身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん

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第四章:没落家族の再来と、真の幸福編

第四十二話 嫉妬深い婚約者

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「では、失礼して……肩のラインと、背中の空き具合を測らせていただきます」

 城の衣装部屋。王都から招かれた若き天才仕立て屋が、メジャーを手にレティシアへと近づいた。
 レティシアは仮縫いのドレスを纏い、少し緊張した面持ちで立っている。彼女の透き通るような白い肌が、開いた背中から露わになっていた。

「――待て」

 部屋の隅、影のように控えていたアレクシスから、地を這うような低い声が響いた。
 一瞬で室内の温度が数度下がったかのような錯覚に、仕立て屋の手が止まる。

「な、何か問題でも……ヴォルフェン公爵閣下?」

「その手をレティシアの肌に触れさせてみろ。貴様のその指を、二度と針が持てぬように叩き折ってやる」

「アレクシス様!?」

 レティシアが驚いて振り返る。アレクシスの黄金の瞳は、獲物を狙う猛禽類のように鋭く、仕立て屋を射抜いていた。

「触れる必要などないだろう。目測で測れ。それがプロというものだ」

「そ、そんな無茶な! ドレスのフィット感は、ミリ単位の調整が必要で……」

「ならば俺がやる。メジャーを貸せ」

 アレクシスは仕立て屋から奪い取るようにメジャーを引ったくると、レティシアの背後に立った。
 彼の大きな手が、触れるか触れないかの距離でレティシアの腰をなぞる。その熱に、レティシアは顔を真っ赤にして俯いた。

「アレクシス様……これじゃ、お仕事になりません……」

「君が他の男に触れられるのを見過ごせるほど、俺の心は広くないんだ。……分かったら大人しくしていろ」

 結局、アレクシスが測り、仕立て屋が震えながらメモを取るという、前代未聞の衣装合わせが続いた。

 しかし、その滑稽なほどに愛に満ちた空気を切り裂くように、部屋の扉が乱暴に開かれた。
 入ってきたのは、黒い法衣を纏った教会の調査団――そのリーダー格である高慢な司教だった。

「公爵閣下、失礼する。……ふん、色恋沙汰にうつつを抜かしている暇があるのなら、この娘を我らに引き渡してもらおうか」

 司教は手に持った教典を誇示するように掲げた。

「この娘の浄化の力は、教会の認める『奇跡』の範疇を超えている。正当な『聖女の試練』を受け、神の審判を仰がねば、それは異端の魔術と見なさざるを得ない。さあ、レティシア。我らと共に中央聖堂へ来い」

 レティシアの顔から血の気が引く。アレクシスの腕に力がこもるのが分かった。
 アレクシスはレティシアを背後に隠すと、仕立て屋に向けられていたものとは比較にならない、本物の「死神」の殺気を司教へと放った。

「……試練だと? 貴様ら、今の言葉を後悔することになるぞ」

 嫉妬深い婚約者の怒りは、ついに神の代弁者を自称する権威へと向けられた。

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