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「婚約を破棄させてくれないだろうか」
月に一度のお茶会で、2人きりになったところエリクスからアリアに穏やかに告げられた。
驚いたアリアは目をぱちくりさせてエリクスの顔を見た。
アリアを見るエリクスの新緑を思わせる瞳は真剣そのものだった。
「・・・理由を、お聞かせ願えますでしょうか?」
「アリアには申し訳ないのだが、好きな人ができたのだ・・・」
エリクスは苦悩の表情を見せたものの、アリアにはここ半年、エリクスが他の女性に目を向けているのはわかっていた。
「知っておりましてよ」
「え?」
「エリクス様、私とはいくつの時からの付き合いだったか、覚えていらっしゃいますか?」
「5歳の頃からだから・・・すでに9年か?」
アリアは目の前の紅茶を口にする。
エリクスとアリアは同い年で、5歳の頃から両家の方針で婚約をしていた。
2人とも特にそりが合わないということもなかったため、
月に一度、小さい頃には会って遊ぶこと、
ここ数年は遊ぶことがお茶会に変化していた。
しかし、2人の仲としては幼馴染から特段変化がなかった。
2人の家は爵位も伯爵位と同じであるものの、伝統を重んじるエリクスの家と新しいものを取り入れるアリアの家とでは随分家風が違うも、父親同士が仲が良かったため、勧められた婚約だった。
「ええ、9年間あなたを見ていた私が気付かないと思っておりましたの?
お相手は一学年下のレーベン子爵令嬢ではありませんか?」
「気づいていたのか・・・」
「この場で話が合ったことには驚きましたけど、私たちももうすぐ15になりますので、
近いうちにはお話があるかと思っておりましたわ、どういった形での話かはわかりませんでしたけどね」
あぁ、とうめくようにエリクスは相槌を打つ。
ここ最近、2人が通う学園では一方的な婚約破棄が流行していた。
人目を気にせず、もしくはわざと人目のある所で行う、相手に恥をかかすようなやり方も多く、
品位を疑うこともしばしばであった。
そのため、アリアはエリクスの恋に気づいていたものの、自分からはどのようにして切り出せばいいかわからず、悪趣味な婚約破棄をされればうまく行っている親たちをも巻き込んでしまうことを心配していたのだった。
エリクス自体も、アリアに不満があるわけではない。
ただし、15の年には婚姻という話が昔からあったため、悩んだ末の話であった。
「あんな見世物のようなことは、したいとはカケラも思わなかったから・・・」
「ええ、あのような事をされた日には、両家の関係も修復が不可能になってしまいますもの。
正直、怖かったですわ・・・」
「アリアに不満があるわけでも、なんでもないんだ」
「わかりますわ。でも、私たち、婚約者という肩書をとれば、幼馴染としか言いようのない仲ですもの。
恋人、にはならない仲ですわね」
小さな頃からの付き合いだが、それだけの二人。
それはエリクスだけでなく、アリアも同じだった。
ただ、好きな人ができていないだけの話。
「ただ、婚約破棄は男よりも女性の方がダメージが大きいだろう?
アリアは婚約者でなくなったとしても、気の合う幼馴染だ。
だから、どう切り出していいか、すごく悩んで・・・」
頭を抱えてしまったエリクスに、アリアはフワリ、と笑う。
「ありがとう、エリクス。わたしもそうよ。
ただ・・・」
「ただ?」
「私がそんなやわだと思って?」
アリアは胸を張り、不敵な笑みを湛える。
一瞬、ぽかん、としたエリクスはそんなアリアを見て苦笑する。
「そうだったな」
2人で顔を見合わせ、クスクスと笑う
10歳からの淑女教育で現在おしとやかな淑女に見えるアリアは小さい頃負けん気の強い男勝りな子どもだった。
見た目はたおやかな美女である母親に似たものだから、外見詐欺とよく嘆かれたものだった。
「じゃあ、このお茶会が終わったら、私から両家に話をしに行くよ」
「あら、私も一緒に行きますわ」
「・・・じゃあ、ボルトン伯爵に話すときには一緒にいてもらってもいいかな?
自分の親には自分できっちり話を付けるよ」
自分で蒔いた種だしね、とどこかスッキリとした笑顔を見せるエリクス。
「先にお父様の耳には入れておきますわ」
「・・・ありがとう、アリア」
最期のお茶会は、穏やかに過ぎて行った。
月に一度のお茶会で、2人きりになったところエリクスからアリアに穏やかに告げられた。
驚いたアリアは目をぱちくりさせてエリクスの顔を見た。
アリアを見るエリクスの新緑を思わせる瞳は真剣そのものだった。
「・・・理由を、お聞かせ願えますでしょうか?」
「アリアには申し訳ないのだが、好きな人ができたのだ・・・」
エリクスは苦悩の表情を見せたものの、アリアにはここ半年、エリクスが他の女性に目を向けているのはわかっていた。
「知っておりましてよ」
「え?」
「エリクス様、私とはいくつの時からの付き合いだったか、覚えていらっしゃいますか?」
「5歳の頃からだから・・・すでに9年か?」
アリアは目の前の紅茶を口にする。
エリクスとアリアは同い年で、5歳の頃から両家の方針で婚約をしていた。
2人とも特にそりが合わないということもなかったため、
月に一度、小さい頃には会って遊ぶこと、
ここ数年は遊ぶことがお茶会に変化していた。
しかし、2人の仲としては幼馴染から特段変化がなかった。
2人の家は爵位も伯爵位と同じであるものの、伝統を重んじるエリクスの家と新しいものを取り入れるアリアの家とでは随分家風が違うも、父親同士が仲が良かったため、勧められた婚約だった。
「ええ、9年間あなたを見ていた私が気付かないと思っておりましたの?
お相手は一学年下のレーベン子爵令嬢ではありませんか?」
「気づいていたのか・・・」
「この場で話が合ったことには驚きましたけど、私たちももうすぐ15になりますので、
近いうちにはお話があるかと思っておりましたわ、どういった形での話かはわかりませんでしたけどね」
あぁ、とうめくようにエリクスは相槌を打つ。
ここ最近、2人が通う学園では一方的な婚約破棄が流行していた。
人目を気にせず、もしくはわざと人目のある所で行う、相手に恥をかかすようなやり方も多く、
品位を疑うこともしばしばであった。
そのため、アリアはエリクスの恋に気づいていたものの、自分からはどのようにして切り出せばいいかわからず、悪趣味な婚約破棄をされればうまく行っている親たちをも巻き込んでしまうことを心配していたのだった。
エリクス自体も、アリアに不満があるわけではない。
ただし、15の年には婚姻という話が昔からあったため、悩んだ末の話であった。
「あんな見世物のようなことは、したいとはカケラも思わなかったから・・・」
「ええ、あのような事をされた日には、両家の関係も修復が不可能になってしまいますもの。
正直、怖かったですわ・・・」
「アリアに不満があるわけでも、なんでもないんだ」
「わかりますわ。でも、私たち、婚約者という肩書をとれば、幼馴染としか言いようのない仲ですもの。
恋人、にはならない仲ですわね」
小さな頃からの付き合いだが、それだけの二人。
それはエリクスだけでなく、アリアも同じだった。
ただ、好きな人ができていないだけの話。
「ただ、婚約破棄は男よりも女性の方がダメージが大きいだろう?
アリアは婚約者でなくなったとしても、気の合う幼馴染だ。
だから、どう切り出していいか、すごく悩んで・・・」
頭を抱えてしまったエリクスに、アリアはフワリ、と笑う。
「ありがとう、エリクス。わたしもそうよ。
ただ・・・」
「ただ?」
「私がそんなやわだと思って?」
アリアは胸を張り、不敵な笑みを湛える。
一瞬、ぽかん、としたエリクスはそんなアリアを見て苦笑する。
「そうだったな」
2人で顔を見合わせ、クスクスと笑う
10歳からの淑女教育で現在おしとやかな淑女に見えるアリアは小さい頃負けん気の強い男勝りな子どもだった。
見た目はたおやかな美女である母親に似たものだから、外見詐欺とよく嘆かれたものだった。
「じゃあ、このお茶会が終わったら、私から両家に話をしに行くよ」
「あら、私も一緒に行きますわ」
「・・・じゃあ、ボルトン伯爵に話すときには一緒にいてもらってもいいかな?
自分の親には自分できっちり話を付けるよ」
自分で蒔いた種だしね、とどこかスッキリとした笑顔を見せるエリクス。
「先にお父様の耳には入れておきますわ」
「・・・ありがとう、アリア」
最期のお茶会は、穏やかに過ぎて行った。
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