ゴーストバスター

よりおん

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 私は誰かに見られているのではないかという幾ばくかの緊張を抱え、それを欠片とて出さぬように初めて訪れたカフェでコーヒーが入ったカップを傾ける。
 私は今日新入社員としてとある企業に入社した。
 しかしそこで私に向けられた視線は侮蔑で諦観であった。
 人の視線に、というよりも人の感情に人一倍敏感に生きてきた私としては理解しがたいことであった。
 私にとっていままでの人生とは簡単なものであった。
 少し考えれば解ける問題を無数に解き、相手の欲する言葉をかける。
 必要なものを必要な場所に嵌め込むだけの作業じみたものというのが二十五年生きた私の感想であった。
 だからこそ人間と交流する上で初対面が重要だということや、肩書きや生まれ、外見で見られ方が変わるということをよく知っている。
 だからこそ私は最高学府を飛び級で進み博士号を取得した。それに生まれもそう悪いものではないし、見た目にも気を使っている。
 それはつまり書面上、外見上の私は完璧であるということだった。
 しかしながら現実は私には喋る間もなくその視線に晒されることになった。
 それは何故か。
 それを考えるために針のむしろのような午前を終えて昼食にカフェにきたのだった。

 まず前提条件から考える。
 この会社自体の風習として、所謂暗黙の了解のような形として高学歴だとかそういった一般的に社会的ステータスの高い者を嫌うという学歴社会、格差社会においてありがちな思想に染まっているという可能性。
 いいや違う。そもそもそんな企業に私は入りたいと思わないだろう。それがことの真実だとしたら在学中の私の人の見る目の無さや先見が暗闇に染まっていることを責め立てることになるが、私は選びに選びこの会社を選択したはずだ。私は私の見る目を、少なくともその程度の見る目はあると信頼している。
 ならばさっきもいったようなあの会社には暗黙の了解があり、それを何も知らずに無様に踏み、それ故のあの視線なのだろうか。
 いいや違う。そもそも新卒入社したての人間にそのような事を強いる会社があっても私は入社しないだろうし、そもそもあったとしても私にはそれを見抜くだけの目というよりも読心術を心得ているし、そういった暗黙の了解を誰よりも気にして生きているのがこの私なのだ。それにあれは私が何かしたからというよりも何もしなかったからこその視線であると私は感じ取った。
 私が何をしなかったのだろうか、それは礼儀とか作法とかそういう問題でないのは明らかだ。
 ならば私に求められていたこと私が成すべきことはなんだったのだろうか。
 
 と、そこまで考えてさらに原点にたち戻る。
 それは私の入った企業がいったいなんだったのかということだ。
 その企業は一般的にはそう知られていないが高レベルの重化学工業の力を持っている企業であった。
 だが、私はその技術力に惹かれてこの企業を
 私はそんなことに欠片の興味がない。
 私はこの企業が、と考えて私はそこから先の考えが浮かんでこなかった。
 衝撃であった。
 私は私がこの企業を志望した動機を知らなかったのだ。
 まるで抜け落ちたように記憶がない。
 頭を打った?夢か?なにかの薬物の影響か?
 私はその日会社に帰ることなく、新たな目的地に向かった。
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