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四章 区立千葉高等学校 文化祭編

ゲームの主人公ってゲームのエネミーからしたら脅威だよね。ゾンビアタック怖い

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「狙われてるってどういうことだ?言え」

「わたしも現実ではキャラ作ってるけど貴方もなのねー☆わたし達良い友達になれると思うな♡」

 普通にきめぇ。
 しかも人の話聞かないし。
 人の話を聞かないって意味じゃ勇者だな。

「御託はいい。ちゃっちゃと要件だけ言え」

 俺はミニチュアサイズの拳銃を握る。
 すると一気に大きくなり、手持ちサイズの銃に代わる。
 SPを消費して拳銃になる武器だ。
 巨人女のスキルを参考にして作ったらしい。
 これだけのギミックを持っているにもかかわらず、前にもらった拳銃よりステータスが上がる。
 今なら河野薫のステータスくらいあるんじゃないか?

「どこから出したのかなその銃?AACの技術ー?」

 俺はこいつへの警戒度を上げる。
 今まででAACを知ってる勇者は見たことが無い。
 強いて言えば巨人女が勇者を殺す組織程度で知っていたくらいだ。

「ノーコメントだ。あんたこそ、なにもんだ?」

 銃は構えたままで問う。
 これだけは聞いておきたい。
 天使なら俺を知る理由を聞かず、そのまま殺す。
 天使じゃなければ、理由を聞いて殺す。
 どのみち殺すことに変わりはないが、後者のが寿命が少し伸びる。

「わたしはかおりんだおー?」

 ステッキをくるくる回して、左足をあげて人差し指と小指と親指を立ててウィンク。

「魔法少女マジフタ~かおりん♪」

 そのふたはふたなりじゃないだろうな?
 さっき見た感じ女性器は見えなかったぞ。
 男の娘の間違いだ。
 魔法少年マジキモかおりんだろ。

「冗談はそれくらいにしろ?ほんとに撃つぞ?」

「撃ちなよ。ひかるんがどれだけ強いか知らないけど、わたしには勝てないよん☆」

 井の中の蛙か、それとも隠してる能力があるのか。
 どちらにしても交渉の余地は無さそうだ。

「もっと利口な頭だったらよかったのにな」

 ――――――パパンッ!
 脳天と心臓を狙って撃つ。
 しかしその弾丸は当たることはなく――――――

「うふふっ。まさか銃弾が聞くと思ったの?」

 たしかに油断だな。
 銃弾が聞く勇者の方がレアだ。
 俺は作戦を変更して、近接格闘を行う。
 
「右手からパンチかー。おっととそのまま膝蹴りぃ?」

 詠まれてる。
 スキルに先詠みはない。
 魔法か?

「遅いよん♡」

 デコピンで俺は吹き飛ばされた。
 それくらいの筋力はあるのか。
 だけど関係ない。
 この程度の修羅場なら切り抜けてきた。

「今度こそ確実に殺す」

「ん?あれおかしいな?どうして動けないんだ?」

 それは影斬りであんたの影を固定したからだ。
 だけどネタばらしなんかしない。
 冥土の土産とか言ってバラしたりでもすれば、生き残った場合困る。

「ひかるんのスキルだ。違ったかな?」

 正解とは言わないさ。
 最後まで油断しない。
 ――――――パパパンっ!
 脳天と心臓に風穴を開けた。
 いくら未来が見えても動けなければ意味がない。

「俺の勝ちだ。河野薫、勇者かどうかは知らないがお前の死は間違ってないだろう」

 確実に絶命している。
 このフィールドはおそらく消えるだろう。
 そうしたら梅田美帆も動き出すはずだ。

「ふふっ。ご主人様があれで死んだと思ってるの?」

「ふふふ」

 俺は河野薫の取り巻きに銃を向ける。
 妊婦を撃つのは気が引ける。
 うっ・・・ 
 拳銃を向けるが俺は撃てない。
 なんでだ?
 俺は撃てるはずなのに。

<Game over !>

 どこからか音声のような音がする。

<You lose !>

 たしか、河野薫が主人公の世界へようこそとか言ってたな。
 つまりあいつの負けだ。
 この世界はやはりゲームの中?

<Continue?>

 コンティニュー!?
 嘘だろ?
 もし万が一それが加納だとしたら?
 俺はこの世界で河野薫を殺せない。
 いやこの世界にいれば河野薫は無敵だ。

<OK.Respawn>

 テレレレーン!

<You don't die next>

 次はお前、死ぬなよ?
 やっぱり生き返るのか?

「ふぅー。いきなり撃つとか酷いよぉ」

「マジかよ・・・」

 決まりだ。
 あれだけのステータス?
 死なないならあれだけのステータスがあるなら脅威だ。
 いずれガス欠が来る俺とは違ってこいつは、死なないのだから。
 これが、ゲーム内でのボス達の気持ちか。
 ゾンビアタックとかされたらたまったもんじゃないな。
 今までで一番ピンチだ。

「驚いたー?わたし主人公だからいつでもコンティニューできるんだよぉ?」

「だから・・・どうした?」

 強がるしかない。
 どうやって脱出する?
 この世界を破壊する?
 影斬でいけるか?

<Sorry.Please Charge>

「しまった。充電し忘れてた」

「充電?」

 まさか本当にゲーム?
 でもたしかにコンティニューとかリスポーンとかゲームぽい。

「今日は見逃してあげる。でも覚えておいて。梅田美帆はわたしのだから」

 そういうとボタンを押す。
 電源が切れた瞬間に殺そう。
 しかし口に月の字を描いた笑顔でこちらを向く。
 怖い。

「ゲームの電源切った瞬間に殺そうとしてる?残念」

 すると次の瞬間には消える。
 なに!?
 瞬間移動か?
 何か落ちてる?
 手紙か?
 落ちている手紙を見る。
 中には、ファストトラベルで家まで飛んだでござる。
 明石氏、次は殺すから覚悟するでござる。

「俺は生かされた?」

「明石くんなんか様子が・・・あれ?河野くんは?」

 梅田美帆が動き出した。
 ファストトラベルしたなんて言えるわけでもなく――――――

「大丈夫?さっきまでうとうとしてたけど、夢でもみてたの?」

「え?あ、ごめんね。疲れちゃってるのかな?」

 少し罪悪感を感じるが、仕方ない。
 河野薫の情報を知り渡れば、命を狙われる可能性があるし、仕方ない。

「じゃあ帰ろっか」

「そうだね。家まで送るよ」

 正直あの能力があるのなら、最早どこにいても関係ない気がする。
 せめて守ってくれるような奴がいればいいんだけど。
 そう思っていたら携帯が鳴る。
 そしてその呼び鈴は希望の鐘だった。
 絶倫王子だ。

『もしもーし。ミスターアカシ?』

 今、電話を出るべきじゃ無かった。
 隣には梅田美帆がいる。
 つまりぼろが出せない。

「なんだい?何か用かな?」

『なんだいよそよそしい』

「クレソン・ウメダ、今どうしてる?」

 小声で聞く。
 万が一いなかった場合は別の方法を探すしかない。
 梅田美帆にも聞かれたら困るからだ。

『クレソン?いるけどどうしたんだい?』

「ちょっとかりてもいいか?」

『おーミスキャリーがいるのにどういった――――――』

「護衛を頼みたい。梅田美帆の」

『なるほど。君の幼馴染みの。了解~日本に来日してるから、明日遊びに行くね』

 あいつまた日本に来てるのか。
 俺は了解と言って携帯の電源を切った。

「おかえり。電話長かったね」

「友達が遊ぼうって言ってきてね。ごめんね待たせて。帰ろっか委員長」

「友達はいいの?」

「断ったから大丈夫」

「無理しないでね」

 無理なんかしてないさ。
 あーでも絶倫王子が明日来るのか・・・。
 一気に憂鬱になってきた。
 正直面倒い。
 青谷を身代わりに置いていくのもありだな。
 ――――――ぴろりーん。
 携帯が鳴る。
 メールか。
 あいつ・・・
 絶倫王子のことは任されるつもりはないからって、あいつ知ってたな来日するの!
 クソ野郎!
 豚のくせに生意気だぁぁぁ!
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