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本編
17話 残された者達 後編
しおりを挟むリリゼットの今世の友人、アレンとフランシスは裁判所でリリゼットに下された処刑判決を聞いた日から双方の家長である父親からリリゼットが自害したその日まで自室謹慎を言い渡されていた。
謹慎の理由は裁判所でリリゼットの無実を信じて傍聴していたアレンが『こんなデタラメな裁判があってたまるか!』と騒ぎ、今度はフランシスと組んでリリゼットの脱獄を企てるだろうと思われたからだ。
次期王妃のアリシア暗殺の首謀者の脱走の手助けをする者が家から出るとなれば爵位剥奪どころか一族全てが処刑などの処罰な対象となることをガルデッジ家とアルヴァン家の当主は危惧していたのだろう。
そして今から4日前にリリゼットが獄中で自害したと公表され同日2人にもその知らせを使用人から聞いた。
2人はそれからやり場のない怒りとリリゼットを失った悲しみ、助けられなかった悔しさでアレンは自室の物を破壊して物に八つ当たりをしフランシスは泣きながら寝込んでしまっていた。
2人は貴族に生まれても家には居場所がない者達だった。
アレンは貴族では極めて珍しく魔力を持たない体質故にガルデッジ家では『出来損ない』の烙印を押され剣術の才が優れていようとも家族の中での彼の評価は変わらなかった。
フランシスは生まれつき髪は白髪、瞳の色が世間では『悪魔の瞳』と呼ばれる赤い瞳だったが故に医術や薬物の知識が優れていようとも家族と周囲の者から長年疎まれてきた。
同情などではなく只の友人として優しく、時には厳しい意見も述べてくれるリリゼットのことを2人は大好き、ではなく愛していた。
尚のこと2人は家族からも疎まれていた自分達に優しい笑顔を向けてくれたあの子がもうこの世にいないなど信じたくなかった。
だがリリゼットが自害したと知らせからすぐ2人の元に密書が届いた。
その密書はそれぞれ2人を気にかけてくれていたメイドや執事に雇い主や他の家族に内密にするようにと渡されたのだという。
『世間で公爵令嬢リリゼット・アルガリータは自害したと公表されておりますが、実は我が仲間が彼女に渡した薬は毒薬ではなく仮死状態にするものでありリリゼット嬢は生存しています。
リリゼット嬢は現在彼女を助けるよう依頼したクリスティアの要人の元にいます。
クリスティアの要人がリリゼット嬢を助けたのは彼女が持つ『才能』をガルヴァンに潰されるのを恐れたからです。
リリゼット嬢の友人である貴方もクリスティアにて貴方が持つ素晴らしい才能を生かして見ませんか?
お返事はこちら側が指定した日に集合場所へ来て頂ければ承諾したと見なします。
集合場所にてお待ちしております。 』
手紙にはこう綴られていた。
2人はもうこの屋敷には戻らぬつもりで旅の準備をしてそれぞれ長年自分を気に掛けてくれた使用人に礼を言うと馬車で集合場所へ向かっていった…。
「貴族街に大ネズミなんて珍しいな…」
集合場所は貴族街にあるとある令嬢の家だった。
そこへ向かう途中で大ネズミと呼ばれる犬や猫と変わらぬサイズの魔物にも該当する害獣を騎士達が討伐しているのが見えるとアレンが言った。
アレンの言う通りガルヴァンは守護獣に守られ守護獣が放つ力のお陰で大ネズミなどの小型魔物は王都に入れないはずなのだ。
「ネズミは沢山の疫病の原因になるから心配だな…」
とフランシスが言った。
大ネズミに限らず動物が疫病の媒介となるということはこの世界では知られていない。
だがフランシスは学生時代にリリゼットから『お祖母様の知恵袋』だと表現したリリゼットの前世の民間医療や疫病の原因・予防方法などを教わったことがありその中でもネズミは黒死病、鼠咬症、サルモネラ菌などの食中毒など多くの疫病の原因となると聞いた覚えがあった。
守護獣の不在を知らぬ2人は大ネズミ出現を気にしつつも集合場所のルウェンス家に着いた。
ルウェンス家の爵位は準男爵、何年も前に当主夫妻は流行病で亡くなり幼くして家督を継いだ一人娘のレイニーは残された老バトラーに支えられてどうにか貴族として成り立っている家である。
2人はこの家の娘レイニーとも同級生でありリリゼットを介してレイニーとは友人になったのだが、没落寸前の貴族のレイニーとクリスティアがどう結びつくのか分からなかった。
2人が屋敷の中へ入るとそこには既にリリゼットの異母弟グレン、アルガリータ家の古株で幼い頃のリリゼットを良く知る6人の使用人達がいたのだった。
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