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四章 ―― 夢と空の遺跡 ――
空 1 『プロローグ』
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**プロローグ**
「おかえりなさい、悠人。疲れた?」
私は玄関でネクタイを付けたスーツ姿の悠人を出迎える。
「ああ。今日は外回りだったから少し疲れたよ」
「あー、ネクタイにコーヒーの染み付いてるよ。せっかく買ったばかりなのに!」
「本当だな。ま、このくらいなら染み抜き付ければすぐ取れる。……ありがとうな、つばさ」
「私がすること前提!?」
「俺のお世話ができるのはお前だけだ」
「決め顔で言うセリフじゃないからね。それ」
このくらい自分でしろ。
……でもほっといたら、染みつきのネクタイでも気にせず付けて仕事行っちゃいそうだ。
結局私がやるハメになるのか。くそう。
ジャケットを脱いだ悠人と一緒に遅めの晩ご飯を食べる。
悠人は今日起こった出来事を淡々と話し、私は今日のひじき煮が上手に作れたことを自慢げに話す。
私たちの家庭に映る、いつもの光景だ。
あの日、常見重工ビルの屋上で、悠人が告白してくれたから、今がある。
幸せだ。悠人と結婚できて、本当に良かった。
「……変わらない?」
悠人が食後のビールを飲みながら、寝室の扉を見つめる。
「うん。いつも通り元気。ってかさっき見たでしょ?」
「俺は起きて動いているところが見たいんだよ」
「だからって起こさないでよね。あ、ちょっと」
私が止めるのも聞かず悠人はリビングを離れ、寝室の扉を開く。
私たちが寝るベッドから少し離れた位置に、それは置かれていた。
木馬をあしらった、可愛らしい見た目のベビーベッドだ。
私のお気に入り。
買うとき男の子ぽくない、って言い張る悠人を頑張って説得したんだよ。
「可愛いな。流石は俺の子だ」
悠人が碌でもないことを言いながら、ベビーベッドの中にちょっかいを出している。
「ほんと、良かったよね。……私似で」
悠人のボケに乗っかっただけなのに、なんか小突かれた。
本当は分かってるよ。この子は、私の記憶にある悠人の小っちゃい頃にそっくり。
多分、悠人みたいに意地悪で、でも優しい子に育つと思う。
「ギャギャ! ギャギャ!」
「あーほら、変なちょっかいを出すから起きたー」
「あ、ああ。悪い」
まったく。誰が頑張って寝かしつけたと思ってるんだ。
「ギャギャ! ギャギャ!」
私は戸惑う悠人をどかし、ベビーベッドに近づく。
かがみ込んでベッドの中にいる存在を取り上げる。
灰色の肌、黄色い目、潰したネズミのような顔立ち。
乱雑に歯が生えている口から青緑の涎を垂らし、私を求めて泣きわめいている。
そこにはゴブリンが居た。
私は、ゴブリンを抱きかかえていた。
①
「ぎぁああああああああ!!!!????」
まどろみに委ねていた私の意識が体中を駆け巡り、身体を目覚めさせる。
ベッドからがばりと身体を起こす。
「ゆ、夢!? 夢!? 夢だよね!?」
よ、良かった。母親から絶対に愛情を注がれない可哀想なゴブリンはいないんだね。
なに、今の夢? 途中までめっちゃ幸せだったのに。
あんまり覚えてないけど、ずっと心の中でぐへへへ、とか考えていたのに。
「上げて落とさないでよ、ほんとにさぁ……」
「なんの話だよ」
……。
見上げると、ベッドのわきにフィリーが立っていた。
呆れた顔で私を見つめている。
「ぎぁああああああああ!!!!????」
右手を光らせる私。
「うぉ!? ちょっ、待て待――」
爆風が、私の部屋に広がった。
「おかえりなさい、悠人。疲れた?」
私は玄関でネクタイを付けたスーツ姿の悠人を出迎える。
「ああ。今日は外回りだったから少し疲れたよ」
「あー、ネクタイにコーヒーの染み付いてるよ。せっかく買ったばかりなのに!」
「本当だな。ま、このくらいなら染み抜き付ければすぐ取れる。……ありがとうな、つばさ」
「私がすること前提!?」
「俺のお世話ができるのはお前だけだ」
「決め顔で言うセリフじゃないからね。それ」
このくらい自分でしろ。
……でもほっといたら、染みつきのネクタイでも気にせず付けて仕事行っちゃいそうだ。
結局私がやるハメになるのか。くそう。
ジャケットを脱いだ悠人と一緒に遅めの晩ご飯を食べる。
悠人は今日起こった出来事を淡々と話し、私は今日のひじき煮が上手に作れたことを自慢げに話す。
私たちの家庭に映る、いつもの光景だ。
あの日、常見重工ビルの屋上で、悠人が告白してくれたから、今がある。
幸せだ。悠人と結婚できて、本当に良かった。
「……変わらない?」
悠人が食後のビールを飲みながら、寝室の扉を見つめる。
「うん。いつも通り元気。ってかさっき見たでしょ?」
「俺は起きて動いているところが見たいんだよ」
「だからって起こさないでよね。あ、ちょっと」
私が止めるのも聞かず悠人はリビングを離れ、寝室の扉を開く。
私たちが寝るベッドから少し離れた位置に、それは置かれていた。
木馬をあしらった、可愛らしい見た目のベビーベッドだ。
私のお気に入り。
買うとき男の子ぽくない、って言い張る悠人を頑張って説得したんだよ。
「可愛いな。流石は俺の子だ」
悠人が碌でもないことを言いながら、ベビーベッドの中にちょっかいを出している。
「ほんと、良かったよね。……私似で」
悠人のボケに乗っかっただけなのに、なんか小突かれた。
本当は分かってるよ。この子は、私の記憶にある悠人の小っちゃい頃にそっくり。
多分、悠人みたいに意地悪で、でも優しい子に育つと思う。
「ギャギャ! ギャギャ!」
「あーほら、変なちょっかいを出すから起きたー」
「あ、ああ。悪い」
まったく。誰が頑張って寝かしつけたと思ってるんだ。
「ギャギャ! ギャギャ!」
私は戸惑う悠人をどかし、ベビーベッドに近づく。
かがみ込んでベッドの中にいる存在を取り上げる。
灰色の肌、黄色い目、潰したネズミのような顔立ち。
乱雑に歯が生えている口から青緑の涎を垂らし、私を求めて泣きわめいている。
そこにはゴブリンが居た。
私は、ゴブリンを抱きかかえていた。
①
「ぎぁああああああああ!!!!????」
まどろみに委ねていた私の意識が体中を駆け巡り、身体を目覚めさせる。
ベッドからがばりと身体を起こす。
「ゆ、夢!? 夢!? 夢だよね!?」
よ、良かった。母親から絶対に愛情を注がれない可哀想なゴブリンはいないんだね。
なに、今の夢? 途中までめっちゃ幸せだったのに。
あんまり覚えてないけど、ずっと心の中でぐへへへ、とか考えていたのに。
「上げて落とさないでよ、ほんとにさぁ……」
「なんの話だよ」
……。
見上げると、ベッドのわきにフィリーが立っていた。
呆れた顔で私を見つめている。
「ぎぁああああああああ!!!!????」
右手を光らせる私。
「うぉ!? ちょっ、待て待――」
爆風が、私の部屋に広がった。
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