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第180話 リオの母性 ★ルト SIDE
ぼくは今、とても緊張している。なぜなら、ぼくを孤児院から連れ出して勉強する機会をくださった『大聖女様』が、ぼくをお茶に誘ってくださったのだ。
孤児院の事とか、きっと聞きたい事があるんだと思うけど、捨てられたぼくが大聖女様とお茶をするなんて、未だに信じられないんだ。
もしかしたら、ぼくを気に入らない誰かに虐められたりするのかなぁ?複雑な気持ちで辿り着いたのは、大聖女様の執務室に繋がっている応接間だ。今は執事になる勉強もしているから、いずれはぼくも執務室に出入りする事になる。大聖女様のために働く事は、とても楽しみなんだ。
コンコンとノックしてくれたのは、ビシッと立って扉を守っている騎士様だった。すっごくカッコ良いんだよね。確か、サイラス卿。大聖女様の専属騎士だと聞いている。影があちこちから聖女様を見守っているから、扉を守っている意味は無いと思ってしまうけど……お仕事だもんね。
「どうぞ」
ノックの音に反応してくれたのは、恐らく公爵令嬢で大聖女様の側近であるエリザベス嬢だと思われる。澄んで通る声は、大聖女様とは違った強さと魅力があって、素敵だと思う。最近は、この国のトップに位置する女性達ばかり見ているから、同年代の女の子は皆子供に見えるんだよね。ぼくも子供だけどさ。
「ありがとうございます」
子供には重い扉を開けてくれたサイラス卿に軽く頭を下げ、お礼を言ってから中へ足を踏み入れた。顔を上げると目の前まで大聖女様がいらしていて、ぼくをギュッと抱きしめてくださった。
「ルト、元気だった?急に環境が変わってしまって大変だったでしょう。宰相……お父様にはよくして貰っているかしら?」
「大聖女様、お気遣いありがとうございます。環境の変化には慣れてますし、父上は本当の父上よりぼくに興味を持って接してくださいます。本当にありがとうございます」
「ルト、己の不遇に慣れては駄目よ?貴方は賢いし、未来がある少年なのだから。それに、貴方のお父様になられた宰相閣下は、貴方を気に入ったから養子に迎えると決めたのよ。お父様の方から、ぜひ引き取りたいと仰ったの」
困った顔で優しく諭してくださる大聖女様は、本当に女神様の様で。父上の事も、きっとぼくが誰かに必要とされている事を伝えたかったんだと思う。雲の上の存在なのに、子供のぼくにまで心を砕いてくださる、素晴らしいお方だ。大聖女様のためになら、何でも頑張れると思えるから不思議だよね。
「えっ!そうだったのですか?とっても嬉しいです!父上の期待に応えられる様に、これからも精進致します!」
「ルト、たまには外で元気に遊ぶ事も大事よ?体を動かすと、頭の回転も良くなって、閃いたりするって聞いた事があるわ。ルトは甘いものは好きかしら?好きな物を好きなだけどうぞ。お勉強する時や頭を使う時は、糖分を少し多めに取った方が効率も良いのよ」
笑顔でお菓子を勧めてくださる聖女様は、ぼくが遠慮しない様に『勉強が捗るから』と、理由をつけてくださったのだろう。やっぱり優しくて素敵な女性だなぁ。
ぼくは大聖女様のお陰で大事にしてくれる人や、ぼくの価値を分かってくれる人達に出逢う事ができた。大聖女様には、感謝してもしきれないなぁ。そんな事を考えながら大聖女様に見惚れていると、扉を叩く音が。
「リオ、ぼくも一緒にお茶しても良いかな?」
返事を待たずに入って来たのは、この国の王太子殿下だ。何度か大聖女様と話をしている時に、遠くからお見かけした事があるんだけど、ぼくは嫌われてるんだろうか?と思う視線を感じる事があったから、ぼくが何か悪い事をしてしまったのかと、こっそり父上に聞いたんだ。
そしたら、「カミル殿下は、大聖女様の事にだけは心が狭くなられる。それだけ、大聖女様の事を愛していらっしゃるのだよ」と教えてくれた。ぼくが何かした訳でも、嫌われてる訳でも無くて、本当に良かったと思ったよ。ぼくが仕えるのは、カミル殿下と大聖女様の間に生まれる予定のお子様なのだからね。
「あら、カミル。構わないけれど、会議だったんじゃ無いの?」
「宰相殿に、今日は特に大した議題が無いから、こちらに参加しても良いと言って貰えたんだ」
大聖女様に笑顔を向ける殿下は、とても嬉しそうだ。普段の微動だにしない作った笑顔とは違って、心から嬉しいと思っているのが分かる。
「そうだったのね。ルト、紹介するわね。こちらはカミル王太子殿下。私の婚約者でもあるわ」
「ルト=ノルトです。よろしくお願いします」
ぼくは深々と頭を下げて挨拶をした。
「ルト、初めまして。君はもうノルト侯爵家の人間なのだから、そんな風に頭を下げてはいけないよ」
微笑んでくださる王太子殿下はとても知的に見える。古文書を含む王国の書庫、禁書庫の本を全て読まれたと聞いている。そこら辺を話題にすれば、ぼくがこれから読むべき本を教えて貰えるだろうか?
「王太子殿下、質問してもよろしいでしょうか?」
「良いよ、ルト。あと、そんなに畏まらないで。僕の事はカミル殿下って呼んでくれるかな?」
「あ、はい!ありがとうございます、カミル殿下。えっと、その、質問なのですが、古文書を全巻と、書庫の本も全てお読みになったと父上に聞きました。カミル殿下にとって有意義だった本を教えていただけますか?」
「その言い方だと、ルトも古文書は読んだのかな?」
「あ、はい。駄目なのだと知ったのは最近なのですが、伯爵家の父方の叔父が、王宮禁書庫の管理をしていた事があった様で、古文書の写しが実家の書斎にあったのです。それで全巻読みました」
少し考える素振りをして、カミル殿下がぼくに視線を向ける。
「それは素晴らしいね。ルトは10歳だったよね?」
「はい」
「君を子供だと思わないで接しても良いだろうか?」
それはぼくを少しは認めてくれていると言う事なのかなぁ?そうだったら嬉しいけど、期待を裏切らない様に頑張らなきゃだね。
「はい、構いません」
「デュルギス王国の歴史書は基本だと、理解しているよね?」
「はい、もちろんです」
「うん、良いだろう。僕が使っていた本を貸してあげよう。宰相が持っている本もそれなりに把握しているから、持っていないと言っていた本を纏めて侯爵へ渡しておくから、読んでみると良い」
やった!カミル殿下が選んでくださったのだから間違い無いはず。侯爵家にある本はもうほとんど読んでしまったから、本当にありがたい。
「ありがとうございます!」
「出来れば、僕か宰相に宛てて、感想文を書いてくれると嬉しいんだけどね?質問でも良いし、君の考えを知りたいのだけれど、良いだろうか?」
「カミル、それは流石に早過ぎない?」
「いや、ルトは宰相にまでなれる可能性がある。今はまだ可能性を潰したく無いからね。それに、興味のある事から取り組んだ方が勉強も捗るんだよね。武術も含め、叩き込んでみたいな」
期待されるのは嬉しいし、その期待に応えたい。本来の目的である弟を守れたら尚良いんだけどね。弟をあの地獄から救えたら、ぼくは大聖女様とカミル殿下にぼくの全てを捧げると誓うよ。
「ありがとうございます!ぼくは父上が良いと仰ってくださるなら、何でも勉強したいです」
「そうか。では、僕が渡した本の感想文が全て終わって、僕も宰相も認めたなら、王太子の仕事を見てみるかい?将来の役に立つと思うんだが」
「はい!是非見てみたいです。よろしくお願いします」
「ちょっと、カミル!それじゃあ執事じゃ無くて、補佐官か文官寄りじゃない……」
「リオ、何でもやらせてみようよ。最終的に、ルトに合ってる仕事をさせてあげた方が良いだろう?」
「まぁ、それはそうだけど……」
大聖女様も、ぼくの事を心配して、無理をしない様に考えてくださっているのか分かる。周りから見たら、ぼくは10歳の子供でしか無いんだよね。それも理解しているよ。
「大聖女様、ぼくは大聖女様のお子様の執事か補佐官か側近になれば、いつでも近くで守る事が出来ますよね?お子様が王様になるのであれば、宰相を目指すのも悪く無い選択だと思うのです。ぼくの能力がどこまで伸ばせるか分かりませんが、出来る限り上を目指したいのです」
「ルト!素晴らしいわ。貴方がやってみたいのであれば、好きになさい。ただ、徹夜したり無理はしちゃ駄目よ?」
「徹夜……ですか?」
「ふふっ、そうですわねリオ。ルト様、魔導師団に体の大きな魔導師がいるでしょう?彼は夢中になると寝食を忘れるから、ルト様の事も心配でいらっしゃるのですよ。彼の場合、無理をしていないと言い張るから……ふふっ」
「リオは周りをよく見ているからね。ルト、あまりリオを心配させる様な事をしないでおくれ?」
「かしこまりました、カミル殿下」
「よろしく頼むよ。今日はこの後、師匠と魔法の勉強だったかい?」
「あ、はい。午後から練習場へ来るように言われています」
「そうか。じゃあ、そろそろお昼を食べておいで。リオにはまたお茶を誘われるだろうから、付き合ってあげてね」
「はい、もちろんです。それでは失礼します」
⭐︎⭐︎⭐︎
「カミル、少しルトが心配だわ」
「リオ、彼は大人だと思って接しても対応出来るだけの能力があるから大丈夫だよ?」
「それは分かっているわ。だけど、中身は10歳なのよ?無理矢理大人にならざるを得なかっただけで、まだ10歳の少年なのよ。今はまだ良くてもこれから先、皆の期待が大きなプレッシャーとなって押し潰されないか、それが私は心配なのよ」
「あぁ、そうだね……彼は大人びているし賢いから、つい大人扱いしてしまうんだ」
「リオ、彼はリオがお茶に誘って、甘やかしてあげたら良いのよ。きっと宰相様は飴と鞭ぐらいの甘さしか無いだろうから、超絶甘やかしちゃいましょう!」
「そうね。大人びていても、まだ母親に甘えたい年頃だものね。男の子だからプライドもあるだろうし、様子を見ながら甘えさせられる所は甘えさせてあげられる様にして行きましょうね」
少し複雑な顔をしたカミルに気がつかないリオ達に、苦笑いする影の長であった……
孤児院の事とか、きっと聞きたい事があるんだと思うけど、捨てられたぼくが大聖女様とお茶をするなんて、未だに信じられないんだ。
もしかしたら、ぼくを気に入らない誰かに虐められたりするのかなぁ?複雑な気持ちで辿り着いたのは、大聖女様の執務室に繋がっている応接間だ。今は執事になる勉強もしているから、いずれはぼくも執務室に出入りする事になる。大聖女様のために働く事は、とても楽しみなんだ。
コンコンとノックしてくれたのは、ビシッと立って扉を守っている騎士様だった。すっごくカッコ良いんだよね。確か、サイラス卿。大聖女様の専属騎士だと聞いている。影があちこちから聖女様を見守っているから、扉を守っている意味は無いと思ってしまうけど……お仕事だもんね。
「どうぞ」
ノックの音に反応してくれたのは、恐らく公爵令嬢で大聖女様の側近であるエリザベス嬢だと思われる。澄んで通る声は、大聖女様とは違った強さと魅力があって、素敵だと思う。最近は、この国のトップに位置する女性達ばかり見ているから、同年代の女の子は皆子供に見えるんだよね。ぼくも子供だけどさ。
「ありがとうございます」
子供には重い扉を開けてくれたサイラス卿に軽く頭を下げ、お礼を言ってから中へ足を踏み入れた。顔を上げると目の前まで大聖女様がいらしていて、ぼくをギュッと抱きしめてくださった。
「ルト、元気だった?急に環境が変わってしまって大変だったでしょう。宰相……お父様にはよくして貰っているかしら?」
「大聖女様、お気遣いありがとうございます。環境の変化には慣れてますし、父上は本当の父上よりぼくに興味を持って接してくださいます。本当にありがとうございます」
「ルト、己の不遇に慣れては駄目よ?貴方は賢いし、未来がある少年なのだから。それに、貴方のお父様になられた宰相閣下は、貴方を気に入ったから養子に迎えると決めたのよ。お父様の方から、ぜひ引き取りたいと仰ったの」
困った顔で優しく諭してくださる大聖女様は、本当に女神様の様で。父上の事も、きっとぼくが誰かに必要とされている事を伝えたかったんだと思う。雲の上の存在なのに、子供のぼくにまで心を砕いてくださる、素晴らしいお方だ。大聖女様のためになら、何でも頑張れると思えるから不思議だよね。
「えっ!そうだったのですか?とっても嬉しいです!父上の期待に応えられる様に、これからも精進致します!」
「ルト、たまには外で元気に遊ぶ事も大事よ?体を動かすと、頭の回転も良くなって、閃いたりするって聞いた事があるわ。ルトは甘いものは好きかしら?好きな物を好きなだけどうぞ。お勉強する時や頭を使う時は、糖分を少し多めに取った方が効率も良いのよ」
笑顔でお菓子を勧めてくださる聖女様は、ぼくが遠慮しない様に『勉強が捗るから』と、理由をつけてくださったのだろう。やっぱり優しくて素敵な女性だなぁ。
ぼくは大聖女様のお陰で大事にしてくれる人や、ぼくの価値を分かってくれる人達に出逢う事ができた。大聖女様には、感謝してもしきれないなぁ。そんな事を考えながら大聖女様に見惚れていると、扉を叩く音が。
「リオ、ぼくも一緒にお茶しても良いかな?」
返事を待たずに入って来たのは、この国の王太子殿下だ。何度か大聖女様と話をしている時に、遠くからお見かけした事があるんだけど、ぼくは嫌われてるんだろうか?と思う視線を感じる事があったから、ぼくが何か悪い事をしてしまったのかと、こっそり父上に聞いたんだ。
そしたら、「カミル殿下は、大聖女様の事にだけは心が狭くなられる。それだけ、大聖女様の事を愛していらっしゃるのだよ」と教えてくれた。ぼくが何かした訳でも、嫌われてる訳でも無くて、本当に良かったと思ったよ。ぼくが仕えるのは、カミル殿下と大聖女様の間に生まれる予定のお子様なのだからね。
「あら、カミル。構わないけれど、会議だったんじゃ無いの?」
「宰相殿に、今日は特に大した議題が無いから、こちらに参加しても良いと言って貰えたんだ」
大聖女様に笑顔を向ける殿下は、とても嬉しそうだ。普段の微動だにしない作った笑顔とは違って、心から嬉しいと思っているのが分かる。
「そうだったのね。ルト、紹介するわね。こちらはカミル王太子殿下。私の婚約者でもあるわ」
「ルト=ノルトです。よろしくお願いします」
ぼくは深々と頭を下げて挨拶をした。
「ルト、初めまして。君はもうノルト侯爵家の人間なのだから、そんな風に頭を下げてはいけないよ」
微笑んでくださる王太子殿下はとても知的に見える。古文書を含む王国の書庫、禁書庫の本を全て読まれたと聞いている。そこら辺を話題にすれば、ぼくがこれから読むべき本を教えて貰えるだろうか?
「王太子殿下、質問してもよろしいでしょうか?」
「良いよ、ルト。あと、そんなに畏まらないで。僕の事はカミル殿下って呼んでくれるかな?」
「あ、はい!ありがとうございます、カミル殿下。えっと、その、質問なのですが、古文書を全巻と、書庫の本も全てお読みになったと父上に聞きました。カミル殿下にとって有意義だった本を教えていただけますか?」
「その言い方だと、ルトも古文書は読んだのかな?」
「あ、はい。駄目なのだと知ったのは最近なのですが、伯爵家の父方の叔父が、王宮禁書庫の管理をしていた事があった様で、古文書の写しが実家の書斎にあったのです。それで全巻読みました」
少し考える素振りをして、カミル殿下がぼくに視線を向ける。
「それは素晴らしいね。ルトは10歳だったよね?」
「はい」
「君を子供だと思わないで接しても良いだろうか?」
それはぼくを少しは認めてくれていると言う事なのかなぁ?そうだったら嬉しいけど、期待を裏切らない様に頑張らなきゃだね。
「はい、構いません」
「デュルギス王国の歴史書は基本だと、理解しているよね?」
「はい、もちろんです」
「うん、良いだろう。僕が使っていた本を貸してあげよう。宰相が持っている本もそれなりに把握しているから、持っていないと言っていた本を纏めて侯爵へ渡しておくから、読んでみると良い」
やった!カミル殿下が選んでくださったのだから間違い無いはず。侯爵家にある本はもうほとんど読んでしまったから、本当にありがたい。
「ありがとうございます!」
「出来れば、僕か宰相に宛てて、感想文を書いてくれると嬉しいんだけどね?質問でも良いし、君の考えを知りたいのだけれど、良いだろうか?」
「カミル、それは流石に早過ぎない?」
「いや、ルトは宰相にまでなれる可能性がある。今はまだ可能性を潰したく無いからね。それに、興味のある事から取り組んだ方が勉強も捗るんだよね。武術も含め、叩き込んでみたいな」
期待されるのは嬉しいし、その期待に応えたい。本来の目的である弟を守れたら尚良いんだけどね。弟をあの地獄から救えたら、ぼくは大聖女様とカミル殿下にぼくの全てを捧げると誓うよ。
「ありがとうございます!ぼくは父上が良いと仰ってくださるなら、何でも勉強したいです」
「そうか。では、僕が渡した本の感想文が全て終わって、僕も宰相も認めたなら、王太子の仕事を見てみるかい?将来の役に立つと思うんだが」
「はい!是非見てみたいです。よろしくお願いします」
「ちょっと、カミル!それじゃあ執事じゃ無くて、補佐官か文官寄りじゃない……」
「リオ、何でもやらせてみようよ。最終的に、ルトに合ってる仕事をさせてあげた方が良いだろう?」
「まぁ、それはそうだけど……」
大聖女様も、ぼくの事を心配して、無理をしない様に考えてくださっているのか分かる。周りから見たら、ぼくは10歳の子供でしか無いんだよね。それも理解しているよ。
「大聖女様、ぼくは大聖女様のお子様の執事か補佐官か側近になれば、いつでも近くで守る事が出来ますよね?お子様が王様になるのであれば、宰相を目指すのも悪く無い選択だと思うのです。ぼくの能力がどこまで伸ばせるか分かりませんが、出来る限り上を目指したいのです」
「ルト!素晴らしいわ。貴方がやってみたいのであれば、好きになさい。ただ、徹夜したり無理はしちゃ駄目よ?」
「徹夜……ですか?」
「ふふっ、そうですわねリオ。ルト様、魔導師団に体の大きな魔導師がいるでしょう?彼は夢中になると寝食を忘れるから、ルト様の事も心配でいらっしゃるのですよ。彼の場合、無理をしていないと言い張るから……ふふっ」
「リオは周りをよく見ているからね。ルト、あまりリオを心配させる様な事をしないでおくれ?」
「かしこまりました、カミル殿下」
「よろしく頼むよ。今日はこの後、師匠と魔法の勉強だったかい?」
「あ、はい。午後から練習場へ来るように言われています」
「そうか。じゃあ、そろそろお昼を食べておいで。リオにはまたお茶を誘われるだろうから、付き合ってあげてね」
「はい、もちろんです。それでは失礼します」
⭐︎⭐︎⭐︎
「カミル、少しルトが心配だわ」
「リオ、彼は大人だと思って接しても対応出来るだけの能力があるから大丈夫だよ?」
「それは分かっているわ。だけど、中身は10歳なのよ?無理矢理大人にならざるを得なかっただけで、まだ10歳の少年なのよ。今はまだ良くてもこれから先、皆の期待が大きなプレッシャーとなって押し潰されないか、それが私は心配なのよ」
「あぁ、そうだね……彼は大人びているし賢いから、つい大人扱いしてしまうんだ」
「リオ、彼はリオがお茶に誘って、甘やかしてあげたら良いのよ。きっと宰相様は飴と鞭ぐらいの甘さしか無いだろうから、超絶甘やかしちゃいましょう!」
「そうね。大人びていても、まだ母親に甘えたい年頃だものね。男の子だからプライドもあるだろうし、様子を見ながら甘えさせられる所は甘えさせてあげられる様にして行きましょうね」
少し複雑な顔をしたカミルに気がつかないリオ達に、苦笑いする影の長であった……
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