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2章 海の街からの波瀾万丈
30話 フィーダ様、お久しぶりです!
しおりを挟む♠前回のあらすじ♠
グスカン&ダエズ「「戦うぜ!」」
レオンハルト「師匠! お話しましょう!」
セオドア「やだ。フィーダ召喚するぞ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(クソッ、何だよこのじじいっ!)
グスカンとダエズの打ち合う音が木霊する。
この戦いはどう見てもグスカンの劣勢である。グスカンが全力なのに対して、ダエズはまだまだ余裕だ。
「ほう、これも避けるか。やはり才能はあるのう」
ダエズの模擬刀がグスカンの足を打つ。バランスをくずされて一瞬だけよろめくが、何とか耐えた。そして、また攻める。
しかし、ダエズはその隙も見逃さない。
更に腕に攻撃が入る、堪える。反撃。カウンター。
やはり、セオドアのような工夫が無ければこの老爺には勝てないらしい。
「お主は格上と戦う経験があまりないの。
それに、見た目に反して慎重な所がある。儂への攻撃を見りゃ分かるわい。果敢に挑むが、無茶はせん。才能もあるし、それに見あった努力もしておる。じゃから、大抵の相手には勝ててしまう。それ故に格上との経験が無い。
恐らく博打のような依頼も受けなかったのじゃろう」
ダエズが冷静に分析する。その間も、グスカンの攻撃をいなしていた。
生粋の負けず嫌いであり、天才を自称するグスカンとしては敗けるという事は屈辱だ。
勝たなければならない。勝つ、絶対に勝つ。その思いが膨れ上がる。
(俺は勝つに決まってる!!)
ダエズの剣筋がゆっくりと見えた。心は落ち着き、しかし頭は冴え渡る。
「そうかよ、じゃあ俺は来れで成長できるってこった」
ダンッと踏み込み、逆袈裟を放つ。最高の出来だ。そして詠唱。
「熔岩魔人!!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「熔岩魔人!!!」
グスカンが叫んだ瞬間、ダエズは熱気を感じ、横に跳ねた。
確認すると、熔岩でできたゴーレムのようなものがいた。グスカンの魔法だ。少々不格好だが、周りに被害がないように良く制御されている。
それが腕を振るう。当たればただでは済まないだろう。
(当たらなければ問題ないがの……)
しかし、それは難しい。敵はゴーレムだけではない、グスカンもいるのだ。グスカンがゴーレムの方に誘導するように攻撃を仕掛けてくるのだ。
気になるのは、グスカンの剣筋が先程とは違う事だ。
極限の集中状態、ゾーンにでも入ったのだろうか。
興味をそそられるのはセオドアだが、才能をより感じるのはグスカンだ。
ほら、ゴーレムの操作の精度が増した。時間を掛ければ掛けるほど不利になるのはダエズだ。
初めてダエズから余裕が無くなった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「グスカンさん、遅いですねぇ」
グスカンが出ていってから二時間は経っていた。
「あいつの事だ、最後まで粘っているだろうな。もしかしたら勝って帰ってくるか……?」
まさかな、と首を振るが、あの男はやるかも知れないと考えてしまう。
普段はグスカンの事を馬鹿にしきっているセオドアだが、その才能と努力は評価していた。本人の前ではそんな事絶対に言わないが。
「そうなんですか⁉」
「わからんが、たまにとんでもない事するからなぁ、あいつは……勝つか、阿呆みたいな負け方をするかだな」
グスカンの過去のやらかしを思い出しながら手の中のフィーダ召喚珠を弄る。
「へぇ~。あ、この式解りません」
「こっちを、こうだ。そろそろ解き終わるな」
「師匠とフィーダ様って、どれくらい昔から知り合いだったんですか?」
「八歳だ」
さっきからレオンハルトの質問攻撃がすごい。うっかりすると言わなくていいことを言いそうだ。
「グスカンが帰ってきてから、奴の魔力をお前に移して、フィーダを召喚する。フィーダの魔力は甚大だから、魔力が漏れないよう張らねばならんな。
まぁ、それは後でいいだろう」
「わかりました! あ~! 解けますよ! 解析できます!!」
やたらレオンハルトのテンションが高い。
「そうか、どういう効果か言ってみろ」
「ええーと、精霊フィーダを三十分だけ呼び出せる。条件は契約者の魔力」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
敗けた。阿呆みたいな負け方をした。
現在グスカンは灰のように燃え尽きて床に転がっている。
敗けたのは、ギルドの試験でセオドアに敗れて以来だ。
「あ~悔しい」
「ほっほっほ、あんな搦手初めてかの?」
熔岩魔人を逆に利用されてしまった。ダエズが地面から出した石によってバランスを崩したゴーレムがグスカンにのしかかりそうになり、気を取られと所をやられたのだ。
「搦手と言うほど搦手でもないがの。さて、いろいろ教えてもらおうかえ」
「クソッ! 次は勝ってやるよ!!」
真っ白に燃え尽きていたと思ったら、もう回復している。グスカンは、強い思いを秘めた瞳でダエズを見つめていた。
勢いをつけて飛び起きる。
「生意気言うて……」
呆れたように言うが、その顔は嬉しそうだった。
「じゃ、何が聞きてぇんだ? 約束通り答えられるのだけど教えてやんよ」
「そうさのう、セオドアは何者じゃ?」
ダエズの質問にグスカンが顔を顰めた。
「それは俺が聞きてぇな。常識に疎いかと思えばとんでもねぇ事を知っている。
普通の人間かと思えば剣術極めてる。
貴族っぽいけど庶民的な事に抵抗がねぇ……。
ま、セオドア・ゲージはセオドア・ゲージって考えるしかねぇな」
「そうかの……ま、自分で調べるわい。
話は変わるが、お主はなぜ故郷を出たんかの?」
「そりゃあ、あそこは田舎だし、べベスさん家の息子さんって呼ばれ続けるのは面倒だからだよ」
ダエズが面白そうに目を見開いた。
「ほーう。お主、父親のした事を知らんのか」
「は? なんかヤバイ事やったのかよ!」
「いや、罪は犯しとらんよ。伝えておらんということは、儂が言わんほうがええの」
何か意味深な事を言うダエズ。勿論グスカンは喰いついた。
「どういうことだよ! 気になるだろ!
おーしーえーろーよー!!」
ダエズはこの後しつこく追い掛け回されたという。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ただいまー」
グスカンがフラフラと帰ってきた。
「おかえりなさい! どうでしたか?」
「敗けた。敗けた。クソッ、悔しーなー」
見るからに悔しそうだ。しかし、諦めてはいない。
「残念でしたね……」
レオンハルトは残念そうだが、セオドアは意に介さない。
「そうか、おい手伝え」
「返す刀でそれ⁉ 酷くない⁉」
「大切な事だ。フィーダを呼び出す。レオンハルトにお前の魔力を移す」
手には召喚する珠がある。準備ばんたんだ。
「え? マジ!? やるやる! 何だよ~、先に言えよ~」
手のひらを返したようにグスカンがセオドアに駆け寄った。
グスカンもまた、あの高位精霊に会いたいと思っていた。
「よし、俺は魔力漏れ防止の結界を張る」
「レオン! 魔力移すぞ!」
「はい!」
魔力移しの魔法は、コツが分かれば誰でもできる魔法だ。一時的に対象の魔力総量を上げる事ができる。
欠点としては、一時間もすると移した魔力が無くなってしまう事だが、この場合は問題ない。
さて、準備が全て整った。レオンハルトが珠を掲げ叫んだ。
「おいでませ! フィーダ様!」
珠が神聖な光に包まれ、ゴウッと突風が三人の髪を巻き上げた。
「呼んだかえ! 妾の愛しいセオドア!」
鈴のなるような涼しげな声が聞こえ、女性らしいフォルムのシルエットが見えた。
「あぁ! 会いたかったぞ、フィーダ!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
誠に申し訳ありません。次回の更新はお休みします。
リアルの用事が嵩んでしまい、作品の元々高くないクオリティーが保てなくなりそうです。
楽しみにしてくださっていた方々には謝罪申し上げます。
A
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