TRACKER

セラム

文字の大きさ
160 / 172
番外編②後編 - GOLEM / SHADOW編

番外編②-23 – 甘さ

しおりを挟む
––––お前には甘いところがある

 GOLEMの打撃をなしながら数日前に藤村から言われた言葉が瀧の頭をぎる。

「(課長の言う通り、世の中には問答無用でぶっ飛ばさなきゃならねぇ連中は五万といる……!)」

 瀧の脳裏に4年前の十二音による襲撃事件の資料が浮かぶ。

#####

「課長、GOLEMのことどう思いますか?」

 藤村は例の如くライターの蓋を開閉させていた手を止めて瀧の方を見る。その瀧の表情を見て「はぁ」と大きな溜め息をついた後に答える。

「どうも何もS級犯罪者集団・不協の十二音の一員だろ。危険な奴らだよ」

 瀧は「そうですよね」と言いつつ、藤村の机の上にぶっきら棒に置かれている4年前の襲撃事件についての資料が纏められているマテリアル・タブレット (MTとよく略される) にチラッと目をやる。
 藤村はその視線に気付き、MTを手に取って画面をタッチして起動、GOLEMが戦闘している映像を見る。そしてそれに付随したGOLEMに関して纏められた文章を眺める。

「お前が言いたいことは大体予想つく。これだろ? 4年前の事件でGOLEMは死者を出してない。それが気なるってんだろ?」

 瀧は静かに頷くと更に補足する。

「それに横手の証言にありましたが……。一般人が……特に子供が巻き込まれていることを聞いた途端に冷静さを失ったと。俺の中で引っ掛かるんです」

 藤村は瀧の目を真っ直ぐに見つめて返答する。

「瀧、お前には甘いところがある。今回は相手が相手だ。お前の中で煮え切らない思いがあるのは分かるが、そこから綻びが生じるぞ」

 ここで藤村は一度間を置き、息を吸ってより深刻な声のトーンで瀧をたしなめるように告げる。

「良いか、お前のために言うぞ? 相手に情を移すな。殺すつもりでやれ。速攻で"稽古場バトル・フィールド"を展開しろ。それくらいで丁度良いはずだ。全員がJOKERクラスの連中だと思え。良いな?」
「……はい」

#####

 瀧は藤村から言われたことに従わず、"稽古場バトル・フィールド"を展開していない。"稽古場バトル・フィールド"は害意を含んだサイクスを持った相手を強制的に半径5mのドーム状空間に閉じ込め、また、外部からの接触を遮断する。

 更に瀧の必殺の正拳である"闘気強大拳ビッグ・ファイト・ストレート"は瀧の力を持ってすれば、強靭な肉体を持つGOLEMであっても無事では済まず、大ダメージは必至。
 しかし、"闘気強大拳ビッグ・ファイト・ストレート"を使用すれば"稽古場バトル・フィールド"は一度解除される。GOLEMに対して大ダメージを与えるほどのサイクスを込めて打ち込まれるその衝撃はD–2ビルを崩壊させかねない。

 上階で行動している花への影響や周辺住民への被害を考慮してのものである。

「(周辺住民の避難はそろそろ終わるはず。後は徳田だな。何か探ってる感じか?)」

 "第六感シックス"を使いながら花の様子を瀧は把握する。

「(そして俺はこいつの本心が知りたい……!)」

 瀧が"第六感シックス"を使ったのとほぼ同時にGOLEMも"第六感シックス"を使用し、その後明らかに打撃の力が弱まった。

「(こいつも何かを探知してから明らかに攻撃の勢いが弱まった……! 上に何かあるのか!? 横手の証言通りならば一般人が巻き込まれてる!?)」

 瀧はもう一度"第六感シックス"の感覚を思い返し、その考えを否定する。

「(いや、突然これまで存在しなかった6階から現れたのを考慮するにSHADOWの超能力によって匿われていた連中。その後の動きからして全員仲間である可能性が高い。人質って感じではないしな)」

 更に瀧は花の明らかに一人一人を確認しながらDEEDの残党を捕らえている様子を探知する。

「(GOLEMの様子と徳田の行動に関係があるとすれば?)」

 その疑問こそが瀧がGOLEMに対して攻め手を欠いている大きな要因である。

「(取り敢えず周辺住民の避難の完了報告を待つか……)」

 瀧とGOLEMは再び互いの打撃による攻防を繰り広げる。

#####

「(さて、残るは最上階のみ。ここまで牧田の姿は無い)」

 花は2階から1階ずつDEEDの残党を捕獲。既に5階に到達し、残るは6階のみとなっている。

––––周辺住民の避難完了

 花の携帯にD–2ビル周辺住民の避難を完了したという知らせが入る。

––––了解。至急、瀧にも連絡をお願いします。

「(周辺住民の避難は終わったようね。これで瀧も場所を変えることができる。明らかに私の行動を気にして本気を出して闘っていない。それよりも……)」

 花は階段の踊り場から6階の様子を窺いながら"第六感シックス"を使ってGOLEMのサイクスを読み取る。

「(GOLEMも瀧のペースに合わせている節がある。これは……杉本警部の推察が正しい可能性が高くなってきたわね……)」

 花はこれまで見てきた十二音に関する事件資料や実際に第三地区高校で対峙したJOKERやJESTERのことを思い返しながら、未だ杉本の考えを信じられないという思いを抱いている。

 花は右手に拳銃、左手に逆手持ちでナイフを持って6階に残る4名に向けて構える。

「大人しく投降しなさい」

 花が言い終わらないうちに2人が襲いかかる。花は溜め息をついた後に2人を軽く往なし、膝に向けてナイフを刺突し動きを止め、床に伏せさせる。あまりの手際の良さに残る2人はおろか、床に抑えられている2人ですらも何が起こったのかを理解していない。

「さて、残る2人。あなたが許斐。そしてあなたが……」

 現在、残るDEEDの中で中心的役割を担う許斐の隣で怯えたような表情を向ける若い男に向けて花が尋ねる。

「牧田佑都ね?」

 それに対して牧田は静かにゆっくりと、少し震えながら頷いた。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

竹林にて清談に耽る~竹姫さまの異世界生存戦略~

月芝
ファンタジー
庭師であった祖父の薫陶を受けて、立派な竹林好きに育ったヒロイン。 大学院へと進学し、待望の竹の研究に携われることになり、ひゃっほう! 忙しくも充実した毎日を過ごしていたが、そんな日々は唐突に終わってしまう。 で、気がついたら見知らぬ竹林の中にいた。 酔っ払って寝てしまったのかとおもいきや、さにあらず。 異世界にて、タケノコになっちゃった! 「くっ、どうせならカグヤ姫とかになって、ウハウハ逆ハーレムルートがよかった」 いかに竹林好きとて、さすがにこれはちょっと……がっくし。 でも、いつまでもうつむいていたってしょうがない。 というわけで、持ち前のポジティブさでサクっと頭を切り替えたヒロインは、カーボンファイバーのメンタルと豊富な竹知識を武器に、厳しい自然界を成り上がる。 竹の、竹による、竹のための異世界生存戦略。 めざせ! 快適生活と世界征服? 竹林王に、私はなる!

私の存在

戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。 何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。 しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。 しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

処理中です...