婚約破棄ですね、わかりました。

織田智子

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「ネージュ・オブライエン!お前との婚約を破棄する!」

びしっ、と人を指差し、格好をつけたのは、
金髪碧眼の、いわゆるイケメンという種類になるであろう青年。

どうでもいいですが、指差されるのはあまり気分のいいものではありませんね。
しかも人の大勢いるパーティー会場なんかでは、特に。

あ、どうも。
指差されたネージュ・オブライエンです。
小説によくある転生ネタの異世界モノのように、
一応日本で結構な年まで生きてきた前世の記憶があります。
そして、魔術のあるファンタジーな世界に転生してます。
肉体年齢現在16歳です。
そして、指差した相手はカルセドニ国の第一王子ことジルコン・カルセドニ。

「・・・本日は卒業パーティーと記憶しておりますが、
 殿下は卒業生ということで主役ですが、
 卒業生は殿下以外にもいらっしゃいます。
 私的な内容でしたら、もう少し場を考えていただきたかったですわ。
 それに、殿下と私の婚約に関しては、私の意志は一切関与しておりません。
 私におっしゃられても、どうすることもできません。
 それとも・・・」

手にしていた扇を広げて口元を隠すように添える。

「それが、王家のご意向、と受け取ってよろしいのでしょうか?」

正面からジルコン殿下と向かい合う。
と、いうか、ガン飛ばしてます。

「そ、そうだ!」

「でしたら、契約書はお持ちですね」

「契約書ならばここにある!」

広げて突き付けられたものを見ると確かに王家側が持っているはずの契約書。
婚約に対する契約書の部分にはオブライエン家当主の父の名前が記入されていて、その下は空白。
ちなみに、オブライエン家には国王陛下の名前が記入された契約書がある。
婚約から結婚になる場合は新たに婚姻契約書に本人たちがサインをし、その時点で婚約契約書は効力を失う。
破棄の場合、相手側の保管する契約書にもう一度当主か、当主に準ずる人がサインを行うことで効力を失う。
婚約期間中にもう一度サインをすることはできない。
という魔術がかかっている。

「ああ、当家の契約書ならば、ここに」

声とともに人垣をかき分けて出てきたのは、私の二つ下の弟となる、スフェン。

「あら、スフェン。よかった。
 あなたなら我が家の当主代理としてもおかしくはないわね」

スフェンから差し出された契約書を受け取り、風を操り殿下の目の前に突きつける。
と、同時に殿下の持っていた契約書をスフェンの前に持ってくる。

「では殿下、サインを」

プルプル震えながら、サインをしてる。
といっても、ペンとかはなく、指で自分の名前を書くだけ。
なのに、まるでインクでも付けたかのように黒く字が浮かび上がる。
まさにファンタジー。

殿下がサインをし終えると同時に契約書は燃え上がり、跡形もなくなる。
契約書がなくなったことが、婚約が破棄されたということになる。
また、当主が存命の場合、破棄が行われたことがわかるようになっている、らしい。
どういったものかは聞いたことがないのでわからないが、
当主に準ずる人が代行できるのは、当主がいなくなった際の救済措置だそうな。

「さて、学園の先輩方にはお見苦しいところをお見せいたしました。
 私はこれにて退席させていただきます。
 卒業をお祝いするはずのものが場を乱し、申し訳ございませんでした」

今まで幾度となく繰り返したカテーシーをすると、
隣に立っていたスフェンが差し出す手を取りパーティー会場であるホールを後にした。


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