TRACKER

セラム

文字の大きさ
80 / 172
夏休み後編

第78話 - 協力

しおりを挟む
「結衣ちゃん!」

 瑞希の呼び止めは既に遅く、結衣は単独で近藤を追う。

「(海中なら私だって役に立つはず! 萌ちゃんを連れて行かせない!)」

 近藤は海に潜った時点で海水を飲み込み燃料を補給、遊泳速度を上げつつ機雷を仕掛けている。

「(速い! 爆弾を作る超能力者じゃないの!? 私と同じ水中で力を発揮する超能力者?)」

 水中で呼吸する手段の無い瑞希はその場で立ち尽くす。その時、背後で「瑞希!」と呼ぶ声を聞きつけそちらを振り返ると志乃と芽衣が立っており、志乃が耳を指差す。瑞希の耳にイヤホンがいつの間にか装着されている。

––––"空想世界イマジン"

 志乃の超能力、"空想世界イマジン"は本来ならば志乃から渡されたイヤホンを装着することによって発動される。しかし、ホストである志乃のみ強制的にグループの5人の耳にイヤホンを出現させることが可能である。代償として消費するサイクス量は増加し、心身共に疲労をもたらす。

「結衣ちゃん! 萌ちゃん!」

 仮想空間が出来上がったと同時に瑞希が2人に声をかける。

「何か種類の違う水に捕まって動けない! 呼吸は出来るんだけど、このおじさんの泳ぐスピードが速過ぎて目をあんまり開けてられない!」

 捕まっている萌が彼女を捕らえている水について説明する。更に萌は近藤の行動について付け加える。

「どの方向へ行ってるのか分かんないけど、この人多分、何かを仕掛けてると思う」

 近藤が所々で機雷を仕掛けている動作を感じ取っていた。そして結衣が少し苦しんでいる様子で話し始める。

「さっきから衝撃波みたいのに邪魔されてなかなか進めない! 萌ちゃんが教えてくれたように何か罠が仕掛けられてると思う。さっき砂浜で突然爆発とかが起こってたのと同じ感じ!」

 瑞希は2人の話を聞き、地上での対峙を合わせて状況を整理しながら話す。

「多分その人の超能力は2つ。1つは特定の場所に仕掛けて起動させるタイプと直接標的に撃ち込むタイプ。私は地雷とミサイルをイメージしていたけどその人がわざわざ海に逃げた事とその泳ぐスピードから考えると寧ろ水中でより力を発揮する超能力だと思う。だからどちらかと言うと機雷と魚雷!」

 瑞希は冷静に近藤の超能力を暴き始める。

「でもいくつか種類があったわよね?」

 志乃も地上での様子を思い返しながら口を挟む。

「うん! えっと……種類は」
「爆発するのと、衝撃が起こるのと、捕まえるやつかな?」

 綾子が目撃した種類を列挙する。

「それ! 多分海中でも同じことが出来ると思う。結衣ちゃん、目にサイクスを集中させられる?」

 結衣は瑞希に言われた通り目にサイクスを集中させ、不完全ながらもレンズを行う。

「何か周りに赤いサイクスが沢山……」
「それが仕掛けられた機雷だよ。サイクスを見えにくくすることをロスト、そしてその隠れたものを見破る為に目にサイクスを集中させて見破ることをレンズって言うの」

 瑞希は手短にレンズとロストについて全員に説明する。

「志乃ちゃん、結衣ちゃんの視界共有お願い!」

 瑞希の言葉に対し「任せて」と志乃が言うと仮想空間内で右腕を伸ばし左から右へとスライドさせる。すると中央にモニターが現れ、そこには辺り一面が水に囲まれ、時折気泡が浮遊する映像が映し出される。正に現在の結衣の視界である。
 "空想世界イマジン"のホストである志乃はグループの中の1人の視界を全員と画面共有する事が可能である。

*****

––––夏期休業開始4日目

「皆んなと私の視界を共有した時に残留サイクスが見る事が出来たり、他の皆んなの視界共有で私は残留サイクスを見る事が出来たりするんだね」 

 瑞希が不思議そうに話すと綾子が隣で自分の考えを話す。

「これさ、"空想世界イマジン"が発動されてても私達って現実にいるままじゃん? ということは脳に刺激を与えているんだと思うんだよね。それで視神経と脳って繋がってるって聞いたことあるからそれで出来るんじゃない?」
「え、綾子ちゃん頭良くない?」

 萌が隣で感心していると志乃も考え込みながら

「って事は瑞希の残留サイクスが見える目ってサイクス量との関係だと思ってたけど脳のつくりと関係があるって事?」

 と言い、それを聞いて4人は「さぁ」とほぼ同時に呟いた。答えが出るはずもなく、数秒後には会話はホテルオーキでの宿泊の事や他愛も無い日常へと話題はシフトした。

*****

「残留サイクスが見える。けど流石に相手も遠くまで行ってるだろうから追いつけないかな……」

 結衣はクスッと笑うと瑞希に告げる。

「お風呂で皆んなに見せるって言ってたのこれから見せるね。瑞希ちゃん残留サイクスの方向は?」

 瑞希は「左の方に真っ直ぐ伸びてるよ」と伝え、結衣は「ありがと」と短く礼を言った後に脚にサイクスを集中させ始める。

––––"人魚姫マーメイド"!

 結衣の両脚は魚類の尾の様に変化し、正しくお伽話に登場する人魚の姿へと変化する。結衣は瑞希の指示に従い、レンズで仕掛けられた機雷を華麗に躱しながら近藤を追う。 
 "人魚姫マーメイド"を発動した結衣の泳ぎは流麗で、且つ美しく水中で舞うように泳ぐ。しかしその美しさとは裏腹に遊泳速度は近藤の"人間潜水艇イエロー・サブマリン"を遥かに超える。

#####

「瑞希!」

 和人は百道浜に到着後、繰り返される爆発音を聞きつけて警備スタッフと共に観光客の誘導に協力をした後に騒ぎの中心へと向かい、瑞希たちを発見した。
 瑞希は和人にここで起こった出来事を話した後に現在の萌と結衣の状況について説明した。

「分かった。俺は眼帯の男の足取りを追うよ。瑞希は長野さんのアシストに徹してあげて。恐らく拠点地だろうし先回り出来るかも」

 和人がその場を離れようとすると「待って」と瑞希が呼び止める。

「私も行く! 残留サイクスが見えるから。志乃ちゃん、もしもの為に超能力貸してくれる?」

 p-Phoneを出現させ、志乃に尋ねる。志乃はそれに応じ、瑞希は"空想世界イマジン"を複写コピーし、p-Cloudに保存する。

「1人でタスク多過ぎないか?」
「大丈夫」

 瑞希は"宝探しハイライト"を解除し、短く答えると既に中本の残留サイクスを追うことに集中しようとする。

「瑞希、私も行く!」

 綾子が志願する。

「でも危ないよ?」
「瑞希、サイクスの消費が激しくなるでしょ? そして"宝探しハイライトでの強調表示は使えないから身体への負担も大きくなる」

 綾子の言葉に瑞希はピクッと反応する。

「どういう事だ?」

 それを聞いて和人は瑞希に尋ねる。代わりに綾子が答える。

「もし"宝探しハイライト"を眼帯の人のサイクスを追う為に使うと萌ちゃんを捕まえてる人のサイクスを追う事が出来なくなるからでしょ?」

 瑞希はゆっくりと頷く。
  
 残留サイクスは日常生活の中であらゆる場所に付着し、空気中にも漂う。この環境下で1つの残留サイクスを追うことは至難の業で眼精疲労はより蓄積される。

「私が"女子の秘密の努力ビューティー・メンテ"で少しでも身体の負担を軽減して回復させるよ。任せて」

 瑞希は少し考え込んでから答える。

「分かった、お願い。私と和人くんから離れないでね」

 綾子は頷き、瑞希と和人と共に中本の残留サイクスを追った。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

竹林にて清談に耽る~竹姫さまの異世界生存戦略~

月芝
ファンタジー
庭師であった祖父の薫陶を受けて、立派な竹林好きに育ったヒロイン。 大学院へと進学し、待望の竹の研究に携われることになり、ひゃっほう! 忙しくも充実した毎日を過ごしていたが、そんな日々は唐突に終わってしまう。 で、気がついたら見知らぬ竹林の中にいた。 酔っ払って寝てしまったのかとおもいきや、さにあらず。 異世界にて、タケノコになっちゃった! 「くっ、どうせならカグヤ姫とかになって、ウハウハ逆ハーレムルートがよかった」 いかに竹林好きとて、さすがにこれはちょっと……がっくし。 でも、いつまでもうつむいていたってしょうがない。 というわけで、持ち前のポジティブさでサクっと頭を切り替えたヒロインは、カーボンファイバーのメンタルと豊富な竹知識を武器に、厳しい自然界を成り上がる。 竹の、竹による、竹のための異世界生存戦略。 めざせ! 快適生活と世界征服? 竹林王に、私はなる!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

神様の許嫁

衣更月
ファンタジー
信仰心の篤い町で育った久瀬一花は、思いがけずに神様の許嫁(仮)となった。 神様の名前は須久奈様と言い、古くから久瀬家に住んでいるお酒の神様だ。ただ、神様と聞いてイメージする神々しさは欠片もない。根暗で引きこもり。コミュニケーションが不得手ながらに、一花には無償の愛を注いでいる。 一花も須久奈様の愛情を重いと感じながら享受しつつ、畏敬の念を抱く。 ただ、1つだけ須久奈様の「目を見て話すな」という忠告に従えずにいる。どんなに頑張っても、長年染み付いた癖が直らないのだ。 神様を見る目を持つ一花は、その危うさを軽視し、トラブルばかりを引き当てて来る。 *** 1部完結 2部より「幽世の理」とリンクします。 ※「幽世の理」と同じ世界観です。 2部完結 ※気まぐれで短編UP

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

処理中です...