16 / 27
幕間 令嬢達の秘密会議
ここはモリス侯爵家の客間の一つ。
秘密裏に進撃して来たアバディ公爵令嬢シルヴィーと、モリス侯爵令嬢ユリアナが誰も居ない室内で顔を寄せ合ってヒソヒソと秘密会議を行っていた。
「ユリアナ様っ、お聞きになられまして?隣国の王女がエゼキエル様に会いに押しかけて来ると言うではありませんのっ!呼ばれてもいないのになんて図々しいっ」
「そのエゼキエル陛下に会いに毎日王宮に進撃していた貴女が言うのかとツッコミたいところですけれど、この際それは置いておいて……元々正妃の筆頭候補者であった王女自らやって来るとは、嫌な予感しかしませんわね。今更何しに来るのかしら……」
「今さらとは?」
「……これはね、宰相であるウチのお父様から聞いた話なのですが、前国王陛下が崩御されて直ぐに、当国は隣国へ件の第三王女へ婚姻の申し入れをしたそうなの。エゼキエル陛下の即位を押し進める為の決め手としたかったのね。でも当時はホラ、シルヴィー様のお父様の派閥とで国内の情勢が不安定でしたでしょう?王女を嫁がせてもエゼキエル陛下が即位できる保証はないと足元を見られて断られたんですって。それで急遽アンリエッタ様が選ばれたそうなのよ」
それを聞き、シルヴィーはその要因となった自身の父親の事を棚に上げてぷんすこした。
「まぁ!幼いエゼキエル様を守ろうとせずに頼りないからと縁談を断ったのですかっ?なんてヒドイっ!」
「……まぁこの際置いといてパート2。一度は突っぱねた縁談なのに、エゼキエル陛下が美形で高魔力保持者で優秀と聞き付けて、隣国の王家がそれならばと態度をコロっと変えたそうよ。特に陛下の姿絵を見た第三王女がかなり乗り気らしくって、押せ押せで縁談を進めようとしているみたい」
「なんて厚かましいっ!」
「本当はデビュタント時くらいからあちらの大使を通して何度も縁談の打診を受けていたらしいんだけど、当の陛下にその気はないしウチのお父様ものらりくらりと躱していたそうなの」
「それでとうとう痺れを切らして直接乗り込んで来ますのねっ!そんな恥知らずな王女は返り討ちにしてくれますわっ!絶対に歓迎なんてするものですかっ!」
シルヴィーが子リスのようにキーキーとぷんすこするも、それを尻目にユリアナが困った表情を浮かべた。
「でもね……今その王女を出迎える準備を、他ならぬアンリエッタ様が率先して行っているそうなの……かなりの歓迎ムードで」
「え?ど、どうしてですの?アンリエッタ様にとっては自分を追い出し後釜を狙うライバルではないですか!そんな相手をどうして歓迎するのですかっ?」
「この際置いといてパート3……。まぁアンリエッタ様はご自身が嫁いだ時からいずれ陛下が正妃を迎え入れられる事をご存知でしたからね。今はきっと、陛下が幸せになれるようにと尽力しておいでなのだと思いますわ……」
「アンリエッタ様っ……」
以前、大切な帽子をアンリエッタに守って貰ってからというもの、すっかりアンリエッタの狂信者となったシルヴィーが目に涙を浮かべた。
「やっぱりアンリエッタ様はお優しい方ですわっ……!わたしが男子だったらアンリエッタ様を妻に迎えましたのに……!」
「あら、私、知ってますわよ?あれ以来『わたしはエゼキエル様ではなくアンリエッタ様と結婚します!』と言ってお父上であるアバディ公爵を困らせている事を。それに、私だってアンリエッタ様を嫁に迎えたいですわっ!」
「アンリエッタ様はわたしのものです!」
「お黙り子リスめ!アンリエッタ様ラブの歴史が、貴女と私では違うのです!年季の差ですわっ年季の!」
「時間の長さなんて関係ないですわっー!」
それから暫くわーわーキャーキャーと
アンリエッタへの愛を競い合った二人……
散々言い合って気が済んだ後に、結局はアンリエッタは私達が守る!という謎の団結を生んだという。
そしてユリアナは言った。
「とにかく、正妃は自分以外に考えられないでしょ?と思い込んでいる王女には、正妃候補者は他にいるのだから出しゃばるなと牽制する方向で行きましょう!」
「他の候補者とは?」
「勿論。私、モリス侯爵家ユリアナとアバディ公爵令嬢であるシルヴィー様、貴女ですわよっ!」
「なるほど!それなら王女と同じ候補者として王宮に滞在してアンリエッタ様をお側で守れますわねっ!」
「そういう事ですわっ!いいですか?シルヴィー様、今日お屋敷に帰られましたら早速お父上に言うのですよっ?やっぱり正妃候補者になりたいから王女の来訪と共に自分も王宮に滞在したいと!」
「承知いたしましたわっ!」
「研究室に篭りっ放しの陛下なんてアテになりません!私達でアンリエッタ様をお守りするのです!」
「エイエイオーッですわっ!」
「王女め!下手な事をしたらドッカンしてくれますわっ!」
「わたしは爪で引っ掻いてやります!」
その後も二人の令嬢は、アンリエッタを守る為に華奢な拳を突き上げて闘志を漲らせたそうな。
そして興奮冷めやらぬ中、
互いに家庭教師が来る時間となり令嬢会議は終了したという……。
秘密裏に進撃して来たアバディ公爵令嬢シルヴィーと、モリス侯爵令嬢ユリアナが誰も居ない室内で顔を寄せ合ってヒソヒソと秘密会議を行っていた。
「ユリアナ様っ、お聞きになられまして?隣国の王女がエゼキエル様に会いに押しかけて来ると言うではありませんのっ!呼ばれてもいないのになんて図々しいっ」
「そのエゼキエル陛下に会いに毎日王宮に進撃していた貴女が言うのかとツッコミたいところですけれど、この際それは置いておいて……元々正妃の筆頭候補者であった王女自らやって来るとは、嫌な予感しかしませんわね。今更何しに来るのかしら……」
「今さらとは?」
「……これはね、宰相であるウチのお父様から聞いた話なのですが、前国王陛下が崩御されて直ぐに、当国は隣国へ件の第三王女へ婚姻の申し入れをしたそうなの。エゼキエル陛下の即位を押し進める為の決め手としたかったのね。でも当時はホラ、シルヴィー様のお父様の派閥とで国内の情勢が不安定でしたでしょう?王女を嫁がせてもエゼキエル陛下が即位できる保証はないと足元を見られて断られたんですって。それで急遽アンリエッタ様が選ばれたそうなのよ」
それを聞き、シルヴィーはその要因となった自身の父親の事を棚に上げてぷんすこした。
「まぁ!幼いエゼキエル様を守ろうとせずに頼りないからと縁談を断ったのですかっ?なんてヒドイっ!」
「……まぁこの際置いといてパート2。一度は突っぱねた縁談なのに、エゼキエル陛下が美形で高魔力保持者で優秀と聞き付けて、隣国の王家がそれならばと態度をコロっと変えたそうよ。特に陛下の姿絵を見た第三王女がかなり乗り気らしくって、押せ押せで縁談を進めようとしているみたい」
「なんて厚かましいっ!」
「本当はデビュタント時くらいからあちらの大使を通して何度も縁談の打診を受けていたらしいんだけど、当の陛下にその気はないしウチのお父様ものらりくらりと躱していたそうなの」
「それでとうとう痺れを切らして直接乗り込んで来ますのねっ!そんな恥知らずな王女は返り討ちにしてくれますわっ!絶対に歓迎なんてするものですかっ!」
シルヴィーが子リスのようにキーキーとぷんすこするも、それを尻目にユリアナが困った表情を浮かべた。
「でもね……今その王女を出迎える準備を、他ならぬアンリエッタ様が率先して行っているそうなの……かなりの歓迎ムードで」
「え?ど、どうしてですの?アンリエッタ様にとっては自分を追い出し後釜を狙うライバルではないですか!そんな相手をどうして歓迎するのですかっ?」
「この際置いといてパート3……。まぁアンリエッタ様はご自身が嫁いだ時からいずれ陛下が正妃を迎え入れられる事をご存知でしたからね。今はきっと、陛下が幸せになれるようにと尽力しておいでなのだと思いますわ……」
「アンリエッタ様っ……」
以前、大切な帽子をアンリエッタに守って貰ってからというもの、すっかりアンリエッタの狂信者となったシルヴィーが目に涙を浮かべた。
「やっぱりアンリエッタ様はお優しい方ですわっ……!わたしが男子だったらアンリエッタ様を妻に迎えましたのに……!」
「あら、私、知ってますわよ?あれ以来『わたしはエゼキエル様ではなくアンリエッタ様と結婚します!』と言ってお父上であるアバディ公爵を困らせている事を。それに、私だってアンリエッタ様を嫁に迎えたいですわっ!」
「アンリエッタ様はわたしのものです!」
「お黙り子リスめ!アンリエッタ様ラブの歴史が、貴女と私では違うのです!年季の差ですわっ年季の!」
「時間の長さなんて関係ないですわっー!」
それから暫くわーわーキャーキャーと
アンリエッタへの愛を競い合った二人……
散々言い合って気が済んだ後に、結局はアンリエッタは私達が守る!という謎の団結を生んだという。
そしてユリアナは言った。
「とにかく、正妃は自分以外に考えられないでしょ?と思い込んでいる王女には、正妃候補者は他にいるのだから出しゃばるなと牽制する方向で行きましょう!」
「他の候補者とは?」
「勿論。私、モリス侯爵家ユリアナとアバディ公爵令嬢であるシルヴィー様、貴女ですわよっ!」
「なるほど!それなら王女と同じ候補者として王宮に滞在してアンリエッタ様をお側で守れますわねっ!」
「そういう事ですわっ!いいですか?シルヴィー様、今日お屋敷に帰られましたら早速お父上に言うのですよっ?やっぱり正妃候補者になりたいから王女の来訪と共に自分も王宮に滞在したいと!」
「承知いたしましたわっ!」
「研究室に篭りっ放しの陛下なんてアテになりません!私達でアンリエッタ様をお守りするのです!」
「エイエイオーッですわっ!」
「王女め!下手な事をしたらドッカンしてくれますわっ!」
「わたしは爪で引っ掻いてやります!」
その後も二人の令嬢は、アンリエッタを守る為に華奢な拳を突き上げて闘志を漲らせたそうな。
そして興奮冷めやらぬ中、
互いに家庭教師が来る時間となり令嬢会議は終了したという……。
あなたにおすすめの小説
〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?
ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」
その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。
「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」
すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…
アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者には役目がある。
例え、私との時間が取れなくても、
例え、一人で夜会に行く事になっても、
例え、貴方が彼女を愛していても、
私は貴方を愛してる。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 女性視点、男性視点があります。
❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。
お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
王太子殿下との思い出は、泡雪のように消えていく
木風
恋愛
王太子殿下の生誕を祝う夜会。
侯爵令嬢にとって、それは一生に一度の夢。
震える手で差し出された御手を取り、ほんの数分だけ踊った奇跡。
二度目に誘われたとき、心は淡い期待に揺れる。
けれど、その瞳は一度も自分を映さなかった。
殿下の視線の先にいるのは誰よりも美しい、公爵令嬢。
「ご一緒いただき感謝します。この後も楽しんで」
優しくも残酷なその言葉に、胸の奥で夢が泡雪のように消えていくのを感じた。
※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」「エブリスタ」にて同時掲載しております。
表紙イラストは、雪乃さんに描いていただきました。
※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。
©︎泡雪 / 木風 雪乃
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
王子様への置き手紙
あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯
小説家になろうにも掲載しています。
どうかこの偽りがいつまでも続きますように…
矢野りと
恋愛
ある日突然『魅了』の罪で捕らえられてしまった。でも誤解はすぐに解けるはずと思っていた、だって私は魅了なんて使っていないのだから…。
それなのに真実は闇に葬り去られ、残ったのは周囲からの冷たい眼差しだけ。
もう誰も私を信じてはくれない。
昨日までは『絶対に君を信じている』と言っていた婚約者さえも憎悪を向けてくる。
まるで人が変わったかのように…。
*設定はゆるいです。
【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)