浦島太郎その後

仙 岳美

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浦島太郎その後

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=浦島太郎その後=

 私は学生の頃、古文書の解読のバイトをしていた、ある農家から依頼があり、早速、先輩の運転する軽トラに乗り古文書の回収に向かった。
案内された古い倉の中は照明設備が無いため、
借りた古いキャンドル立てを手に倉庫の中に入って行った……
中に積まれた古文書をダンボールにドンドン入れてゆき。
作業が終わったのは夜の8:00を過ぎていた、依頼主さんの
計らいで農家の離れの小屋に泊まらせてもらう事ができた。
翌日、住まいの学生寮には昼には戻れた、夜、コートの中に倉で見つけた豆本を入れてる事を思い出し、開いてみた、中は案の定、ミミズが這うような文字が並んでいた、いつもの事である、本棚から解読書を取り出しルーペを使いながら解読してみる、するとその内容は浦島太郎だった、唯その豆本には浦島太郎が老けてからの後の事も書かれていた!

前半は現在に世に伝わっている物と変わりないお話なので、その後からを私しの好み風に訳しますね……

ある日、漁師が海岸を散歩していたら砂浜に玉の様な形をし亀の甲羅の様に黒光する銀色の漂着物あり!開けてみたら中から白い冷気が発し中には若い男が腰掛ける様に寝ていた、しかし見る見るうちに老けっていった……

老いた浦島太郎は樹海を歩いていた。
何故か?
伝説の若返りの泉がこの樹海の何処かにあると酒場で知り合った男から聞いたからである。
藁にもすがる思いである。
しかし中々見つからない……
酒場で貰った地図を開いてみる、
泉の場所は大体の位置しか書いていない。
やはり唯の噂だったのかと思った。
その辺に腰掛け持参した干柿を齧る……

『クソーあのーリュウグウジョウの赤髪女、ふざけやがって、そんなに故郷に帰るのが悪い事なのか?、普通は空から戻ったら時空間の歪みでどうなるか事前に説明しておくもんだろう!俺は唯寝てれば何事も無く帰れると思ってたよ、
結局は唯の女の嫉妬なんじゃないの?』

と愚痴を言っててもしょうがないので
帰る事にしたら迷ってしまい辺りは真っ暗になってしまった!
しかしそのおかげで森の奥先に一つの豆粒位の光を見つける事ができた!
光を目指して歩いて行ったら、中央に大樹が生えた妖しい紫色の泉が目の前に現れた!

近づいてみたら水は綺麗だった……
水は甘い匂いがした……
散々歩いたので喉が渇いていた事もあり、不安はあったがたまらず飲んでしまった、しばらくしたら、だんだん手の皺が消えて来た、そして最後はオタマジャクシになってしまった。
しかし意識はしっかりある、とりあえず池の中を泳いだ、底には大きい蓮の花が咲いていた、何故か引かれた……
それに触ったら周りの花弁が立ち上がり絡まってきて、花の中央に包み込まれるように取り込まれた。
そして記憶が飛んだ。

大樹の枝に赤い実が成った。
実の表面に浦島の顔が浮かび上がっていた。

しばらくしたら酒場で話した男が来て枝からもがれて、冷たい白い煙を発する小さい玉手箱に入れられた、中で冷やされ、また眠ってしまった……
気づいたら皿の上に乗っかっていた、
目の前にはあの赤髪女がいた。

「良い実になったわ、これを食べれば、また若さを維持できるわ、
老けた男のリサイクルはこれに限るホホホ」

『あーそう言うことか、この女は男の生気を貪るだけ貪ったら最後はこうして若さを保ってる色魔妖怪だったか……』

女に掴まれ笑われながら皮を剥かれた、そして女の唇が寄って来て軽くチュッ!とされペロリと舌で舐められた、
此処までは前と同じだった・・
今回は歯が刺し込まれた、痛くはなかった、『シャリシャリ』……途中指で奥を穿られ種を抜かれた、そしてまた『シャリシャリ』
心地が良い小刻みな咀嚼音と共に意識が遠のおいて行った……〆

古文書の最後には富士山が書かれた樹海の地図が描かれていた、
ある場所に湖の場所の目印なのか×が一つ書かれており、
たぶん富士五湖の一つと思われる、
また富士山は不死山と記載されおり、
山の頂上付近の空にはUFOらし円盤🛸も描かれていた……
これはもしかしたら浦島太郎の原書なのかも知れない、また各地に残された浦島太郎伝説の発祥の地の手掛かりになるかも知れない。
そして富士の樹海に不幸な人が集まるのはこの異星人が植えた大樹の呪いみたいな効力がまだ残っているからなのかも知れない……

ちなみ豆本は返しそびれてしまい
今現在も私の机の引き出しの中に眠っているが私は歴史学者では無いので特に貴重な資料をこの手に隠し持っていても罪悪感は感じない、むしろ独占欲的な所有欲にみたされている。
2022・12・03
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