勇者と七つの涙

雨木良

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『闇の世界』脱出編 ーオンブル国ー

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ゴーンは、床に寝そべるテヒニクに切っ先を向けて、ロイたちを睨み付けた。

「話聞いていただろう?私に従っていただく。」

グルトはロイだけに聞こえるように囁いた。

「どうすんだ。あいつの言う通りにするか?」

「…テヒニクが人質に捕られてるし、僕たちには、この胃袋から出る術がない。奴の言う通りにしてた方が利口かもしれないね。」

ロイはそう答えると、ゼロを背中の鞘に仕舞い、両手を上げた。それを見たグルトも舌打ちをしながら短刀を鞘に納めた。

「…ほぅ、聞き分けの良い子どもで助かりますな。」

ゴーンは、テヒニクを抱き上げると、またパチンッと指を鳴らして高く飛び上がった。

すると、床になっていたポワッソン族の面々は一旦散り散りになった後、胃袋の入口の真下に集まると、一体また一体と肩車の容量で積み上がっていき、いよいよ穴に到達しようという高さになると、テヒニクを抱えたままのゴーンが、水面を蹴って高く飛び上がり、軽々と最上位の肩の上に乗っかった。

ロイたちは、ポワッソン族の団結力とゴーンの身体能力に魅入ってしまっていた。

ゴーンは、剣を抜くと真上に向かって剣を掲げた。

「ジェアン!!」

ゴーンが唱えた途端、剣の刃のみが一瞬で巨大なノコギリ鮫の口先のような形に変形し、閉じていた穴を一気に突き破った。

「ギーーーッ!」 

すると、流石に痛みを感じているのか、本体の待ち伏せ毛玉は悲鳴を上げた。

次の瞬間、ポワッソン族がロイたちの回りを物凄い勢いで囲み、ポワッソン族の一人がテヒニクの剣を引き抜くと同時に、ロイたちの身体を抱き上げ、ゴーンを追うように、真上の穴に飛び上がった。

「…なんつー力なんだ。」

「くっ、ダメだ。動けないよ。」

ロイたちは抵抗する術もなく、ポワッソン族に捕まれたまま、待ち伏せ毛玉の中を上昇し続けた。

「それにしてもこの化け物、どんだけ巨大なんだ。」

恐らく口から外に出ようとしてるんだと考えていたグルトは、中々辿り着かないことを不思議に感じていた。

「…いや、おかしいよ…。」

「ロイもそう思う?私もそう感じる。」

フルールが緊張した様子で言った。

「…お前ら、それどういう…。」

グルトがそう言ったと同時に、周りにいたポワッソン族がざわざわと騒ぎ出した。

「…何だ!?急にこいつらガヤガヤし出したぞ。」

「…待ち伏せ毛玉のラビリンスに迷いこんだっちゅーことや。」

「…ゼロ、それどういうこと?」

ロイの問い掛けに背中のゼロはニヤリと笑って答えた。

「わいも聞いたことがあるだけやけど、待ち伏せ毛玉は、一度体内に捕らえた獲物を簡単には逃さないっちゅー話や。んで、その方法が常軌を逸してるって話や!…こりゃ中々痺れる展開やな。」

「…つまり、その方法ってのが体内を迷宮にして閉じ込めるってことか…。」


一方、先頭を行くテヒニクを抱えたゴーンも同じく待ち伏せ毛玉のラビリンスに迷い込んでいた。

「…ちっ、さっきから全く後衛が来ないと思ってたが、どうやら待ち伏せ毛玉の力に嵌まったようだ。…早く“チェントロ”を探さなくては…。」

「…ん…、ハッ、ここは!?」

テヒニクが目を覚ました。

「おや、お目覚めかね。あまり宜しくないタイミングだがな…。」

「…何!?これは一体どうゆうこと!?」

テヒニクは今の自分の状況が分からずに、少しパニックになっていた。

「…今暴れられては迷惑だ。悪いが、もう一度お眠りいただこう。」

ゴーンは、腰に下げていた剣を抜くと、テヒニクを真上高くに放り投げた。

「…ぐわぁ、…一体…。」

投げ飛ばされたテヒニクが下に視線を向けると、剣を掲げたゴーンが迫って来ていた。

「…くそっ、あれ?剣…、あ、そうか。」

テヒニクは、自分の剣を待ち伏せ毛玉の胃の中に置いてきてしまったことを思い出した。

「無駄な抵抗は止めたほうがよい!」

「ティディトフテッション!」

テヒニクが呪文を唱えると手元に光が集まり出した。

「…何だ!?…くそっ。」

何かを感じたゴーンだが、今さら手を止めることは出来ずに、そのまま真上のテヒニクに斬りかかった。
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