神世界と素因封印

茶坊ピエロ

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59.とりあえず騒動の終幕

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 俺はひたすら祐樹を殴りつける。20発は殴ったと思ったところで、誰かに手首を捕まれた。


「すまない。これ以上はみてられない。やめてくれ」


 手首を掴んだのはイヴァンだった。みれば全員俺達の方を見ずに目をそらしていた。


「そうか・・・。わかった」


 俺は立ち上がる。祐樹を見るが殴られてもおびえた様子はなく、ばつが悪そうにしている。


「祐樹、イヴァン達に感謝しろ。俺はまだまだ止める気はなかったからな」


 そう言って踵を返し歩き出す俺に祐樹は殴りかかってきた。忌纏は祐樹を殴り始めた時点で解除していたので普通に痛い。


「お前は!殺してやる!殺してやる!殺してやる!」


 祐樹は俺の顔面を殴りつけてくる。ミナ達やイヴァンは止めようとしてくれたが、俺は手を出して止めなくていいと合図する。


「いいぜ。殺しても。今の俺は、お前の魔眼で服を爆弾に変えれば下手すれば死ぬだろうさ。殺れよ」


 まぁそうする気がないのはわかっている。
 殴られてか、流血してかは知らないけど、さっき俺に殴りかからずに服を爆弾に変えてれば、殺せた可能性だってあるのにそれをしなかった。
 何より、拳には先ほどまで感じていた殺気がまるで感じられなかったからだ。

「どうした?殺らないのか?」


「うるせぇ!俺はなぁ・・俺は・・・お前と過ごした一年間は・・・悪くないと思った」


 祐樹は言葉を紡いでいく。涙を流しながら。
 殴る拳には最早力は入っていない。けれども殴り続けてはいる。
 俺は黙ったまま殴られ続ける。


「そして・・・こいつらは・・大事な家族だ・・・」


「それで?」


「帝国に来るって話は・・・悪くないと思った・・・お前と・・こいつらと・・・人並みの生活をしたいと思った」


「そうか」


「けれど!俺は・・・斑鳩さんに恩を感じている・・・だからアメリカのために・・・」


「国の、恩人のために、友人も家族も捨てるのか?」


「そうだ!斑鳩さんがいなければ俺達は家族になれなかった。ここまで生きれてたかもわからねぇ!」


「それは斑鳩が望んでいるのか?恩を返してくれとか言われたからなのか」


「言われたさ!俺も恩は感じてる。だったら報いるためにも何でもしないといけねぇだろうが!」


 再び祐樹の拳に力がこもる。一方俺は斑鳩が頭にきていた。
 そして俺は殴られる前に叫んだ。


「そんなのは・・・そんなのは恩人なんかじゃねぇよ!」


 祐樹は俺の声に驚き、殴ろうとしている拳を止める。


「恩人って言うのはな!見返りを求めねぇんだよ!俺は両親がいなくなって、暗くなってた俺を引き取ってくれた叔母さん家族に感謝してる」


「カズ・・・」


「けどなぁ!叔父さんも叔母さんもヨシュア兄さんも、一度も俺に恩返しをしてくれなんて言ったことはなかった!」


 実際、俺を本当の子供のように、弟のように接してくれた。それには感謝しかない。
 けれど恩返しなんて強要なんかしてこなかった。
 恩返しをしようとしても、一番の恩は元気にしていればいいと、そう言ってくれた。


「ミナは・・俺が暗い顔をしていても明るく接してくれた。けどなぁ、それは見返りを求めてやった行為でもなんでもねえんだよ!」


 ミナは優しいからかもしれない。
 けど俺が恩を返したいとは思ってもミナから、あのとき明るく接したよね?だからなにかしてなんて言われたことはない。結局はそうなんだ。


「恩人は恩返しなんて求めない!お互いに恩を恩で返していたら気づいたら恩返しになっていた!それだけなんだ」


「だからって恩を仇で返していいって言うのか!」


「そうだ!恩を仇で返されたらこいつのことはもう助けないと、そう呆れられるだけだ。そもそもお前の感じてる恩とここにいる家族。どっちが大事なんだ!」


 恩を仇で返しちゃいけないなんてことない。俺なんて仇を返しまくりだ。
 ミナを守るためになんだってしたしな。
 それでも助けてくれる、優しい兄さんを持った。
 それでも何もなかったように受け入れてくる温かい家族を持った。
 それでも信じてくれる、大切な友人もできた。
 そしてこんな俺のことを心配してくれる大事な、女の子だっている!


「俺は・・・俺は・・・俺は家族のが・・・大事だ」


 なんだ言えるじゃないか。結局こいつも、あいつらの家族なんだ。根はいい奴だ。


「だったらどうするんだ?」


「悪かった和澄。謝って許してもらえることじゃないが・・」


「はぁ~。もっと先に謝る奴がいるんじゃないのか?」


 祐樹は俺の上から退き、メアリーさんとベロニカのところに走って行く。
 そして俺の方へみんな近づいてくる。


「いてて。あいつ派手に殴りやがって」


「カズくん。結構かっこよかったよ?」


 ミナが俺の横にきて言う。なんか照れくさいので頭を掻く。


「全く、別に殴られることもないだろうに」


「カズさんはマゾさんでしたのね」


 このバカップルは。いや俺のことを気づかってるのかこれは?


「カズぅぅ俺のことをそんな風に思ってくれていたんだなぁ」


「こらこら。和澄くんが困っちゃうわよ」


 ヨシュア兄さんは泣きながら、カナンさんがそれを宥めている。そんなに感動したのか?


「儂のことは言われなかった・・・師匠じゃのに・・・」


「僕もだよ・・・あんなに夢の中で救ってあげたのに・・・」


 この二人は本気で言ってるのか冗談で言ってるのかわかんないな。
 でもなんかこの感じいいな。


「カズちゃんは、一日に二度も闘って勝利するなんてな」


「それは貴方の所為でしょう?」


「そうじゃな雨宮の所為じゃな」


「うん僕もそう思う」


 二人ともさっきまでのは嘘泣きか!雨宮さんは俺達三人にせめられて落ち込んでいる。
 この人もこの人でめんどくさいな!
 第一印象から我が強い男だと思ってたのに豆腐メンタルじゃん!


「はぁー。せっかく一日休んだのに疲れたよ」


 あ、祐樹がベロニカにぶたれた。でもすぐに抱きつかれてる。
 無事仲直りできたみたいでなによりだな。


「お前達は行かなくていいのか?」


「其達は後でいいさ。なぁみんな?」


 俺はイヴァン達に祐樹とベロニカのところに行かなくていいのかと聞いたが、満場一致で行かないと答えた。
 どうやら恋人同士の邪魔はしないらしい。
 まぁ死にかけたのはベロニカだけだしな。
 死にかけたのにまぁ、祐樹に愛想尽かさないあたり相当深い関係だな。
 祐樹達がこっちにくる。


「和澄、ミナちゃん。ごめんなさい。そしてありがとう」


「うん!わたしはカズくんのおかげで無事だし。でも次はないからね!」


「だそうだ。ミナさえ避ければ、俺は別に何とも思っちゃいない」


「そうか。ありがとな」


 俺と祐樹は笑い合う。なんだかんだこいつとは友人何だと実感するな。
 そしてアンデル師匠は祐樹と向かい合う。先ほどの事を聞くのだろう


「それで?和澄も言っておった帝国へ来る話。どうするのじゃ?」


「あぁ、俺達全員帝国に亡命してもいいだろうか?えっと・・・」


「アンデルじゃ」


紅の女王クリムゾンクイーン!?」


「なんじゃ気づかんかったのか?主は話を聞いていたと思ったのじゃがな」


「途中からです。あのー帝国に亡命する話よろしいでしょうか?」


 うわ、祐樹が敬語を使ってる。アメリカでは一体師匠はどういった風に言われてるんだろう?


「もちろんじゃとも。但し監視はつけるがのぉ。しかし匿うんじゃなく亡命とはのぉ」


「俺達は家族さえ居ればいい。そう気づかされたました。帝国はいいところですし」


 イヴァン達も頷いている。どうやら全員帝国に亡命するようだ。


「あいわかった。じゃあ監視役は雨宮じゃな」


「えーなんでだよアンデルちゃん!」


「あぁん?」


 師匠が睨み付ける。やべぇあれに睨まれたら竦むわ。現に雨宮さんびびってるし。


の所為で儂がここまで赴くことになったんじゃぞ!反省せいや!」


 雨宮さんは諦めて頷いた。こうして学園への襲撃の事件は幕を閉じたのか?
 まぁ戦争が終わったわけじゃないしまだまだ安心はできないけどな。
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