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第四章
孫と祖母の追いかけっこ
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イズミルがグレアムの前から消えて三日が経った。
しかし頼みの綱であるリザベルは依然として捕まらない。
マルセルが急ぎ城を立ち、リザベルが向かったというローラントのアリスタリアシュゼットシュタイン家まで追いかけたが、既にリザベルはイコリスに向けて出立した後だという。
詳しい行き先を聞き、マルセルが再び追うも辿り着いたイコリスでもリザベルは既に別の場所へ立った後であった。
そうやってリザベルが向かったという場所先々で追いかけたマルセルが無駄足を踏まされるという事態が起きた。
結局、とうとうリザベルの足取りが掴めなくなったマルセルは疲れた顔を引っ提げて帰城した。
イズミルに加え、リザベルの捜索も暗部に委ねられる事になったからだ。
「なんなの?リザベル様って放浪癖でもあったっけ?全っ然捕まえられないんだけどっ!」
泣き言と恨み言が混ざり合った口調でマルセルが言った。
「ご、ご苦労だった……」
グレアムが労いの声をかける。
「ホントだよ……
それで?イズーの消息は掴めた?」
「………」
グレアムが押し黙る。
首を横に振りながらランスロットが困り果てた様子で答えた。
「それが……こちらも全く足取りが掴めないんです。どこに住んでいたのかも、誰と住んでいたのかも何も……城で働くにあたって様々な手続きはされているはずなのですが、そういう書類が一切見つからないんです。おそらくはリザベル様がお持ちなのだと思うんですが、そのリザベル様が捕まらないのではお手上げですよ……」
その時、ゲイルがノックと共に執務室に
入って来た。
「失礼いたします。城門の出入記録を調べてみたのですが……」
「出入記録?」
ゲイルのその言葉にマルセルが首を傾げる。
「東と南の城門、イズーがどちらの城門から出入りしていたのかが分かれば、大体ではありますが、住んでいた地域の特定が出来るのではないかと思いまして」
「なるほど、考えたな」
グレアムがゲイルに言った。
「でも……不可解なんです」
「何がだ?」
「……どちらの城門にも、イズーの署名がないんです。城門の出入り時には必ず部署と名前を記入しなくてはならないのに」
「なんですって?……署名を免除されて
いたとかは、あり得ませんよねぇ」
「はい、城内への出入りは厳しく管理されており、例外は認められておりません。先王の治世では貴族は顔パスとかもあったそうですが……」
「他ならぬ陛下がそれをお許しになりませんでしたもんねぇ」
マルセルが声のトーンを上げて言った。
「それじゃイズーは城門を通ってないって事!?」
ゲイルが答える。
「そうなりますよね……」
「城門を通らなくても城に出入り出来る方法は……ないよねぇ」
「じゃあ城に部屋を借りてそこで寝泊まりしていたとか?」
「そう思い調べたのですが、いずれもそういう記録はありませんでした」
「なんなの?イズーってもしかして暗部の者だったとか?」
「「「「…………… 」」」」
皆、頭を抱えて黙り込む。
「他国の諜報員だったとか……」
マルセルがぽつりと言った言葉に、
「「「「ないな」」」」
と、皆が口を揃えて言う。それを言った
張本人のマルセルもだ。
皆は一年間、イズミルの真摯な仕事ぶりを見てきた。
誠実に人と接する様を見てきた。
この中の誰一人として、
イズミルを間諜などと疑う者はいなかった。
だからこそ心配で堪らないのだ。
自ら消えたのか、
それとも誰かに拐かされたのか、事件や事故に巻き込まれたのではないか、心配で気が狂いそうだ。
ふいにドアをノックする音がした。
ランスロットが対応する。
侍従がなにやら告げてきたようだ。
「陛下、太王太后宮の侍女が五日後の第三妃殿下の退城に見送りに来られるのかを確認したいのだそうですが」
「あ、ああそうか、もう五日後か。
もちろん行くと伝えてくれ」
「行かれるのですか?このような時ですが」
「それとこれとは関係ないだろう。
離縁状にサインをせねばならないし、仮にも妃だった娘の門出だ。見送って当然だ」
ランスロットは遠慮がちに言った。
「……後宮に出向かれる事になりますが、お体の方は大丈夫ですか?」
「多分、大丈夫だ。
何故だか不思議だが、そう思えるんだ」
グレアムはかの事件から後宮に足を踏み入れられなくなってしまっていた。
後宮への扉、
あの扉を開けた瞬間目に飛び込んで来た光景が思い出されて、頭痛や吐き気を催すのだった。
でも今なら、あの扉を潜れるような気がする。
女性への嫌悪感が無くなったわけではないが、イズーを通してなかり薄れたように思う。
後宮に行く事が可能であるならば、
幼くして後宮に取り残した妃にこれまでの事を謝罪して、その上で見送ってやりたいのだ。
こんな寛容な気持ちになれたのもやはりイズーのおかげたろう。
なのにイズー、何故だ。
何故消えた?
キミは今、どこにいる?
◇◇◇◇◇
そのイズミルは………
同じ城の中にいた。
決められた退城の期日まで、
後宮を去るわけにはいかないからだ。
その期日の日にグレアムのサイン入りの
離縁状が届くはずだ。
受け取りたくないけれど。
グレアムの側を辞してからというもの、
イズミルは無気力状態に陥っていた。
この8年、休む事なく突っ走って来た。
それが目的を果たし役目を終えた今、
何をしてもやる気が出ず、気力が湧かないのだ。
イズミルは今日もソファーに座り、
ぼーーっとしていた。
そんなイズミルに侍女のターナがため息を吐きながら言う。
「姫さまっ!腑抜けておられる暇はございませんよ!さっさと次の嫁ぎ先を決めてしまわれませんと、路頭に迷う事になりますよ!」
「しばらくはホテル暮らしで過ごすのでしょう?城を出てからでもいいのではなくて?」
「何をのん気な!女の婚期は短いのですよ!日が経つにつれ、よい条件の嫁ぎ先はどんどん無くなっていくのですよ!」
ターナのお小言が始まった。
でもどうしても今のイズミルには次の嫁ぎ先の事など考えられなかった。
「もう、ターナが良いと思う方に決めてくれて構わないわよ?」
「何を仰せですっ!ご自分の人生なのですよ!ましてや生涯の伴侶なのですよっ!人任せにしてどうされるのですかっ!!」
怒気を含んだターナの声が部屋中に響き渡る。
でもどうしてもイズミルはどうでもいいと思ってしまう。
相手がグレアムでないのなら、
誰に嫁いでも一緒なのだ。
そう思ってしまう内は相手の方にも失礼だ。
とにかく今は、
少なくとも退城するまでは釣り書に目を通す事はしないとイズミルは決意した。
◇◇◇◇◇
イズミルが消息を断ち、
そしてリザベルの追跡が始まって早五日が過ぎた。
一向にイズミルとリザベル、それぞれの足取りは掴めず、リザベルに至っては国内にいるようなのだがそれ以上の事は何も出て来ない、向こうも暗部を使い巧みに逃げているのではないかという報告を読んだところでグレアムがキレた。
「もういい!!俺が索敵する!!」
「いやでも陛下、敵ではないでしょう」
「うるさいっ!」
そう言いながらグレアムは城の一番高い塔の上へと登った。
「陛下、一体何をなさるおつもりで?」
ランスロットが尋ねるとグレアムが答えた。
「魔力の網を張って、おばあさまの魔力を絡め取る。魔力が触れた点が居場所だ」
「な、なるほど。でもそれにはかなり膨大な魔力をお使いになるのでは?」
それこそ今倒れている場合ではないと、
ランスロットは暗に匂わせた。
「ジルトニアに国土結界を張った時ほどではない」
そう言ってグレアムは目を閉じ、集中し始めた。
自らの魔力を国中に張り巡らせるイメージで、グレアムは魔力を放出した。
様々な魔力を感じるが他のものは放置して、リザベルの魔力だけを探る。
それをランスロットは黙って見守った。
小一時間ほどそうしていただろうか。
グレアムがふいに目を開けて告げた。
「居たぞ。やはり意外と近くに居た。
北北西の町、おそらくアンスルに居られる。おばあさまの魔力の近くに瘴気山の気配を感じた。至急誰か向かわせろ」
「承知いたしました」
「それと……」
リザベルの魔力を索敵している最中に、
城の中にある魔力を感じた。
後宮辺りだ。
わりと保有量の多い魔力。
それらを鑑みて、
その魔力の持ち主は第三妃の元ジルトニア公女で間違いないだろう。
しかし……
グレアムはその魔力の波動を知っていた。
魔力の波動も指紋と同じくこの世に二つと同じものはない。
と、なれば。
グレアムの知るその者がその魔力の持ち主となる。
問題は場所だ。
何故彼女がそこにいる?
グレアムはランスロットに命じた。
「第三妃の元ジルトニア公女イズミル、彼女の容貌が今どんなものなのか、調べさせろ」
しかし頼みの綱であるリザベルは依然として捕まらない。
マルセルが急ぎ城を立ち、リザベルが向かったというローラントのアリスタリアシュゼットシュタイン家まで追いかけたが、既にリザベルはイコリスに向けて出立した後だという。
詳しい行き先を聞き、マルセルが再び追うも辿り着いたイコリスでもリザベルは既に別の場所へ立った後であった。
そうやってリザベルが向かったという場所先々で追いかけたマルセルが無駄足を踏まされるという事態が起きた。
結局、とうとうリザベルの足取りが掴めなくなったマルセルは疲れた顔を引っ提げて帰城した。
イズミルに加え、リザベルの捜索も暗部に委ねられる事になったからだ。
「なんなの?リザベル様って放浪癖でもあったっけ?全っ然捕まえられないんだけどっ!」
泣き言と恨み言が混ざり合った口調でマルセルが言った。
「ご、ご苦労だった……」
グレアムが労いの声をかける。
「ホントだよ……
それで?イズーの消息は掴めた?」
「………」
グレアムが押し黙る。
首を横に振りながらランスロットが困り果てた様子で答えた。
「それが……こちらも全く足取りが掴めないんです。どこに住んでいたのかも、誰と住んでいたのかも何も……城で働くにあたって様々な手続きはされているはずなのですが、そういう書類が一切見つからないんです。おそらくはリザベル様がお持ちなのだと思うんですが、そのリザベル様が捕まらないのではお手上げですよ……」
その時、ゲイルがノックと共に執務室に
入って来た。
「失礼いたします。城門の出入記録を調べてみたのですが……」
「出入記録?」
ゲイルのその言葉にマルセルが首を傾げる。
「東と南の城門、イズーがどちらの城門から出入りしていたのかが分かれば、大体ではありますが、住んでいた地域の特定が出来るのではないかと思いまして」
「なるほど、考えたな」
グレアムがゲイルに言った。
「でも……不可解なんです」
「何がだ?」
「……どちらの城門にも、イズーの署名がないんです。城門の出入り時には必ず部署と名前を記入しなくてはならないのに」
「なんですって?……署名を免除されて
いたとかは、あり得ませんよねぇ」
「はい、城内への出入りは厳しく管理されており、例外は認められておりません。先王の治世では貴族は顔パスとかもあったそうですが……」
「他ならぬ陛下がそれをお許しになりませんでしたもんねぇ」
マルセルが声のトーンを上げて言った。
「それじゃイズーは城門を通ってないって事!?」
ゲイルが答える。
「そうなりますよね……」
「城門を通らなくても城に出入り出来る方法は……ないよねぇ」
「じゃあ城に部屋を借りてそこで寝泊まりしていたとか?」
「そう思い調べたのですが、いずれもそういう記録はありませんでした」
「なんなの?イズーってもしかして暗部の者だったとか?」
「「「「…………… 」」」」
皆、頭を抱えて黙り込む。
「他国の諜報員だったとか……」
マルセルがぽつりと言った言葉に、
「「「「ないな」」」」
と、皆が口を揃えて言う。それを言った
張本人のマルセルもだ。
皆は一年間、イズミルの真摯な仕事ぶりを見てきた。
誠実に人と接する様を見てきた。
この中の誰一人として、
イズミルを間諜などと疑う者はいなかった。
だからこそ心配で堪らないのだ。
自ら消えたのか、
それとも誰かに拐かされたのか、事件や事故に巻き込まれたのではないか、心配で気が狂いそうだ。
ふいにドアをノックする音がした。
ランスロットが対応する。
侍従がなにやら告げてきたようだ。
「陛下、太王太后宮の侍女が五日後の第三妃殿下の退城に見送りに来られるのかを確認したいのだそうですが」
「あ、ああそうか、もう五日後か。
もちろん行くと伝えてくれ」
「行かれるのですか?このような時ですが」
「それとこれとは関係ないだろう。
離縁状にサインをせねばならないし、仮にも妃だった娘の門出だ。見送って当然だ」
ランスロットは遠慮がちに言った。
「……後宮に出向かれる事になりますが、お体の方は大丈夫ですか?」
「多分、大丈夫だ。
何故だか不思議だが、そう思えるんだ」
グレアムはかの事件から後宮に足を踏み入れられなくなってしまっていた。
後宮への扉、
あの扉を開けた瞬間目に飛び込んで来た光景が思い出されて、頭痛や吐き気を催すのだった。
でも今なら、あの扉を潜れるような気がする。
女性への嫌悪感が無くなったわけではないが、イズーを通してなかり薄れたように思う。
後宮に行く事が可能であるならば、
幼くして後宮に取り残した妃にこれまでの事を謝罪して、その上で見送ってやりたいのだ。
こんな寛容な気持ちになれたのもやはりイズーのおかげたろう。
なのにイズー、何故だ。
何故消えた?
キミは今、どこにいる?
◇◇◇◇◇
そのイズミルは………
同じ城の中にいた。
決められた退城の期日まで、
後宮を去るわけにはいかないからだ。
その期日の日にグレアムのサイン入りの
離縁状が届くはずだ。
受け取りたくないけれど。
グレアムの側を辞してからというもの、
イズミルは無気力状態に陥っていた。
この8年、休む事なく突っ走って来た。
それが目的を果たし役目を終えた今、
何をしてもやる気が出ず、気力が湧かないのだ。
イズミルは今日もソファーに座り、
ぼーーっとしていた。
そんなイズミルに侍女のターナがため息を吐きながら言う。
「姫さまっ!腑抜けておられる暇はございませんよ!さっさと次の嫁ぎ先を決めてしまわれませんと、路頭に迷う事になりますよ!」
「しばらくはホテル暮らしで過ごすのでしょう?城を出てからでもいいのではなくて?」
「何をのん気な!女の婚期は短いのですよ!日が経つにつれ、よい条件の嫁ぎ先はどんどん無くなっていくのですよ!」
ターナのお小言が始まった。
でもどうしても今のイズミルには次の嫁ぎ先の事など考えられなかった。
「もう、ターナが良いと思う方に決めてくれて構わないわよ?」
「何を仰せですっ!ご自分の人生なのですよ!ましてや生涯の伴侶なのですよっ!人任せにしてどうされるのですかっ!!」
怒気を含んだターナの声が部屋中に響き渡る。
でもどうしてもイズミルはどうでもいいと思ってしまう。
相手がグレアムでないのなら、
誰に嫁いでも一緒なのだ。
そう思ってしまう内は相手の方にも失礼だ。
とにかく今は、
少なくとも退城するまでは釣り書に目を通す事はしないとイズミルは決意した。
◇◇◇◇◇
イズミルが消息を断ち、
そしてリザベルの追跡が始まって早五日が過ぎた。
一向にイズミルとリザベル、それぞれの足取りは掴めず、リザベルに至っては国内にいるようなのだがそれ以上の事は何も出て来ない、向こうも暗部を使い巧みに逃げているのではないかという報告を読んだところでグレアムがキレた。
「もういい!!俺が索敵する!!」
「いやでも陛下、敵ではないでしょう」
「うるさいっ!」
そう言いながらグレアムは城の一番高い塔の上へと登った。
「陛下、一体何をなさるおつもりで?」
ランスロットが尋ねるとグレアムが答えた。
「魔力の網を張って、おばあさまの魔力を絡め取る。魔力が触れた点が居場所だ」
「な、なるほど。でもそれにはかなり膨大な魔力をお使いになるのでは?」
それこそ今倒れている場合ではないと、
ランスロットは暗に匂わせた。
「ジルトニアに国土結界を張った時ほどではない」
そう言ってグレアムは目を閉じ、集中し始めた。
自らの魔力を国中に張り巡らせるイメージで、グレアムは魔力を放出した。
様々な魔力を感じるが他のものは放置して、リザベルの魔力だけを探る。
それをランスロットは黙って見守った。
小一時間ほどそうしていただろうか。
グレアムがふいに目を開けて告げた。
「居たぞ。やはり意外と近くに居た。
北北西の町、おそらくアンスルに居られる。おばあさまの魔力の近くに瘴気山の気配を感じた。至急誰か向かわせろ」
「承知いたしました」
「それと……」
リザベルの魔力を索敵している最中に、
城の中にある魔力を感じた。
後宮辺りだ。
わりと保有量の多い魔力。
それらを鑑みて、
その魔力の持ち主は第三妃の元ジルトニア公女で間違いないだろう。
しかし……
グレアムはその魔力の波動を知っていた。
魔力の波動も指紋と同じくこの世に二つと同じものはない。
と、なれば。
グレアムの知るその者がその魔力の持ち主となる。
問題は場所だ。
何故彼女がそこにいる?
グレアムはランスロットに命じた。
「第三妃の元ジルトニア公女イズミル、彼女の容貌が今どんなものなのか、調べさせろ」
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