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まほらはやっぱり好きだと思った

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深緑の髪色をしたパーティーの参加者が側にいた女性参加者のグラスに何やら薬剤のような物を入れたのを目の当たりにしたまほらとハウンド。


ハウンドが共に潜入していた他の捜査官に軽く目配せをしてから、とりあえず任意での事情聴取のためにその男の身柄を確保するべく近付いて行く。

だがその時、同じように男の犯行を見ていたのだろう、近くにいた参加者がその男に言った。

「おいアンタ、見たぞ!今この人のグラスに何か入れただろう!」

そしてその参加者が男の腕を掴んで捉えようとした。
それを見たハウンドも他の捜査官も慌ててその2人の元へと走る。

「まずいぞ」

「ち、余計な事をっ」

参加者に腕を掴まれた男が焦ったように辺りを見回し、ハウンドたちが近付いてくるのを見た。

「く、来るなぁっ!は、離せえっ!」

と言って、男は空いている片手で懐から何か魔道具のようなものを取り出し、放り投げた。
それを見たハウンドがその場にいた全員に向け叫んだ。

「みんなっ伏せろっ!」

そう言ってハウンドは瞬時に踵を返した。
咄嗟の事だったけれども、まほらもその場にいた者全員が身を屈めて不測の事態に備えた。

───怖いっ……た、助けてっ……!

一体何が起きるのか分からず、まほらは只々恐怖を感じて蹲る。

……が、結局何も起こらず、男が放り投げた魔道具は虚しく落下して床を転がって行った。

「ふ、不発……?」

まほらが呆気に取られながら魔道具を見ていると、ふいに男の悲鳴が聞こえた。

「ぎゃっ!い、痛いっ!は、離せっ!!」

皆がフェイクの魔道具に気を取られている内に逃げ出そうと思ったのだろう。
だが魔法省の捜査官がそうはさせじと取り押さえ、男は敢なくお縄となった。

恐怖から解放され、その様子を黙って見ていたまほらだが、やがてハッとしてラリサを見た。

「そうだっ、ラリサさん大丈夫っ……?」

そしてまほらは目に飛び込んできたその光景を見て、ほっと胸を撫で下ろしていた。

ラリサはハウンドの腕の中にいた。
あの時、ハウンドは咄嗟にラリサの元へ走り、身を呈して彼女を庇ったのだ。

二人はそのまま動かずじっとしていた。
まほらはコホンと咳払いをして二人に言う。

「ハウンドさん。犯人の身柄は拘束されましたよ。後は私が他の捜査官と後片付けをしておくので、ハウンドさんはラリサさんを送ってあげてください」

その言葉を聞き、ハウンドはハッとしてラリサから離れた。

「す、すまない、まほらさん。キミは大丈夫だった?ケガなんかしていないかい?」

「結局は何も起こらなかったんです。怪我なんかしようがありませんよ。まぁ少し怖かったですが」

そう言ってまほらは気丈にも笑って見せた。
ハウンドは少し気まずそうに言う。

「キミにケガがなくて何よりだよ」

「ありがとうござ……あ!ハウンドさんラリサさんがっ!」

「ラリサっ!」

よほど怖かったのだろう、ラリサは意識を失い、その場でくずおれた。
が、間一髪でハウンドがその身を支える。

それを見てまほらはハウンドに言った。

「本当に後は私が他の捜査官とやっておきますから、ハウンドさんは彼女を連れ帰ってあげてください」

「いやしかし……」

「でも意識がないままのラリサさんを放っておくわけにはいかないでしょう?連れ帰るにしろ、病院に行くにしろ、誰かが連れて行かなくてはなりません。その役目を他の方に任せてもいいんですか?」

まほらのそのもの言いに、ハウンドは肩を竦めて返した。

「……分かったよまほらさん。彼女を送り届けたら直ぐに戻るから」

「戻って来なくていいですよ。事後処理くらい、私にも他の職員と一緒に出来ます」

「だけどだね、」

「ハウンドさんはちゃんとラリサさんとお話してください。これまでの事、これからの事。じゃないと一生後悔しますよ?せっかく私が揺さぶりをかけてラリサさんの気持ちを解しておいたんですから」

まほらはそう言っておどけたように笑って見せた。

「まほらさん、……ありがとう。感謝するよ」

ハウンドはそう言ってラリサを連れて、パーティー会場を後にした。

当然、お見合いパーティーは本日はもう中止である。

その後まほらはパーティーの責任者や参加者たちに状況説明をしてたり、証拠品の押収、被害者(になりかけた)女性から事情聴取などをした。

そして全ての仕事を終えてようやくまほらも会場を後にした時にはすでに、辺りは暗くなっていた。

「ふぅ……」

仕事中は気を張っていたので何とかなったが、終わって一人になってみればさっきの恐怖が途端に蘇る。

「怖かったなぁ……あれが本物の爆発物だったら……」

自分は今頃生きてはいなかったかもしれない。
あの瞬間、脳裏に浮かんだ人物にもう会えなくなっていたかもしれないと思うと足が竦んで立ち止まってしまう。

あの咄嗟にラリサの元へと走った行動こそが、ハウンドの真実だ。
だからきっと、あの二人は大丈夫。
まほらはそう思った。


「ふぅ……帰ろ……」

ふらふらの足を何とか動かして再び歩き始めた時、自分の名を呼ぶ声が聞こえた。

「まほ」

「………ブレイズ」

会場の入り口付近でブレイズが一人佇み、まほらを見ていた。

「どうしてここに……?」

「科捜課で聞いたんだ。四課が魔法薬物で潜入捜査に入ってると。誰がその任に就いているのかは当然教えてもらえなかったけど、もしかしてまほが入っているのかもしれないと思うと居ても立ってもいられなくて」

「それで、わざわざ来たの?私は居ないかもしれないのに?無駄足になるかもしれないのに?」

「無駄足なんかじゃないよ。違うなら違うでいいと思ったんだ。でもそうだったとしたら……」

「そうだったとしたら?」

「無事な顔を確かめたかった」

「…………」

まほらはブレイズをじっと見つめた。

我が幼馴染はこんな顔をする人だっただろうか。
こんな、真剣で、痛いくらい真っ直ぐに見つめてくれる人だっただろうか。


以前は近くに居すぎて何も見えていなかった。

好きだという感情以外、何もわかっていなかった。

ある意味、まほらもブレイズと同じといえるのかもしれない。

まほらの頭に先程ラリサに言ってブーメランとして帰ってきた言葉がよぎる。

まほらはブレイズの名を呼んだ。

「ブレイズ」

「なんだ?」

昔から馴染んだ調子でブレイズが返事をしてくれる。


「疲れた」

「おぅ、お疲れ」

「大変だった」

「よく頑張ったな」

「怖かったし」

「怖い思いをっ?」

「危なかったし」

「危険な目に遭ったのかっ?」

「もし誰もが危険な状況の時、ブレイズは私を守ってくれる?」

「当たり前だろ。他の奴なんてどうでもいい。まほを一番に守るよ」

「ブレイズのバカ」

「なんだよ、唐突だな。でも、知ってる」

「鈍感」

「面目ない」

「私が居なくなってから気付くなんて鈍すぎるのよ」

「返す言葉もございません」

「でも好き」

「……え」

「やっぱり好き。ブレイズへの想いなんてサヨナラしてやろうと思ったけど、やっぱり想いは消えないし変わらないの」

「まほ」

「でも報われない恋なんてイヤ。ブレイズも私の事を一番好きでいてくれないとイヤ」

「まほら」

「ねぇブレイズ、答えて。私の事、好き?」

ブレイズがゆっくりとまほらの元へと歩み寄る。
まほらはそれを見つめながら、ブレイズに言い募る。

「私の事が好きだったってわかったって、本当なの?

ねぇ、答えてよ、答えてよブレイズ」


その言葉を言い終わったと同時に、

まほらはブレイズに抱き寄せられた。





───────────────────────




事情により駆け足になりましたが、

次回、最終話です。

完結させるために一気にいきますよ!

最終話の後に感想欄を解放しますね。

よろしくお願いいたします。

だけどごめんなさい。

明日の更新はお休みです。

申し訳ないです(٭°̧̧̧꒳°̧̧̧٭)













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