月蝕の令嬢 〜妹の偽りの光を暴き、夜の王に溺愛される〜  嘘つきの妹に成敗を、ざまあ

しょくぱん

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断罪と奈落の出会い

第9話:【視点変更】蝕まれ始めた母国

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 エレナという「ゴミ箱」を奈落へ投げ捨ててから、一週間。ローウェル公爵邸の庭園では、かつてない異変が起きていた。

「……おかしいわ。どうして、このバラは咲かないの?」

 妹のセリナは、苛立ちを露わにして植え込みを蹴りつけた。そこには、彼女が自慢の「聖女の光」で育てたはずの極彩色の花々が、見る影もなく黒ず・・んで萎れていた。それだけではない。公爵邸を囲む森の木々は葉を落とし、池の水は濁り、不快な腐敗臭が漂い始めている。

「セリナ、どうしたんだい? そんなに怖い顔をして」

 そこへ、優雅な足取りで現れたのは第一王子・カイルだった。彼はセリナの肩を抱き寄せ、その額に優しく口づけを落とす。かつてエレナには一度も見せたことのない、甘い慈愛に満ちた表情だ。

「カイル様……見てください。お庭の花たちが、みんな病気にかかってしまったみたいなんです。まるで、あのお姉様ののろいが残っているみたいで……」

「フン、あの不浄な女の名前を出すな。縁起でもない」

 カイルは忌々しそうに鼻を鳴らした。

「あれはただの欠陥品だった。聖石を汚し、神聖な儀式を台無しにした大罪人だ。今頃は奈落の底で、魔物の餌になって骨も残っていないだろうよ」

「そう、ですよね……。でも、私の光を使っても、この枯れた花たちが元に戻らないんです」

 セリナの言葉に、カイルは一瞬だけ表情を曇らせた。実は、異変は庭園だけではなかった。王宮の食卓に並ぶ果実は味が落ち、神殿の聖水は心なしか淀んでいる。この国のそのものが、何かに滞りを感じているかのように。

「……セリナ、少し疲れが出ただけだろう。君の光は完璧だ。あのような不浄な女がいなくなったのだから、本来なら国はもっと清らかになるはずなのだ」

「ええ……。そうですわね。きっと、お姉様が溜め込んでいたが、消える前に少しだけ漏れ出しただけですわ」

 セリナは納得させるように自分に言い聞かせた。彼女は知らない。自分が「光」を使えば使うほど、その反作用として生じる「澱み」を、これまではすべてエレナが右腕に吸い取っていたという事実を。浄化の装置を失った国に、排泄されない「毒」が蓄積され始めている。セリナが放つ眩いばかりの光は、今や逃げ場を失い、自らの足元を焼き、蝕み始めていた。

「大丈夫ですわ、カイル様。明日の『再任の儀』では、私の真の力をお見せしますわ。お姉様なんて、最初からいなかった。私一人が、この国の光なんですもの」

 セリナは無理に笑顔を作った。だが、彼女の足元に伸びる影は、以前よりもずっと濃く、不気味にゆらゆらと蠢いていた。

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