20 / 172
サイクスの効率化編
第19話 - 瑞希の弱点
しおりを挟む
時刻は19時30分を回り、既に陽は沈み辺りは暗闇に包まれていた。サイクス第二研究所は人里から少し離れた山中に建設されているにも関わらず、研究所から放たれる輝きはまるで野外ライブが行われているかの如く一帯を照らしている。
瑞希、和人、花、田島梨花の4人は出口へ向かうために13階にある訓練室Aからエレベーターの中にいた。
「和人くんはどうやって帰るの?」
「俺は地区接続電車に乗って第1地区まで行った後に地下鉄に乗って帰るよ」
「どのくらいかかるの?」
「言っても第3地区から第1地区は20分くらいでそこから家まで10分くらいだから30分前後ってとこだよ」
「そんなもんなんだねー。私も行ってみたいな」
「遊びおいでよ。俺案内するよ」
「うん。行くときにはお願いしよっかな」
和人は少し躊躇した後、
「じゃあ……瑞希の連絡先教えてよ」
瑞希は少し驚いた表情をして
「あれ? 私、和人くんの連絡先知らなかったっけ?」
「俺知らないよ」
「え、じゃあ交換しよっ」
瑞希はそう言って携帯を取り出して電話番号を表示する。和人はそれを登録し、SMSを送った。
「届いた。ありがとう」
瑞希はニッコリと笑い、和人は少し照れ臭そうに笑う。
丁度エレベーターの扉が開き、4人は出口へと向かう。先ほどの受付の女性は既に退勤しており、数人の研究者たちは少々疲れた表情を見せながら帰宅するところだった。
"玲奈が迎えに向かってる。あと少しで着くから待ってて"
愛香からメッセージが届く。"了解"と返信し、3人に伝えた。
「じゃあ俺帰るわ」
「うん、お互い頑張ろうね」
「そうだな。そういや少し安心したよ」
「何が?」
「いや、瑞希って大概のことは直ぐにこなしちゃう人間離れしたイメージだったから」
「そう?」
「いや、そうでしょ」
瑞希は少し苦笑いをする。確かに特にサイクスのことであれば直ぐに修得していたが今日の内容は少し苦戦した。
「まぁお前なら来週には完璧になってんだろーけど」
「さぁ」と瑞希は肩をすくめる。
「じゃあ、また来週な」
「うん、気を付けてね」
「ありがとう」
和人は瑞希に別れを告げ、花と田島にも一礼して研究所を後にした。
「和人も少し勇気出したわね」
「??」
花は瑞希の様子を見て「やれやれ」と手を広げて出入り口の方を顎でさして瑞希に合図をする。
「玲奈さん!」
「瑞希ちゃん、お疲れ~」
「1人で帰れるのに」
「夜に女の子1人は危ないからね」
2人の様子を少し見守った後、花が瑞希に伝える。
「じゃあ瑞希、今日言われたことしっかり実践するのよ」
「分かりました」
「じゃあ、3日後またここに」
「はーい、さようなら」
そう言って瑞希と玲奈は研究所を出て行った。
花が田島に声をかける。
「それで、田島さんどうでした?」
「2人ともとても優秀だと思います。月島さんは苦戦したみたいな事を言っていましたがいきなりあのレベルのアウター・サイクスが出来るのは素晴らしいです。p-Phoneを出している時とそうでない時のサイクス量にかなり差があるので感覚に四苦八苦しているみたいです。それと……」
「自然消費量の事ですね?」
「えぇ。そして特に膨大なサイクス量を持つ超能力者に多いですが"超常現象"などを使用する際に量に依存して無駄なサイクスを消費してしまう傾向にあります。月島さんも例外ではありません。彼女の超能力を考えると致命的になりかねませんね」
「確かに。上野との戦闘でもそれまでにサイクスを消費していたとは言え、5分程度しか保ちませんでしたからね。長期戦を好む相手の場合、相性が最悪ね」
「瑞希さんの場合、アウター・サイクスとインナー・サイクスの修得は勿論のこと、普段のサイクスの使い方について見直す必要がありますね。恐らく無駄が多いでしょう」
「サイクスの効率化・最適化が必須ってことですね。愛香や瀧はどちらかと言えばサイクスの量に物を言わせるタイプだし……」
「あら、花さんや玲奈さんはサイクスの扱い方が素晴らしいですよ」
「あはは。私たちはそもそもサイクス量が多くないですから。膨大なサイクス量を持ち、使い方の効率が良い超能力者と言えば……課長ですかね」
「確かに。タイプ的にはピッタリかもしれませんね」
少々面倒だなと花は少し唸る。
「霧島くんに関しては来週にはほぼ完璧にアウター・サイクスをこなして来るでしょう。素晴らしい人材です」
「私もそう思います。彼はサイクスの量も多いし、扱い方にも長けているようです」
「いずれにせよ2人とも逸材です。政府は何としても"TRACKERS"計画に組み込みたいでしょうね」
花は愛香の顔を思い浮かべながら苦笑いをする。
「色々と事情がありそうですね。私はこれから退勤ですので。それでは」
そう言って田島は着替室の方へと向かって行った。
花は「肌荒れそう」と呟きそのまま出口へと向かった。
「どうだった?」
瑞希を乗せた車が高速道路に差しかかった時におもむろに玲奈が尋ねた。
「アウター・サイクス、難しいなって。苦手かも」
「少し分かる気がする」
「どうして?」
「サイクス量が多い超能力者の永久的な課題よ」
瑞希は感覚的にこの事を理解していた。そしてこれを克服することが自分の超能力を使いこなす為の鍵となることも。
「出来るようになると良いなぁ」
「なるわよ」
玲奈は一瞬笑った後、p-Phoneを具現化し続けたまま疲労を隠しきれない瑞希を横目にハンドルを切った。
瑞希、和人、花、田島梨花の4人は出口へ向かうために13階にある訓練室Aからエレベーターの中にいた。
「和人くんはどうやって帰るの?」
「俺は地区接続電車に乗って第1地区まで行った後に地下鉄に乗って帰るよ」
「どのくらいかかるの?」
「言っても第3地区から第1地区は20分くらいでそこから家まで10分くらいだから30分前後ってとこだよ」
「そんなもんなんだねー。私も行ってみたいな」
「遊びおいでよ。俺案内するよ」
「うん。行くときにはお願いしよっかな」
和人は少し躊躇した後、
「じゃあ……瑞希の連絡先教えてよ」
瑞希は少し驚いた表情をして
「あれ? 私、和人くんの連絡先知らなかったっけ?」
「俺知らないよ」
「え、じゃあ交換しよっ」
瑞希はそう言って携帯を取り出して電話番号を表示する。和人はそれを登録し、SMSを送った。
「届いた。ありがとう」
瑞希はニッコリと笑い、和人は少し照れ臭そうに笑う。
丁度エレベーターの扉が開き、4人は出口へと向かう。先ほどの受付の女性は既に退勤しており、数人の研究者たちは少々疲れた表情を見せながら帰宅するところだった。
"玲奈が迎えに向かってる。あと少しで着くから待ってて"
愛香からメッセージが届く。"了解"と返信し、3人に伝えた。
「じゃあ俺帰るわ」
「うん、お互い頑張ろうね」
「そうだな。そういや少し安心したよ」
「何が?」
「いや、瑞希って大概のことは直ぐにこなしちゃう人間離れしたイメージだったから」
「そう?」
「いや、そうでしょ」
瑞希は少し苦笑いをする。確かに特にサイクスのことであれば直ぐに修得していたが今日の内容は少し苦戦した。
「まぁお前なら来週には完璧になってんだろーけど」
「さぁ」と瑞希は肩をすくめる。
「じゃあ、また来週な」
「うん、気を付けてね」
「ありがとう」
和人は瑞希に別れを告げ、花と田島にも一礼して研究所を後にした。
「和人も少し勇気出したわね」
「??」
花は瑞希の様子を見て「やれやれ」と手を広げて出入り口の方を顎でさして瑞希に合図をする。
「玲奈さん!」
「瑞希ちゃん、お疲れ~」
「1人で帰れるのに」
「夜に女の子1人は危ないからね」
2人の様子を少し見守った後、花が瑞希に伝える。
「じゃあ瑞希、今日言われたことしっかり実践するのよ」
「分かりました」
「じゃあ、3日後またここに」
「はーい、さようなら」
そう言って瑞希と玲奈は研究所を出て行った。
花が田島に声をかける。
「それで、田島さんどうでした?」
「2人ともとても優秀だと思います。月島さんは苦戦したみたいな事を言っていましたがいきなりあのレベルのアウター・サイクスが出来るのは素晴らしいです。p-Phoneを出している時とそうでない時のサイクス量にかなり差があるので感覚に四苦八苦しているみたいです。それと……」
「自然消費量の事ですね?」
「えぇ。そして特に膨大なサイクス量を持つ超能力者に多いですが"超常現象"などを使用する際に量に依存して無駄なサイクスを消費してしまう傾向にあります。月島さんも例外ではありません。彼女の超能力を考えると致命的になりかねませんね」
「確かに。上野との戦闘でもそれまでにサイクスを消費していたとは言え、5分程度しか保ちませんでしたからね。長期戦を好む相手の場合、相性が最悪ね」
「瑞希さんの場合、アウター・サイクスとインナー・サイクスの修得は勿論のこと、普段のサイクスの使い方について見直す必要がありますね。恐らく無駄が多いでしょう」
「サイクスの効率化・最適化が必須ってことですね。愛香や瀧はどちらかと言えばサイクスの量に物を言わせるタイプだし……」
「あら、花さんや玲奈さんはサイクスの扱い方が素晴らしいですよ」
「あはは。私たちはそもそもサイクス量が多くないですから。膨大なサイクス量を持ち、使い方の効率が良い超能力者と言えば……課長ですかね」
「確かに。タイプ的にはピッタリかもしれませんね」
少々面倒だなと花は少し唸る。
「霧島くんに関しては来週にはほぼ完璧にアウター・サイクスをこなして来るでしょう。素晴らしい人材です」
「私もそう思います。彼はサイクスの量も多いし、扱い方にも長けているようです」
「いずれにせよ2人とも逸材です。政府は何としても"TRACKERS"計画に組み込みたいでしょうね」
花は愛香の顔を思い浮かべながら苦笑いをする。
「色々と事情がありそうですね。私はこれから退勤ですので。それでは」
そう言って田島は着替室の方へと向かって行った。
花は「肌荒れそう」と呟きそのまま出口へと向かった。
「どうだった?」
瑞希を乗せた車が高速道路に差しかかった時におもむろに玲奈が尋ねた。
「アウター・サイクス、難しいなって。苦手かも」
「少し分かる気がする」
「どうして?」
「サイクス量が多い超能力者の永久的な課題よ」
瑞希は感覚的にこの事を理解していた。そしてこれを克服することが自分の超能力を使いこなす為の鍵となることも。
「出来るようになると良いなぁ」
「なるわよ」
玲奈は一瞬笑った後、p-Phoneを具現化し続けたまま疲労を隠しきれない瑞希を横目にハンドルを切った。
0
あなたにおすすめの小説
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
竹林にて清談に耽る~竹姫さまの異世界生存戦略~
月芝
ファンタジー
庭師であった祖父の薫陶を受けて、立派な竹林好きに育ったヒロイン。
大学院へと進学し、待望の竹の研究に携われることになり、ひゃっほう!
忙しくも充実した毎日を過ごしていたが、そんな日々は唐突に終わってしまう。
で、気がついたら見知らぬ竹林の中にいた。
酔っ払って寝てしまったのかとおもいきや、さにあらず。
異世界にて、タケノコになっちゃった!
「くっ、どうせならカグヤ姫とかになって、ウハウハ逆ハーレムルートがよかった」
いかに竹林好きとて、さすがにこれはちょっと……がっくし。
でも、いつまでもうつむいていたってしょうがない。
というわけで、持ち前のポジティブさでサクっと頭を切り替えたヒロインは、カーボンファイバーのメンタルと豊富な竹知識を武器に、厳しい自然界を成り上がる。
竹の、竹による、竹のための異世界生存戦略。
めざせ! 快適生活と世界征服?
竹林王に、私はなる!
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
完 弱虫のたたかい方 (番外編更新済み!!)
水鳥楓椛
恋愛
「お姉様、コレちょーだい」
無邪気な笑顔でオネガイする天使の皮を被った義妹のラテに、大好きなお人形も、ぬいぐるみも、おもちゃも、ドレスも、アクセサリーも、何もかもを譲って来た。
ラテの後ろでモカのことを蛇のような視線で睨みつける継母カプチーノの手前、譲らないなんていう選択肢なんて存在しなかった。
だからこそ、モカは今日も微笑んだ言う。
「———えぇ、いいわよ」
たとえ彼女が持っているものが愛しの婚約者であったとしても———、
私の存在
戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。
何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。
しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。
しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる