エクリプス 〜瑪瑙の章〜

亜夏羽

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第七節

唐紅に染まるは

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旅館で事件が起きた、その次の日の朝。

紅華は目を覚ました。
「はっ……!あ、れ?ここは……旅館で……?そうだ、アイツを見てから……能力が暴走したんだ」
(ダメだ。なんでああなったのか分からん。お腹すいたけど、結局あの後どうなったんだろ。多分蓬辺りが解決してくれたんだと思うけど…………)

「お、起きた……!」
「へ?」
「美埜音ちゃん、起きたよ紅華ちゃん!」
「……えっ?あ、おはようございます!紅華さん。その様子だともう大丈夫そうですね!」
「ねぇ、一体何があったの?」
「紅華ちゃんがおかしくなって、それを蓬くんが止めた後、あの子……ソラさんは何処かへ行っちゃったし、蓬くんや煌くんが看病というか様子を見てくれてたよ」
「……そうだったの。朝ごはん一緒に食べに行く?皆で」
「うんっ……!良かった、元気で」
「そう簡単にいなくなってたまるかってのよ。……蓬と煌は?」
「……まだ寝てるよ~」
「そっか。起こすわ」
「ゑ?」

まだ男子組が寝てると聞いた紅華は看病(?)してくれた2人を気遣わずに叩き起した。

「起ーきーてーーー!!!私はもう元気よ!」
「ううん……?おお、おはよ……」
「ん~?……あ、起きてる!おはー」
「ハイハイおはよ。朝ご飯、皆で行くから早く支度して」
「はいよ/へーい」
「昨日はありがとうね、わずかにだけど覚えてるわ」
「ああ……眠い………」
「蓬、大丈夫か~?」
「ああ…………大丈夫だ」
「眠いなら抱えて連れて行くぞ」
「大丈夫だ問題ない」
「全く、つれねぇなー」
「あ?」
「怖すぎワロタ」
「はよ準備しろアホども」
「とりあえず顔洗ってきたら?蓬くん……」
「ああ、行ってくる……」
「大丈夫なんですかねアレ」
「大丈夫じゃない?眠いだけよ」
「雑ぅーw」
「ちなみにその格好どうしたお前ら」
「え?」

煌に尋ねられて、思わず聞き返してしまった。まぁ、尋ねるのも無理は無い。なんせ女子組はドレスに着替えているのだから。
紅華は赤くて裾に黒い布とリボンがついているワンピース型のドレス。
鈴菜は水色で袖には透明感があり、ふんわりとしたドレス。
美埜音はピンク色のレースやリボンがたくさんついていて、胸元にはバラがついている清楚系のワンピースドレスである。

「気が早いぞお前ら」
「あーいや、試しに着てみただけよ。レンタルできるっぽいし」
「煌くん達も今日の夜おめかしするの?」
「あぁー、まぁな」
「張り切っちゃおうよ、ねぇ紅華ちゃん」
「何故」
「えーだってどうせなら可愛いって言われてみたくない?」
「いや」
「やいツンデr((((((殴」
「やかましい!」
「ふふっ、面白いですよねあの二人」
「まぁなー。相棒だもんなぁ……」
「大体気があってますよねw」
「うんうん」
「「気ぃあってないわ!!!」」
「www」
「ふっw」

そうこうしているうちに蓬が着替えて戻ってきたので、全員で部屋を出て食堂に向かう。
「ここの旅館も今日までか~」
「明日出発なんだっけ?」
「そうだぞー( *¯ ꒳¯*)」
「もう少し居たかったですけどあんな事あった後ですしねぇー」
「つまらないな」

全員で話していると食堂に着いた。
この日の朝ご飯はロールパン、またはハンバーガーだ。飲み物はそれぞれ自分で選べるらしい。炭酸弱いのにはありがたい事だ。ちなみにおかわりは自由である。

「めっちゃ美味しい!もうそこらへんのさ、メックよりも美味しい!」
「ふぉんふぉふぇ!ŧ‹”ŧ‹”」
「飲み込んでから喋れ!」
「ゴクッ……。ホントね、美味しいわ!」
「確かにな、なぁ煌……煌?どうした?何かあったのか?」
「うぅ……あ、え、いや、別に何も………」

( ˙꒳​˙  )ジーッ

「う……ホントに何も無い……うぐっ……」
「あ!お腹から出血してるよ!」
「見間違いでは?アハハ…………」

しらーっ

「煌~?ちょっと話を聞いてもー?」
「ダメでぇぇえええええす!!!」
「拒否権なんぞなあああああああい!!」

知らないフリをしている煌に他のメンバー全員で引っ捕まえて事情を聞いた。

どうやら、食堂に向かう途中に切られたのだという。顔は覚えていないので特定は不可。
美埜音の式神であるモモに治癒してもらい良くはなったが、それ以降は煌がどっか1人で行く時に蓬が着いていくという決まりをつけた。(本人は嫌がっている)















その夜、パーティー……というかディナーがあるので皆それぞれのドレスやスーツに着替えている。

ちなみに蓬は白いスーツに薄紫のネクタイを付けており、煌は黒に赤いネクタイを付けている。(どっちも半袖で薄い生地)
対称的な感じのスーツに、紅華は少しニヤニヤしてしまう。

「ふふふ」
「何笑ってるんだ?」
「いやぁ、相棒って感じだなーって思って」
「おう、そうだぞ?」
「おい勝手にすんな」
「いいじゃーん、相棒!」
「うっとおしい暑っつい離れろ!」
「めっちゃ嫌がってて草。でもいいじゃない、煌で」
「どうしてそう思うんだ?」
「逆に聞くけど、本気で嫌って思ってるの?」
「…………いや、そうじゃない」
「ふふ。なんとなくだけど、煌と話す時だけくだけた感じで喋るし、切られたってなった時はどこへ行こうとついて行ったりしてたしね。仲良いのかなって」
「まぁ、幼い頃にたくさん話したし、たくさん2人で遊んだからな。ただの腐れ縁だ。気にするな」
「……蓬は、なんで1人になろうとするの?」
「……………1人の方が、落ち着いて頭の中を整理できるからだな」
「へぇ~。…………煌の事はあなたに任せるわよ」
「アイツは自分の事は自分でやるぞ」
「違うわよ。私が言ってるのはそういう事じゃなくて、ああやって怪我を隠される事!ああいうのは本当に良くないから頼んだわよって意味!それに…………」
「それに?」
「アイツが居なくなったら、1番悲しむのはきっとあなただろうから。あなたにしか、アイツの背中を守ってやれる人はいないと思う」
「……俺には、そんな大事な事はd」
「出来るわよ。私が保証する。それと、前に私がおかしくなった時……止めてくれてありがとう。あの時私が言ったこと、ちゃんと守ってくれてたもの。だから大丈夫」
「っ…………!」
「これからもよろしくね、蓬」

紅華の思いがけない本音を聞いて、蓬はびっくりした。

(これだからツンデレは……)

そして、答えを発した。
「あぁ」








 













夜はまだまだ更けていく。

お楽しみ会という名のパーティーが開催され、某黒うさぎのぬいぐるみを手に入れた時。
停電がまた起きた。

「またか……」
と蓬は慣れてるし、
「ひっ!な、何?!もう~!」
と、鈴菜は目に涙を溜めながら怒っている。
美埜音は部屋に先に戻って寛いでいるのでいない。
煌は煌で疲れている。
紅華はもう慣れたので特に緊張感は無いが、またソラが現れないかと思うと気が気ではない。

しばらくすると、電気は着いた。
一人ピリピリしている紅華は、一瞬だけ茶色いフードを被った人物を見つけた。
「逃がさない……!皆はここで待ってて!」
「えっ?!……気をつけてね」
「分かってる。行ってくるわね」
「うん……っ」
鈴菜に後を任せ、紅華はその人物を追い走っていった。













紅華がその人物を捕まえた時、ソイツは振り返った。
見たらソラだった。
「ふふっ、狂わないの?」
「な、わけないでしょ?」
「でも苦しそうだよ?」

「………………………もう、私は"狂わない”。誰も傷付けない、傷つけたくない。だから………………ここで死ね、ソラ」
「え……ゔぁっ……」

紅華が初めて思った言葉を吐き、ソラは金縛りのように動かなくなった。
何故なのかはすぐに分かった。後ろに煌が居たから、羽交い締めにされたのだ。

「うわぁ、動けないね。でも…………関係ないよ?」
と、ソラが時を止めるも動けない。
(?!……う、動けない?!何で?!?!)
またソラが仕方なく時を動かしたその時。














ソラの近くに紅華がいた。

「動いたら、殺すわよ」
「……うわぁ、殺意高い~」
飄々と躱す様は、紅音の様だ。
紅華は、ずっと気になっていた事を聞いた。この時既に覚醒時の暴走は克服している。

「…………何であんなことをしたの?」
「うーん、何から話せば……。あぁそうだ、これだけは伝えなきゃ」
「「???」」

「…………紅音姉さんはね、生きてるよ。それをあの死んだヤツらは隠蔽しようとした。何処にいるのかは口を割ってくれないから」
「!?」
「えっ?!」
「……じゃあ、あなたは私のお姉ちゃんを探すためだけにそんなに人を?」
「うん。正直に言うとあの屋敷に居ることは苦痛で仕方無かったから、逃げたんだ。紅音と一緒に」
「どういう事?」
「実は………………」

たくさんの人を犠牲にした自分の家の子、ソラが話したのはこうだ。













実を言うとボクは、本当は瑪瑙家の本家の子供だった。
そして、紅音姉さんの妹であり、紅華の姉。2番目の姉だったんだ。紅華は1番下の末っ子らしくてね、ボクが生まれた2年後くらいに生まれたんだよ、紅華。

それで5年後…………………………………………















忘れるはずないだろう?あの………
あの日の戦争の事。










ソラside



あの日、ボク達姉妹と両親は離れ離れになった。
皆別々…………というかバラバラに吹っ飛ばされたね。
……紅華は紅音姉さんと会ったかい?

え、会って無いんだ。ボクもなんだよね、実は。
もう一度、あの姉さんの笑顔が見たい、紅華……君の笑った顔を見たいと思って、どうにかこうにか生きてきたんだよね。
そんな時に拾われたのがね、青瑪瑙の主人、碧(あお)さんって人。まさか分家の主人に拾われるなんてね、運命かな?

…………そんなに引かなくてもいいじゃんか。

それで、姉さんや紅華を探すために旅をしたんだ。

あ、やっと……思い出してくれた?
「諷」(そら)お姉ちゃんだよ?……………紅華ちゃん。
















紅華side

その話を聞いた瞬間、涙が出てきて止まらなかった。忘れていた記憶が蘇ってきた。

嗚呼、なんで忘れていたんだろう。戦争ではぐれた時も、「諷お姉ちゃんー!」「紅音お姉ちゃーん!!」って叫んでいたじゃないか。
料理を教えてくれたじゃないか、小説とかも教えてくれたじゃないか、紅音お姉ちゃんと私と、"諷お姉ちゃん”で遊んだじゃないか…………。




「泣かないで、紅華ちゃん」

ふと、声がした。
すると、お姉ちゃんも泣きそうな顔で笑っていた。

「泣かないで、ボクまで泣いちゃうよ」
と、言った。
煌もなんなら泣きそうだ。
「泣いてないよ。会えてよかった、諷お姉ちゃん!」
私はわぁわぁと泣きわめきながら言った。


パーティーは、まだまだ続いていた。



















ひとしきり泣きわめいた後、顔を洗ってからパーティーに急いだ。もちろん、フードは脱いで、手を繋いで。
煌は先に戻っている。



「お待たせ!」

その日のパーティーは、今まででずっと楽しかった。













数日後。


なんだかんだあって事情を話したら、納得してくれた。
鈴菜なんて挨拶してケロッとしている。
蓬は驚いていたけど。気持ちは分かる。気持ちだけは。

ドタバタなお泊まりを過ごした5人は、煌の家でゴロゴロしている。

「にしても、これからどうするの?紅華ちゃん」
「家の屋敷に一緒に住むわよ。元々本家の二番目の姉だし、部屋は有り余ってるからね」
「流石、瑪瑙家のお嬢だね」
「嬉しくないなぁそれ」
鈴菜と他愛のない会話を煌の家のリビングでしていると、煌が皆のリクエストジュースを持ってきてくれた。
「持ってきたぞー。リクエスト多すぎるんだよお前ら……」
と、ゲンナリした様子で来た。
「美埜音は?」
「美埜音なら、皆のためにアイスも買って来るって言って出かけたわよ」
「美埜音は優しいな、どっかの誰かと違って」
「「は???」」
「ガラ悪いなお前ら」

ちなみにこの日は皆でゲームして遊ぶ約束をしていたので集まっている。
鈴菜はとっくにだらけている。
紅華は、先ほど煌が持ってきてくれたリンゴジュースを取って飲んだ。
「っあ~~~!!!美味いわ~!」
「おっさんか」

間髪入れずにツッコミを入れた蓬はラムネ、鈴菜はアイスココア、美埜音は白ぶどうのジュースだ。

「あ~エアコン涼しい~」
「今何度?」
「26.0℃」
「ふぁ~、通りで」
「電気代ヤバそう」
「喉乾いたから俺も白ぶどうのジュースで」
と、それぞれが好き勝手寛いでいる間に美埜音が戻ってきた。

「おかえり~。暑かったでしょ?」
「はい……外もう出たくないです」
「草」
「とりあえずゴリゴリ君ソーダアイス皆で食べません?」
「参戦」
「スメブラか?」
「次それやろうぜー!」
「負けないわよ!」
「私も!」
「わ、私もですー!」

とりあえずアイス食べてゲームしていく。














そして、次の日。
紅華達は学校に登校した。この日は…………




















国の偉い副大臣が、この学校に来校する日だった。

第八節に続く。














注意!
この小説は第一節が1話の代わりになっているような感じなので異質な感じですが、気にしないでください。
作者が小説をあまり書いた事が無く、このような感じになり、申し訳ありません。

引き続き、読者様には楽しんでいただけるよう頑張りますのでよろしくお願いします。














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