、今一時的だけど男じゃなくなったから」
「ま、まじ…」
 思わず両手を股間に当てようとする一輝クンに、
「だめだめ、リング付いてる左手動かさないで」
 固定された右手でなおも股間にそっと手を当てようとする彼。彼が寝かされてるベッドの傍らでベッドに手をかけしゃがみこむ私。
「ねえ、本当にいいのね?女って辛くて大変だよ。一輝クンのお姉さんだってさ、辛い事とか悩み事とか一杯抱えてさ、多分それでも一輝クンの前ではにこにこしてるんだと思うよ」
「…そうなの?」
「そうよ」
 私は立ち上がって彼に微笑みかける。
「一ヶ月に一回お腹痛くなるしさ」
「それ生理って奴」
「そう、女の子なら誰でもね」
 と、コントロールパネルの席の聡美ちゃんがぷっと吹き出して口に手を当てた。
「聡美ちゃん!」
「わかってるって」
 私の言葉にまだ笑いながら再びコントロールパネルを操作し始める彼女。
「先生、もういいんでしょ?次行っても」
「ええ、いいわよ」
 聡美ちゃんに返事ほした私は、そのまま一輝クンの方を向く。
「え、次何やるんすか」
 不安そうに私に尋ねる彼に私はっと意地悪そうな顔で笑って答える私。
「体を綺麗にしてあげる」
 えっという感じで私を見つめる一輝クンに、私は笑いながら話を続ける。
「女の子は肌の新陳代謝が激しいから体のシミとかほくろはそんなにないんだけどさ、男の子はもうそれひどいからね。今からそれを取ってあげる。聡美ちゃん、レーザー用意して」
「え、レーザー!?」
「あと、同時に体毛と髭と、あそこの毛も整えてあげる」
「え、ちょっと、いきなり…」
 突然の事にびっくりした様子の一輝クンだけどさ、あなたここになにしに来たのよ!
「大丈夫ちょっとぴりってくるだけだからさ」
 ちょっとあきれた様子の私の目の前で、小さな半球状の機械にノズルみたいなのが四本付いてる機械が一輝クンの顔の真上にセットされていく。
「最初は顔からいくからね。これでシワとかシミとかホクロは殆ど消えるけど、女の子のチャームポイントになる泣きボクロと笑いぼくろだけは残すから。それとも全部取っちゃっていい?」
「あ、あの…」
「じゃ残してあげるね。眉の形は?眉いじると本当顔変わるよ。まあどんな形にしてもメイクでなんとかなるからさ」
「あの、おまかせします…」
「あそこの毛は?」
「あ、あそこって…」
 と横で機械操作していた聡美ちゃんが両手を頭に当てて言う。
「いいんじゃない?あたしと一緒でさ」
「聡美さんと一緒って…」
「うん、薄くて長方形。大体の女の子はそんな形してるよ。それとも逆三角形?パイパンにする?」
「も、もう、すべておまかせします!」
 目を瞑って恥ずかしそうに顔を真っ赤にしてそう言う一輝クン。そんな彼に私はちょっと意地悪く微笑みかける。
「えへへ、その方がいいわよ。あたしはこれまで何十人の男の子を女の子にしてきたんだからさ。どんな男の子にどういう整形したら可愛くなるか、みんなわかってるんだからさ」
 そう言って私は一輝クンの寝ている手術台の横の操作バネルのスイッチを入れる。レーザー動力の電源の音かかすかに響きはじめた。その横には事前に手に入れた一輝クンのお姉さんの写真が置いてある。
(可愛い娘じゃない。この娘より可愛くしてあげよっか)

「一輝クン、大丈夫?痛くない?痛かったら手の指を上げて」
 特に何もない事を確認して私は少しほっとする。
 既に彼の太く黒かった眉は私自らの手で操作するレーザーの機械で、彼のお姉さんと同じ形で、しかも修正を入れて左右対称に薄く細く丸く、女の眉に整えられていた。
 他の美容レーザー銃は、彼の顔のシミやほくろ、ニキビ跡、しわや髭、産毛を自動的に感知して、泣きボクロとか笑いほくろとか指定した場所以外を確実に上から潰していく。その跡は薄く赤い痣みたいになっているけど、そのうち彼に注入している薬品入りの女性血液によって、皮膚の美化と共に消えていくだろう。
「一輝クン、そろそろ髭の処理するから、ちょっと痛いかもよ。あ、まだ喋らないでね」
 程なく、今までほくろとかシミとか別々に動いていた小型のレーザー銃が一斉に彼のあご髭に集中し始める。彼の顔がちょっと曇る中、彼の顔の右部分から綺麗に濃い毛根が処理され、赤い斑点に変わっていく。
 とうとう手首を固定された一輝クンの手がちょっと動くのを見た私は、すっと操作パネルの元に行き、出力を読めると、レーザー機器の備わった半球状の機械の動きが幾分遅くなった。
「もう少しで終わるから、ちょっと我慢してね」
 私の言葉に一輝クンの指がほんの少し動く。

「終わったよ。じゃ体の方やるから目あけていいよ」
 一輝クンは手術台の上の明るいライトに目をしょぼしょぼさせる。レーザーの機械は彼の顔の上から胸の上へ移動し、体の方のシミやほくろ等を処理しはじめる。
「結構…毛深いよね、一輝クンの足。それに結構筋肉質じゃん。惜しいなあ…」
 そう言いながら私は機械の微調整を終えて、手術台の傍らの椅子に座る。
「懐かしいなあ、この感触。今のあたしってこんなだもん」
 そう言いながら私の横に立ってまたもや見せびらかす様に白くてつやつやしてふっくらした綺麗な自分の太股を指でつつく聡美ちゃん。ふと彼女はその場にしゃがみこみ、うさぎ跳びみたいに一輝クンの顔の所へ行き、手術台の端に両手を合わせて置き、その上にあごを載せる彼女。
「ねえ、一輝クンさ、まだ男の子に戻れるうちにさ、もう一度考えてもいいかもよ。本当に女の子になっていいのかってさ」
「え、それ、どういう事なんすか?」
 まだはっきりと男言葉で言う一輝くんに一瞬だけ微笑んで聡美ちゃんが続ける。
「一輝クンさ、中学の時って五〇メートル走何秒位だった?」
「え、俺?大体、六秒位?」
「ふーん、結構スポーツマンだったんだあ」
 少し間を置いて聡美ちゃんが続ける。
「女の子になるとさ、普通十秒位かかるんだよ」
「え、まじ?なんで?」
 一輝クンの言葉に軽く吹き出して聡美ちゃんが続ける。
「まじってさ、女の足の筋肉なんて歩ければいい程度にしか無いし、胸とかお尻とか一歩ごとに揺れてすごい走りにくくなるんだよ。それにさ、転んだら骨折する事だって珍しくないんだから」
「本当!?」
「女の子になっていくとさ、骨盤が横に大きくなってさ、足の付け根が外に移動してさ、足の骨が内側にねじれていくんだよ。それにさ、ヒールなんか履いてたらさ、もっと遅くなるしさ」
 ふっとため息ついて彼女は続ける。
「メイクとかヘアメイク覚えなきゃいけないし、女子高校生になったらさ、男の時より一時間は早く朝起きないと学校に間に合わないんだよ。朝の洗顔、スキンケア、女の下着とか服とかめんどくさいし、ブラは苦しいし、女の服なんて夏暑いし、冬寒いし、ストッキングなんて履くのめんどくさいしさ」
 黙ってる一輝クンに更に追い討ちをかけ始める聡美ちゃん。
「もし一輝クンが女の子になってさ、夜道一人で歩いててさ、後ろから襲われたらどうすんの?」
「え…」
 一瞬考え込む一輝クンだけど、
「爪で引っかいたり、噛んだり、持ってる物で抵抗…」
「それ、絶対出来ないから」
 一輝クンの言葉を遮る様に言う聡美ちゃん
「じゃ、俺護身術…」
「無理!」
「どうして!」
 さっきよりきつめの口調で言う彼女に一輝クンがちょっと抵抗する。
「護身術覚えたってさ、本当気休めにしかならないからさ。ずっと武術続けるならいいけど」
 そう言って聡美ちゃんは一輝クンの顔にぐっと顔を近づけて続ける。
「男に何かされた時点で、もう怖くなって頭の中もパニックになるから。体がすくんでなんにも出来なくなる。出来る事と言えば、ささやかな抵抗と大声で助け呼ぶ事だけ」
「嘘だろ、そんな事って」
「あたしも男から女になってびっくりしたの。それに抵抗したって小柄な男でも力じゃ負けちゃう。そして捕まえられて押し倒されたらさ…」
 一息入れて彼女が続ける。
「女はもうおしまい。乱暴されて犯されるか、最悪殺されるかもしれない」
「本当なの!?そんなの、女って損じゃん!」
「だからさ、女の子になったら夜道とかは二人で歩くとか、最新の注意払わないと命に関わるんだよ。それにさ」
「まだ、あるんすか」
「あたりまえじゃん」
 今度は一輝クンの寝ている手術台にほおづえをつく姿勢になって続け目聡美ちゃん。
「女ってさ、理屈通らないし、変な事で気分害するから。ほら、一輝クンだって中学とか高校一年の時なんとなしにわかってたでしょ」
「う、うん…変な事で怒ったりするからさ」
「女の子になったらそんな世界に毎日放り込まれるんだよ」
 じっと一輝クンの目を見据えながら聡美ちゃんが続ける。
「たとえばさ、朝適当にメイクして適当に服選んで来た女の子にさ、今日いつもよりかわいいじゃん、なんて言ったらそれだけで嫌われるんだよ」
「どうして!?」
「あたしそんなにメイクとかヘアアレンジ下手なんだ、とか、あたしの事あんまり気にしてないんだとか瞬時に思われてさ、それが他の娘に悪口としてどんどん伝わっていくの」
「…」
「もし一輝クンが用事が有ってさ、放課後お茶とか誘われて断ったら、もうあたしの事嫌いなんだとか、避けてるとかそこら中に悪口言われるんだよ」
「そんなのありえねーよ…」
 いつの間にか、レーザーの脱毛とかシミ消しは彼の太股に及んでいた。少し痛いはずなんだけど、一輝君は聡美ちゃんの話が気になってそんな事に気づいてない様子。
「まあ、極端な例だけどね。でもそんなややこしい事が女の子同士の世界じゃ日常茶飯事」
 そう言って聡美ちゃんはようやく立ち上がって、一樹クンの方をちょっと振り返って言う。
「だからさ、女の子って男の何倍も気が利いたり気配りが上手になるの。男の子だったあたしもいつしかそうなっていったんだからから」
 横で二人の会話をじっと聞いてた私。実はこれは私が聡美ちゃんに言わせてるんだ。男は女の華麗で可愛い面しか見ない。むろん女の子もそういった暗黒面はなかなか男には見せない。女の子になってそんなはずじゃなかったって後悔する子も少なくない。だから、今まだ男の子に戻れる時にさんざん脅しをかけておくのが私のやり方。
 長々と女社会を愚痴ってた聡美ちゃん。やがて体の表の施術は終わる
「一輝クン。お腹側終わったから次背中。今度はうつぶせになってね。あ、注射針の刺さってる左腕に注意してね」
「あ、はい…」
 私の言葉に血液と薬が注入それてるチューブの付いた腕輪に気をつけながら、ごろんと手術台の上でうつぶせになる一輝君。私はそんな彼の体の変化をいろいろチェックする。
(うん、今のところうまくいってるみたい)
 浅黒かった彼の体は明らかに白くなり始めている。そして二の腕、胸、お腹、太股やふくらはぎとか、男の筋肉が目立っていた所はその隙間に総じてうっすらと女の脂肪が付き始め、曲線で縁取られはじめていた。それに、
「ほら一輝クン、こことかこことか、柔らかくすべすべになってきてる。腹筋もなくなり始めてるしさ」
 私が彼の二の腕と太股をさわりながらそう言うと、うつぶせになりつつ左手で自分の太股を触り始める彼。
「あ、ほんとだ…」
 ちょっとぼーっとした感じで話す一輝君。
「なんだか、ちょっと可愛くなってきたみたいね」
「可愛いって、それ…」
 そう言いつつうつぶせになったまま私の方を向いた彼が続ける。
「俺、今まで可愛いって言われた事ないから…」
「いいの、可愛いってのは女の子にとって魔法の言葉なんだからさ。その一言が欲しい為に女の子は毎日頑張るの!」
 手術台から少し離れたテーブル横の椅子に、さっき長々と喋って疲れていたのか、そこに座っていた聡美ちゃんが語気を荒げて言う。ふとその方向に目をやる一輝君だけど、私は彼の目線が聡美ちゃんの短い白のワンピースの股間に有る事に気づく。揃えた両足の真ん中には明らかに彼女のピンクのパンツが見えている。
 私と一輝クンの目線にようやく彼女も気づいて両手でワンピの裾を正そうとしたけど、
「ま、いいか。明日にはあたしとおんなじ体になるんだし」
「すんません…」
 聡美ちゃんの言葉に相変わらずの男言葉で答え、目をそらす一輝君だった。
(これはもしや…、もう一発脅してやろうか。女の子になって後悔するタイプかも…)
 そう思った私は、さっき聡美ちゃんがいた手術台の横に行って、台に手をかけてゆっくり座る。
「一輝クン、やっぱり女の子のああいう姿勢とか仕草、気になる?」
「う、うん、可愛いと思います」
「可愛い…か」
 私はふっと髪を軽くかきあげて一樹クンをじっと見据える。
「女の子になったらさ、常に男からのそういう目線にさらされるんだよ。相手がイケメンだったらまだ許せるんだけどね。エッチの対象としか見ない人もいるしさ」
 黙って口を結ぶ一輝クンを見ながら私は続ける。
「一輝クンさあ、その年だとエッチビデオとか見たこと有るんじゃない?」
 うつむいたまま軽くうなづく彼を見て私は続ける。
「どんなの見たの?」
 私の問いかけに恥ずかしそうに小声で言う一輝クン。
「俺達の間でかなり有名になった、女子高校生がエッチする奴」
「ふーん…」
 彼の答えにちょっと微笑む私。
「一輝クン、あっちの方に行くんだよ。する方からされる方に、入れる方から入れられる方になるんだよ」
「う、うん…」
「相手の女の子の気持ちってさ、どういうのかわかる?あれがAVじゃなくってさ、本当の彼氏彼女の関係だとしたらさ」
「あの、考えた事もなかった…そんな事」
 まあ、大体そんなものねって思った私。うつぶせになったまま横向いて私を見る一輝クンを見ながら諭す様に私は言う。
「そりゃさ、エッチ自体は女の子にとってすごく気持ちいいものよ。でもね、涙とよだれでぐちゃぐちゃになった顔を大好きな彼氏に見られるのよ。それに彼氏に気に入られる様にわざと可愛いあえぎ声出したりさ。痛い時でも気持ちいいふりする事もある。彼氏の物を口に入れたり、後で白いのを飲み込んだり顔にかけられたり、そこまでするのが本当は嫌な娘って少なくないのよ。でも彼氏に嫌われたくないから我慢してる。男はそれが当然だと思ってからさ。全くアダルトビデオってなんなのよあれ!もっと男は彼女の事考えてさ…」
 ちょっと激高してそう言う私だけど、すぐに気が付いた。
「そっか、一輝クン女の子になるんだったわね」
 ため息ついて私が席を立とうとした時、
「女のあそこって、そんなに綺麗なもんじゃないっすよね」
 ふとぼそっと喋る一輝クン。
「ま、そうかもね。だから女は何があってもそこだけは絶対に隠すの。見ていいのは好きになった彼氏だけ」
「俺、多分女になっても男とはエッチしないかも」
 あ、これは久々にやっばり女になるのやめるって言い出すケースかなって私が思った時、
「一輝クン、あたしとおんなじだ」
 椅子に座ってスマホいじってたはずの聡美ちゃんが、そう言っていきなりスマホケースを閉じて立ち上がり手術台の横にしゃがんでいる私の横に立つ。
「あたしもさ、ここで女の子にされていってる時さ、絶対男の人とエッチなんてしないだろうなって思ってた。でもさ、高校入って間もなくしたらすっごく彼氏欲しくなってさ、それで」
 ちょっとうさむき加減で間を入れる聡美ちゃん。
「最近、そのさ、処女でなくなった…」
「いつ!いつしたの!?」
 彼女の言葉に私は驚いて彼女の顔を見る。
「ここに来る、一ヶ月…前…」
「そんな事一言もあたしに言わなかったじゃない」
「だってさー…」
 一呼吸置いてぼそっと話し始める聡美ちゃん。
「隠してたわけじゃないよ。だって今までの子ってさ、何の抵抗もなく素直に女になっていったし。あたし結構あれ抵抗したよね。そんなあたしがやっぱり普通に女になったって事、恥ずかしくて知られたくなかったしさ」
 あれって、ああ、あの事ね。それはいずれ一輝クンも避けて通れない事だ。明日のあの施術の事…。
「聡美ちゃんがさ、男の人に興味持つのってずっと後だと思ってた。少なくとも高校卒業してからだと…」
 そういう私の言葉をさえぎる様にして彼女は一輝クンがうつぶせて寝ている身を乗り出して言う。
「心配ないよ。女の体になったらさ、絶対彼氏欲しくなるって!一人ぼっちが怖くなってさ、夜なんてぎゅっと肩抱いてくれる人がだんだん欲しくなるの。そして彼氏が出来たら、もうその人の事で頭が一杯になるの!デートが楽しみでお化粧とかヘアアレンジなんてどんどん上手くなっていくし、ファッションセンスも上がるしさ!彼氏かせ横にいるだけで楽しくなるし、手なんてつないでくれたらさ、顔真っ赤になるし、周囲の女の子に彼氏みせびらかそうって気になるしさ!」
 いいきなり明るい表情になって息を吸って再びまくしたてる聡美ちゃん。
「覚悟決めて初めてエッチした時なんてもう最高!キスされて、おっぱい触られてさ、あの瞬間なんて、こんなに気持ちのいい事なんて初めて!もうあたしどうなってもいいって感じになってさ、彼氏に喜んでもらうためにさ、日頃練習してた仕草とか、悶え声とかさ、もう全開しちゃった!二年前は女の子とも付き合った経験のある男の子だったあたしがさ、まさかこんなになるなんて思いも…」
「はいもう終わり。一輝クンまだ肌と体質の女性化施術中よ。あんまり彼の心乱さないで」
 ほっといたらいつまで喋りつづけるかわからない聡美ちゃんを私は制する。そういえば女の子になりにここへ来た時、一輝クンみたいに無口だった彼女が、こんなに目きらきらさせてお喋りになって、エッチの事とか堂々と喋る様になってさ。聡美ちやん女の子になってよかったわ。
「一輝クン、あのね、聡美ちゃんみたいに幸せな娘も大勢いるけどさ」
 なんだか疲れた様な様子の一輝クン。確かに血液交換と全身への薬品浸透は時間かかるし疲れるだろう。更にこんなに施術中の男の子にこんなにいろいろ話たのは初めて。
「体力がなくなる。毎日早起きしなきゃいけない。トイレ行くのが男の子の時の買い物行く位面倒になる。ブラとかストッキングとかめんどくさい下着つけなきゃいけない。スカートはかないと学校に行けない。スカートから下着見えるのを防がなきゃいけない。男からは嫌らしい目で見られる事もしばしば。そしていずれ男に抱かれる事になる。嘘と嫉妬でどろどろした女の世界で生きていかなきゃならない。でもね」
 一息入れて私は続ける。
「そういった事は女になっていくあなたにとって左程難しくないし、いずれは慣れてしまう。私が言いたいのは、そういう女っていう可愛そうな生き物になる覚悟が、本当にあなたにあるのかって事」
 しばし両者沈黙の後一輝クンが目を瞑ったままぼそぼそっと喋る。
「俺、姉貴みたいな美人でかっこいい女になろうと思ってたけど、聡美さんみたいな可愛い女になるのもいいかなって思う」
 正直私の権限でここでストップしようかと思ったけど、本人がまだそう言うなら続けてみようか。
「でも俺、まだ男に抱かれたり、エッチするなんて考えられないっす。すごく眠いんで、少し寝ていいっすか」
「ええ、いいわよ」
 なかなか彼の口からヤンキーっぽい男言葉は消えない。しかし彼への女になる施術は予定通り進んでいるみたい。彼の体からはシミやホクロがほぼ一掃され、体は更に色白になり、肩の筋肉は減りつつあり、二の腕とかふくらはぎの硬い筋肉は消えかかって、代わりに脂肪がつき始めたみたいで曲線で縁取られ始めていた。多分まだ本人は気づいてないかもしれないけど。
 レーザーは彼の太股の裏を襲い始めている。かなり剛毛な太股の毛はチッチッという音と共に小さな赤い痣を残して一本一本消え、さらにそれもだんだん色白になった皮膚に消えていく。
「なんか、だんだんジャニーズ系の美少年になってきたね」
 聡美ちゃんが私の横で独り言を呟く。

「一輝クン、起きなさい。起きて元通り仰向けに寝てちょうだい」
 天井にアームで固定された別の機械を彼の体の上にセットしつつ、彼の体の血液の成分が女性の値になった事を計器で確認した私が彼の左腕からチャーブの繋がった腕輪を外すと、ようやく彼は目をぱちぱちさせながら目覚めた。
「一輝クン」
「は、はい」
「気分はどう?どこか痛む?」
「痛くはないんだけど、すっごくだるいっす」
 いつまでその口調が続くかしらとほくえそみ、私は再び彼の手足と体をベッドに固定。
「まだ、俺縛られるんすか?」
「注射針刺したりさ、レーザー使ったり、ピンポイントで手術する間はね」
「え、今度は何ですか」
 横でアシストしている聡美ちゃんと一瞬意地悪そうに笑ってうなずきあう私。
「一輝クン。いよいよ覚悟してね」
「え?」
「胸に乳腺の基礎作るから。あと恥毛の形を女の子にして、顔の皮質を女の乾燥肌に変えていくから」
「えっもうそんなとこまで?」
 もういちいち一輝クンの言葉に答えてらんない。それでなくてももう今日の予定を三十分オーバーしてるんだから。
 問答無用って感じで聡美ちゃんが、女の子の恥毛のパターンを二十例程を写真にしたカタログみたいなのを手にして一輝クンに見せる。
「さあ、一輝クーン、どれがいい?」
「いや、どれって、その…」
「おすすめはやっぱり標準型の縦長の長方形。比較的見た目も可愛いし、あたしもこれ選んだの。水着着る時も処理するの楽だよ♪」
「み、水着!?」
「あ、全く毛を生やさないパイパンてのもあるけどさ、お風呂とか行ったら他の女達の目線が恥ずかしいから辞めた方がいいよ」
「風呂って、女風呂!?」
「もう!さっきからあたりまえの事ばっか聞かないの!」
 そう言って意地悪そうな笑みを浮かべる聡美ちゃんの横で私もちょっとにやけながら一輝クンに質問。
「一輝クーン♪おっぱいの大きさどうする?A?B?」
 恥ずかしいのか、顔を赤らめてたまま暫く黙り込む彼。そして、
「ど、どうせなら、大きい方が、いいかも…」
「Dカップ位?♪」
「あ、それ位で…」
 彼と私とが問答してる時、
「やめとけやめとけ!Dなんてさ!」
 聡美ちゃんが割って入ってくる。
「あのさ、女の子トレーニング終わったら女子高校生で社会復帰するんだよ。Dカップで復帰したらさ、体育とか大変だし、教室で男はもちろん女からも奇異の目で見られるんだよ。Cカップにしときなって。あたしもCカップにしたんだから」
 二人の会話を聞いて思わず噴出す私。
「じゃあさ、一輝クン。後々Dカップまで膨らむ様にしといてあげるからさ、とりあえずCカップにしとこか」
「う、うん、そう…する…」
 とすかさず聡美ちゃんがカタログを手にして一輝クンの顔横に詰め寄る。
「一輝クン!あそこの毛は!?どーすんの?」
「ちょ、ちょっと待ってよ、そんな恥ずかしい…」
 彼の白くなった顔が多分恥ずかしさなんだろうか、だんだん赤くなっていく。暫くして、
「じ、じゃあ、その、八番の長方形に…」
「よーし、あたしと同じ形ね」
「てさ、聡美さん、恥ずかしくないんですか?」
「平気だよ、こんなの女同士じゃ普通の会話クラスだし」
 そう言って彼女は片手でカタログを胸に抱きかかえ、片手でベッドに寝ている一輝クンの股間の上に、器用に天井からアームで支えられてる別の機械を降ろしてセット。
「一輝クン、パンツ降ろすよ」
 そう言いながら、一輝クンが何か言う間もなく、片手に持ったカタログを脇の椅子の上に置き、やや乱暴に彼のトランクスを膝まで下げる彼女。
「ちょっとそんな、恥ずかしいって!」
「何よー、あたしだって二年前はこうだったんだしさ、それに休みに入って何人もの男の子のこういう場所見てきたんだからさ」
(あれ、心なしか一輝クンの口調が…)
 そう思った私だけど、私は私で一輝クンの胸の上に準備された大きな装置を、彼の胸に照らされた赤のレーザーポインタで位置を確認して降ろす。一円玉程の大きさしかない彼の薄い黄土色のバストトップが機械に隠されていく。
 更に私は部屋の後ろの冷蔵庫みたいな所から瓶入りのクリームみたいなのを手に取り、それを一輝クンの顔にたっぷりと塗りこんでいく。
「うわっ、これ何だよ?」
「え、これ?一輝クンの顔の美白と皮膚の女性化用」
「なんかすごい臭い。姉貴の部屋の臭いみたい」
「へーぇ、一輝クンのお姉さん、結構香水使うんだ」
 鼻の穴の部分だけ残して彼の顔全体に丁寧に白いクリームを塗りこみながら私は更に歌う様に続ける。
「一輝クンの部屋もこの先どうなるのかな。多分男物全部処分して、ピンクのカーペットに窓には白のレースのカーテンかな。ベッドには花柄んのお布団。花瓶に活花なんかもあったりして、可愛い小物が増えて、縫いぐるみが増えてきて、部屋には男性アイドルの写真が貼られてさ。クローゼットに入りきらない可愛いスカートとトップスがそこら中に掛けられて、そしてあなたの着る女子高校生の制服が壁の真ん中に…」
「先生、ちょっとやめてくださいよー。それと、俺暫く姉貴とおんなじ部屋ですごすかもしれないしさ。姉貴に言われたんです。女教えてやるからって」
 恥ずかしそうに言う彼に追加の一言。
「一輝クンさ、なんか口調が穏やかになってない?」
「え、そうですか?」
 彼の口からさっきみたいなヤンキーっぽい言葉が出てない事に彼はまだ気づいてない。
「じゃ、覚悟してね、一輝クン」
「あ、あの、なんか怖い…」
「大丈夫だから。じゃね」
 手術台横の操作パネルの四角形の十枚位の小さなバネルの色が全て青色に点灯したのを確認する私だけど、
「あの、先生、俺まだ、その、心の準備が…」
 もう!時間がおしてるんだから!一輝クンの声を無視して私は横のメインスイッチを押した。クリームで覆われた彼の顔に青白いライトが照らされ、胸に装着した装置が音を立ててがっちりと胸を固定。
「あ、あの…」
 と何か言いかけた一輝クンの口から、微かなうめき声が漏れ始める。
「一輝クン、胸痛む?」
「ちょっと、痛い…」
「我慢してよね。女の子は胸が膨らむ前の数ヶ月痛むんだけど、一輝クンは多分十五分程度の痛みで済むんだから」
「こ、これ、大丈夫なんですか?何をやってんですか」
 聡美ちゃんの言葉に、クリーム塗られて青白い光当てられた狩の顔の下からなにか苦しそうな声で一輝クンが話す。そして、意地悪そうに答える聡美ちゃん。
「女の子の胸の事わかる?」
「いや、あんまり…」
 彼の言葉に一息入れて話す聡美ちゃん。
「今ね、一輝クンの胸に極小の針が何本もかわるがわる打ち込まれてるんだ。そしてそれらがさ、乳腺とか乳腺小葉とか、腺房とか、要はおっぱいの元になる細胞を作ってるところなの」
「え…」
「もっ少し我慢してね。そろそろバストトップの部分を処理するから」
 ほどなく一輝クンの口からうめく様な声が漏れ始める。私は傍らの操作バネルの計器を見て、異常の無い事を確認するとほっと安堵のため息をもらした。
 実はこの痛みは麻酔で取り除く事も出来るけど、私はあえてしない方針。手術台の上の男の子に、これから女の体にするよ。覚悟してよねって覚悟を決めさせる為。本当に覚悟してよね。実際あと暫くすると一輝クンの胸はちょっとした事になるから。もうすぐ男でお風呂とか行けなくなる体になるからさ。
 暫くの間うめき声を上げていた仮だけどようやく慣れてきたのか、洗い息遣いのみ聞こえて来る。
「どう?痛み収まった?」
「う、うんなんとか…」
 聡美ちゃんの問いかけに、荒い息遣いの中で小さな声で話す一輝クン。
「聡美ちやん。顔はそろそろいいかも」
「はーい」
 返事と共に彼女は一輝クンの顔に手をかけた。顔に付けられたクリームはすっかりフィルム状に硬くなり、彼の顔から彼女の手によってゆっくりはがされていくと、すっかり青白くなった彼の顔が現れていく。
 残っていたニキビ跡や髭の毛根はすっかり消え、硬い細かい胡麻粒の様な皮脂がぼろぼろと落ち、ゆで卵の白身の様につやつやした顔の皮膚、うっすらとピンクに染まった彼の唇。
 「一輝クーン、じゃあアンダーヘア、女の子の形にするよ」
 ようやくおとなしくなった彼の状態を確かめた後、私は別の大きなディスプレイの前に座ってスイッチを入れる。そこには退化し始めて半分包茎状態になった彼の男性器とアンダーヘアが拡大されて映っていた。
「ふぅ…、結構あるわね…」
 私は独り言を呟き、そしてペン片のマウスで除去する恥毛を一本ずつ指示すると、レーザーが毛根を潰し、真赤な点になったその傷跡を別の光が消していく。
 ダイヤモンド型の男性型の恥毛は私の手で周囲を処理され、長方形の女性型におおまかに整えられていく。
「先生、俺、すごく恥ずかしいんだけど…」
 胸の痛みが治まったらしい彼が私に話しかけた。
「これだけは機械で自動って訳にはいかないからねぇ、いずれ一輝クンにも出来る女友達とか、彼氏とかがお風呂とかベッドの上で見ても恥ずかしくない形に仕上げないとさ」
「先生、俺絶対男とエッチなんて無理ですよ」
「さあ、どうかしらねえ…。あ、聡美ちゃん。胸の機械取り替えて」
 そう言いつつ私は手を止め、彼の下半身がどれだけ変わったかを確かめる。浅黒かった彼の体は早くも女性以上に青白くなり、たくましかった腹筋はかなり消え、すべすべつるつるした脂肪が彼の体を覆い始めている。男性特有のお尻のくぼみはあらかた脂肪で埋まり、四角いお尻は少し丸みをおび始めていた。
「そうだ、一輝クン。アンダーヘア、ハート型にしない?可愛いよ」
「いや、ちょっとそういうのやめてほしい」
「どうして?彼氏出来たら可愛いってほめてくれるわよ」
「だから、俺絶対男なんて作らないから!」
 その時、聡美ちゃんが彼の胸から装置を取り外して上の方に移動させる。と突然。
「うわあ!」
 自分の胸を見た一輝クンのとんでもない悲鳴が部屋に響く。彼の両方の小さなバストトップは真赤に染まり、さらにそれを中心にして広範囲に無数の赤い発疹が丸い円形に現れていた。ようやく彼自身も青白く変色した自分の体の胸に起きた変化に気づいたらしい。
「先生、俺、大丈夫なの?」
「え、見せて…ああ、ちゃんとなってるじゃん?」
 彼の驚きの声と表情を気にせず私は席を立ってそう言う。
「いいの、これ?」
 彼の言葉に聡美ちゃんは私の指示通り機器の一部を入れ替えて再び彼の胸に戻す。真赤になった彼の胸は再び装置で隠され、胸を固定されていく。そして程なく、
「あ、あ…」
 一輝クンの口からは先程のうめき声ではなく、ちょっとオクターブの上がった驚いたみたいな声が漏れ始める。
「ちょっと、こ、これ、何?」
 目を大きく開けて天井を見つめて相変わらず驚いた様な声を上げる彼。私には想像はついている。彼のバストトップはこれから女の子並の大きさに変えられ、乳輪は元の彼の二倍、いや三倍近くの大きさにされていくはず。そして彼の胸に出来上がった乳房の細胞が活動し始め、乳管が成長を始める。
 その時、彼の両胸からは生まれて初めて胸を柔らかな物で愛撫される感覚が生まれ、それは次第に感度を増していくはず。
「一輝クン、今度は痛くないから安心してね」
「う、うん」
 目をつぶっておとなしくなる彼に、横から再び聡美ちゃんが話しかける。
「あのさ、さっき女が損みたいな話したけどさ、多分一輝クンも思ってる事だと思うけど、お特な事もいっぱいあるんだよ」
 私は再び席に戻り、聡美ちやんの言葉ら耳を傾けながら一輝クンのアンダーヘアの処理にかかる。
「ほら男だと仕事でアーティストやる人多いけどさ、女は一人一人が毎日アーティストなんだよ。それに風景とか音楽とか美味しい食べ物とかにすごく感動するし、綺麗な物や可愛い物を選んだり作ったりして身に着けたりさ。時には会う人々を元に架空のお話まで瞬時に作っちゃうんだよ」
 少し目を開けた一輝クンに彼女が続ける。
「動物や植物とか、人形とか縫いぐるみとかとお話が出来るんだよ。女の子同士でテレパシー通信できるんだよ。頭の中にいまいる現実とは別の世界が勝手に広がっていくの」
 あまりの大げさな話に私は彼女の顔をちらっと見る。彼女もそれを察したらしてけど、
「だって本当の事だもん。体とか手足は柔らかく細く弱々しくなっちゃうけどさ、それと引き換えにそんな楽しい事が出来る様になったんだもん。はっきり違いがわかるんだもん。ちょっとの事で傷つくけどさ、ちょっとの事で嬉しく楽しくなるんだもん。あたしは女になって良かったな」
 そう言いながら聡美ちゃんは再び手術台の上の一輝クンに向き直る。
「女はいいぞー、綺麗で可愛い服着れるよ。メイクで毎日変身できるよ。男からちやほやされるぞー。彼氏出来たらもう難しい事全部彼に任せて、幸せでいい気持ちになる事ばかり考えていいんだぞ。好きなら好き、嫌いなら嫌いってはっきり言っていいんだぞ。嫌なら怒ったり泣いたりしたら全部許してくれるよ。それに…」
 あ、そろそろ彼女が暴走し始めた。そろそろ止めないと…。
 私は手を止め、一輝クンと聡美ちゃんの横に行って彼女の話を遮る様に話し始める。
「一輝クン。一番の女の幸せって何だと思う?好きになった彼氏のものになる事。そして赤ちゃん産んで育てて、彼氏と一緒に幸せな家庭を作る事。違うって言う人もいるけどさ、多くの女の子はそう願ってるものよ。頭がそうなっちゃうの。護る側から護られる側になってさ、文化っていうのを創って育てていくの」
 私はカプセル状の手術台の隙間から手を入れて、一輝クンの髪をそっとなでて続ける。
「一輝クン、ママになるんだよ。お母さんになるんだよ」
「…ママに、僕が…」
 私の言葉にぽつりと呟く彼。
「でも、それって男とエッチしないと…、俺、そんな事…」
 一輝クンが続けた時、突然彼の息遣いが少し荒くなる。
「…あ…あっ!」
 目をだんだん大きく開いて上を見ながら、何かを感じた様な声を上げ始める彼。
(あ、そろそろ始まったかな)
 私はアンダーヘアの仕上げに入る為彼の側から離れ、聡美ちゃんにもそうする様に言う。ほぼ完成した彼のバストトップには女の性感帯も備わり、今まで男の子だった彼は初めて女としての気持ちよさを経験する事になる。
 彼は無意識のうちに口から出る悶え声に、今多分相当恥ずかしい思いしているはずだから。
 聡美ちゃんも過去経験してるし、何人もの女性化していく男の子を見てるからか、その事をわかってる様にすっとその場を離れて再び奥の椅子に座った。
「一輝クン、恥ずかしがらなくていいからさ、声出してもいいよ。あなた以外あたしたち二人しかいないんだからさ」
 ここで性別を変えられていった多くの男の子達がそうだった様に、彼は声が出るのをずっと我慢しているらしいけど、彼にとっては初めての経験。口元からはうんうんと声が漏れてくる。
(うん、我ながら可愛く仕上がった)
 青みがかって滑らかになった彼の下半身にくっきりと綺麗な長細いハート型になったアンダーヘアを見て、私はレーザー器具を天井に引き上げる。と、
「うん…うん…」
 声がちょっと可愛くなり、腰のあたりを震わせ始める一輝クン。
(あー良かった、間に合って。もう少し長引いたらすごくやりずらくなってた)
 ほっとため息をつき、額の汗をぬぐう私。見ると彼の男性自身は、胸をいじられる気持ちよさでピンと立っているけど、それはいつのまにか親指位に小さくなり、アンダーヘアに見え隠れしていた。
(なんとか順調だわ)
 とりあえず今日の施術はこれで終わり。解放された私は聡美ちゃんの座ってる横に座り、飲みかけたままの冷たくなったコーヒーに口を付けた。
「あん…あーん…」
 彼の口から出る悶え声だだんだん大きく、ちょっと可愛い口調になっていく。さっきまでちょっとヤンキーっぽい男口調だった彼が。思わず噴出す私だった。やがて、
「ヒューン」
 という音と共に、手術台近辺のいくつかのモーター音が止まり、胸に装着されていた器具が天井に上がり、彼を覆っていた半カプセル状の透明な覆いが開く。彼をびっくりさせない様にそっと近づくと、目を半開きにして汗びっしょりになり、はあはあと大きく呼吸している一輝クンの姿が見える。
 彼の姿は手術台に乗せられた時とはかなり変わっていた。眉を細くされ、顔のシミとかを綺麗にされ美顔処理された彼の顔は子供の時に戻ったみたいに輪郭が丸くなり、ボーイッシュな女の子という雰囲気さえ出始めている。
 青みがかった白になった彼の体の筋肉は殆ど消え、二の腕は一回り細くなり、胸板と腹筋が消え、のっぺりした体になり、太股から足にかけても筋肉はほぼ消え、まるで子供がそのまま大きくなった様。
 でも一番大きく変わったのは胸。さっき真赤になってた彼の乳輪は五百円玉程の大きさになり、赤黒く色着き、その先には同色の大きな干しブドウみたいになったバストトップがくっついていた。それを中心に彼の胸には真赤な細い血管が蜘蛛の巣の様に広範囲に浮き出ていて。
「一輝クン、どう起きれそう?」
 相変わらず息を切らせていた彼は私の言葉にふらふらしながらもゆっくり起き上がる。しかしすぐ胸の違和感に気が付いたのか、上半身を起こすと同時に自分の胸に目をやり、声にならない声を上げた。
「大丈夫、うまく行ってるわよ」
 私の言葉が聞こえたのか聞こえないのか、彼は口を半開きにして怯えた様な息使いで無意識といった感じでベッドの上に足を崩した感じで座り、自分の胸から目線を外さず、両手で胸をすくい上げる様な仕草で胸を触り、そして両手の人差し指ですっかり大きく黒く変わってしまった自分のバストトップを震えながら触る。
 一瞬目をつぶった彼は私と聡美ちゃんの目線に気づき、恥ずかしそうにさっと両腕をクロスして自分の胸を隠す。
「大丈夫だって」
 そう言って笑顔で聡美ちゃんが話しかけるが、聞こえてない様子。
「か…鏡…あるの…?」
 その言葉に聡美ちゃんが彼の手を引いてベッドから降ろそうとするが、両足が床に付いて歩き出そうとした瞬間、彼は大きくよろめいて倒れそうになった。
「だ、大丈夫?」
 思わず声をかける私に、
「なんだか、力が入らない…」
 か細い声で彼が答える。まあ当然だろう、足の筋肉なんて殆ど消えちゃったし。慣れないうちはふらつくかもよ。
 よろめきながら聡美ちゃんに支えられて、部屋の大きな姿見の所へ連れて行かれた一輝クンは、驚いた様子で鏡を見つめ、無意識だろうか両手を口に当て、大きく息を吸い込み再び声にならない声を上げた。
 しばし変わり果てた自分を見つめ微動だにしない彼。そして、
「何…この胸…」
 真っ白でのっぺりした体に黒く大きくなってしまった乳輪とバストトップ。胸に走る無数の赤くて細い血管を見つめ、両腕でその上を調べる様に触りながら、相変わらず怯えた様子でぼそっと喋る彼だった。
 私は彼の後ろにそっと立ち、女性化し始めた一輝クンのバストトップを後ろからそっと触る。指にころころした感触が伝わるのと、
「やん!」
 と初めて女の子みたいな悲鳴を上げたのはほぼ同時だった。
「ほら、一輝クン。女の子になってきたよ。大丈夫、胸の赤いのは明日には消えるし」
 相変わらず、驚きと信じられないって感じで呆然とすっかりなよっとした自分の体を見つめる彼に、聡美ちゃんが彼の着ていた服を両手に抱えて、はいって感じで手渡す。
「さあ一輝クン。今日はこれで終わり。服を着て自分の部屋に戻って、係りの人の指示に従って夕食とお風呂済ませてね」
 時計を見るともう夜の七時。予定より一時間オーバーしてしまった。
「あの、俺、今どうなってるの?」
 まだ自分の体の変化が信じられないのか、震える手でシャツを着始めた一輝クンがやっと私の目を見つめながら小声で話す。
「大丈夫。胸とか変わっちゃったけど、まだ男の子よ。もしさ、女の子になるのやっぱりやめるーって言うならさ。係りの人にそう言ってね。すぐに別の所に連れて行ってくれて、男の子に戻る処置するからさ」
 私の言葉が耳に入っているのかどうかわからない様子でシヤツのボタンを留め、ジーパンをはき始める彼。
「もし、このまま女の子になりたければ、明日朝の九時までに朝ごはん済ませてここに来てね」
「う、うん…」
 ジーパンをはき終えた彼は、気乗りのしない返事をした後そそくさと部屋のドアへ向かい、そして足早に出て行った。
 その後姿を見送って、ほぼ同時に大きなため息を付く私と聡美ちゃん。
「どうだろ、久々に途中辞退者でるかもね」
 うつむいてぼそっと喋る私だけど、
「そうかなあ」
 あっけらかんとして両手を頭の後ろに当てて喋る聡美ちゃん。
「あたしは、明日絶対来ると思うな」
「どうして?」
「さあ、なんとなく。あたしの感だけどさ。それにそんなに嫌がってなかったでしょ」
 そう言いつつ彼女は部屋のテーブルに行って、カップにコーヒーを注ぎ始める。
「だってさあ、男の人に抱かれたりするの、あんなに嫌がってたじゃない?明日どうなるか…」
「大丈夫だって。今日一晩寝たらどうなるかわかんないって。じゃあ明日八時だよね。今日はもうあがるわ」
 コーヒーを一息で飲み干して部屋から出て行く聡美ちゃんを私は不安げに見送った。
 
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