勇者と七つの涙

雨木良

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『勇者の剣』奪還編

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「ロイ、ちゃんと付いてきてるか?」

「うん。後ろにいるよ。」

「警備はたった二人だ。お互い一人ずつ気絶させてから、門を開こうぜ。」

「わかった。僕は右の兵をやるね。」

二人は警備兵に気付かれないように、小さな声で会話をした。 

アルドに貰った布は、首に巻くと姿が相手に見えなくなる魔導具で、服や武器など、布を巻いている者に触れているものも同様に見えなくなる優れものだった。しかし、一点だけ難点があった。ロイとグルトもそれぞれの姿が見えなくなってしまうことだ。

二人は、事前にアルドから、彼が以前入手したという城内の部屋割りを記した図を元に、セルヴォーの部屋と思われる位置を確認していた。よって、デストリュたちに怪しまれないためにも、最低限の会話だけでセルヴォーの部屋を目指そうと話を済ませていた。

二人は、互いのターゲットとする警備兵の元に駆け寄った。まず、グルトが短刀を握り、向かって左の警備兵のうなじに強力な峰打ちを喰らわせ、一瞬で気絶させた。

バタリと倒れた仲間に動揺して、辺りを警戒し出した右の警備兵には、ロイが正面から頭突きを喰らわし、兵はそのまま仰向けに倒れた。

この間、わずか12秒。

グルトは、兵が手に持っていた鍵の束を拝借し、門の鍵を開けると、中に誰もいないことを確認し、中に入っていった。

その頃、ティグル王室では照明を落とし、ヨシミツが掌を壁にかざし、光を照射させ、映像を映し出していた。映像は、サントル城の内部を飛行しながら撮影したような内容だった。

「…これは?」

ティグルが椅子に座り、頬杖をつきながら聞いた。ティグルの後ろには、デストリュら三人が立ち、映像を見つめた。

「これは、儂の千里の眼を使い、今のこの城の様子を映し出したものです。」

ヨシミツはそう言うと、映像をこの王室の様子に切り替えた。デストリュらは、今の自分が映像の中に映っていることに驚いた。

「…ヨシミツ…あいつ何者なんだ…。」

セルヴォーの呟きは、ティグルの耳にも届き、ティグルは振り向いて答えた。

「セルヴォー。ヨシミツは、お前たちとは次元が違う存在なんだ。お前たちは、今回はヨシミツの指示に従ってもらいたい。…ところで、ヨシミツ。そろそろ、聞かせてくれないか。我々にこの映像を見せてる理由を。」

ヨシミツは、映像を切り替えた。それは、城の裏門の様子で、兵が二人倒れている映像だった。デストリュは、顔を強張らせた。

「…まさか…あのガキどもか?」

「ふん。ガキ二人で何ができる。…ヨシミツ、侵入者の映像はないのか?」

ティグルの質問にヨシミツは首を横に振った。

「それが、いくら探しても侵入者を見つけることが出来ませんで…。」

「…ふん。デストリュ、お前たちで探し出せ!たとえガキの遊びでも、我が城に侵入者した罪は重い。…ロイは、ただの処刑じゃ済ませられんな。生きて捕らえて私の前に連れてこい!」

ティグルの命に、デストリュたちは急いで部屋を後にし、散り散りにロイたちを探し始めた。

ヨシミツは、慌てて出ていくデストリュたちを眺め、クスリと笑った。その姿をティグルは見逃さなかった。

「…ヨシミツ。お前、遊んでいるな?本当は、侵入者の居場所に見当が付いてるんじゃないか?」

「滅相もございません。…儂も、あやつらに加わって侵入者を探して参ります。」

ヨシミツは、映像を止め、一礼し部屋を後にした。部屋にはティグルと執事のユング二人きりとなった。

「…ふん。まぁ、こういう遊びは嫌いじゃない。せいぜい、楽しませて貰おう。」

ティグルは、ニヤリと笑みを浮かべた。
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