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二章 北海道、異世界侵略対策委員本部騒動

御都合主義なんてなんのその!無慈悲な女

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 勘が冴えてますね。

「まさか今の攻撃を外すとは」

「ここは詠み勝った彼らを褒めるべきね」

 たしかに。
 遥か上空に来たのもありますが、それでも避けられるとは思ってもみなかった。
 今のは儀式魔法、紅蓮爆雷クリムゾンサンダー
 無詠唱のスキルを持つからこそ一人で詠唱して発動ができることですがね。

「もう一度放ってザノール」

 わかっていますとも。
 俺は頷いて詠唱を始める。

「燃えろ我が炎。そのことわりに反し、酸素が無くなろうとも雷と共に、敵を灼き尽くせ!」

 さぁ2度目の儀式魔法はどう避けてくれるのでしょうか?

「儀式魔法″紅蓮爆雷″!」

 俺の手の前に魔法陣の紋章が現れて、炎と雷が渦状に彼らがいた場所に飛来していく。

「いくらなんでも2度目は避けられないはずです。本部全体を狙えばいいですけどクリーディアとヘイストが居る以上狙えません」
 
 キョウヤは別空間に行ったでしょうから気にする必要はないですし。
 ん?あれは?
 巨大な手?
 ありえません。
 いくら巨大なと言っても手は手。
 感電死したいんですか?

「2発目食らうと思った?」

 後ろから!?
 ベネッサはもうナイフと針を投擲してめすか。
 相変わらず動きが早い。

「残念でした!その程度ワタクシには見えまーす!これお返し!」

 掴んだナイフと針をベネッサに投げ付け、俺には発砲ですか。
 流石の速度ですが、俺の″完全盾バリア″で両方とも防ぎました。

「ガハッ」

「ベネッサ!?」

 何故ベネッサの血を吐いて!?
 それに胸部から血が・・・。

「ねぇねぇ賢者さん?見えたのはさー」

 俺の口からも鉄の味がしてきた。

「ガハッ」

 浮遊魔法が切れて落ちていく。
 うまく聞こえなかったけど最後に聞こえたのは
 見えたのはさー1発だけ?
 わかる。
 何度も同じところを狙われて、俺の完全盾を貫通させたんだと。



 なんとか避けることができたな。
 キャロラインにいわれなければ危なかった。

「多分あいつらも直撃じゃなかったことに気づいてるわ」

「だろうな。だったら2射目来るか?」

「確実に来るわね。ワタクシは瞬間移動であの二人のところまで飛ぶわ。手を巨大化で防げる?」

 どうだろうな?
 できなくはないだろうけど。

「わざわざ防ぐ必要があるか?」

「ないわね。あの二人に隙を作るために手で防いだようにしたいのよ」

 そういうことか。
 それならもっといい手がある。

「俺は避ける。そして2射目が終わった瞬間に手を巨大化させて記憶を改変する。手で防ぎきったように」

 どうせすぐおかしいことに気づくだろうが、隙はできるだろう。

「そうね。それなら隙ができるわ」

「任せていいんだよな?」

「えぇ。確実に二人の心臓か頭を撃ち抜くわ」

 今のこいつならできそうだ。
 なにせ――――――

「信じてるぜ」

「それはワタクシを?それとも光を?」

 明石に決まってんだろ!
 まぁキャロラインのことも信じてるけどさ。
 つまり俺の答えは。

「どっちもだ」

「そう。優柔不断ね。ワタクシも信じてるから隙を作りなさいよ!」

「任せろ!」

 俺はそう言ってキャロラインの気配を遮断する。
 そして瞬間移動でキャロラインは消えてく。
 つまり2射目がくる。
 拳巨大化で手を大きくして大ジャンプ。
 そして2射目が止んだ時点で手を広げて、記憶改変だ。
 おそらく成功してるだろうな。

「任せたぜキャロライン」

 ――――――パパパパンッ!
 計五発か。
 お、降ってくるな。
 これは落下死か?

「”ウィンドクッション”」

 風魔法ってやつか。
 落下を殺すとはね。

「”超治癒エクストラヒール”」

「助かったわザノール」

「心臓の穴を塞ぐので精一杯でした。ヘイストにあとでリザレクションをかけてもらってください」

 まず合流できると思って居るのが腹立つな!
 潰れろ!

「貴方程度が舐めないで下さい!」

「お前こそ舐めるなよ」

「ふんっ!」

 爆発魔法か。
 ならこっちも記憶改変だ。
 防ぎきったが俺は吹き飛ばされた事に記憶を改変する。
 やっべ!
 SPがもう巨大化分しかねぇ。
 まぁ十分だけどよ。
 俺はそのまま二人に向かって巨大拳のストレートを嚼ます。

「ギ〇ントピストル!なんつって-」
 
「バカな!?たしかに吹き飛ばしたはずだぞ!?」

「グハッ・・・痛い!」

 マジかよ。
 壁に叩きつけられたらいつもなら染みになって身体も残らないのに丈夫だな。

「チッ!頭を撃てば良かったかしら?」

「いや大丈夫さ。もう虫の息だ」

 キャロラインが降りてくる。 
 俺一人だと負けもあると思ったけど、これで勝ちか――――

「”転移ポート”」

 しまった!転移する魔法か!
 クソ消えかけてる!
 間に合わないか。

「”固定ロック”」

「何ぃ!?」

 転移に失敗したのか?
 いやこれは驚いてるから何かされたのか。
 この声は――――

「ふぅー間一髪だったねぇ」

「宮崎瑠璃!」

「コラ豚くん~お姉さんを呼び捨てとはいただけないなー」

 宮崎瑠璃か。
 これは魔法か?

「魔法デスカ?」

「ぎこちないわね。でも正解よキャリーちゃん」

 足下に四つん這いの女がいる。
 誰だ?

「「ヘイスト!?」」

「あっあっ!ご主人しゃまぁ。見られてますわぁ」

 うわぁ・・・
 なんか絶倫王子と似たようなことしてるな。
 ほらキャロラインもドン引きしてるよ。

「あ、さっきね調教したのよ。今ではもうわたしの言いなり。ほら青谷くんもこの子で童貞卒業する?」

「いやいいです」

 なんか犬のちんちんみたいな状態でいる女性って興奮しないな。
 俺こっち面ではノーマルでよかった。

「そう?この子まだ処女よ。さっきこれ突っ込んだら血が出てきたもの」

 それは大人の玩具という奴じゃないですか?
 この殺し合いの最中にナニをやってるんだこの人!

「クソがぁ!ヘイストを離しなさい」

「あ、魔法?」

 指を弾くだけで魔法が霧散した!?
 この人もう魔法使いになりそうな女じゃなくて魔法使いじゃないか!

「へっへーん!どやぁ!」

「ディスペル!?俺のウィンドカッターを!?」

 ディスペル、つまり魔法を解除したのか。

「スペルブレイクって頭の中で思い浮かべたんだけど」

「だからか!SPを削るスペルブレイクをよくも!」

 説明してくれてありがとう
 余裕が出てきたな。

「じゃあこの二人は殺してもいいかしら?」

「いいわよー。なんかそっちの女の子は好みじゃないし」

 根本的には絶倫王子と違うけど、やっぱこの人もAACに所属してるなって感じだな。

「ザノール。貴方だけでも逃げて」

「ベネッサ。貴女のが逃げ切れます。”最終開放ファイナルフォーム”これで俺は魔法が解けたら死にますよ?」

「ザノール!?バカ!」

 最後の意地ってやつか!
 ベネッサの方が駆けていく。
 逃がすかよ。

「甘いですよ」

 白髪になったザノールが俺の拳を片手で受けとめた!?

「へぇ。それ神の加護と似てるわね」

「確かにそれは強いわね。でも残念ながら銃には関係ないわ」

 ―――パンパンッ!
 あらら。
 ベネッサちゃん見事に脳天撃ち抜かれちゃってる。
 キャロラインさん容赦ないっす!

「ベネッサ!?貴様ぁぁ!」

「抱いたから情でも湧いた?残念だけど彼女は経験豊富だと思うわよ?」

 まぁなんつーか、男取っ替え引っ替えしてそうだもんなぁ。

「それでも俺の童貞をもらってくれた女なんだよ!」

 そりゃ転生天寿全うしてたなら100年近く童貞だったんだろうから思うものもあるだろうね。

「でもまぁな」

「ワタシタチの知ったことジャナイヨネ」

「そうだねー。じゃあ君もとっとと死のっか?」

 もう勝ち目ないよな。
 俺ならこの状況諦めちまうけど。

「まだだ!フーリンとベネッサの仇は討つ!」

 無駄な努力乙だな!
 ―――ドガガガドゴン!
 な、なんだ!?

「君は化け物か!?」

「いやお前の所為だろ?」

 明石と勇者!?

「光!」

「キャリー!どうやらそっちも大詰めみたいだな!」

 そっちもってことはちゃんと追い込んだんだな。

「明石くんって強いんだね」

「宮崎瑠璃・・・なんだその女は?」

 やっぱつっこむよなぁ。
 俺もドン引きだったし。
 一体どういった状況になってるかはわからんが、俺たちの優位に変わりないな。

「ん?生きてたのか豚」

 テメェ後でぶっ殺す!
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