子供時代

仙 岳美

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彼女との廃墟探索記

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 久しぶりに仕事が早く終わった、その帰り、電車の窓から見えた夕陽を見て、子供の時の記憶を少し思い出したので、小説風に語ってみる、文面はところどころ子供が書いた物とは言えない物であるけれども、そこは大目に見てもらいたい。

登場人物
 是北これきた こん 十一歳
 温下川ぬかがわ 従理じゅり 十二歳

 長い様で短かった夏休みが終わって一週間が経った頃、学校の裏山にある廃墟ホテルに一人で行き、そのホテルから何かを物を持って帰って来る事がクラスの男子の間で流行っていた。今日も教室でホテルから持ち帰ったと言う、古い栓抜きを山田太郎君が自慢していた、勇気の勲章と言った所なんだろう。僕も行って一つ何か取って来たいと思うけど僕には、一つそれが出来にくい問題がある。それは毎日欠かさずに遊んでいるクラスメイトの少しデッカくてお腹が慢性的にゆるい女の子がいる……。と言う事で放課後、彼女と遊ぶ前に、
「今日は用事あるから遊べないよ」と。
それを聞いた彼女の顔は、
目が満丸くなり、口先が尖りパッカと開き、叫び口調で、
「なんでー 他の子と遊ぶのー」
僕は怯まずに、
「親と出かける」
「何処にー」
「わからない、僕は付いてくだけだから」
と説明したけど彼女は諦めずに僕の後を少し距離を取って付いて来る……。
僕は住まいである団地に着いたら彼女を知らんぷりしたまま階段を上がり四階の家へと入る。🏢
窓から団地の入り口付近を見下ろしたら少し離れた木の裏に彼女が隠れている姿が見えた(上から見たら丸見えで、赤いランドセルと、よく彼女が着ている白いフワヒラの服が目立ち過ぎていたw)
 
 冷やご飯で茶漬けを食べて、そろそろ諦めて帰ったかなと、窓から確認したら、彼女は、まだ木の裏に隠れて見張っていた……結構シツコい。

 しょうがないから外に出たら彼女が直ぐに近づいて来て、僕を見てニッコリし、「いつ出かけるの?」
「今日は中止になった」
彼女はポケットからキャラメルの箱を取り出し一粒僕に差し出して来た。
『これを受け取ったらオッケーした事になる』
けどもう時間も無いのでキャラメルを受け取り彼女と廃墟ホテルに行く事にした、彼女の粘りに負けた……。
彼女が、
「行く前にトイレ貸して」
『いいよ』と言おうとしたけど、親に何か彼女が、聞いたら嘘がバレる。
「今うちのトイレさ、壊れてるから、スーパーに寄ってこう」
と近くの、こじんまりした生協スーパーにより、外で待っていたら彼女がコーンアイスを買って出て来て一つ僕にくれたキャラメルだけだと逃げられると思ったのかな?🍦

⛰️山道入り口からホテルまでの道はホテル迄バスで行ける様に整備された道なので苦労なく彼女と僕はホテル迄行く事は出来た。
途中、山道が二股になり、少し先に見える丘の上に大きい石碑を遠目に目にしたけど、時間が持ったいなく感じた事と彼女も興味を示さなかったのでスルーした。

 難なく到着した目の前のホテルを外から見た外見は、三階建の真四角な感じで外壁のコーンクリーム色の塗装は部分的に剥げて下地の灰色のコンクリートを斑目に覗かせていた、そして全体的に壁の表面や外の非常階段などにツル草が絡まっていた。見える窓ガラスは結構割れている、まさしくザ・廃墟だった、僕はそのホテルの不気味な見栄えに怯んだ、そして感的に帰った方が良いと思い、
「やっぱり帰ろう」
「なんでー 面白そうじゃん」
彼女の目は好奇心でキラキラしている……ヤバい引き返せない、正確に言うと男の僕だけ引き返えす訳には行かない、彼女の性格的に僕だけ逃げる様に帰っても、その事をクラスに言いふらす事はしないと思うけど、自己満的に僕自信悔いが残り、更に何かホテルの物を持ち帰ってクラスで自慢し自己満する所か、一生負目を感じてしまう……
『だからー!ひとりで来たかったのー』と言っても、もう遅い……。
 
🏨ホテルの中央の入り口自動ドアは誰かがこじ開けた見たいで人、一人通れる隙間が開いてたので難なく入る事はできた。
色が禿げた木の受付カウンターを前に見て、左右に通路が伸びている。右の方面は突き当たりが非常口階段のドア、その手前に左側に登り階段が見える。
ホテルの床は赤い布製であちらこちら劣化して落ちたと思う天井のコンクリートのカケラが転がっていた。それに風が抜ける音なのか? ゴーっと不快不安になる音がしている、その音に僕は急に不安な寂しい気持ちになり、彼女を連れて来て良かったと思った、ら……後ろに居たはずの彼女が見当たらない!
けど僕も経験は積んでいる彼女はまたトイレだ、正確に言うとウ◯コだ! なので、どうせ待ってれば戻って来ると思い待ったけど中々戻って来ない、僕はー不安になり彼女を探す事にした、非常階段の方面にトレイの入り口らしき物は見えたない、ならと、逆方面のカウンター向かって左の方へ進む事にした、廊下は直ぐに右に折れ先に長く続いている、ラッキーな事に少し先の右側の壁に取り付けられているトイレの代表的な男女の看板が見えた。女の子のトイレに入る……二つ目の和便器に彼女がしたと思う水水しい出したてのアレが残っていた……臭い! 水は流れなかったらしい。まあヤリ逃げだ。
で彼女何処に行った?
トイレを出て、更に先に進むと突き当たりの左壁側にアルミドアがあったので開けてみる、目の前は雑草がボーボーに生えていたけど、誰かが突き進んだようにそこだけ草が折れ獣道が出来ていた、その先に赤いランドセルが見えた! どうやら彼女はしゃがんでる様だ、まさか追加野糞ですか!
ビックリさせてやろうとユックリ近づいたら、パッキーッと小枝が何かを踏んでしまい、「だれー」と彼女が振り向いたその口元は何やら赤く汚れていた……手には何やら赤いお肉の様な物を持っているその姿にゾーとし、恐れ恐れ「何食べてるの?」
「うん、イチジクー、甘いよ」
と言う彼女の前には(当時自分が初めて見る)実が沢山実った一本の木が生えていた。
「魂ちゃんも食べなよ」
と進めてくれたけど神経質な僕は、一言、
「洗わないと汚いよ」
(だからこの子は常にお腹壊してるじゃないかと思ったりみたり)
彼女は「少し待っててとー」と手が届く実を全てもぎ取りランドセルから出した袋に詰めてランドセルの横の上履きをかけるフックにかけた(用意が良い事で)
「もうホテルに戻ろうよ」
「アッチにお風呂あったよ」
「お風呂?」
と彼女は案内を頼んでもいないのに『きってー』と手柄を自慢する様に自ら開拓した獣道を走って行ってしまったので流されて付いていったら湯煙が湧き上がる温泉があった、オマケに猿が数匹浸かっていた。
彼女は猿を見て興奮して「サルー」と大声を出して猿の方に走って行った、猿は目の前に踊り出た彼女に慌てて散ってしまった。
「あーあ、触ろうとしたのに逃げちゃった」
(うん、おぱらった感じだと思う……。)
彼女は湯船を見つめて「私入ろうかな」言い出しだので神経質な僕は思わず「猿が中でオシッコとウンコしてるかもよ」と言ったら、彼女が急に低めの声で、
「そだね……ホテル戻ろう」
「あ、ごめん」
「うん、大丈夫、多分オシッコウンコしてると私も思う」
「そう言えばトイレでウンコしたら水流れなかったの」
彼女は僕を見て「私知らないー」と目をパチパチさせた、『嘘だねやったね』と思ったけどスルーしてあげて、ホテルに戻る事にし、さっき開いたドアの横にはホテル外壁に沿って折り返して作られた錆びだらけの非常階段が上えと伸びている事に気付いた。僕が開いて外に出た所は露天風呂兼非常階段の入り口だった様だ。階段は錆びていたので上がるのはやめて、ホテルの中に戻り、カウンターの方面には戻らずに、そのまま進む事にした、
(二人は南側下のカウンターから匚の字に進んでる感じです、今から匚の字の左上の角から東に進みます)

 途中左右に数箇所ドアがあったけど、どれも鍵がかかっていて入る事は出来なかった、そのまま突き当たりの壁の手前に左側に横に広い上がり階段があり上がると最初の踊場で左を見た真っ正面は畳部屋の広い二階の宴会場入り口だった、ちなみに階段は二階の踊場で交差するX作りで、そのままおそらく一階の最初のカウンターの方に戻れる降り階段と、その左横に少し狭い更に上に上がれる階段があった。その突き当たりに非常階段のドアが見えた。そのドア前を右に折れ三階のフロアに進めそうだった。

 取り敢えず横に見える宴会場の方に行ってみる事にしようと思ったら後ろを歩いていたはずの彼女が僕の隙を見て先に宴会場に入り、少し先にいるのが見えた、『また勝手な行動』を彼女は様子を見る事をしならない様に思った。
宴会場も辺りに座布団や横に長いテーブル、転がり散らかっていた、彼女をみたら少し高いショーをやる所に上がりまた背をこちらに向けてしゃがんでいるまさか……と後ろからコッソリ近づき何をしてるのかを見たらペラペラ
と……大人の本を見ていた……
「こら!」
彼女は振り返り「へっへへ」と照れた顔をし、とんでもない事を言い出した「一緒に最後迄見てみようよ誰もいないし、道にたまに落ちてるのは、誰か来るかも知れないからちゃんと見れないから」
「…………」
僕は彼女の案に乗ってしまった……
最後まで見終わり、彼女と顔を照らし合わせて、
「凄かったね」
「うん」
と彼女がその本をランドセルに入れようとしたので、また神経質な僕は「やめな、お母さんに見られたら怒られるよ」
彼女は少し考えて「うん」と言って、そーっと禁書を元の床に元した。
「上行こうよ」
「うん」
とまた彼女は「エッチ見て元気出たー」と叫びながら先に走って行ってしまったなんかすぐに興奮する体質な様だ、僕はやれやれと思い彼女の後を追った、でも彼女は以外にもさらに上に伸びる階段の上、非常階段のドア前で待っていてくれた、その先には奥が暗くて見えない、一本の廊下伸び、その左右の壁には一定の間隔で部屋の入り口らしき四角い空間が見えた、その三階フロアは二階暗宴会場と一階の通路とは違って陽が入らない感じで空間を墨汁で黒く塗った様に暗かった、それでもなんとなく僕が先に進もうと、キーホルダータイプの小さいライトを此処ぞとばかりにポケットから取り出したら彼女に腕を掴まれた、
「ここはやめとこうよ」
と彼女にしては珍しい事を言い出した。
「なんで」
「なんとなく私、怖い、お化けいるよ」
「大丈夫だよ」
「お願いだから!」
「じゃここで待っててよ」
「いっちゃだめー」と彼女が強く僕の腕を引っ張るので、僕はまた彼女の押しと粘りに負けて背の非常階段のドアを何気なく開けたら外壁に沿って上に伸びる階段があり、どうやら屋上に出れそうだったので、「じゃあさ、屋上行こうよ」と彼女言ったら「うん」とまた明るく返事をしてくれた。
 
 彼女と上がった屋上で見た物は真っ赤な大きい夕陽だった、彼女はその夕陽を見て「わー 綺麗ー」と喜んで踊っていた、けど時間的に余り長いもできないので直ぐに引き返す事にした、けど何か……再びホテルの中に入り、三階フロア入り口前には戻る気がしなかった……
彼女も、三階の非常口ドアは再び開けない方がいいよと言う……
あいにく上がって来た、外壁沿いの非常階段で、そのまま一階迄降りる事はできそうだったので、足元に注意して降り、非常ドアを開けたら、最初に見た、入り口のカウンターが廊下の先に見えた、こうして探索は時計周りに一回りし、戻って来た感じで終わった。

そのままホテルを後にした。

後日、このホテルは十年前に三階フロアの寝室で火事が起き、それが元で廃業した事を担任の先生から聞いて知った、同時に生徒達が行く事は学校でキツく禁止にされた。
ちなみに山道の途中で遠目に見た大きい石碑は、その時の犠牲者を弔う為の慰霊碑だった……。

山の入り口に戻った時は暗くなっていた、彼女に、
「遅くなっちゃったね、怒られない?」
「お母さん帰って来るの、夜だから大丈夫ー」
「家まで送るよ」
と僕が言ったら、
「ありがとう、楽しかったよ」
と言いい彼女が初めて僕の手を繋いで来た……その手は凄く柔らかく暖かかった……。

🌃彼女が分けてくれた数個のイチジクを手に、僕が自分の家に着いた時刻は七時を過ぎていた、母さんにも怒られ、部屋に戻った時にホテルから、何かを持ち帰ると言う目的も忘れていた事にも気づいたけど、ガッカリはしなかった、なぜなら僕の手には彼女の手の温もりがまだ残っている、物より、すごく貴重な大事な物を手に入れた気がその時、子供なりに感じたからだった。[終]
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