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門限破り
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「あ~…濃厚ティラミスタルト、美味しかったぁ♡何が濃厚かってマスカルポーネクリームが濃厚なのよね。でも甘すぎずふんわり軽くて。ちょっと苦味が効いたコーヒーシロップが沁みたスポンジケーキがタルト生地とマスカルポーネクリームの間に挟まれているのがまた、ティラミス然としていていいのよね。もう美味しすぎてついまたワンホール食べちゃったわ」
カフェからの帰り、
馬車の中でウットリとティラミスタルトの美味しさを反芻するアリスに、アラベラがジト目を向けて言った。
「……解せぬわー。どうしてケーキをワンホール食べるほどの大食漢なのに太らないの?何よその細いウエストは」
「それはアレよ、わたしにはホラ、持病のしゃっくりが止まらない病があるじゃない?それの所為だと思うの」
「毎日しゃっくりの発作があるわけじゃないんでしょ?じゃあ関係ないじゃない」
「そうね。でもそれ以外考えられないのよ」
「ハイそうですか。でもさすがにもう夕食は入らないんじゃない?」
「そうね、今日のお夕食はシェフ自慢のローストビーフだと言っていたから、切り分けて貰うのは三切れくらいにしておくわ」
「しっかり食べるんだ。しかも三切れって普通じゃない?いつもは何切れ食べてるのよ」
「うーん……七切れくらい?ウチのシェフのローストビーフは口の中で溶けるから」
「口からティラミスタルトがコンニチワしそうなくらいお腹いっぱいなのにもう食べ物の話しはいいわ」
「あら?ローストビーフはお飲み物よ?」
「絶対に違うから」
そんな何気ない会話を楽しみながら、サットン侯爵家のタウンハウスへと帰り着いたアリス。
乗せてもらったアラベラの馬車を見送っていると、邸から専属侍女のユナが飛び出して来た。
「おかえりなさいませお嬢様っ!どうしてこんなにご帰宅が遅かったのですかっ?」
ユナは血相を変えてそう言った。
対してアリスはけろっとしてそれに答える。
「ただいまユナ。アラベラとカフェに行くから遅くなると連絡をしたでしょう?」
「確かにご連絡は頂きましたが、まさか門限を超えるほど遅くなるなんて思いませんでしたよっ……」
アリスは歩きながらユナと話す。
執事見習いが開けてくれたドアから邸の中へ入る。
「確かに門限は過ぎているけどまだ七時前よ?他のお友達はみんなこれくらいは遅くもなんともないって言ってるわ?それにわたし、今日からリュートの決めた門限は守らないと決めたの!」
きゅっと拳を握りしめて宣言するようにアリスが言うと、
すぐ近くから聞き馴染みのある声がした。
「ほぉ?もう門限は守らないと?」
「え゛っ?」
「堂々と門限を破っておいて、更にもう守らない宣言とはな」
アリスはその声の主を凝視する。
「リュ…リュート………」
そこには玄関ホールで待ち構えていたように立つ、
婚約者であるリュート=ウィルソンの姿があった。
カフェからの帰り、
馬車の中でウットリとティラミスタルトの美味しさを反芻するアリスに、アラベラがジト目を向けて言った。
「……解せぬわー。どうしてケーキをワンホール食べるほどの大食漢なのに太らないの?何よその細いウエストは」
「それはアレよ、わたしにはホラ、持病のしゃっくりが止まらない病があるじゃない?それの所為だと思うの」
「毎日しゃっくりの発作があるわけじゃないんでしょ?じゃあ関係ないじゃない」
「そうね。でもそれ以外考えられないのよ」
「ハイそうですか。でもさすがにもう夕食は入らないんじゃない?」
「そうね、今日のお夕食はシェフ自慢のローストビーフだと言っていたから、切り分けて貰うのは三切れくらいにしておくわ」
「しっかり食べるんだ。しかも三切れって普通じゃない?いつもは何切れ食べてるのよ」
「うーん……七切れくらい?ウチのシェフのローストビーフは口の中で溶けるから」
「口からティラミスタルトがコンニチワしそうなくらいお腹いっぱいなのにもう食べ物の話しはいいわ」
「あら?ローストビーフはお飲み物よ?」
「絶対に違うから」
そんな何気ない会話を楽しみながら、サットン侯爵家のタウンハウスへと帰り着いたアリス。
乗せてもらったアラベラの馬車を見送っていると、邸から専属侍女のユナが飛び出して来た。
「おかえりなさいませお嬢様っ!どうしてこんなにご帰宅が遅かったのですかっ?」
ユナは血相を変えてそう言った。
対してアリスはけろっとしてそれに答える。
「ただいまユナ。アラベラとカフェに行くから遅くなると連絡をしたでしょう?」
「確かにご連絡は頂きましたが、まさか門限を超えるほど遅くなるなんて思いませんでしたよっ……」
アリスは歩きながらユナと話す。
執事見習いが開けてくれたドアから邸の中へ入る。
「確かに門限は過ぎているけどまだ七時前よ?他のお友達はみんなこれくらいは遅くもなんともないって言ってるわ?それにわたし、今日からリュートの決めた門限は守らないと決めたの!」
きゅっと拳を握りしめて宣言するようにアリスが言うと、
すぐ近くから聞き馴染みのある声がした。
「ほぉ?もう門限は守らないと?」
「え゛っ?」
「堂々と門限を破っておいて、更にもう守らない宣言とはな」
アリスはその声の主を凝視する。
「リュ…リュート………」
そこには玄関ホールで待ち構えていたように立つ、
婚約者であるリュート=ウィルソンの姿があった。
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