短編集・2巻

仙 岳美

文字の大きさ
7 / 9

養豚場のバイト



《ブッヒ、ブッヒ、ブッギー!》

「お、大型免許持ってるの」

「はい、免許だけですが……」(ペーパードライバー)

「でもうちは中型だから大丈夫だよ、よし、あなたに決めた、明日から来てよ、臭いよ~」

「はい、臭いの大丈夫です」

 
其の一

 翌日、私は前日に渡された作業服と長靴に身を包み、原チャリで養豚場に着くと、その敷地内で既に豚は乗せ終えた年期が入った古いタイプな紺色のトラックがガタガタとエンジン音を唸らせていた。
運転席にはお爺さんな運転手さんが乗っていて、私に手を振ってくれた。
そのお爺さんは、手動で助手席側の窓を開き、「バイクは、そこでいいから、乗って~」と私に叫ぶ。

 トラックは発車し、私は助席でamラジオを聞きながら、箱ごともらった煙草を吸い、同じくお爺さんがドリンクホルダーに用意してくれていた、缶コーヒーを飲みながら世間話をする。
車の灰皿には吸殻が溢れている。(面接の時、煙草吸ってるのかを聞かれた理由がわかった)
トラックのハンドルは、ヤケに大きく、持ち手は細い重ステ、お爺さんは腰に医療用コルセットを巻いて運転している。
その重ステのハンドルがレトロでタイムスリップした様で面白かった。
箱ごと貰った煙草も美味かった。


其のニ
 
 そんなトラックは霧雨の森を抜け、高速道路に乗り、やがて、ある食肉センターに到着し、そのホームから豚を下ろす。
その時、運転手のお爺さんは豚達に言う。
「またな、またな、またな~」
私はその言葉が不思議に思い聞く。
「またですか?」
「この仕事を長くやってると豚は死んでも豚に生まれ変わってる気がしてくるんだよ」
「豚は豚にですか?」
「そう、でもたまにコイツは元は人間だったんじゃ無いかと思う目をした奴もいるよ」
「人間?」
「人間の時に悪さすると、豚に生まれ変わってしまうと言う話しもあながちあってる気がするよ」
と運転手のお爺さんは、煙草を取り出し、空き歯の間から煙を吐く。
その煙を追う様に空を見上げると煙と霧雨は混ざっていった。
 
其の三
 
 昼は帰りの高速のサービスエリアで食べる。
「好きなの食べな」
と万札が投入され全てのメニューのスイッチが光る券売機を前にし、最初私は遠慮してタヌキ蕎麦を買うと、そのお爺さんは、「遠慮しなくていいよ」と、蕎麦は自分が食べるからと買い直しを進める、私もならと思い、かぶる猫を捨て、焼肉定食の大盛りを買う。(昼付きバイト、その時、私の仕事は、どうやら親子で養豚を経営している、その運転担当の高齢なお爺さんの、ようは何かあった時の連絡要員らしいと理解する)
少して帰りの運転は私がやる事になった。
最初は、ハッキリ言って怖く、それも高速道路、でも少しすると運転になれてしまい、煙草を吸いながら運転できる程になった。(絶対やってはいけない、ナガラ運転)
この頃に古いトラックはギアを切り替える時にNの位置でもう一回クラッチを踏み直さないギアが入らない、と、なんともクセがあるトラックの運転をおぼえることになる。

其の四

 養豚場に戻ると、トラックの洗車と豚小屋の簡単な掃除をして、日当を貰い、午時三時前にそのバイトは終る。
(道具小屋に半分残るワックスの缶を見かけたので、トラックに塗ってあげるとお爺さんに大変喜ばれた)

仕事を終え外に出ると臭いけど空気は良い。
懐にも金が入ったので気分も良い。



 帰りにコンビニに寄り、お菓子と漫画本を買い、川沿いにバイクを停め、水面を見ながら、「私に取っては、たわいのないバイトの一日に過ぎないが豚に取っては運命の日」
と、そんな事を思ったりもしたが、結局は、そんな事を考えても意味が無く、出来る事は、感謝して残さず食べるくらいの事であると思うのだった。

感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。