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三章 天使VSサイコパス編

最低VS最悪VS最凶!全員おかしい!

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「電波の場所はどこ?」

「千葉市の稲毛ってところだね。昔は海だったのに埋め立て地になったのかしら?」

 わたし達四人は、佐川隆二が挑発で出した電波の場所に向かって飛んでいた。
 正確にはジンタンの背の上だけどね。

「時代は変わったって事よ」

「イトナ様、メモリ様。そろそろメモリ様が観測した座標地点でございます」

「ねぇ、あれって・・・」

 セバスが指さした方向から火柱が上がった。
 なにあれ?
 まさか佐川隆二と誰かが交戦中?
 彼は一応魔王を倒して帰還した人間。
 勇者と勘違いされて、例の組織に攻撃されている可能性も否めない・・・か。
 ジンタンが火事で野次馬ができていたことを考慮して、遠くで下ろしてくれた。

「ジンタンとセバスは――――――」

「我々もいきますよ」

「ホーホッホホ。ここまで来て、とんずらとか考えられませんわぁ。それに――――――」

 ジンタンがセバスの方を見る。
 そうね。
 優樹菜ちゃんの旦那さんを殺したのはセバス。

「小野塚春樹の無念を晴らさねばなりません。彼らの仲間がやったというなら、彼らも同罪。必ず仕留めて見せましょう!!」

「がんばってアナタァ!」

 優樹菜ちゃんは、家にいる。
 自殺しかねないから、今日一日は眠ると思われる睡眠薬を投与してきた。
 優樹菜ちゃんの子供を殺した奴は絶対に許さないから。



 あらぁん?
 なんか上から気配がするわねん。

「どうしたの颯ちゃん?上を見て」

「どうやら増援みたいよぉ。一体敵さんはどれだけ層が厚いのかしらね」

 どっちから迎撃する方がいいのかしらん?
 あら?
 上の方はゆったりねぇ。
 これは下から先に殺りましょうか。

「下の敵を先に殺しましょう」

「上は大丈夫なの?」

「問題ないわん。歩いて降りてきているもの」

 あちらは増援なのか、はたまた敵なのか?
 どちらにせよ、下の人間は敵ねぇん。
 首の皮洗って待ってなさぁい。



「なぁ明石」

「言うな」

「まだ俺は何も言ってねぇぞ?」

「佐川。俺達は高笑いしたよな?」

 その理由は闘って弱った方を攻めてる外道作戦をしようとしたからだ。
 だが現実はどうだ?
 すごい勢いで赤ずきんとおカマが降りてくる。
 あっという間に地下4階を抜けてここ、地下五階へと降りてきた。

「あらあら。おはようございまーす」

「颯ちゃん。勇者さん達困惑してるなの」

 いや思ったより巨漢だなおカマ。
 しかも色黒さんだよ。
 ボディービルダーかっつぅの。
 てかあれブラか?
 水着だとしても乳首部分を小さい四角で隠すって誰得だ?

「おかしいわねぇん」

 おかしいのはお前の姿だ馬鹿野郎。
 せめてブーメランパンツはやめろ!
 いやあれ、もしかしてビキニか?

「ヤバいなこいつ」

「あぁ、あれは男とヤってそうな」

「ちげぇよばか!幼女の方だ!俺が咄嗟にシールド張ってなかったら、全員洗脳されてたぞ」

 洗脳!?
 あの幼女は赤ずきんだよな?
 てっきり返り血を浴びるってもんだから肉体派だと思ってたが。
 おカマの方が今度は動き出した。

「フンッ!」

「全員、離脱後洗脳にだけは注意しろ」

 俺達がそう言われて飛んだと同時に音が鳴る。
 ――――――パリーン!
 シールドが完全に砕けた音だ。
 そしていつの間にか大鎌を持っている。

――――――――――――
名前 大貫 はやて 28歳

レベル45

ジョブ ニューハーフ

状態 健康

HP6542/6542
SP46875/46875
筋力1648
俊敏4544
技量892

スキル
解体ショー 料理生成 毒配合 大鎌生成
――――――――――――

 なんだよニューハーフって。
 そして今シールドを砕いたのは解体ショーだな。

「生成持ち・・・」

「フミを忘れちゃ困るなのよ!」

 赤ずきんがそう叫ぶと腕を振り始める。
 何も持っていないが、油断ならない。
 その警戒が功を成した。
 手から鉈がでてきた。
 俺はしゃがんで避ける。
 油断して動かなきゃ首ちょんぱだ。
 そりゃ返り血もどっぷりだよ!

――――――――――――
名前 花野 フミ 9歳

レベル88

ジョブ 女子小学生

状態 健康

HP68254/68254
SP11845/11845
筋力457
俊敏1964
技量5212

スキル
不触リョナ行為 ぶりっ子洗脳 鉈生成
――――――――――――

 リョナ行為・・・
 もっとヤバイのがいた。
 洗脳と良い厄介だな。

「ていうか両方とも生成持ちか」

「こっちも生成持ちみたいなもんだけどな。ほれ、聖剣は背負ってるから良いだろう。拳銃だ」

 そう言ってくるくる飛ばしてくる。
 よし、こっちもステータスだけなら圧倒的になった。
 話し合う余地は無いよな。
 赤ずきんを俺と佐川で、残りのおカマは全員で倒す。
 これがベストだろう。
 しかし忘れては困ることがあった。
 そうだ、天使達のことだ。
 ――――――ドゴーン。
 案の定天井が抜けて巨人が――――――二人!?

「やれやれ。やはり佐川隆二を勇者と勘違いしていたようね」

「そうですね。なんとも愚かしい」

 あの女、巨人だったのか!?
 男女二人の巨大な身体がこちらを見下ろしていた。
 そして次には、巨大な梟みたいのも降りてきた。
 その上には元魔王がいた。
 なんだこれ。
 こっちは怪獣大対戦かよ。

「ホーホッホホホホ!!ここにいる全員殺せば良いことです」

「そんな単純じゃないよジンタン。ん?あの小さい子、洗脳を持ってるよ」

 魔王も洗脳には警戒するのな。
 たしかに洗脳は相手の力量関係なしに戦局が変わる。
 警戒するのは当然――――。

「あの小娘・・・。おい小娘!小野塚春樹と言う男を知っているか?」

「フミのこと言ってるなの?小野塚春樹って誰なの?」

 いきなりよく分からない名前を出してきて、一体どういうことだ巨人の爺さん・

「忘れたの?フミが洗脳した彼よ。ほら、勇者を匿ってた兄妹の父親よ」

「あー嫁を殺すまで解けない呪いをかけた彼なの!おじーちゃーんそいつがどうかしたなの?」

 小学生らしく首を傾げる赤ずきん。
 こいつ本気でなんでキレられてるのかわからないんだ。
 見た目通りの知能で殺人がダメと教わらないと、ここまで人間は殺人に忌避を抱かないのか。
 要するに彼女は、俺達のように生きてる途中で壊れたのじゃ無く、最初から壊れているのだ。
 原因は言わずもがな、あのおカマだろう。
 しかしあの爺さんのキレ具合にびっくりする。
 あの爺さんの殺気がビリビリきていた。

「貴様かぁ!この外道ぉぉ!!小野塚春樹の無念。晴らさせて頂くぞぉ!」

「セバス!?あーもう!じゃあわたし達で佐川隆二達を処理しないと」

 そういうとセバスは怒りで顔が歪んでいる。
 怒濤の攻撃をしはじめた。
 赤ずきんはバク転、全中、側転で踊るように攻撃を躱していた。
 子供らしい軽い動きをする。
 一方俺達は、あまりにもすごい気迫だったため、たじろいでしまった。

「さて、さっきはよくも挑発してくれたわね佐川!」

 ――――――ポキッポキッと間接の外す音がする。
 いやいやいやいや。
 耳がすごい痛い。
 関節外す音だけで普通の人間は気絶するんじゃないか?

「三つ巴の仲でも一番最悪のケースだ」

「あぁ。俺達の有利な場面を作ろうとして逆に痛い目を見た」

 罰が当たったのかね?
 今、最低と最凶と最悪が激突する。
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