初夜に「快楽の毒」を注がれた身代わり花嫁。〜冷徹な魔公爵は「もう二度と逃がさない」と私の首筋に所有の証を深く刻み込む〜

しょくぱん

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第三章 侵食される境界線

第18話:浴室の硝子蝶

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 戦場が静寂に包まれ、数千の命が黒い氷の彫像と化した後。 ゼノスは熱に浮かされたエルシアを抱き抱え、城の最奥にある大浴場へと向かった。そこは一面が黒曜石こくようせきで磨き上げられ、天井からは月光を模した魔法の光が降り注ぐ、静謐なおりだった。

ゼノスが指を弾くと、大きな浴槽に溢れるほどの湯が満ちる。それはただの湯ではなく、彼の魔力を安定させるための霊薬れいやくが溶け込んだ、透き通った琥珀色こはくいろの液体だった。

「あ、……ぁ、……熱い……っ」

衣服をすべて剥ぎ取られ、湯の中に沈められたエルシアは、あまりの快美な刺激に身悶えた。 戦場での興奮が冷めやらず、呪いを共有した彼女の体は、今は一滴の魔力さえも貪欲に求めている。

「大人しくしていろ、エルシア。戦場でお前の『聖女の力』が死の魔力を吸い込みすぎた。今すぐ俺の色で中和うわがきしてやらねば、お前の体が保たない」

ゼノスもまた服を脱ぎ捨て、背後からエルシアを抱きしめるようにして湯船に浸かった。 濡れたエルシアの白い肌に、ゼノスの逞しい肢体が密着する。湯煙の中で、二人の吐息といきが激しく混ざり合った。

「……背中を見せろ」

ゼノスの低い命令に従い、エルシアは震えながら彼に背を向けた。 湯に濡れた彼女の背中には、以前刻まれた蝶の紋章まもんが、まるで生きているかのように怪しく脈打っている。ゼノスはその紋章の縁を、鋭く尖らせた自らの氷の指先でなぞり始めた。

「ひ、あ、……っ!痛い、……痛いです、ゼノス様……っ!」 「痛みではない。これはお前が俺の一部ピースであるという証明だ。……動くな、これでお前の魂に、消えないかんぬきをかけてやる」

ゼノスは、指先から純度の高い魔力を針のように突き出し、蝶の羽をさらに広げるようにして、新たな紋様を刻み込んでいく。 ジュッ、と肌が焼けるような音と、氷の冷たさが同時にエルシアを襲う。 背中を直接蹂躙じゅうりんされる感覚に、エルシアの脳内は真っ白に弾け、足首の金の鈴アンクレットが、激しい飛沫とともにチリン、チリンと鳴り響いた。

「あ、……あ、ぁぁぁぁあああああっ!!」

エルシアはのけ反り、浴槽の縁を白くなるまで握りしめた。 背中に刻まれるのは、ゼノスの家紋――凍てついた百合フリーズ・リリィを抱く蝶の姿。 魔力が浸透するたびに、エルシアの意識は遠のき、代わりに全身がゼノスの支配下コントロールに置かれるという絶大な安心感に包まれていく。

「……完成だ。これで、お前が俺を裏切ることも、俺がお前を見失うことも、二度とない」

刻み終えたゼノスは、血と魔力が混じり合うエルシアの背中に、愛おしげに唇を寄せた。 蝶の紋章は今や、エルシアの肌の上で本物の宝石のような光沢を放ち、彼女が呼吸するたびに優雅に羽ばたく。

エルシアはぐったりとゼノスの胸に身を預け、虚ろな瞳で天井の光を見つめた。 背中の痛みは、すぐに耐え難いほどの甘い疼きうずきへと変わった。 もはや、自分の体は自分のものではない。 ゼノスが愛で、ゼノスが刻み、ゼノスが満たすための、美しい器にんぎょうなのだ。

「……嬉しい……。私、……完全に、あなたの、ものに……」 「そうだ。お前は俺の硝子蝶ガラス・バタフライだ。この城という箱の中で、一生俺だけのために羽ばたいていればいい」

琥珀色の湯の中で、二人は溶け合うように深く重なった。 エルシアの背中で輝く蝶は、彼女が人間であることをやめた、何よりの証左だった。

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