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二章 北海道、異世界侵略対策委員本部騒動

いきなりチートでステータス上がってもじゃじゃ馬だよね!うんうん!

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 勇者が剣を2本持ち、二刀流になった。
 こっちにも聖剣がある。
 たしか名前はレーヴァテインだったな。
 まぁ聖剣でいい。
 スキル剣技と銃技は、それぞれ剣、銃を持つことで最適なステータスに上がる切り札だ。
 キャリーも両方取得している。
 俺が教えたからな。
 そして銃技と剣技の違いは、銃技は基本的に銃を持てば、ほとんどステータスの上がりが同じ事だ。
 剣技は剣の質で変わる。
 さっきまで持っていた短剣程度ならステータスは10000くらいしか上がってなかっただろう。
 だがレーヴァテイン。
 聖剣だ。
 これは先ほどまでの質とは違う。
 ふふふふふっ。
 笑いが止まらない!

「何を笑ってるの?それで勝ったつもり?」

「俺のステータスを確認したんだろ?負けるはずがない!」

 ――――――ガキィン。
 なに!?
 聖剣と打ち合って折れないだと!?

「君は何もわかってないね。たしかにステータスが上がったのは脅威だよ。でも普段慣れてないそのステータスを使いこなせていない。さっきは油断して弾かれたけど、最初からそれだけのステータスがあるとわかっているならやりようはあるよ」

「チッ!」

 俺は聖剣を振るうがすべて華麗なステップ受け流された。
 俺が右から斬りつければ、左斜め水路に受け流す。
 左から右に一閃すれば飛ぶ跳ねてかわし、振り切ったところで鍔競り合い、蹴り飛ばされた。

「僕は3人いるんだよ?わかってる?」

「悪いな。生憎三人の相手はごめん被る!」

 悔しいけどあいつのが剣の技術自体は上だ。
 三人はキツイ。
 早々にご退場願おう。
 技量アップで強化された影切りがある。

「喰らえ!」

 影切りが地面を跳ねながら勇者三人に迫っていく。

「厄介だね」

「だけど」

「僕らには通じない」

「誰か一人が代表して話せよな」

 地面を抉らせて分散する。
 隔離空間と言っても地面は普通の地面だ。
 すぐ再生してくるのが解せないが!
 そして一人目の勇者の分身の胸に影が刺さる。

「一人消されちゃったかぁ」

「まぁそれだけだよ!」

 俺は駆け出そうとする。
 しかし勇者の言葉で動きが止まる。

「いいの?いきなりその俊敏で動いたら、コントロールなんてできないよ」

「くそっ!」

 ステータスが上がっても制約が多すぎる。
 でもこの動きになれないとな。
 ――――――ヒューン。
 行きすぎた。
 天井に思いっきりぶつかる。

「ほら言わんこっちゃない」

「まぁ僕は別に勝率が上がるからいいけどね」

 しかし気づいたら勇者の頬に傷ができていた。
 俺は剣が当たった感触がなかったんだけどな。

「わぉ。今の一瞬で斬ったんだ」

「まぁ残念なお知らせ。僕らは一心だけど同体じゃない」

「つまり一人が殺されても僕は殺せないよ」

 なんつー厄介な魔法だ。
 最後の晩餐。
 名前はふざけてるが、さすがと言ったところか。

「レーヴァテイン、そろそろ返して貰おうか」

「おそらく君がそれだけ劇的にステータスが上がったのはレーヴァテインのおかげ」

「つまりレーヴァテインを取り戻した時点で僕の勝ちってことかな?」

 俺も死線をククリ抜けてきたが、真っ正面から勇者と殺し合うのは初めてだ。
 ここまでギリギリの闘いとはな。
 がんばって魔王を倒した勇者を不意打ちで呆気なく命を奪うのも楽しいが、このギリギリの命の奪い合いも溜まらないな。

「「海よ。大地よ。大気よ。我の言葉を聞き、地球害をなす彼の敵を断じたまえ!”Earth of judgment”」」

 水色、茶色と緑色の球体が勇者の周りを漂い始める。

「さぁ裁きの時だ」

「さぁ懺悔の時だ」

「「さぁ!天へと召される時間だ」」

 そしてその球体は混ざり合う。
 なんだかヤバイ気がするな。
 攻撃を放つ前に影切りで両方の勇者を突き刺すが、弾かれる。
 影が消えたのだ。
 どうなってる!?
 攻撃が効かないと判断した俺は、動きに慣れるために高速移動を繰り返す。
 魔法を放つ前に勇者の目の前にいけば、当たることはないだろう。

「感謝する地球。喰らいなよ光くん。”緋色の日の入り”」

 俺は高速移動で目の前まで現れるが、勇者の顔に笑みが。
 よくみればもう一人がいない!?

「最後の最後で油断したね」

 上から声がしたので振り向く。
 右手を挙げて浮いている勇者がいた。
 その手の先には混ざり合った球体がある。
 そして俺は目の前の勇者にがっちり捕まれる。
 ヤバイ。
 筋力は互角。
 互角ということは脱出する方法がない。
 くそくそくそっ!

「どうだい?狩られる側になった気分は」

「はんっ!狩られる側は常にあんたらだよ!」

「まぁいいよ。懺悔を聞いてあげる」

「くそったれ勇者!」

「残念だ。さようなら明石光」

 腕は振り下ろされた。
 何か方法はないか?
 勇者ごと高速移動して斬りつけるか?
 それができたら今この状況になってないっつの!
 何か方法はないか。
 なにか。

「これに賭けるしかないか・・・」

 俺は勇者の影をみて、ある一つの仮説をたてた。
 影切りにこんな効果が・・・

「やるしかないな!」

 鎖生成を大量に行う。
 勇者は鎖にぐるぐる巻きになった。

「無駄だよ。僕は視界が消えようと僕が全力で魔力、SPを放ってるからわかるはずだからね」

「そんなことだろうと思ったさ!」

 だけど俺の狙いはそれじゃない。
 俺の目的は目くらましだ。
 そして後ろの勇者は気づいていない。

「オラぁ!」

 俺は聖剣を離して、持ち手を蹴り飛ばし、鎖でぐるぐる巻きの勇者のところに飛ばす。

「それが最後の賭け?まずここに僕がいることを忘れてるよね?」

 勇者は思いきり力を入れる。

「ぐっぐあぁぁぁぁっ!」

「レーヴァテインを離したのは愚策だったね。今ので肋骨は折れたね。さぁ次は内臓だ」

 飛んで行った聖剣は持ち手が鎖に当たり自由落下する。

「残念だったね。レーヴァテインが刃で刺さってたら可能性もあったのに」

「ふふふっ!」

「何がおかしいんだ?それとも狂った?」

「狂ってないさ」

 影に聖剣が突き刺さった。
 そして、鎖から血が出てき始める。

「まさか!?」

「俺の影斬の能力だ。技量が上がったことで、その人間の影に攻撃したらダメージが入るみたいだな」

「それはおかしいな!剣を離した時点で君の力は元に戻ったのに。いやそんなことよりも、これを喰らったら僕もただでは済まない」

 どうやら剣を離しても、一度強化された影斬は効果が持続するみたいだ。
 そしてこれを喰らったらただで済まないと言うが――――――

「それは俺も同じだ」

 俺は勇者に抱きついた。
 先ほど勇者が俺にしたのと同じように。

「君の非力の力じゃ・・・。何故レーヴァテインが刺さってない!?どうして君の手にレーヴァテインが!?」

「影斬は元々影を操って斬るスキルだ。つまり斬り飛ばして聖剣をここまで持ってきたんだ」
 
「くそっ!HANASE!」

 ぷっ!
 このタイミングで某カードゲームの主人公が言うような台詞を吐くなよ。
 思わず笑っちゃったじゃないか!

「さぁ道連れだ勇者様」

 なんてな。
 直撃ギリギリで高速で移動するつもりだ。
 俺ですらギリギリの動きを俊敏が同じの勇者が避けれるはず無い。
 先ほどこれくらいの俊敏は慣れたからな。

「僕はここで負けるわけにはいかない!逆転する世界!」

 俺と勇者の位置が入れ替わった。
 逆転する世界とか言うわりに以外としょぼいスキルだな。

「しょぼいスキルだと思った?」

「なにっ?」

 動けない。
 まさかこれも――――

「逆転する世界は、僕の不利な状況でのみ発動できるスキル。対象を一人選択し僕と位置を入れ替える。そして対象と僕自信のステータスは百倍になる。だけどその代わり10秒間の静止状態になる」

 つまりこの大技を避ける手段がないってことか。
 やってくれるな勇者!

「だけど百倍か。ありがたいな」

「残念だけど、君のHPは上がってないからね。この攻撃には耐えきれないよ」

 甘いな勇者は。
 あいつがステータスを百倍にしたと言うことは俺の技量も百倍――――――つまり影斬は強化されてるはずだ。
 影斬を発動させる。
 特に変わった動きは――――――ないな。
 やっべぇ詰んだ!
 影斬が強化されると思ったのに!

「今度こそさようなら明石光!」

「諦めるわけないだろう?」

 俺は全力で影斬を飛ばす。
 パキパキパキ。
 これは――――――この隔離世界を壊せる!?

「なんだ!?なんでこの世界が壊れようとしてるんだ!?」

「あんたのおかげだよ勇者!」

 勇者がステータスを百倍にしてくれなかったらできなかった。
 だけどこれは直撃か?
 いや、影斬りで――――――

「影で”緋色の日の入り”を斬った!?」

「なんとかSPは足りたな!」

 影斬で、あの魔法を完全に壊した。
 球体を切り刻んで、魔法を消失させたのだ。
 俺は全力で駆け出し、勇者に体当たりする。

「グハッッ!」

「いってぇ」
 
 肩が外れたので付け直す。
 肩の関節だけは外れたり付け直したり簡単だけど、痛いもんは痛い。
 それに肩の関節は癖になるらしいしね。
 そして勇者が吹っ飛んでる間に隔離空間が完全に砕けた。
 勇者は地面に倒れ伏す。

「隔離空間を砕くなんて、君は化け物か!?」

「いやお前の所為だろ?」

 逆転する世界を使わなければ、俺は影斬の能力がここまで増えなかった。
 油断と言うしかない。
 なにせ聖剣を離した時点で俺の身体を潰せたんだからな。
 肋骨が痛たい。

「光!」

 キャリーの声だ。
 そしてそれは完全に隔離空間が消失したことを意味してる。
 盗賊女が倒れてる。
 あの眼鏡賢者、ザノールが焦ってることからこっちも決着が付くギリギリだったんだな。

「キャリー!どうやらそっちも大詰めみたいだな」

 キャリーは笑顔で大きく頷く。
 キャリーの癖にかわいい顔すんな。

「明石くんって強いんだね」

 俺はそんな宮崎瑠璃の言葉より、横でちんちん状態でいる女のが気になる。

「宮崎瑠璃・・・なんだその女は?」

 なんかこいつからは絶倫王子と同じ臭いがするな。
 こいつのことはこれから絶倫売れ残りと呼ぼう。
 睨まれた。
 お前筋力は異常なんだからそんな目で視るなよ。

「やっぱそう思うよな」

 青谷、これは独り言だな。
 よし我に返らせるか。

「ん?生きてたのか豚」

「明石!お前死にたいようだな」

 手を巨大化させたつもりだろうが、してないぞ。
 振り下ろした。
 痛くもかゆくもない。

「SP切れか?」

「そうだ悪いか!」

「いや別に悪くないけど」

 なんて冗談言ってるけどな。
 余裕ができてるけど、油断はしない。
 さっさと勇者達を殺そう。
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