TRACKER

セラム

文字の大きさ
58 / 172
夏休み前編 (超能力者管理委員会編)

第57話 - 興味

しおりを挟む
 秘書の尾上は車窓から見える景色を眺めている葉山をちらっと見ると少し咳払いをした後に尋ねる。

「わざわざ"超常現象ポルターガイスト"を使ったのも何か考えがあったからですか?」

 秘書の尾上が葉山に尋ねる。

「何がです?」
「あの、携帯を落とした時ですよ。いつもならわざわざお使いにならないじゃないですか。常にインナー・サイクスで自分のサイクスを隠しているのに……」
「単純に手を伸ばすのが面倒くさかったんですよ」

 葉山はそう答えた後、訝しんでいる尾上の表情を見て付け加える。

「あはは。でも瑞希さんも色んな意味で興味を持ってくれたんじゃないですか?」

 尾上は返答を聞いた後、これ以上ははぐらかされるだけであることと葉山に何か目的があることだけは分かったのでそれ以上詮索することを止めた。

#####

 ––––葉山順也: 日本月光党に所属し、超能力者管理委員会の委員長を務める。第一東京別教育機関への在学中、わずか13歳で東京第三地区大学に史上最年少入学。サイクス遺伝学を専攻し、首席で卒業。その後は当大学の研究機関に在籍し……

「やっぱり……」

 葉山が月島宅を後にしてから瑞希は自室で葉山順也について調べている。

「(葉山さんのサイクス、福岡にあるお父さん、お母さんのお墓やお祖父ちゃん・お祖母ちゃんのお家で見たことあったんだよね。お母さん東三大で教授やってたし、サイクス遺伝学が専門だったはず……このサイトにはゼミの名前書いてないけど十中八九、月島ゼミだったんじゃないかな……)」

 葉山が"超常現象ポルターガイスト"を使った際に発した黒いサイクスを福岡にある両親の墓前で見覚えがあったこと、そして葉山が自身も残留サイクスが見えることを示唆したことで瑞希の中で彼に対する興味が湧いていた。

「(今度、福岡行った時にお祖父ちゃんとお祖母ちゃんに聞いてみよっかな?)」

 ––––ピコン

 瑞希の携帯の通知音が鳴る。

"みずちゃんまだー?"

 萌からのメッセージに少しフッと笑った瑞希は直ぐに返事を返す。

"今から戻る~!"

 瑞希は返信した後に志乃から渡されているイヤホンを耳に装着し、"空想世界イマジン"へと戻って行った。
 
#####

「(結局、今回で北海道・東北の面々は決まらず終いだったな……)」

 超能力者管理委員会を終えて日本光明党本部に戻った石野が右手で顎をさすりながら思考する。

「(現在の先天性超能力者の出生率を考えて大阪や京都が含まれている近畿地方は日陽党の島田議員と日月党の野本議員の旧与党と現与党が取り合ったことは納得できる。ただ面積の広大さ、最近の出生率の伸びという観点から北海道・東北地方が争点になると葉山議員は読んでいたはず。彼がそのポテンシャルを見逃すとは思えないんだが……)」

 曽ヶ端が石野に缶コーヒーを手渡しながら声をかける。

「何か気になることでもあるの?」

 石野は軽く礼を言い、蓋を開け軽く一口飲んだ後に一息ついてから答える

「いえ、葉山委員長が今回、近畿地方と北海道・東北地方が最初の争点になることは分かっていたはずなんです。でもそれを飛ばしてまでの私用って何なんでしょうか? それに……」

 石野はまだ何かを考え込んでいる。

「それに?」
「いえ、葉山委員長は一体どこへ行っていたのかなと」

 曽ヶ端は野本の発言を思い返しながら答える。

「野本議員は確か……警察や内務省との連携を深めるのが急務とか何とか言ってたわね」
「それらしいこと言って誤魔化してるだけだと思うんですよね」
「私もそう思うわ。そもそも"不協の十二音"が関わった事件から1ヶ月経っている。今さら連携をなんて動きが遅過ぎるわ。彼のようなしたたかな人間がこの大きな問題を放置するかしら?」
「彼がどこへ行っていたか気になりますね……」

 後ろからコツコツとヒールの音を響かせながら1人の女が近付き、立ち止まる。

「私の出番ですね」

 石野と曽ヶ端の会話にもう1人、超能力者管理委員会に光明党から派遣された木戸きど 香織かおりが加わる。

「木戸さん……しかし議院規則で超能力の使用は禁止されているのでは?」

 石野が木戸の方を振り向きながら返答する。

––––議員規則第四条
 国会議員は如何なる理由においてもその他の議員に対して超能力を使用することを禁じる。

「"議員"に対してはね」

 3122年となった今日こんにち、国会形態は大きく変化し、オンライン形式または仮想空間を創り出す超能力者によって運営されている。
 その為、国会議員は当選地区で活動する事で地方の意見や地方自治体の声を直接全国の場で発表する事を容易にした。

 現在、全国的に散らばる国会議員を一堂に会する程の強力な超能力を持つ者が不在の為、基本的にオンライン形式で国会は行われるが、党首討論は現総理大臣である早野幹久の超能力で創り出した仮想空間で行われている。
 この議院規則第四条に関しては様々な議論が行われており、超能力の使用自体を禁止するように要求する者もいるが、過去の事例や早野の超能力ちからから矛盾が生じるという懸念もあり、現在まで続いている。

 木戸が2人の側を離れた後、石野は曽ヶ端に告げる。

「大丈夫ですか?」
「グレーゾーンであることには変わりないけど……逃げの口実はあるからね」
「そうですか。サイクスを持たない自分には分からないのですが……」

 木戸香織は物質刺激型超能力者で固有の超能力・"あなたはどこへオン・ユア・ウェイ"は車両に対して発揮する超能力である。

 ターゲットとする車両のナンバープレートと車種、メーカーを特定、その情報をサイクスに込めて自身が使う車両のハンドルに触れると対象車が最後に向かった目的地へと自動運転を開始する。
 また、木戸は既に覚醒した超能力者で、対象車に直接触れることで特定の日時に向かった行き先を知ることが可能となった。

 木戸は自身の超能力をいつでも利用できるように既に委員会メンバーが使用する車両の車種とメーカー、ナンバープレートを認知している。

「葉山委員長がいつも使用している車はこれね。YOKOTAのプリンス。ナンバープレートは……」

 木戸は自身の車内で携帯内のメモを眺めている。

「東京第三、分類番号は300、"あ"の91–62。彼が最も利用する車両はこれね。まぁ、付き人含めて全て調べているからしらみ潰しになるかもしれないけど……」

 木戸はサイクスを発しながらハンドルを握った。

––––"あなたはどこへオン・ユア・ウェイ発動!!!


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

竹林にて清談に耽る~竹姫さまの異世界生存戦略~

月芝
ファンタジー
庭師であった祖父の薫陶を受けて、立派な竹林好きに育ったヒロイン。 大学院へと進学し、待望の竹の研究に携われることになり、ひゃっほう! 忙しくも充実した毎日を過ごしていたが、そんな日々は唐突に終わってしまう。 で、気がついたら見知らぬ竹林の中にいた。 酔っ払って寝てしまったのかとおもいきや、さにあらず。 異世界にて、タケノコになっちゃった! 「くっ、どうせならカグヤ姫とかになって、ウハウハ逆ハーレムルートがよかった」 いかに竹林好きとて、さすがにこれはちょっと……がっくし。 でも、いつまでもうつむいていたってしょうがない。 というわけで、持ち前のポジティブさでサクっと頭を切り替えたヒロインは、カーボンファイバーのメンタルと豊富な竹知識を武器に、厳しい自然界を成り上がる。 竹の、竹による、竹のための異世界生存戦略。 めざせ! 快適生活と世界征服? 竹林王に、私はなる!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

神様の許嫁

衣更月
ファンタジー
信仰心の篤い町で育った久瀬一花は、思いがけずに神様の許嫁(仮)となった。 神様の名前は須久奈様と言い、古くから久瀬家に住んでいるお酒の神様だ。ただ、神様と聞いてイメージする神々しさは欠片もない。根暗で引きこもり。コミュニケーションが不得手ながらに、一花には無償の愛を注いでいる。 一花も須久奈様の愛情を重いと感じながら享受しつつ、畏敬の念を抱く。 ただ、1つだけ須久奈様の「目を見て話すな」という忠告に従えずにいる。どんなに頑張っても、長年染み付いた癖が直らないのだ。 神様を見る目を持つ一花は、その危うさを軽視し、トラブルばかりを引き当てて来る。 *** 1部完結 2部より「幽世の理」とリンクします。 ※「幽世の理」と同じ世界観です。 2部完結 ※気まぐれで短編UP

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

処理中です...