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三章 ――白色の王子と透明な少女――
③<少女1> 『森の聖堂』
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④【ソフィア】
「おや、お嬢ちゃん、前の馬車、そろそろ目的地に着くみたいだよ」
荷馬車を走らせていたおばちゃんの声が聞こえてきた。
馬車に揺られ、藁に包まれていた私は、頭を出して前を走る馬車を確認する。
路肩に止められた馬車から降りる王子の姿が見える。御者の人とお母さんがなにやら話をしている。
よしよし、私が追いかけていることには気がついていないみたいだ。
お出かけの準備を済ませたお母さんと王子様は私たちへ禄に説明もしないで馬車を使って町の方まで向かっていってしまった。
気になった私は、たまたま近くを通っていた荷馬車を操るおばちゃんに話しかけ、町まで連れてってもらえることになったのだ。
お留守番を任された私だったけど、その重大な役目はマシューに一任する
マシューが分かりやすく不機嫌になったけれども、あんなに騒がしいヤツを連れて行くわけにはいかない。
送ってくれたおばちゃんにお礼を言い、王子様とお母さんの後をこっそりと追いかける。
二人は何やら話をしつつノカの町並みを眺めながら、散歩するように歩いている。
……なんか、楽しそう。ずるい、お母さん。
階段の多いノカの町だけど、その途中にお店があったりするので隠れるところは沢山ある。
身体が小さいのもあって、感づかれずに二人を追いかけることができた。
「それにしても……」
あの白い髪の王子様は一体なんの用があってここまで来たんだろう。
ただの観光の割には、様子がおかしかった。
……まあそれを言ったら、私たちの家の地下に倒れていた時点で、おかしいんだけどね。
ちょっと話しただけで、お母さんとやけに親しくなっているのも変だ。
お母さん人見知りって言ってたのに。
王子様が初めて私の顔を見た瞬間も実は気になっている。私のことを一目見た瞬間、とても驚いていた。
もしかしたら、私が忘れているだけで昔会ったことがあるのかな。
それで、その時一目惚れしてくれて、私のことが忘れられなくて、会いに来てくれた……とか。
……そんなわけないか。妄想が過ぎました。
流石の私でも、あんな綺麗な王子様と出会ってたなら、覚えている筈だし。
暴走しかかった思考を振り払うと、丁度二人が立ち止まったところだった。
二人の前には、立派な斜塔を持った建物が古木の上に鎮座している。
壁は木の枝とツタがびっしりと這っていて、しっかりと固定されているように見える。
「あれは……」
「こんにちは、お嬢さん」
「うぁああああああ!?!?」
突然背後から話しかけられ、私は文字通り飛び上がる。
「も、申し訳ない、そんなに驚くとは思わなかった」
「お、オーレンさん……」
振り向くと、昨日私が悪漢から荷物を取り戻した紳士、オーレンさんが立っていた。
び、ビックリしたぁ。心臓が口から飛び出るかと思ったよ。
慌てて追いかけていた二人の方を見ると、聖堂の両扉を開き建物の中に入り込む影が見える。
良かった、結構大きな声出ちゃったけど、バレてなさそうだ。
「昨日ぶりだね。今日は……弟君の方は居ないのかい?」
あたりを見渡し、私に笑いかけるオーレンさん。自分で言うのもなんだけど、私、結構不審な動きしてたと思うんだ。
気にしている素振りはないけど、内心、変な子だとか思われてないか心配だ。
「きょ、今日は一人で遊びに来てて……オーレンさんこそ、こんなところでどうしたんですか?」
「はっはっは。君たちのお陰で、気持ちよく観光をしていたところさ。荷物は宿屋だし、盗られる心配もせずに、森の町並みを堪能できる」
昨日と打って変わってステッキだけを手にしている。身軽そうだ。
「それで折角だから、有名なノカの聖堂を見学しようとここまで来たというわけだ」
オーレンさんがステッキの先で二人が入っていった建物を指す。
「あ、やっぱりアレって聖堂なんですね」
やっぱり私たちの家と作りが似ている。こっちの方が立派だけど。
流石に王都の大聖堂ほどじゃないけどね。
でも家の基礎部分から斜塔の先までツタで覆われているし、木の枝も這っていて、幻想的な見た目をしている。私は王都の大聖堂よりこっちの方が好きかも。
「聖堂の中では比較的新しく建築されたものらしいが、中々どうして荘厳ではないか」
「たしかに、新築の感じはないですね。何か、こぢんまりした民家の雰囲気も持ってて、私はこっちの方が親しみやすいです」
「そうだね。この聖堂は、大聖堂とはまた違った良さがある。……そう言えば、知っているかな? この町はね、実は聖堂が二つあるんだ」
知っているもなにも、私たちの家のことだ。
「昔はここから少し離れた場所に聖堂はあったらしい。けれども、やはりというか、住民から『教会』へ不便さを訴えかけられたようだね。機会があれば、古い聖堂にも行ってみるといい」
オーレンさんならご招待してもいいかもしれないけれど、実物を見たらがっかりされそうだ。改装もしてるから、ここにある聖堂みたいな厳かな雰囲気ないし。
「ところで、お腹は空いているかね。ちょっと早いが、お昼でもどうかな?」
ごくり。と喉が鳴る。
お腹はあんまり空いてないけれど、美味しい物は食べたい。
けど……けど……
「す、すみません。ちょっと聖堂に用事がありまして。また、機会があれば誘って下さい」
今は、王子様とお母さんの方が気になる。
二日も連続で美味しい料理食べたら舌が肥えちゃいそうだしね。
オーレンさんと別れ、恐る恐る聖堂の扉を開いて中をのぞき込んでみると、誰一人として影も形もなかった。
並べられた椅子にも、教台の上にも、誰も居ない。
壁に扉が設置されているので、その中に入っていったのだろう。
……どうしよう。流石に、中の扉を開けてまで追いかけられないよね。
そんなに大きな建物じゃないし、お母さんに見つかったら何を言われるか分からない。
「……いいや、外で待っていよう」
出入り口は一つみたいだし、見失う心配もない。そんなに長い時間はかからないはずだ。……多分。
周りを見わたすと、垣根の辺りに私一人分くらいが隠れられそうな木陰を発見する。おあつらえ向きに私一人分くらい隠れられそうな木箱まで置かれていた。
そこに腰を下ろし、木箱の影から聖堂を見守る。
木の葉が風に揺れ、虫の音と共に、心地よく流れてくる。
今日はそんなに暑くないし、ここでゆっくりお母さん達を待っていよう。
「おや、お嬢ちゃん、前の馬車、そろそろ目的地に着くみたいだよ」
荷馬車を走らせていたおばちゃんの声が聞こえてきた。
馬車に揺られ、藁に包まれていた私は、頭を出して前を走る馬車を確認する。
路肩に止められた馬車から降りる王子の姿が見える。御者の人とお母さんがなにやら話をしている。
よしよし、私が追いかけていることには気がついていないみたいだ。
お出かけの準備を済ませたお母さんと王子様は私たちへ禄に説明もしないで馬車を使って町の方まで向かっていってしまった。
気になった私は、たまたま近くを通っていた荷馬車を操るおばちゃんに話しかけ、町まで連れてってもらえることになったのだ。
お留守番を任された私だったけど、その重大な役目はマシューに一任する
マシューが分かりやすく不機嫌になったけれども、あんなに騒がしいヤツを連れて行くわけにはいかない。
送ってくれたおばちゃんにお礼を言い、王子様とお母さんの後をこっそりと追いかける。
二人は何やら話をしつつノカの町並みを眺めながら、散歩するように歩いている。
……なんか、楽しそう。ずるい、お母さん。
階段の多いノカの町だけど、その途中にお店があったりするので隠れるところは沢山ある。
身体が小さいのもあって、感づかれずに二人を追いかけることができた。
「それにしても……」
あの白い髪の王子様は一体なんの用があってここまで来たんだろう。
ただの観光の割には、様子がおかしかった。
……まあそれを言ったら、私たちの家の地下に倒れていた時点で、おかしいんだけどね。
ちょっと話しただけで、お母さんとやけに親しくなっているのも変だ。
お母さん人見知りって言ってたのに。
王子様が初めて私の顔を見た瞬間も実は気になっている。私のことを一目見た瞬間、とても驚いていた。
もしかしたら、私が忘れているだけで昔会ったことがあるのかな。
それで、その時一目惚れしてくれて、私のことが忘れられなくて、会いに来てくれた……とか。
……そんなわけないか。妄想が過ぎました。
流石の私でも、あんな綺麗な王子様と出会ってたなら、覚えている筈だし。
暴走しかかった思考を振り払うと、丁度二人が立ち止まったところだった。
二人の前には、立派な斜塔を持った建物が古木の上に鎮座している。
壁は木の枝とツタがびっしりと這っていて、しっかりと固定されているように見える。
「あれは……」
「こんにちは、お嬢さん」
「うぁああああああ!?!?」
突然背後から話しかけられ、私は文字通り飛び上がる。
「も、申し訳ない、そんなに驚くとは思わなかった」
「お、オーレンさん……」
振り向くと、昨日私が悪漢から荷物を取り戻した紳士、オーレンさんが立っていた。
び、ビックリしたぁ。心臓が口から飛び出るかと思ったよ。
慌てて追いかけていた二人の方を見ると、聖堂の両扉を開き建物の中に入り込む影が見える。
良かった、結構大きな声出ちゃったけど、バレてなさそうだ。
「昨日ぶりだね。今日は……弟君の方は居ないのかい?」
あたりを見渡し、私に笑いかけるオーレンさん。自分で言うのもなんだけど、私、結構不審な動きしてたと思うんだ。
気にしている素振りはないけど、内心、変な子だとか思われてないか心配だ。
「きょ、今日は一人で遊びに来てて……オーレンさんこそ、こんなところでどうしたんですか?」
「はっはっは。君たちのお陰で、気持ちよく観光をしていたところさ。荷物は宿屋だし、盗られる心配もせずに、森の町並みを堪能できる」
昨日と打って変わってステッキだけを手にしている。身軽そうだ。
「それで折角だから、有名なノカの聖堂を見学しようとここまで来たというわけだ」
オーレンさんがステッキの先で二人が入っていった建物を指す。
「あ、やっぱりアレって聖堂なんですね」
やっぱり私たちの家と作りが似ている。こっちの方が立派だけど。
流石に王都の大聖堂ほどじゃないけどね。
でも家の基礎部分から斜塔の先までツタで覆われているし、木の枝も這っていて、幻想的な見た目をしている。私は王都の大聖堂よりこっちの方が好きかも。
「聖堂の中では比較的新しく建築されたものらしいが、中々どうして荘厳ではないか」
「たしかに、新築の感じはないですね。何か、こぢんまりした民家の雰囲気も持ってて、私はこっちの方が親しみやすいです」
「そうだね。この聖堂は、大聖堂とはまた違った良さがある。……そう言えば、知っているかな? この町はね、実は聖堂が二つあるんだ」
知っているもなにも、私たちの家のことだ。
「昔はここから少し離れた場所に聖堂はあったらしい。けれども、やはりというか、住民から『教会』へ不便さを訴えかけられたようだね。機会があれば、古い聖堂にも行ってみるといい」
オーレンさんならご招待してもいいかもしれないけれど、実物を見たらがっかりされそうだ。改装もしてるから、ここにある聖堂みたいな厳かな雰囲気ないし。
「ところで、お腹は空いているかね。ちょっと早いが、お昼でもどうかな?」
ごくり。と喉が鳴る。
お腹はあんまり空いてないけれど、美味しい物は食べたい。
けど……けど……
「す、すみません。ちょっと聖堂に用事がありまして。また、機会があれば誘って下さい」
今は、王子様とお母さんの方が気になる。
二日も連続で美味しい料理食べたら舌が肥えちゃいそうだしね。
オーレンさんと別れ、恐る恐る聖堂の扉を開いて中をのぞき込んでみると、誰一人として影も形もなかった。
並べられた椅子にも、教台の上にも、誰も居ない。
壁に扉が設置されているので、その中に入っていったのだろう。
……どうしよう。流石に、中の扉を開けてまで追いかけられないよね。
そんなに大きな建物じゃないし、お母さんに見つかったら何を言われるか分からない。
「……いいや、外で待っていよう」
出入り口は一つみたいだし、見失う心配もない。そんなに長い時間はかからないはずだ。……多分。
周りを見わたすと、垣根の辺りに私一人分くらいが隠れられそうな木陰を発見する。おあつらえ向きに私一人分くらい隠れられそうな木箱まで置かれていた。
そこに腰を下ろし、木箱の影から聖堂を見守る。
木の葉が風に揺れ、虫の音と共に、心地よく流れてくる。
今日はそんなに暑くないし、ここでゆっくりお母さん達を待っていよう。
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